世界はきっと優しくて 作:たたた
今日も朝から美佐枝さんの部屋へ行き、お弁当を受け取り少し話をしてから学校へ行く。夜中雨が降ったようで、道路は少し湿っていた。
坂道の途中、智代が桜を見上げ立ち止まっていた。……周りで女子たちがキャーキャー言ってるのはまぁ、中学の頃から変わらないっていうかなんて言うか。
「智代、おはよ」
そう声をかけると、ようやく俺を認識したようで少し驚いたように俺を見つめてくる。
「おはよう。いつから居たんだ?……気づかなかったぞ」
「いやいやお前が桜に集中してたせいだからな。そろそろ行かないと遅刻になるぞ?」
「もうそんな時間なのか……」
時間も忘れるくらい見てたのか……。もし、智代が生徒会長になれなければこの桜並木を守ろうとする人も居なそうだしな。それに改めて見るとこの坂道は桜で彩られて結構立派だ。アホほど長くなければだけど。
今日の一限は……数学だった。あの教師嫌いだからなぁ、どっかで昼寝でもするか。んー、屋上で寝たいけど濡れてるだろうし前回特別棟で寝てた時は生活指導に見つかってアホほど怒られたしなぁ。授業中は資料室に行っても詰まらないし。あとは……そうだな、図書室があるか!つか三年経つのに図書室で寝たことが一度も無いとかある意味すげぇな。
という訳?で図書室で寝ることにしたんだが、図書室には先客が居た。……クッション持ち込みとは中々の上級者と見た。先達には敬意を払わなければならない、そう施設に居た頃教えられてた気がする。
「えぇっと、すみません少しお時間よろしいですか?」
「……」
「あのぉ〜」
「……」
本に集中しているのか、声を掛けるだけではダメみたいだ。まぁ急がなくてもいいし、軽く寝とくかなっと……おっ、この本結構いい高さじゃん、寝よ寝よ。
目が覚めると目の前に女の子の顔が──って、めっちゃ見つめられてるんだけど。照れるわ。
「おはよう、よく眠れた?」
「あぁ、お蔭さまで」
「……食べる?」
そう弁当箱を目の前に出してくる少女。彩りも考えられてて、見た目も良いし結構うまそうだ。
「特にこの辺が自信作。……お箸一膳しかないの」
「いいよ、手で取るから。それじゃ、いただきます」
少ししょんぼりしてしまったのを見ていられなくて指で摘んで卵焼きを頂く。……うん、ほどよい甘さでいい感じだ。
卵焼きを食べた俺の顔を少し不安そうな顔で見てくる少女。
「おいしい?」
「あぁ、うまい。料理うまいんだな」
「……うん。たくさんたくさん練習したの」
「そっか。頑張ったんだな」
そう言いながら少女の頭を撫でていた。……無意識だったからセーフだよな?セクハラとかにならないよな?いや無意識だからむしろヤベーのか?
自分がなぜ知り合って間もない少女の頭を撫でているのか分からず混乱していると、少女の瞳から涙が零れてきた。ヤバイヤバイヤバイこんな状況を誰かに見られたら不審者として通報されかねない。
「あぁ!悪い!俺が完全に悪かったから泣かないでくれ。な?」
「……大丈夫なの。ちょっと目にゴミが入っただけなの……」
あれから少しして少女の涙は止まったけど、何とも言えない空気が図書室に満ちている気がする。
「急に撫でて悪かったな。嫌だっただろ?」
「ううん、違うの。……嬉しくて泣いちゃったの。ごめんなさい」
「いやいや謝るのは俺の方だし……」
なぜか謝りあっている俺たち。……つーか嬉しかったって撫でられる経験少ないのか?
