世界はきっと優しくて   作:たたた

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お久しぶりです。久しぶりすぎて色々おかしい所があるかもしれませんが、どうぞよしなに


本編
第一話


 朝、いつもと変わらないそんな朝。中学の頃は、これからもこれまでと同じように無為に時間が流れていくんだとこれからに希望を抱くこともなかった。何かを成すことが出来るような気概もない、部活をやっている連中みたいなやる気もなかったから取り敢えずそれなりの高校に入った方が良いだろうという事で光坂高校へ進学した。光坂高校は文武両道を目指しているらしく、スポーツ推薦でかなりの生徒を入れているようだ。高校に入ってからつるむようになった二人はスポ薦でここに入ったようで、定期テストの前には赤点をとらない様にと勉強を教えることもある。

 朝ごはんを作ろうと思ったが、冷蔵庫の中身が無かったため登校中に買うことにした。夕飯の食材も無いがまぁ何とかなるだろう……主に美佐枝さんに頼み込む形で。

「いってきます」

そう言葉にするが、俺に返事をしてくれる人は居ない。俺はいわゆる孤児であり、高校入学を機に施設から独り立ちした。俺の両親は俺が幼かった頃に交通事故に遭ったらしい。

 

 

「ちぃーっす、クロワッサン買いに来やした~」

「おう、お前ぇか。クロワッサンだけじゃ足りないだろ?おら、早苗のパンも買っていけ」

そう言い、早苗さんのパンをトレーに入れようとするアッキー。今回のは外見からしてやばそうなオーラが漂っている。

「いやだよ、今日はクロワッサンしか食べないって決めてっから。愛する妻のパンなんだからアッキーが食べれば良いだろ」

「これを食べろだとぉ?早苗が命の俺でもこんなゲテモノ食える訳ねぇだろ。だから、ホラ、買ってけそれにどうせ売れ残るんだしな……」

「ちょっ、アッキー……」

アッキーの後ろには涙を浮かべた早苗さんが居た。あぁ、またあの恒例行事が見られるのか……今回は何個口に入るんだろうか。

「私のパンは…私のパンは…古河パンのお荷物だったんですねーっ!」

「俺はッ!大好きだーッ!!」

 

「おぉ~、今日は3個かぁ、あの口どんだけ入るんだ?あっ、おはようございます、渚さん」

「おはようございます、三浦さん。えーっと、クロワッサンが二つとメロンパンが一つで360円です……ちょうどお預かりしますね」

「渚さん、学校はどう?大丈夫そう?」

「仲の良かったお友達もみんな、卒業しちゃいましたから」

そう言い、少しさみしそうな表情をする渚さん。

「途中まで一緒に行きますか?」

なんとかしてあげたいとは思うけど、クラスが違うし俺は学校じゃ不良扱いされてるからどんな不利益を与えてしまうか分からないため、なかなか踏み出せずにいる。だから途中まで、なんて中途半端な誘いになってしまう。

「お気遣いありがとうございます。お誘いは嬉しいんですけど洗い物が残ってしまっていて、一緒には行けないです。ごめんなさい」

 

 

 

そう渚さんに振られてしまったため、一人でパンを食べながら登校する。そんな俺を見て周りの奴らが『うわっパン食いながら登校とかどんだけ必死なんだよ』とか言ってくる気がするが疲れてるせいで聞こえる幻聴に違いない。きっとそうだ、そうとなれば今日のバイトは休んだほうが良いな。何で朝から陰口言われなきゃならないんだ?まぁ、起きれなかったら朝飯抜きになってたからちゃんと起きれて良かったんだけど。つーか普通に登校しただけで陰口叩くとか俺のことどう見てんだよ…取り敢えずあそこの眼鏡は後で覚えてたらシメることにしよう。それにしてもあいつらまだ来ねぇだろうしなぁ……今日は学校に着いたらすぐ寝よう、それがいい。

 

「三浦くん、おはようございます。今日はちゃんと朝から来てて偉いです」

教室に入るとクラス委員である藤林椋に話しかけられた。つーか朝から学校来るのって普通だよな?

「偉いかぁ?」

「偉いです。岡崎くんと春原くんはまだ来てませんし」

「朋也はまだ良いけど春原を引き合いに出すのはやめてくれ……なんか悲しくなるから」

「はい、ごめんなさい」

そう言い、俯いてしまう藤林。なんか罪悪感あるなこの雰囲気。全ては春原って奴のせいなん

だ。だからクラスの皆俺を白い眼で見るのは止めてくれ。

「謝んなくていいって、俺のこと心配してくれてんだろ?それなのに謝れると居心地悪いしさ、それにこれから俺たちは藤林に迷惑掛けることも多いだろうしまぁ、先に謝っとくな」

