笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》   作:バスクランサー

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筆者の鼻はだいぶよくなりました。
読者のみなさんも、最近の気温の急激な変化による体調管理には、ぜひ気を付けてください。
ちなみに筆者は大事な行事の日に限って熱出して休んだ経験あります。それも複数回…

それでは加賀さんの過去編どうぞ。←相変わらず唐突



止まった人生の時計

 ーーー第21鎮守府

 加賀は、元はこの鎮守府で建造された艦娘だった。

「…ここは?」

 目が覚めて気がつくと、自分は何かに寝かされていた。そのままあたりを見回すと、2人の女性がそばに立っている。一方は笑顔ではしゃぎ、もう一方は微笑んでこちらを見下ろしているのがわかった。

「すごいよ赤城さん!建造加賀さんが出たよ!」

「まあ…これで一航戦コンビが揃いましたね、提督。

 はじめまして加賀さん、航空母艦、赤城です。

 これからよろしくお願いしますね。」

 赤城ーーーその名を聞いた加賀は、自分の存在、そして名前といった全てを思い出し、改めて目の前にいる赤城を見つめる。心の中は、喜びでいっぱいだ。

「赤城さん…!会いたかった…!

 よろしくお願いします…!」

 思わぬ再会に喜びあった2人。その2人を、提督は温かく見守っていた。

 

 そこの提督は、女性だった。

 もちろんホワイト鎮守府で、全ての艦娘のことを平等に気遣い、内外の信頼も高かった。

 そしてそんな彼女のもとで働く赤城は、とても練度の高い、第一艦隊のエース級の功績をたてていた。

 そこにやってきた加賀。提督が弓道の名人だったのもあり、建造されたばかりの加賀は、早速彼女や赤城による、発着艦訓練などの指導にあずかることになった。

 

「加賀さん、それではいけません!もっと真っ直ぐ!震えは禁物ですよ!」

「足はこうです!意識をもっと集中させて!」

 訓練場での提督は、いつもの優しい姿とはまるで違って、鬼教官のようだった。少しでも姿勢や狙いがずれたりすると檄が飛ぶ。まだまだ練度の低い加賀にとって、それはかなり厳しい訓練だった。

 しかし、その成果が出始め、次第にうまくできるようになると、加賀の練度もめきめき上がっていった。提督はその成長速度に驚くとともに、とても喜ばしく感じていた。もちろん訓練が終わると、提督はいつもの優しい姿に戻り、疲れ果てた加賀にお茶や軽食を差し入れてくれた。そんな2人を、赤城も一番そばで見守っていた。

 そしてそんな提督に加賀が、普通鉄の如し変わらない感情表現が豊かになっていくこと、互いに同性ゆえ恋心は抱かなくても、それと同等の強さを持つほどの信頼心を抱くようになるのに、そう時間はかからなかった。

 そんなある日ーーー

 

 

 第21鎮守府に、一本の電話が入ってきた。

 加賀が受話器を受けとると、相手の男性が、提督にかわって欲しいという。加賀は近くにいた提督に、相手の言う通り受話器を渡した。

「はい、お電話かわりました、第21鎮守府の提督です。

 …あら、久しぶり!どうしたの?

 …うん、うん。ちょうどいいわ、こっちもこういう形で一回やってみたかったの!ありがとう!

 …オッケー、引き受けたわ!

 …日時と場所は?…ふんふん、わかりました!

 はーい、楽しみにしてまーす!じゃーね!」

 表情からして、やけに楽しそうに相手と会話した提督。受話器を置いた彼女に、気になった加賀は話しかけた。

「…今の、どなたですか?」

「あ、幼なじみが私と同じように提督やっててね。演習をいま申し込まれたの。」

「そうでしたか。」

「相手の方は、対空演習や航空戦艦の強化などを重点的に今やっているらしくてね。こっちも空母勢の力試しのいい機会だし、だから二つ返事でオーケーしちゃったの。

 日にちは3日後で、場所は相手が既に深海棲艦から奪還した海域の、泊地の島なんだって。」

「なるほど…」

「そうだ!加賀さんは出撃はたまにするようになったけど、演習はまだやったことないよね。せっかくだし、参加してみる?」

「…!もちろんお願いします。

 さすがに気分が高揚します。」

 こうして、加賀の初演習が決まったのであった。

 

