笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》 作:バスクランサー
安心してください、違いますよ。←古い。
そんなこんなで新章突入ー。
空の心の箱
俺は自分の目を疑った。しかし、状況は変わらない。遠くの方だが、確かに人影が歩いている。気づかれないように、足音を殺して近づくことにしてみる。距離が詰まるにつれ、影の姿が少しづつ見えてきた。
留められていない、長い髪。
上には寝巻きの着物のような服を着ている。
歩くスピードは、普通より少し遅めなのだろうか。
しかし、顔がよく見えない。
…まさか、幽霊とでも言うのだろうか。
しかしそう考えているうちに、その影は再び遠くへ行ってしまった。追いかけようともしたが、建物の陰に入っていってしまった。歩速からみて、おそらくまた追いつけるだろうが、やめておくことにした。
「今日は…夜釣り、やめておこう」
俺は踵をかえして、執務室の方へと戻った。
ーーー執務室にて
「あれ?司令官、随分早かったね」
「いや、その…今日は、夜釣りやめとくことにしたんだ。」
「そ、そうか。」
…あれは怖いとまでは行かなくても、少し不気味だった。頭の中から離れそうにない。
「響、ちょっと大淀のところに行ってくる。」
「え、どうしたんだい?」
「いや、少し相談したいことがあってな。
大丈夫、すぐ戻ーーー
「僕じゃだめなのかい?」
ドアに向かおうとした俺の服を、響がつまんでいた。
「確かに、響にでもいいんだろうけど…」
「じゃあ僕に言ってよ。司令官、お願いだ」
「わ、わかった。」
半ば強制的に引き戻される。
響を座らせ、先程のことを話す。
「まあ、大したことないんだろうけど、何だったんだろーな、みたいに思ってさ。…って、響?
泣い…てるのか?」
「司令官のせいだ」
「いや、何で…あ、怖かった、のか?」
「別にそんなんじゃないもん…」
いつものクールさが崩れかけている。否定するも、体が小刻みに震えている。さっきのよりも強く、服を掴まれた。
「…ごめん、響。とりあえず、聞いてくれて、その、ありがとう。一応大淀にも報告ーーー
「行かないで」
「響?」
「司令官のせいだからね」
「いや、でも一応」
「だめ。」
「…わかったよ、わかったわかった。響も一緒にこい。」
「…しょうがないね」
…何で俺が悪くなるんだ?
ーーー仕方なく、響も連れて、大淀の部屋へと向かうことにした。時刻は夜11時を回ろうというところだが、彼女の部屋にはまだ明かりがついていた。
「大淀?俺だ、少しいいか?」
「提督?どうぞ。
どうしたんですか、こんな夜更けに。…それに、響ちゃんまで」
「いや、響は何か、ついてくって聞かなくてさ。ちょっとさっきあったことなんだが…」
「あ、はい。よければ聞きますよ?」
「助かるよ、大淀。実はな…」
俺は響の時と同じように、先ほどの出来事を話した。話している最中、俺も大淀も気づいてしまったのだが、響がずっと耳栓をして、部屋の机の下でうずくまっていた。少し不思議で不気味な体験を話しているはずだが、思わず互いに笑みがこぼれてしまった。
…このことは、響には内緒にしておこう。
「…ってことがあってな。大淀なら、何か知らないかと思って。…響?話なら終わったぞ?」
響はまだうずくまったままだ。
「ふふ、響ちゃんも可愛いですね。それと、その話のことですが…私の読みが正しければ、幽霊ではありませんよ。」
「そうか。…じゃあ、その影は何者なんだ?」
「おそらく、ここの翔鶴さんです。」
「翔鶴?…そういえば確かに、翔鶴っぽかったなぁ。」
「きっとそうですよ。今日は遅いので、詳細はまた明日話します。」
「ああ、そうだな。…響、さっきのは、お化けとかじゃないぞ。怖がらなくていい。」
「…別に、怖かったわけじゃないもん」
「はいはい」
「ふふ、響ちゃんやっぱり可愛いですね。」
「だな。よし、ありがとうな大淀、こんな夜遅くに」
「いえいえ提督。どうぞゆっくりお休みになってくださいね」
「ああ。失礼した。…行くぞ、響。」
「……」
無言でついてくる響。やはりというか、服の袖をしっかりにぎっている。
「じゃあ大淀、お休み」
「おやすみなさい、大淀さん」
二人で大淀に就寝の挨拶をして、戻った執務室で響の用意してくれた寝巻きへと着替える。
「ありがとうな、寝巻きの準備。とりあえず、響も自室戻って、明日のためにも寝てこい」
「やだ」
「響…」
「司令官のせいだよ。今日は一緒に寝て」
「…わかった。」
「…ありがとう。ハラショー」
