笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》   作:バスクランサー

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大井と北上の章、最終話です。
ちなみに次回完結です。
…皆様ありがとうございました。←まだ早い早い

というわけで本編どうぞ。


別れの時、いざさらば

 ーーー急いで80が大井に駆け寄る。大井の目からは大粒の涙が次々とこぼれ、そして彼女にお姫様抱っこのような形で抱えられていた北上はーーーもう、すねの半分までが消えていた。

「北上さん…!」

 それを見た80は再び巨大化し、2人にその大きな手を差し伸べた。

「二人とも乗るんだ!鎮守府まで飛ぶぞ!」

 言われるがままに80の手に乗る大井と北上。

「シュワッッ!!」

 乗ったことを確認すると、80は鎮守府へ向けて、全速力で飛び立った。

「大井さん、鎮守府に連絡を!」

「は、はい、先生!」

「頼む…間に合ってくれ!」

 80は念じつつ、そのスピードを加速させていったーーー

 

 ーーー第35鎮守府

「矢的先生!」

 大井から連絡を受けていたので、俺たちは鎮守府の港で彼女たちを待っていた。やがて遠くの方に80の影が見え、この鎮守府に降り立った。

 80は2人を地上に降ろし、変身を解除。矢的先生の姿になって、大井、そして彼女に抱きかかえられた北上に駆け寄った。

 北上は、もう太もも、さらに手先の部分が光の粒子を出しつつ、消えていた。

「北上…さん…」

「…大井っち…ごめん、もう、お迎えが、来たみたい…。」

「…そうですか…北上さん。本当に、本当に…逝って、しまうのですね…」

 目からの涙は止まらず北上に落ち、そしてそれは北上の身体をすり抜けて、港の地面のコンクリートを濡らす。

「北上さん…分かってます、分かってますげど…やっぱり、寂しいでず…悲じいでず…!」

 もう大井は泣きじゃくって、言葉にかなり濁音が混ざるようになった。そんな彼女に、北上は優しく語りかける。

「大井っち…私は、幸せ者だよ。一番の親友に、大好きな妹に…こんなにも惜しまれながら、見送ってもらえる最期を、こうして経験できるんだから…」

 北上の涙は、地面にこぼれ落ちる前に光の粒子となって消えてしまう。と、

「あ…」

「北上さん…!?」

 北上の身体は、ついに重力の法則を逸脱し、宙へ浮かび上がり始めた。まるで、天からの迎えの糸が、彼女を引っ張っているような、そんな表現が妥当な光景なのだろうか。

「大井っち…ありがとう。本当に…幸せだったよ。だから…最後、お願い、大井っちの、あたしが大好きなその笑顔で…見送って、くれない?」

 徐々に離れていく二人の距離。大井は立ち上がり、北上へおくる言葉を紡ぐ。

「北上さん…私だって…とても幸せでした。だから…私も、あなたのお願い通り、笑顔で、送ります…!」

 涙で顔中を濡らしながらも、しっかりと微笑みを北上に返し、大井は続ける。

「私からも、あなたにお願いをします。

 どうかこれから、北上さんの分まで頑張る私を…見守っていてください!!」

 大井は叫ぶ。大井は北上へ手を伸ばす。北上は、もちろんだよ、と小さな声を確かに返し、自身も伸ばしたその手で、温かな感触を大井に伝えてーーー全身を光の粒子と化して、完全に天へと消えていった。

「さよなら…北上さん…。…うっ…ひっく…えぐ…ううぅ…!」

 大井の顔が歪み、そして膝からがくりと崩れ落ちた。両手で顔を覆い、嗚咽を漏らす。そんな大井に、矢的先生は優しく歩み寄り、無言でその背中をさすった。そこへ、今度は響がやってきて、大井に声をかける。

「大井さん、これ」

「…響ちゃん…?これは…?」

「北上さんからの、手紙だよ。」

 そう言って響は、大井にそれを手渡した。彼女の服のような、爽やかな薄緑の色で縁取られた紙、そこに書かれていることを、大井はゆっくりと読み始めたーーー

 

「大井っちへ

 

 きっとこの手紙を読んでいる頃には、私はあの世へ旅立っていると思います。

 

 みんな、そして大井っち、本当に今までありがとう。

 

 ニコニコと笑っているその笑顔が素敵だった大井っちは、私のことをそのいい笑顔で見送れましたか?

