笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》   作:バスクランサー

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新章突入です。
とりあえず加賀さんのところは少し長くなる予定かもです。
よろしくお願いします。


加賀の章
張り詰めた弦は


「なるほど…」

 そういえば、ここに来てから加賀の姿は見ていない。全体での集まりもなかったせいか、まだ未対面の艦娘も割合的にかなり多い。

「…で、加賀はどんな感じなんだ?」

「そこまで言うのー?」

「いや、そうじゃないと何もできないから」

「だよね…あ、翔鶴姉!」

「瑞鶴、お待たせ。日記帳買えたわ。

 提督も本当にありがとうございます、これから頑張れそうです。」

「お、おお。なら良かった。」

「じゃあ提督、またねー!」

「私達はこれで失礼します、それでは」

「おう、頑張れよー」

 去っていく五航戦姉妹。彼女たちを見送り、身を翻して反対方向へ歩を進めようとして、気がついた。

「…瑞鶴、逃げやがったな……」

 まあしょうがないと割り切り、執務室へ戻ることにした。まだ少しとはいえ、整理する書類が残っている。

 

 ーーー執務室

「ふう…疲れた…あれ、響も帰ってきてたのか。おかえり。」

「ただいま、そしておかえり、司令官。」

「ありがとな響。みんなと仲良くしてきたかい?」

「うん。司令官の方は?」

「こっちも大丈夫そうだよ。翔鶴が立ち直ってくれた。」

「そっか、なら、よかった」

「そうだ。司令官、さっき加賀さんに会ったんだ。」

「まじか、それは本当か?」

 …先程のこともあってか、これは願ってもないチャンスだ。詳しく響に聞き込むことにする。

「それで、加賀の様子はどうだった?」

「それなんだけど…」

 

 ーーー時を少し遡り、第六駆逐隊の部屋

「ハラショー、一抜けだ。」

「ちょっと響!なんであんたそんなにババ抜き強いのよ!?」

「はわわわ…さっきから響ちゃんが連勝しすぎなのです。」

「さっきからビリばかりのレディーの身にもなってよー!」

 第六駆逐隊の四人は、団体部屋でババ抜きに興じていた。何故か先ほどから響が破竹の勢いで勝ち星を伸ばしている。

「ごめんみんな、少しお手洗いに行ってくる」

「あ、はーい。」

「余裕の発言…レディーの私がしたかったのにぃ…」

「こうなったら響に続くのです!電の本気を見るのですっ!」

 電が暁の手札からカードをひく。どうやらペアが揃ったようだ。

「やったのです!これであと一枚なのです!」

「…なんか早くもまたビリの予感…」

 

 一方の響は、お手洗いに向かって廊下を歩いていた。もちろん各階にお手洗いは完備されているが、二階の端の第六駆逐隊部屋からは、近くの階段を下って、一階の小玄関のところにあるお手洗いの方が近いのである。

 響が階段を下り、一階に着いた時ちょうど、小玄関の扉が開き、誰かが建物内に入ってきた。

「こんにちは…」

 予想外だったせいか、反射的に挨拶をしてしまい、相手の正体に気づくのが遅れてしまった。

 はっと見上げたそこには、1人の長身の女性。

 上は白い着物、胸の部分には黒い胸当て。

 下は袴のような群青色のミニスカート。

 手には弓と、矢が数本入った胡禄を持っている。

 一航戦の正規空母、加賀だった。

 クールな響も、鉄仮面の表情という異名を持つ加賀の前に、思わず固まってしまう。

 一方の加賀は、しばらくそんな響をまっすぐな瞳で見つめたあと、おもむろに懐から、メモ帳とペンを取り出す。そしてスラスラと、素早く、しかし丁寧な字をメモに書き、姿勢を響に合わせ、その前に見せた。

「あ…」

 メモにはこう書かれていた。

[一航戦の正規空母、加賀です。

 あなたは、響さんでいいですね?]