電気を消して、ベッドに横たわる。隣の響は、腕を抱き枕のようにつかみっぱなしだ。電気を消してもわかるが、まだ少し泣いている。
「…よしよし」
俺は響の頭をそっとなでつつ、少しの狭さを感じながら、眠りについた。
…念のために言っておくが、意味深な意味での夜戦はもちろんしなかった。
ーーー翌朝。
昨夜ずっと響は俺の寝巻きを掴んだり、体を抱きしめていたが、なんとか立ち直ったようだ。普通に間宮さんのところに朝食を取りに行ったり、朝の作業を手伝ってくれたりした。
九時を過ぎた頃、部屋に第六駆逐隊の、暁、雷、電が遊びに来た。
「響、今日はあたし達暇なの。」
「よかったら、姉妹4人でゆっくり過ごしたいのです。」
「どうかなー?」
「俺は構わんが、響は?」
「わかった。じゃあ司令官、すまないけど失礼する。」
「お、わかった。みんなで仲良くな」
「はいなのです!」
響を連れて出ていく四人。
「…さてと、10時までにとりあえずこれを終わらせて…大淀と昨日のことで待ち合わせだな。」
響が遊びに行ったので、多少ペースが緩やかになったが、その前に色々一生懸命手伝ってくれたので、余裕で終わる。さて、時間もちょうどいいし、大淀の所へ行くことにしよう。
ーーー大淀の部屋 ヒトマルマルマル
ドアをノックし、中に呼びかける。
「大淀?俺だ」
「時間通り、さすが提督ですね。どうぞ。」
ドアが開き、中に迎え入れられる。大淀の隣に、ツインテールの1人の艦娘がいる。
「ありがとな、大淀。で、彼女は…」
「提督さんはじめまして。航空母艦、瑞鶴です。
翔鶴姉のことについてなので…私の知ってること、話したいと思います。」
「瑞鶴か、よろしくな。翔鶴の過去には、何かあったのか?」
「そういう訳では無いんですが、翔鶴姉、前の鎮守府で、いきなり人生というか…なんというか、そういうのの支えを無くしちゃったみたいで…」
「そうなのか。」
すると、大淀が言った。
「昨夜も、翔鶴さん散歩されてましたよ。」
「やっぱり…昨日夜いなかったの…
提督さん、翔鶴姉、こうなってから突然、何もなしに散歩とかするようになって…すごく心配なんだ。
大淀さんからさ、今度の提督は、すごい優しいというか、いい人だって聞いてて…」
「…そんなんでもないが…」
「それでもお願いします、提督さん、翔鶴姉を助けてあげて…」
「私からもお願いします」
そういったのは大淀だった。
「翔鶴さんがこの状態なので、実はここの鎮守府で出撃可能な空母は、瑞鶴さん1人だけなんです。なので、どうしても負担が集中してしまうんです…」
2人に頼まれ、断るはずがない。
「よし、わかった。でもお前も優しいぞ、瑞鶴。
姉を思う気持ち、すごく伝わるよ」
「提督さん…よろしく、よろしくお願いします!」
「わかった。出来る限りやってみるよ。
…で、その翔鶴は…どこだ?」
「…また多分、港の方散歩してると思います。」
「わかった、早速向かうことにするよ」
俺は大淀の部屋を出た。
ーーー港
「…なんか一応釣り道具まで持ってきてしまったな…」
昨日夜釣りができなかったせいだろうか。ただ、そこらじゅう闇雲に探し回るよりかは、港で釣りをしながら待つのが比較的いい判断と言えるだろう。
「よいしょっと…」
俺は竿を構え、釣り糸を海に垂らした。
今はほぼ無風。波も穏やか、空も青い。
書類も先程までの分が今日のほとんどなので、気長に待つには本当にちょうどいい環境だ。
当たりもないが、こういうのも、またいい。
「………………ふう」
ーーーどれくらい時間が経っただろう。日の角度から見て、ちょうど正午近くだろうか?俺ははっとわれに帰った。後ろに…誰かたっている。
「提督…さん、ですか?」
「ああ。一昨日来たばかりだがな。」
「そうですか…。あの、隣、よろしければ、いいですか?」
「ん?ああ、いいよ」
「ありがとうございます」
そう言って、1人の艦娘が、竿を垂らす俺の隣に、俺と同じで海に足を投げ出すように座った。
「…翔鶴、だな」
「…はい。翔鶴型航空母艦の、翔鶴です。
…よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく」
ちなみに、筆者の執筆のお供(燃料)。
カフェオレとココア。缶の。
この二つをよく自販機で買っては飲む。すると不思議と頑張れる。
だって美味しいもん(真顔)。(そうして筆者の財布はすっからかんになるのであった。)
なにはともあれ、ここまで読んでくれてありがとうございます!
感想、評価などお待ちしております!
次も頑張ります!