「気にしないでください。私なら大丈夫ですから」

「そうか?まぁ、これから卒業までよろしくな藤林」

藤林が自分の席へと戻ったと思ったら一限が始まっていた。つーか一限から数学とか俺を寝かせに来てるよな?つーことで寝ることにする。言い訳っぽく聞こえたかもしれないがそれは気のせいだ、多分。

 

 目が覚めると、目の前には朋也と春原が居た……寝惚けてるのかな、死んだはずの春原が見える…春原、成仏してくれ…

「なんで寝起きの人にこんな事言われなきゃなんないの僕、ねぇ岡崎も何か言ってやれよ」

「おぉっ?なんだ?今、春原の声が……成仏してくれ南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……」

「そうなるって分かってましたよ」

そう言いながら泣いている春原、分かってんなら振らなきゃ良いのに変なところで律儀な奴だな。

「よ、朋也と春原おはよ」

「今日は朝から来てたんだって?僕には無理だね」

「そこで胸を張って宣言するあたりやっぱお前ってスゲェわ」

「えっ、そう?やっと僕の凄さに気付いたの?」

「あぁ、お前の凄さをもっと見たいからそこら辺でスカートめくりして来い」

「うん!僕の凄さ見せ付けてやるぜ!見てろよ紘太!」

そう言い残し、アイツは帰らぬ人となった……

「お前、相変わらず春原に容赦ねーのな」

「ん?まぁアイツ面白いからな。暇だし春原の部屋行くか?」

「そうだな多分アイツは先帰っただろうしな」

そう言い、朋也と一緒に春原が住んでいる学生寮へと向かった。

 

 

学生寮に着いた俺たちを待っていたのは、ラグビー部にボール代わりにされている春原だった。

「岡崎!紘汰!助けてくれ!」

「メンドイからパスな。助け求めるなら朋也にしとけ」

「岡崎ィ!」

「アホが感染るから、ヤだ」

「あんたらメチャクチャ薄情ッスね」

そんなやり取りをしていると奥から美佐枝さんがお玉をぶん回しながら飛び出してくる。

「全くあいつらは……」

「お疲れ様、美佐枝さん」

「できれば止めて欲しいんだけどね?紘汰?」

「いや〜俺には無理かな。それよりさ、ちょっといいかな?」

「ん?何よ?」

そう訝しげに俺へと身を寄せる美佐枝さん。こういう所が思春期の男子を勘違いさせるってことには気づいてないんだよな……。

「いや〜実はさ、今日の夕飯の材料切らしちゃっててさ出来れば…その、ですね?」

「はぁ、分かった作ってあげるわよ。冷蔵庫の中身ぐらいちゃんと把握しなさいよね、全く……」

「ごめんごめん、でも自分で作るより美佐枝さんの作ってくれる料理のほうが美味いしさ」

「はいはい、ありがとね。じゃあご飯出来たら呼びに行くからちゃんと来るのよ?」

そう言い残し、美佐枝さんは厨房へと向かった。

 

 

「紘汰、相変わらずだね〜そんなに好きなの?」

「あぁ?…なんでか知んねぇけど惹かれるんだよな」

「僕も惹かれるよ!特にあのおっぱいっ!」

「おい、春原それ以上は…」

岡崎が必死に春原のおっぱい談義を止めようとしているがもう遅い。美佐枝さんのことになるとどうしてか歯止めが利かなくなってしまう。つーかコイツどんだけおっぱいのこと好きなんだ。

 

「そういや春原、さっきラグビー部にやられて悔しく思ったんじゃないか?」

「えっ、あぁ、まぁそうだね。…くそっラグビー部め…」

「おいおい、そんな小さい声じゃあいつらに聞こえないだろ?そういうのは腹から声出さ

ないとダメなんだよ、こんな風にな」

「クソっ!ラグビー部めぇぇぇぇ!!」

 

「今俺達の悪口言ったやつ誰だぁぁッ!」

 

「ひぃっ!僕を殺す気か!?」

「いや〜春原なら生き返るだろ?ゾンビみたいにさ」

「人をゾンビみたいとか言わないでもらえません?!……岡崎は僕の味方だよな!」

「あぁ、派手に散るのも良いと思うぜ!」

「なんでそんなにいい笑顔なんですかね……まぁ、確かに卒業前にそういうことするのも良いかもね。岡崎、紘汰、僕の背中は任せるぜ!」

「ラッキー、ザックリ行くな!」

「じゃあ俺は春原の目にレモン汁入れるな!」

「来るなよ行けよ!あと紘汰は何でそんな絶妙に嫌なことやってくるんだよ!お前ら僕の味方じゃないのかよ!」

「だって俺たち、なぁ?」

そう言い、朋也と呼吸を合わせる。

「「ラグビー部の味方だぜ?」」

「何でだよ!」

「そんときだけな?」

「あぁ、俺らは勝つ方に付くからな」

俺と朋也はいい笑顔で春原に微笑みかける。若干呆れたような表情をしているがいつものことだ。

「はぁ、アンタらの相手真面目にやってた僕がバカみたいじゃんか……」

 