 ーーー3日後 某泊地にて

「マー君!久しぶりだね!元気そうでよかった!」

「里ちゃん!そっちも元気そうだね!」

 再開を喜び会う2人を見つめる加賀。一緒に演習に参加する予定の赤城が、加賀に紹介する。

「あの人が、うちの提督の幼なじみで、第25鎮守府提督の、雅彦さん。とっても優しいのよ。」

 加賀は頷きつつ、改めて彼を見た。

 少しポッチャリ気味の体型に、坊主頭。ルックス的にはあまり人気はなさそうと思ってしまったが、彼が優しいことは直感ですぐにわかった。自分の艦隊の艦娘も、相手に当たるこちらの艦娘も平等に気遣い、話を楽しんでいる。そして、常に見せている素敵な笑顔。

「遠距離恋愛じゃないかって言うのは、うちもあっちも有名な噂なのよ…」

 赤城はいたずらっぽく微笑んで加賀に耳打ちしながら、話の輪に加賀を連れていった。加賀に気づいた相手の提督が挨拶してくる。

「はじめまして、第25鎮守府の提督です。

 今日はわざわざありがとう、よろしくね。」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 笑顔で答える加賀。相手提督も笑顔で返す。

「さて、僕達はボートで海上から様子を見よう。

 そっちの準備が整い次第、演習を始めようか。」

「はい!」

 こちらの提督も元気よく返す。そして…

「マー君お待たせ!準備万端だよ!」

「よし、じゃあお互いベストを尽くそう!

 位置について……はじめ!」

 相手提督の号令で、演習が始まった。

 

「皆さん、準備はいい?行きますよ!」

 赤城の声で、一斉に動く、加賀たち第21鎮守府の艦娘たち。今回の演習は、お互い4対4での特殊陣形となる。第21鎮守府のメンバーは赤城、加賀の他、軽空母の瑞鳳、龍驤。対する相手方、第25鎮守府は、航空戦艦の伊勢、扶桑、さらに駆逐艦の睦月に、重巡洋艦の摩耶といった布陣である。

「敵艦隊見ゆ!第一次攻撃隊、発艦始め!」

「ここは譲れません…!」

「数は少なくても、精鋭だから…!」

「艦載機のみんなー、お仕事お仕事〜!」

 今回の演習の艦隊旗艦を務める赤城が、全員に発艦要請を出す。空に飛び立った矢や紙人形が、次々と艦載機に姿を変えて相手艦隊に向かっていく。

「こっちもいくよ。扶桑さん、私と艦載機を飛ばして、制空権喪失を少しでも妨害して!睦月ちゃん、摩耶さんは対空射撃を頼むわ!」

「了解です、伊勢さん。艦載機発艦始め…!」

「睦月、オメーはあっちから来るやつを落とせ!俺はこっちを引き受ける!」

「わかりました、摩耶さん!」

 相手艦隊の旗艦伊勢も、的確な指示を仲間に出す。空母4隻に対して、艦載機数で劣る航空戦艦2隻。しかし、残りのメンバーの連携プレーでなんとかダメージを減らす。

 それをボートで見守っている、提督2人衆。

「すごい!マー君のとこの対空戦能力、すごいよ!」

「いや、まだまだかな…でも、里ちゃんのとこの空母さんたちも、皆優秀だね、噂に聞いたとおりだ。」

「う、噂?」

「ああ。第21鎮守府は、航空戦力が高いことで有名なとこだし。僕のところは航空戦艦メインだし、少しでも参考にしたくて。今回の演習の目的の一つでもあるのさ。」

「そ、そんな…。照れるよー。」

「はははは。それにしても、みんな動きがいいなぁ…」

 演習とはいえ、一進一退の攻防が続く。見守る提督たちも、握る拳に汗がわく。しかし…

 そんな戦いに、招かれざる刺客が忍び寄っていた。

「みんな、そこだよ、がんばれー!」

「負けるな!常に上空への警戒を怠るなよ!…!?」

 ふいになにかに気づいた、第25鎮守府の男性提督。

「マー君…?」

「…まずい!!みんな退避しろ!早く!

