世界はきっと優しくて   作:たたた

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第三話

 ──私もあなたのことが好きです。

 

 そう言い、少し恥じらいながら唇を重ねてくる美佐枝さん。告白が実ったことへの安堵と、美佐枝さんにキスをされた驚きで感情がない交ぜになり、何故だか涙が零れてしまう。

 

ふと、唇が離れる。それと同時に彼女の温もりも離れていってしまうようで、それがたまらなく嫌で彼女に口付けをしてしまう。その時に少し驚いた顔をしてから微笑み、俺を受け入れてくれる美佐枝さん。そんな彼女がたまらなく愛おしく感じられて、先程よりも長い間キスをし、もっと美佐枝さんを感じたくなり同時に強く抱き締めてしまう。

 

「っはぁ……もう、がっつき過ぎよ?」

 

「ごめん……でも美佐枝さんがキスしてくるのがいけないと思うよ?すっげぇ嬉しかったけど」

 

「何ばか言ってんだか……」

 

 そう呆れたようにため息をつく美佐枝さんだったが、どこか安心したような表情で少し気になってしまい、それが表情に出ていたのだろう、美佐枝さんがくすりと笑った。

 

「昔、同じようにキスした子が居なくなっちゃったことがあって……だからちょっと怖かっただけよ。それにあなたとのキスもちょっとしょっぱかったし、また居なくなるんじゃないかって……。ばかみたいよね。でも、紘汰にキスをされて抱き締められて……私も嬉しかったから」

 

 だから柄にもなく安心して……。まぁ、こんなこと面と向かってなんて言えないけどね。だからだろうか、彼に身体を預けて抱き締められるとどこか安心してしまって彼をもっと感じたくなり、彼に身体を密着させてしまう。……こんなこともう誰ともやらないと思っていたのに、そう思うけど身を寄せるほど彼の鼓動が大きくなっていって、それと同時に私の中での彼への愛おしさも大きくなる、そんな不思議な感じがする。……膝枕ぐらいなら大丈夫よね?

 

「美佐枝さん?そんなにくっつかれるとですね……」

 

「私に抱きつかれちゃ迷惑だった?」

 

「そういうことじゃなくてさ……俺も男の子なわけでさ」

 

「いいわよ、紘汰なら」

 

 そうあっけらかんと言われてしまっては何も言えなくなってしまう。そんな風に硬直していたせいかいつの間にか美佐枝さんを膝枕している態となっていた。

 

「あの〜美佐枝さん、膝枕はどっちかって言うとされたい方なんですけど」

 

「後でしてあげるから。……寝ちゃったらごめんね?」

 

「冗談だよね?……美佐枝さん?」

 

 そう声をかけるが返ってくるのは規則的な息遣いだけだった。……気がつけばもう時計の針は夜中を指していて、窓の外からは小さく雨音が聞こえている。思えば今日一日で美佐枝さんとの関係が大きく変わったのは昨日までじゃ考えられないことだし、未だに実感がわかないのも事実だ。……とりあえず明日の朝に痺れるであろう足のことはなるべく考えないように自分も目を閉じた。

 

 朝、目が覚めるとそこにはエプロン姿の美佐枝さんがいた。あぁ、これは夢だなと覚醒しきっていない脳みそで考える。どうせ夢ならキスぐらいはしても……なんて考えるくらいには思考がぶっ飛んでいた。だからだろう、徐ろに立ち上がると何故か痺れている足を無視して美佐枝さんにキスをしたのは。夢なのにこんな感触までリアルなのかと自分の夢に対して尊敬までしかかっていた時に美佐枝さんにさらにキスをされて思考が止まってしまい、それと同時に脳が覚醒したのは副次効果的なことだと思う。それにしてもなんで甘い匂いがするんですかね……。

 

「起きてすぐキスしてくれるなんて中々情熱的じゃない?」

 

 そうどこか嬉しそうに吐息のかかる距離で問いかけられてしまう。

 

「寝ぼけてたみたいでさ、おはよう美佐枝さん」

 

「ん、おはよう。起きたと思ったらこれでびっくりしちゃったわよ?」

 

「それについては弁解のしようがないね。夢だと思ったからとりあえず、みたいな?」

 

「とりあえずで起き抜けにあんなことしないでほしいんだけど?」

 

「まぁまぁ、美佐枝さんも拒まなかったことだし良いじゃん。俺も朝から幸せな気分だし?」

 

「じゃあそういうことにしといてあげるわ、朝ご飯出来たから顔洗ったら来なさいね」

 

 そう言い残し美佐枝さんは食堂に向かっていった。誰かと朝飯を食べるなんて施設を出てからあまり経験していないし、その上相手が美佐枝さんだっていうのは誇張なしに今日は良い日だと思う。

 

 ……ということを食事中に美佐枝さんに言ってみたらなぜか頭を撫でられて抱きしめられた。そういえば昨日からよく抱きしめられてるあぁと若干酸欠になりながら考える。美佐枝さんの母性の塊に顔を埋められて幸せなんだけど、若干苦しくなるのはしょうがないんだろうか。なんだか昨日から頭がまわらないし、時々意識が遠くに行くような感じでまだ昨日のことが消化しきれていないんだと思う。二年間も片思いをしていた相手と一晩で恋人になったから仕方ないといえば仕方ないだろう。それにしても美佐枝さんの淹れてくれるお茶は美味い気がする。

