魔法科高校の変わり者 作:四葉夜々
アカミック火山を二日前から占領して、見事エンシェント・ドラゴンを倒したフォース・リーフ。
現実ではいよいよ受験日だ。
「あーめんど……四葉の権力使って合格にすりゃ良いじゃん」
「そんな目だつことする訳ないでしょ」
羊の言葉に深夜は呆れてため息を吐く。
ていうかこんな場所で四葉の名を出すなと咎めようと思ったがしっかり周囲への音を消していた。
「あ、羊……」
「ん?おお、誰かと思えばティア。久しぶりだな!」
羊が面倒くさそうに頭をかいていると聞き覚えのある声が聞こえ、振り向くと雫と知らない少女が居た。
「ん、久しぶり……そっちの子は妹さん?」
「こんな見た目でも立派な受験生だよ。こんな見た目でもな」
「……っ!」
深夜は誰のせいだと思って苛立ちを込めて羊の足を蹴るが羊は全く気にせず、逆に深夜は足を押さえてピョンピョン跳ねる。
「雫、知り合い?」
「九校戦を見に行ったときにね」
「いえーい!」
「いえーい」
パーンとはいタッチするする雫と羊。たった一度あっただけなのにずいぶんと仲良くなっている。
「羊も、ここ受けるんだね」
「おう、全力で手を抜いて二科生になるか無難に一位を目指すか迷ってるがな」
「………本気でやらなきゃ、落ちた人に失礼」
雫の言葉にそれもそうかと納得する。
「二科生になって学期末テストで一科をバカにするのも面白そうだと思ったんだが……」
「羊って……実は性格悪い?」
「ええ、こいつの性格は最悪よ……知り合いは平気でからかうし、気に入らない相手はプライドを徹底的にへし折る……仲良くするのも敵対するのもおすすめしないわ」
「………雫、変わった友達持ったね」
深夜の言葉に雫の友人の少女はあはは、と苦笑した。
羊は深夜の両頬を引っ張った。
「にゃ、にゃにふるのよー!」
「読者サービスと俺の鬱憤晴らし」
バタバタと暴れる深夜だが12歳に若返らせられ、成長しても13程にしかなっていない深夜では高身長の羊を振り払えない。
「仲、良い?」
「どこをどう見たらそう見えるのよ」
「親しい仲には礼儀無しが俺の信条だからな」
「……私には虐めしない、羊の中ではあんまり親しくないの?」
「え、なにお前虐められたいの?うわぁ、Mかよ……うん、良いと思うよ」
「…………」
意地悪されたがそれが親しい証と聞いたので雫は満足そうに微笑んだ。
「親しくない奴はとことん挑発するけどな、おっと……そろそろ俺らの番か……」
「あなたって人間?魔法の発動速度が100msって……何度も計り直してたわね」
「言ったろ?俺の本質は人間じゃなくてパラサイトだ……人間の常識じゃ測れない………にしてもお前、普通の魔法も使えるんだな」
「精神干渉魔法はレアだけど達也さんほど演算領域を必要としないもの、仮にも十師族よ?一般人より優れた結果を出せるわ……最も、魔法科高校に、魔法の才能があったからと受験する一般人がどれだけいるか……精々中の上といったところね………次は面接……私の時は一対一だったけど……今回は4対4みたい……他の受験生に飲まれないようにしなさい」
深夜はそう言うと自分の面接会場へと向かっていった。
呼ばれるのはランダムらしく、名字も名前も性別もバラバラに呼ばれ、ようやく羊の番。女子3、男子羊一人……。
まあ、それで肩身の狭さを感じる羊ではないが。
「最後に、君達は魔法を使ってなにをしたい?」
幾つかの質問の後に、最後の質問。姉のようになりたいと言う者、胸を張って一族継げる者になりたいと言う者と様々で、最後に羊の番になった。
「俺はそうですね………世界征服とか?」
「「「ぶっ!」」」
「「「「………は?」」」」
羊の言葉に面接官達はポカンと呆け、女子三人は思わず吹き出し肩をプルプル震わせる。
「世界……征服ですか?それはまた………何故……?」
「現状、魔法師が国の外に出るには手続きがいる。それは魔法が国外に流出するのを恐れているから……その理由を平たく言ってしまえば今が戦時だからだ」
「………………」
羊のその言葉に面接官達は顔を引き締め女子三人も笑いを納めた。
「停戦協定が結ばれたわけでもない、何時戦争になるか解らないから戦力である魔法師を国外に送れない……だから、行きたくても行けない場所が多すぎる。だったら戦争を終わらせればいい……力でねじ伏せて、停戦協定を結ばせて、どの国の魔法師も堂々とよその国に行けるようにしたい…そのためには、世界を征服してみようかな~……と、まあそのための力を手に出来たらですけど」
「………わかりました。十分です……面接はこれで終わりになります」
あー、敬語とか肩こるわ~、と呻きながらボキボキ体を鳴らす羊。深夜からメールが来ていて、彼女も面接が終わったようだ。
「あの……」
「ん」
合流しようと歩き出そうとした羊だったがその前に呼び止められる。振り向けば共に面接を受けた女子達が居た。
「笑っちゃってごめんなさい……」
「さっきの言葉、素直に感動したよ」
「あんなの堂々と言えるの、凄いと思う」
先程呼ばれた名を思い起こすと彼女たちの名は確か、明智英美、里美スバル、平河千秋だったか………。三人とも平均的な容姿に比べれば美少女の部類なのだが生憎羊の食指は動かなかった。ただありがとう、とだけ言ってその場から去った。
「おまたせ」
「どうだった?」
「しょーらい有望そうな子が多くて何より」
「まるで試験官ね……面白い子でもいたの?」
「世界征服を笑わない奴は面白いって相場が決まってる」