世界はきっと優しくて   作:たたた

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第六話

 

 

 ──美佐枝さんの部屋で迎える二度目、もっと言うと二連続目の朝。俺は未だソファの上から起き上がれていない。それは何故か、そう!美佐枝さんが俺の頭を撫でているためである!幸せそうに微笑みを浮かべる彼女の姿を朝から見られて幸せだし遅刻しても、まぁいいか。

 

「……紘太、起きてるでしょ?」

 

 どうやらバレていたらしい。……でも、もうちょいこのまま過ごしてたいしなぁ。

 

「早く起きないと、ご飯食べる時間無くなるわよ?……せっかく彼氏のために作ったのに」

 

「はい、起きました!おはよう、美佐枝さん今日も素敵だね!」

「もう、調子いいんだから。ほら行きましょ?」

 

 先に部屋を出ていく美佐枝さん。いや〜さっきの残念そうな顔はズルイね、あんな顔されたら拒否する選択肢無くなっちゃうね。それにしても今日はいい天気だし久しぶりに屋上で寝れるかなぁなんて思う。

 

 

 

 

 美佐枝さんと一緒にご飯を食べる。そんな些細な事も何だか新鮮に感じてしまうのだから人間というのは適当に出来てるよな。

 

「ふぅ、ご馳走様!」

「お粗末様。片付けちゃうからちょっとだけ待っててくれる?」

「珍しいね待ってろなんて。まぁ美佐枝さんの部屋で待ってるね」

 

 今まで呼び止められることはあったけど待ってるように言われることは無かったからか、これから何があるのか軽く期待してしまう。まぁ、美佐枝さんお手製弁当を渡されるんだろうけど……。とりあえずお茶でも飲みながら猫と戯れますかね。

 

 

 

 

 じゃあ、待ってるね〜なんて言いながら私の部屋に向かう背中を見送る。一昨日、彼の告白を受けて彼氏彼女の関係になったことがもう随分と前の事のように思えてしまう。……まぁ、彼からのアプローチはもっと前からあったし、私の踏ん切りがつかなかったせいで彼には苦しい思いをさせてしまったと思う。なんて、彼に言っても笑って否定するんでしょうけど。

 

 お皿も洗い終わって、お弁当を片手に食堂を出る。これからしようとしている事を考えるととても恥ずかしいけれど……彼になら、って考えてしまうのは惚れた弱みってことかしらね?

 

 

 

 かつきくん(仮称)と戯れていた皿洗いが終わったのであろう美佐枝さんが戻ってきた。それにしても少し覚悟を決めたかのような表情が少し気になるところではあるけど、そんな表情もいいよねとか真っ先に考えてしまうのがもう色々とダメだと思うんだよなぁ。

 

「紘太、これお弁当ね」

「いつもありがとう、美佐枝さん」

 

 いつも通り美佐枝さんから弁当を受け取る。それだけの事なのになぜか美佐枝さんの頬が色づいて見えた。さっきの表情といい、何かあったのだろうか?

 

 

「紘太忘れ物よ?……んっ」

「んっ……美佐枝さん?」

「ふふっ、行ってらっしゃい」

「……行ってきます」

 

 忘れ物と言われ受け取ったのが行ってらっしゃいのキスとかもうね、最高かと。……最近美佐枝さんに対して最高としか感想が浮かばない気がするのはきっと語彙力がサボっているせいだろう。

 

 

 

 学校への長い長い坂道は桜の季節だけあって無駄に桜が咲き誇っていた。……葉桜になると途端にケムシが湧いて維持するのが大変だって幸村の爺さんが言ってたような気がする。そのせいか分からないけど桜を伐採する計画があるらしい。こんな立派な桜並木が無くなるのは少し寂しく感じるが、これも時代の流れってやつなのかと少し醒めた思考になる。……こんな日は昼休みまで寝るに限るな。

 

 

 

 昼休み、外からバイクのエンジン音が何故か響いてくる。……おかしいね、この学校バイク通学禁止だよね?

 

「流石に起きたか、紘太」

「おはよー朋也、んで外のアレは何やってるん?出し物?」

「さぁな、ただ『坂上智代出てこい』って繰り返してるな」

「ふぅん、坂上智代ねぇ……」

「何だ知り合いか?」

 

 少し不思議そうに俺の顔を見てくる朋也。まぁ智代が有名だったのは中学の頃だし覚えてなくても無理はないか。

 

「朋也、見に行こうぜ」

「ああ。お前がこんなに積極的なのは美佐枝さん関係のことだけだと思ってたよ」

 

 そう言いながら、俺の後ろを駆け足でついてくる朋也。悪いと思うが今は懐かしい彼女に会えることが嬉しくて朋也に配慮する余裕が無い。

 

 

 

 グラウンドに着いた時、既にモブヤンキーと智代は一触即発な雰囲気だった。下手したらこのまま喧嘩をしてしまうと思い加勢に出ようとしたのだが、見物人の女子に「下手に加勢したら智代さんの邪魔になりますよ?」と説得されている間に不良をのしてしまっていた。

 その後の昼休みは智代の喧嘩の火消しやら先生方への説明やらに追われて使い潰してしまったため、後で智代にアイスでも奢ってもらうことにしよう、そうしよう。……こんな風に過ごすのも彼女が引っ越して以来で何だか懐かしい感じがする。