 しばらく文面を見ていた響だったが、はっと気づき、加賀の文に対して返す。

「あ、はい。先日ここに配属された、駆逐艦の響です。…はじめまして、よろしく、お願いします。」

 加賀の相変わらずの無表情に、少し怖じ気付きながらも、なんとか挨拶をする。すると加賀は、またもメモ帳になにやら書き、響に見せる。

[こちらこそ、どうぞよろしく。

 私は感情表現が苦手だけど、今はあなたの着任を心から歓迎しています。]

 そして再びメモに書く。

[ごめんなさい、部屋に戻るので失礼します。]

 加賀は響が文面を読み終えてこちらを見上げたのを確かめる。はい、と返事をしたのを見て、彼女は階段を登って行った。

「…?」

 不思議な加賀さんだな、と思いつつ、響は自分のもともとの目的地であるお手洗いへと行った。

 

「ーーーってことがあったんだ。」

「…なるほどな。加賀にはいったい何があったのだろうか…」

「司令官、大淀さんに聞いてみる?」

「だな。この時間なら、事務室の方にいるはずだろう。行ってみるか。」

 俺は響を連れて、事務室へと向かうことにした。

 

 階段を降りて、2人で一階の事務室へと向かう。すると、目の前に一瞬だが確かに、食堂へと入る人影を見た。

「司令官…今のあの人、加賀さんだよ」

「…だな」

 一瞬のうちに見たその姿で、誰かを断定する。

「少し食堂に行って、彼女の様子を見てみるか。」

「…賛成する」

 

 2人で食堂に入ると、間宮さんに声をかけられた。

「あら提督、それに響ちゃんも。いらっしゃい」

「間宮さん、先ほどは美味しい鯛めしをありがとう」

「いえいえ。喜んでいただけて嬉しいです。…あら」

「?」

 間宮さんが何かに気がついたようだ。俺もつられて後ろを振り返ると、そこにはなんと加賀が立っていた。そして、メモ帳のあるページを開き、間宮さんに見せる。

[いつもの特大パフェ2つお願いします]

「わかりました、加賀さん。」

 間宮さんは俺と響に、ご注文が決まったらいつでもどうぞ、と言って厨房へ行った。加賀の方は俺の方を向き、メモ帳にスラスラと書き連ねる。

[一航戦の正規空母、加賀です。

 あなたが着任した提督ですね、どうぞよろしくお願いします。]

「あ、こちらこそ。」

 返すと、加賀が握手を求めてきたので、応じる。変わらず無表情だが、どうやら他の鎮守府で聞いた、ツンツンの加賀さんとはどこかが違うようだ。

[私は赤城さんとこれからおやつにしようと思っています。よければご一緒いかがですか]

 加賀の方からおやつのお誘いが来た。響も良さそうな顔をしていたので、快く誘いに乗ることにしよう。

「ありがとう、じゃあ、お言葉に甘えて」

 加賀が机へと案内する。そこにはもう1人の艦娘がいた。下までまとめずにおろした髪。同じく一航戦の赤城だ。加賀が彼女の隣に座り、俺と響は向かい側に座る。早速俺は赤城にも挨拶する。

「赤城、だね。よろしく」

「こちらこそよろしくお願いします、提督」

 やはり礼儀正しい。さすが一航戦、といったところだろう。

「あ、皆さん、おしぼりを…」

 赤城は各テーブルに備え付けの小さな箱から、おしぼりを4人分取り出した。しかし、手をすべらせてしまったのか、机の下におしぼりが落ちてしまった。

「あら、ごめんなさい…」

「いいよ、拾う拾う」

 俺は机のしたをのぞき込んだ。幸いにもおしぼりはすぐに見つかったが、その時気づいてしまった。

「はい、おしぼり。」

「ありがとうございます、提督。」

「いやいや。

 …赤城、ひとついいか?」

「…はい。」

 赤城は、俺の聞きたいことがまるでわかっているようだった。

「少し言いづらいけど…

 どうして、車椅子なんだ?」

 …一瞬の沈黙。しまった。聞いた瞬間、少しいけないことを聞いたかと後悔した。しかし、赤城は微笑んだまま、

「これですか?…実は昔のある出来事で、足が動かなくなってしまって…慢心はいけませんね、本当に」

 するとそれを聞いた加賀が、赤城の肩を叩き、少しこっちを向いてください、というように合図した。そしてメモ帳に書き連ね、申し訳なさそうな顔で赤城にそれを見せる。こちらからは角度の都合で文面が見えないが。