「あぁそうだ、まだ自己紹介してなかったな。俺はD組の三浦紘太、以後よろしくな」
「……うん。一ノ瀬ことみ。ひらがなみっつでことみ。呼ぶときはことみちゃん」
「よろしくな、『ことみちゃん』」
「うん、よろしくお願いします。紘太くん」
「一ノ瀬ことみさん、ですか。多分A組の一ノ瀬さんのことだと思います。頭が良くって全国模試で毎回10位以内に入ってるらしいです。それで授業も免除になってるとか、なってないとか」
「へぇ、そうなんだ。それであの時間から図書室にいたのか、なるほどな」
「三浦くん、一ノ瀬さんと喋ったんですか?」
「んー?なんか弁当くれたからな。それにそんなに構えないでもいいと思うぞ?案外藤林と合うかもしれないし」
「そうでしょうか……?」
藤林に試しにことみちゃんのことを聞いてみたら結構な有名人らしく、すぐに答えが返ってきた。……それにしても全国トップ10とかほんとに頭いいんだな。
昼休み、春原が智代にリベンジするとか騒ぎ出したから暇だし春原が人間を辞めるのを見るために付いていくことにした。
「智代にリゾンベに行くぞ紘太!」
「それ言うならリベンジな。つーかいつの間に喧嘩売ったんだよ」
「今日の朝にちょっとね」
「ボッコボコにされてダストシュートに吸い込まれてたな」
「岡崎さんそれを言うのは無しッスよね?」
ダストシュートに吸い込まれる春原……最っ高に面白そうだな!それにダストシュートの次は何が来るか楽しみだ。
「よし、春原早く行こう!」
「アンタ今スッゴい失礼なこと考えてません?……悪いけど、僕はもうやられることはないよ」
今すっごい盛大なフラグが立った気がする。まぁいつものことだよな。うん。
朋也と俺が見守る中、春原が宙を舞っていた。……相変わらずあの蹴りは謎だよなぁ。いやぁ春原の顔にモザイクが必要な域に達し始めている。
「紘太!」
っと、気を抜いていたら智代から春原がパスされて来る。……うわっ気持ち悪ッ!
「智代、俺に回すな!」
智代に蹴り返す。あっ、今結構いい音したな。って今蹴り返さなきゃ終わってたな、すまねぇな春原。
「ぐはぁっ!」
「ああっ、すまねぇ春原、わざとだ」
「……死ぬわ」
その後、朋也が智代に演劇部に入らないかって勧誘をしていたけど、振られていた。
「朋也、演劇部って?部活始めたのか?」
「あぁ、そういや紘太にはまだ話してなかったっけな。ちょっと成行きで手伝うことになってな、それで部員集めてるんだ」
「そうなのか。で、集まりそうなのか?」
「いやー中々な。そうだ、紘太も暇そうな奴知り合いに居たら誘ってみてくれよ」
「暇そうな奴、ねぇ。そんな都合いい奴中々居ないだろうけど見かけたらな」
「あぁ、頼む」
人のためにこんなに頑張る朋也を見ることは中々無いから、協力してやりたいと思う。それに、これから詰まらなかった学校も少しは楽しくなりそうな気がする。
五限の体育が終わり、六限に出るのが怠くなってしまったため、幸村の爺さんのとこに行くことにする。……これが結構賭けの要素が強く、爺さんに会えなければ高確率で生徒指導に捕まり、爺さんの授業が運悪く入っていると途中で抜けなければならない。
「おっす、爺さん遊びに来たぞー」
「おお、なんじゃサボりか?」
「いやいや最近爺さんに顔見せてなかったし、寂しいだろうなって?」
「余計なお世話じゃ。……緑茶でいいかの?」
どうやら今日は賭けに勝てたようだ。
「ふむ、ところでどうかの、そろそろ努力は実を結んだかの?」
「へ?実を結ぶって何が?」
「寮母さんが好きなんじゃろ?」
「ぶっ!」
「なんじゃ、汚いの。ほれ、布巾」
「いやいや、なんで知ってんだよ爺さん!えっ、俺ってそんなに分かりやすいの?」
「分かりやすいの。まぁ安心せい、ワシ以外には気づいておらんよ」
ほっほっほと愉快そうに笑う爺様と赤面した男子高校生という謎な組み合わせで少しの間過ごした。それから爺さんと他愛もない会話をしたり、校舎を少し散歩してから家に帰ることになった。
それにしても、オレってそんなに分かりやすいのか。ちょっと気を付けた方が良いかもしれない。
ことみちゃん登場回。今はまだ無意識の行動でしかことみちゃんに応えられません。
鋭い爺さま役、幸村先生
ちょっと待って!美佐枝さん出てないやん!美佐枝さんとのイチャイチャが書きたいからこのSS書いてるのに美佐枝さんないやん!
次は番外編書きます()