 

 サイコーの人生を、私はあなたのおかげで過ごせました。だから、自分を責めないでください。私はあなたがいたから、こうして想いを伝え、何も未練もなく旅立つことができます。

 

 ちゃんとみんなと仲良く、体に気をつけて過ごしてください。

 

 あの世から、いつでもあなたのことを、見えない時もどこかで優しく見ています。たとえ寂しくても、私が守っているし、何が来ても、大井っちには私がついています。だから、大丈夫。

 

 レベルをあげたり、鍛錬に励むのもいいけど、何より笑顔で精一杯、一所懸命あなたの人生でやるべきことをしながら、これからを生きていってくれれば、それほど幸せなことはありません。頑張れ、大井っち!私はいつでも応援しているよ!

 

 北上より」ーーー

 

 ーーー泣いた。大井は泣いた。声をあげて、みんなにさすられながら。でも、最後には大井は、その強く美しい笑顔で、立ち上がって天を見つめていた。

「大丈夫、私、これからも頑張りますよ!」

 そう、天国の北上に誓うかのようにーーー

 

 ーーー翌日。

 矢的先生はみんなに見送られつつ、鎮守府を後にして大学の方へと戻ることになった。大井が鎮守府を代表し、彼に感謝と別れの花束を渡した。

「矢的先生…本当にありがとうございました。あなたのおかげで、私は…自分が一生かけてやるべき事を見つけられました!」

「ありがとう大井さん。そして、いい笑顔だ!また、誇れる教え子をもてて、私も嬉しいよ。」

 矢的先生も、大井に素敵な笑顔で返した。そして、その笑顔のまま、鎮守府の門を出て、帰っていった。その姿を、大井は見えなくなるまでずっと見送っていた。

「矢的先生…ありがとうございました!

 さようなら、お元気で!!」ーーー

 

 ーーーその後。

 大井はちゃんと出撃もこなせるようになり、雷巡ならではの高い雷撃力を生かして次々と戦果を挙げる、鎮守府の立派な仲間になった。

「では提督、出撃してきます!」

「おお、気をつけてな!」

 海へその身を赴かせ、今日も仲間達と深海棲艦と戦う大井。そんな彼女を港で見送ると、後ろから響がやってきた。

「お見送りかい?」

「おお響。そうだよ」

「ふふ、だろうね。…そういえば、これはまだ渡さなくていいのかい?」

 響が俺に見せたのは、一枚のメモ用紙。そこにはこう書かれていた。

 

「もし、あまりにも私がいないことに耐えられなかったら、このレシピと私のこのヘアゴムを妖精さんに渡して建造を行ってね」

 

 そして、資材の投入数値と、セロハンテープでメモにくっつけられていた、北上のヘアゴム一つ。彼女からの追伸である。しかし、俺は響の提案に首を横に振った。

「いや、まだいいだろう。このレシピなら、今なら百パーセント北上が誕生するだろうけど、きっと大井は、今は北上に見守って欲しいと思っているだろうからな。」

「ふふ、それもそうだね。」

 響も納得してくれたようだ。

「よし、じゃあ艦隊の見送りも済んだし、執務室に戻って書類整理の続きをしようか」

「了解、司令官」

 爽やかな海風の吹き抜ける中、俺と響は共に執務室へと戻ったーーー




というわけで今回も読んでくれてありがとうございましたm(_ _)m

手紙、勘の鋭い方は気づいたと思いますが、縦読みできます。

よければ、評価や感想よろしくお願いします!
ではまた!
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