 里ちゃんも伏せて!!」

「え!?なに、なに!?…はっ!」

 第21鎮守府の女性提督も気づいたようだ。2人の言葉を聞いた艦娘たちが思わず攻撃の手を止める。

「深海棲艦の機動部隊…!?まずい、奇襲だっ!!」

 言うが早いが、その時既に深海棲艦の艦載機が演習真っ只中の海域に侵入していた。

「全艦隊に次ぐ!演習を中止し、至急退避せよ!繰り返す、演習を中止し、退避せよ!」

 男性提督が急いで退避命令を出す。しかし、それは余りにも遅すぎた。

「だめだよマー君、もうここは相手の射程圏内に入ってる!」

「ちくしょう、応戦するしかないか…!?」

 しかし仮に応戦したとしても、今ここにいる艦娘たちが装備しているのは演習用のものだ。実弾と比べて殺傷能力が明らかに劣ることは、目に見えている。

「どうしようマー君、演習用の装備じゃ応戦しきれない!」

「とにかくまず、この船を泊地の港につけよう。確かこの泊地には、非常用の隠し備蓄倉庫があったはずだ。実弾もそこにある。とにかく陸に上がったら、僕が救難信号を送るから!」

 彼はボートを操りつつ、伊勢と睦月に、倉庫の装備を取りに行くよう呼びかける。

「伊勢、了解しました!」

「睦月も同じく了解しました!」

「待って、瑞鳳、龍驤!あなた達も2人の護衛について倉庫へ!」

「わかりました!」

「がってんや!」

 4人の艦娘が、倉庫へと向かっていった。

「皆さん、4人が戻るまで、なんとか耐え抜きましょう!」

「はい!」

 赤城に激励された、加賀、扶桑、摩耶が、必死に戦う。しかし、相変わらず不利な状況に変わりはない。

 一方の提督たちは、なんとか陸に上がり、泊地の小さな建物に入っていた。

「…よし、これで救難信号を送れた!とにかく助けが来るまでここで待とう。」

「マー君…」

「大丈夫、必ず守ってやるから…!」

 男性提督が必死に女性提督を励ます。しかしーーー

「まずい、この建物に敵機動部隊が向かってる!」

 それを言い終わる頃にはもう、艦載機は建物の目の前に迫っていた。

「やばい!里ちゃん、ここを出るよ!早く!」

「えっちょっ…きゃぁぁぁあ!!」

 艦載機の機雷が建物近くに落ち、建物にもその余波が襲いかかる。

「!?提督!」

「おい!今のはまずいぞ!」

「提督…無事ですか…!?」

「あぁ…!」

 4人は思わず一瞬固まってしまった。迎撃そっちのけで。やがて煙が晴れると、その中をゆっくり、よろよろと動く2つの人影が見えた。提督たちだ。

「よかったぜ…」

 摩耶が一安心、という風にため息をつく。しかし、彼らもまた狙われているのだ。

「まだ安心するには早すぎます。加賀さん、ここは私達に任せて、提督たちの護衛についてください!」

「赤城さん…わかりました!」

 赤城は加賀を護衛に遣わし、扶桑と摩耶の3人で必死に、敵艦載機の機銃弾の大雨に耐え抜く。

「提督、私がお守りします!」

 加賀もなんとか2人の元に辿り着く。足の艤装を解除して陸に上がり、なんとか男性提督に泊地の他の安全な場所を聞き出す。しかし、敵艦載機もその後を追ってきていた。そして、すぐ近くに機雷を投下した…

 …ドカーーーン!

「あっ…!」

 爆発の衝撃波で加賀はふっ飛ばされたが、幸いすぐ近くの茂みがクッションになり、離れた距離と傷は最小限に抑えられた。しかし、はっとする。

 ーーー提督は無事か。

 その思いが立ち上がったコンマ0.数秒後に脳内をよぎる。すかさず煙の中にその姿を探す。すぐに見つかる。

 ーーー提督たちは大怪我を負っていた。

 今の爆炎と熱波による全身のやけど。さらに機雷の破片が服を裂いたのか、白い提督服はところどころ破れて赤く染まっている。

「提督…!!」

 そんな彼らの姿が目に入った瞬間、加賀の心に一気に、たった一つの感情が、しかし津波のごとく強く大きく押し寄せた。

 自分を成長させてくれた師匠を、そしてその大切な人までも大きく傷つけた深海棲艦への、憎しみ、怒り。

 彼女の理性は、堕ちた。

 彼女の目は真っ赤に染まり、冷静な女戦士は一瞬で本能のままに暴れ狂う猛獣の如く変貌する。

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 ここから、彼女の記憶は数分間に渡って喪失している。睦月と伊勢、さらに瑞鳳と龍驤が実戦用の装備を取ってきて、駆けつけた第25鎮守府の救援艦隊との連携で敵機動部隊を追い払うまでの間ーーー

 




今回もここまで読んでくれてありがとうございました!
評価や感想ぜひよろしくお願いします!
それではまた次回です!
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