 

 そんな風にゆったりと過ごしていたが、時間の流れというのはどんな時でも平等に過ぎていってしまうもので気がつけば遅刻ギリギリの時間となっていた。行きたくないというかこの時間をもう少し味わいたかったから色々ゴネてみたけど元生徒会長様には敵わず、仕方なく学校に向かうことになった。そのまま向かうのもなんとなくシャクに思えたので、未だに寝ている春原の顔にアイツのパンツをのせておいた。きっと目覚めが良くなって俺に感謝したくなって感動のあまり涙を流すことだろう。

 

 

 高校に遅刻しなかったのは良いけど、あの二人は今日も遅刻なようで、授業をサボっても誘う相手もいないし昼寝に勤しむことにする。変な体勢で寝たせいで寝不足なんだよな、だからしょうがない。

 

 目が覚めたら昼休みとなっていた。今日も俺の体内時計は絶好調のようで何よりだ。ざっと教室を見回したところ、男子の数人のグループ、女子グループで分かれていたため、若干起きるのが遅かったようだ。この状態で購買に行ってもろくなパンが残っていないと思い、ふて寝を決めようとした時に朋也が登校してきた。

 

「よう、おはよ」

 

「おう、お疲れ。デコ赤くなってんぞ?」

 

 そう言いながら自分の席に腰掛ける朋也。さてもうひと寝入り、そんな折藤林が朋也に近づいてくるのが見えて面白そうなことが起きる気がしたため、もう少し起きている決意をした。

 

 最初は朋也の遅刻に対するお小言のようなものだったが、今は朋也を占っているらしい。なんでも明日起きることらしい。その占いによると朋也は明日遅刻するそうだ。……なんて不憫なんだ。

 

「朋也、強く生きろよ」

 

「その哀れなものを見る目をやめろ!で、なんで遅刻なんだよ?」

 

「学校に来る途中で、優しい女性と、ロマンチックな出会いをして、時の経つのを忘れて、それで遅刻してしまいます」

 

「イヤに具体性抜群だなぁ……」

 

「乙女のインスピレーションです!」

 

 そう言いながら朋也に身を乗り出す藤林。こんなにあざとい生き物がこの地球上に存在したのかと驚愕していると廊下の方から怒鳴り声のようなものが聞こえてきた。それと同時に辞書のような飛来物が朋也の頭上を高速で過ぎ去っていった。毎度の事ながらあんなの当たりどころが悪けりゃ一大事になると思うんだよなぁ。そんなものを投げ込んできた藤林杏は今は朋也に突っかかっている。妹に対して過保護というか何というか……。

 

 杏が勘違いだと認めて藤林と昼飯を食べに教室を去ったため、ここに平和が訪れたわけだ。そんな貴重な時間を無駄にしないために俺は再び夢の世界へと旅立った。

 

 

 目が覚めると後ろの席から寝息が聞こえてきた。どうやら春原が登校してきたらしい。まぁ、昼休みぎりぎりとかそんな感じだと思う。それにしてもコイツは本当に呑気というか先のことを考えないというか、とにかく悩みがなさそうで羨ましい限りだ。……今日は珍しく七限が終わる前に目が覚めてしまったらしく、学校が終わるまで長い時間がかかったような気がする。

 

 その時間で美佐枝さんとのこれからとか色々小難しく考えていたせいで、放課後美佐枝さんに会うのが気恥ずかしくなってしまった。

 

 とりあえず周りにバレたらまずいってことは頭に入れておかないとどこかで墓穴を掘る気がするし、美佐枝さんにも迷惑を掛けることになるからこれは徹底しておこう。……それにしても学生寮に行きたくないって思う日が来るとはなぁ。

 

 

 俺の顔赤くないよな?とか春原と朋也に聞きながら寮への道を歩いていく。聞く度に、またかコイツっていう顔をされたせいで段々落ち着くことができたから、やっぱり持つべきものは友達って感じだ。

 

 そんな風に思ってたのに春原の部屋から半強制的に閉め出された。何でも昨日の夜帰ってこなかったのは怪しいから外で凍え死ねらしい。春だから凍え死ねないと春原に指摘したら入れてくれると思ったけど、風呂掃除の約束があったのを思い出したため、大浴場へと向かわざるを得なかった。

 

 

 この廊下の先に美佐枝さんが居ると思うと嬉しいやら、恥ずかしいやらであまり気が進まないのは何でだろうか。……俺の髪型変じゃないよな?急に心配になってきた。




大 遅 刻
一月も開いて申し訳ないです。

多分後で加筆とかすると思われます。
誤字、脱字その他文脈のねじれとかある気がしますが、某春原くん曰く登板間隔が開くとどんなに良いピッチャーでも打たれるんで、まぁそう言うことにしといてください。
最初の数行を書いては消し気づいたらこんな時期になってた。(言い訳)


年内にもう一回か二回は更新したいけどどうだろうなぁ…

今回の美佐枝さん→キスした後の潤んだ瞳!桜色に染まる頬!もう最高可愛い
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