「…だから、大丈夫ですよ、加賀さん。あれはあなたのせいなんかじゃありません。ほら、来ましたよ」

「お待たせしました〜」

 赤城が気になる言葉をかけ終わると同時に、間宮さんがパフェを運んできた。

 …やはりというか、予想通りのでかさである。軽く1mいきそうだ。これを食べる赤城や加賀もすごいが、これを運んできた間宮さんもまたすごい。

「ふふふ、いつもながら美味しそう…」

「ありがとうございます赤城さん、加賀さんもごゆっくりどうぞ〜」

 加賀はメモ帳を見せる。ありがとうございます、と書かれた文面をみて、ニコリと微笑み返す間宮。

「あ、提督に響ちゃん、ご注文はお決まりですか?」

「あ、じゃあこの、ホワイトチョコケーキで」

「司令官に同じく」

「かしこまりました〜」

 間宮は再び厨房へと入っていった。

「では、4人みんなでおやつタイムにしましょう!」

 赤城がキラキラ状態、というよりむしろギンギラギン状態になっている。これで車椅子がなくて普通に出撃したら、単艦でも姫クラスにS勝利するのではないか、と思えてしまう。大袈裟かもしれんが。

 一方の加賀も、表情こそ大きくは崩さないが、パフェを頬張っては幸せそうにしている。

 やがて俺と響にもケーキがきて、4人で仲良くおやつを堪能した。

 ふぅ〜、とご満悦そうな赤城。そうだ、先ほどのことを謝らなければ。

「赤城、先ほどは無神経な質問をしてしまい、すまなかった。」

「いえいえ、お気になさらないでください。

 …聞きましたよ、大淀さんたちから。」

「へ…?」

 何のことか分からず、思わずマヌケな声を出してしまった。

「皆さんの心の傷、直してくれたと聞きましたよ。明石さんや、翔鶴さんの。」

「いや、俺は何も…」

 少し照れる。響は何故かツンツンと、ニコニコしながら俺をつついてくる。

 一方の加賀は、無表情でこちらを見つめている。

「…よければ、少しお話しませんか?

 ここだと何ですので、場所を変えましょう…

 加賀さん、一航戦部屋に行きましょう」

 加賀がうなずき、赤城の車椅子を押し始める。間宮さんに4人でお辞儀して食堂を出ると、建物内のエレベーターの方へ。

 それに乗って二階へ行き、部屋に案内された。

 

 ーーー二階 一航戦団体部屋

「ここなら気兼ねなくできますかね…あら加賀さん、どうしました?」

[ごめんなさい…私は少々辛いです。

 申しわけないのですが、席を外してきます。

 弓道場にはいるので、用があればそちらにお願いします。]

 このメモを全員に見せる加賀。きっと、かなり辛いことがあったのだろう。

「いいよ、加賀さん。僕も、無理に聞くつもりはないから。」

[赤城さん、提督、気遣い感謝します。

 それでは失礼します]

 そう言って加賀は部屋を出ていった。

「赤城さん。加賀さんは、声が出ないようですが、声帯を摘出してしまったのですか?」

 響の問に、赤城はこう返した。

「いえ、そういう訳では無いんです。私と加賀さんがかつていた鎮守府での過去のとある事件の、ショックによるものです」

「そうなんですか…」

真剣な表情の響。

「ふふふ、提督さんたちが悩みを解決に導くそうなのなら、このことを話さないといけませんね。」

「解決できるかどうか分からんが…。力にはなりたい。赤城が良いと言うなら、話してもらえるか?」

「わかりました。では…」

 赤城はその過去を語り始めた。




というわけで次は加賀さん過去編です。
考えてはあるので出来るだけ早くだしマース。

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というわけでここまで今回も読んでくれてありがとうございました!
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