 

「紘汰、ご飯できたからそろそろいらっしゃい」

 

そう美佐枝さんが呼びに来てくれたため、春原の部屋から抜けて食堂へと向かう。こんな風に美佐枝さんに夕飯を作ってもらうようになったのはいつからだろうか。最近は自炊もちゃんと出来るようにと頑張ってはいたが、結果が伴わなければ意味はないしな。

 

 

「今日はごめんね、食材切らしちゃって……」

「いいのよ、それに最近ちゃんと自炊出来ているみたいだしたまになら大丈夫だから。それより早く食べちゃいましょう?」

そう言い、微笑んでくれる美佐枝さん。

 

「そうだね、それじゃいただきます!」

 

 

そう言うなりご飯にがっつく絋汰。こいつにこんな風にご飯を作るようになってからどれくらい経っただろうか。最近はちゃんとご飯を作ってたみたいだけど、たまにこうして甘えられるのも悪くないと感じちゃうのは何でだろう。きっとこいつにあてられてるんだと思うけど、こいつならいいかなって思うことも時々……はぁ、何考えてるんだろ私。もう、あきらめたはずなのにね……

 

「ふぅ、ごちそうさま。今日もおいしかったぁ」

「お粗末様、お茶も飲んでいく?」

「もちろん!美佐枝さんからの誘いは断れないしね」

「ばか言わないの、それにこんなおばさん相手にしなくたって学校に可愛い子とかいっぱいいるでしょうに……」

そう困ったように俺を見て溜め息をつく美佐枝さん。

「そう?美佐枝さんは自分を過小評価し過ぎだと思うんだけど。それに美佐枝さんほど素敵な

女性に会ったことないよ?」

「っ……紘汰の中で私の評価が高いのは分かったから。私の話より、学校はどうなの?」

「なんか話逸らそうとしてない?……まぁ、フツーだよフツー可もなく不可もなく山も谷もない感じ?」

そうして美佐枝さんとの雑談に花を咲かせた。話を逸らしたときに美佐枝さんの頬が淡い桜色になっていたのは気のせいだとは思えない。それにしても美佐枝さんの照れた表情は見惚れて時間を忘れるほどだった。

 

 

「今日の夕飯の分は明日の放課後玄関前の掃除で良い?」

「ん~そうね……明日はお風呂場の掃除してくれない?あそこ結構広いから一人だとどうしても出来ないところとかあるから。そうすると今日の分だけじゃダメね、お昼と晩御飯どっちがいい?」

「昼休み抜けてくるからお昼ご飯でお願いします!」

「ん、じゃあお昼作っとくわね。何かリクエストがあったら出来る範囲で作るけど、何かたべたいのとかある?」

「特に無いかなぁ……美佐枝さんの料理なら何でも食べるし。正直美佐枝さんと一緒に昼飯食べられるのが一番嬉しいし」

「そんな恥ずかしいこと真顔で言わないの。私なんかを勘違いさせても何にもならないわよ?」

「美佐枝さんにしかこんなこと言わないのになぁ……。まぁいいや、皿洗ってくるから先戻っててよ」

「ん、じゃあお願いね」

 そう言い、美佐枝さんは食堂から出ていく。結構本気だったんだけどなぁ…まぁあと一年あるし。そう言ってもう二年経ってんだけどな。はぁ……

 

 

「結構本気、ねぇ」

 

食堂から帰ってくる時に聞こえた絋汰の呟きが頭で響いてしまう。絋汰の好意には気付かない振りをして逃げ続けてるこんな女に本気により、他の女の子に本気になれば、そうなれば私の胸の痛みも、こんな罪悪感も感じなくなるだろうか。そう思うけど、しばらくはこんな関係を続けたいと思うのはきっと私の我が儘だから。だから、こんな女に本気になるな。きっと絋汰にはもっと素敵な出会いがあるはずだから。だから私も本気にしちゃ駄目だ。絋汰が高校を卒業したらきっと私の前から居なくなるから。私は昔好きだった人になるんだから。でも、少し期待しちゃうのは何でなんだろう、きっと絋汰にあてられたせいね。こんな風に思うなんて少し前なら考えられないもの。

 

「結構本気、か……」

 

信じてみたい、そう思うけれど信じて、期待して、裏切られる悲しさはもう味わいたくない。こんなズルい女でもそれでも好きだって言ってくれるなら……なんて思うのは卑怯かしらね?

 

 

 

 

 




週一更新できたらいいなぁ…

個人的に渚ちゃんをさん付けで呼ぶのって違和感あるからそこら辺は後で変えるかもしれない


美佐枝さんに膝枕してもらいたい人生だった……
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