 

 

 5限の終わり、春原が急に「あの女はおかしい!」と急に叫んだせいで俺の安息の昼寝時間は終わりを告げた。

 

「うるさいバカ原ちょっと黙れ」

「相変わらず僕の扱い酷いッスねアンタ!……ってそうじゃなくて、昼のアレ僕はやらせだと思うんだよね〜」

「はぁ?何がやらせだよ、俺も紘太も不自然なとこは感じなかったぞ?」

「いいや、あんな女子一人で不良を倒すなんて無理なんだよ!」

「まぁ、確かに春原一人じゃ無理だろうな。でもアイツは……」

「だから、坂上智代を倒しに行くぞ〜!」

 

 はぁ、相変わらず人の話を聞かないなコイツな。まぁ楽しくなりそうだしついていくか。

 

 ついてこなきゃ良かった。何で下級生に手当り次第に『坂上智代はどこだ』って聞いてんだよ。お陰で下級生が怯えてるじゃんかよ……。朋也と二人で居心地の悪い思いをする。騒ぎが大きくなったせいか智代が自分の教室から出てきた。メッチャ嫌そうな顔してんな、まぁあの頃もこんな奴が結構居たし不良のせいで機嫌悪いところにこんな能天気が来れば嫌にもなるわな。

 

 あっ、俺に気付いたか。目でこいつをどうにかしてくれって訴えられたけど俺にはどうしようもない。頭が残念な奴なんだと返事をする。すると、疲れたように溜め息を吐き春原に向かっていく。

 

「お前がここで騒いでいるせいで生徒達が迷惑している、今なら何もしないで返してやるから大人しく自分の教室へ帰ってくれないか?」

「へっ!嫌だね!自分のしたヤラセがバレそうだからってそうは行かないぜ!」

「ヤラセ……?紘太、コイツは何を言っているんだ?」

「そこで俺に振るのか……。昼のあれお前が全部仕組んだって思ってんの、コイツ。あと、後始末はやっといたからあれな、いつものアイスな」

「ありがとう、いつも済まないな。私も迷惑は掛けたくないのだが……」

「いいよ、慣れてるし。それに久々に智代の喧嘩見れて満足してるしな。……そろそろ6限始まるし教室に戻った方がいいんじゃないか?」

「……ん、そうだな。そうだ、放課後空いているか?……その、お礼もしたいし」

「放課後な。じゃあ正門前でいいか?」

「あぁ、それじゃあまた」

 

 そう言い、智代と別れる。久々に会ったけど昔より一段と美人になってたなぁ。

 

「あの〜紘太さん?」

「あれ、春原まだ居たのか?ほら、智代とも会えて目標達成したんだから帰ろうぜ?」

 

「イヤイヤイヤイヤ何、何も無かったかのように振る舞ってんの!?坂上智代とはどういう関係なんだよ!」

「紘太、俺もコイツと同じ意見ってのは悔しいんだが、どういう関係なんだ?」

「……幼馴染みだよ、ただの」

 

 

 

 その後、何故か智代との関係をしつこく聞いてくる二人を何とか躱し、放課後智代と合流して中学の頃よく行っていたアイスクリーム屋へやってきた。

 

「紘太、今日はすまなかった」

「もういいって、それよりいつコッチに戻ってきたんだ?」

「あぁ、鷹文の身体もだいぶ良くなったからこの町に戻ってきたんだ。……学校への坂道に桜並木があるだろ?あの景色が好きだって鷹文が言ってたし、こっちの方が自然が多くて環境が良いからな」

 

 昔を思い出したのだろう、少し寂しそうに笑う智代はいつもより儚げに見える。

「そっか。……智代はさ、まだ俺のこと好きなのか?」

「ん?ふふっ、こんな時にそれを聞くなんてまだまだ紘太は女心が分かってないんだな。……そうだな、あの頃は隣に紘太が居ることが当たり前で、離れてから紘太が大切な存在だって気付いて。でも、異性としての好きでは無いんだと思う。うん、家族として、そうだなお兄ちゃんとしてなら、好きだ」

 

 その答えを聞いて少し安心した俺は多分酷いやつなんだろう。それでも、智代に叶わない恋心を抱かせ続けるよりは遥かにマシだろう?智代が言うにはお兄ちゃんらしいしな。

 

「──智代、俺さ彼女が出来たんだ。優しくて叱ってくれて、心配してくれて、こんな俺を好きだって言ってくれたんだ」

「そうか、幸せなんだな。顔が緩みまくりだぞ?」

「へ?」

「なんだその顔は。間抜けにも程があるぞ」

 

 そう言いながら、俺の顔を指差し笑ってくる智代。こんなやり取りも懐かしく、嬉しく感じて俺も笑ってしまう。

 

 

 




行ってらっしゃいのちゅーは最高に最高で最高だと私はそう思います!


今回の展開についての言い訳

智代が幼馴染み枠になってるけど浮気とかしないから、許して!けど正直こうでもしないと主人公が色んなイベントに絡みにくいの!

いつ風子ルートに入れるか、それがワカラナイ
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