魔法科高校の変わり者 作:四葉夜々
入学式
「はいもしもし……え、新入生総代…?いえ、お断りします。次席の方にやらせては?そちらの方が、見栄えも良いですし」
羊は電話を切るとテレビ画面に視線を戻す。電話している間に深夜によって吹き飛ばされていた。
まだ残機は羊のカービィが上なので深夜のリンクを吸い込んで自殺を繰り返してやった。
「……何の電話だったの?」
「新入生総代として挨拶しろって……断ったけどな」
「どうして?あなたなら全校生徒の前で『モブキャラの皆さんこんにちは』とか言いそうなのに」
「それも面白そうだけど、次席を首席と思わせて後で真の首席が現れんのも面白いかな~っと……それに俺シャイだから人前に出ると緊張するんだよね」
「………………」
深夜はクマ吉を見るウサ美のような目で羊を見つめる。まあ、こんな説得力の欠片もない嘘を堂々とはかれても……。
「お二人とも、ご飯の用意が出来ましたよ~」
と、穂波に呼ばれて二人は食卓に向かう。
その日の夜飯はハンバーグだった。
「さてさて来たぜ入学式」
「……………目立ってるわね」
「そりゃこんなイケメンにチビ……もとい美少女がいるならな」
第一高校の敷地を歩く二人は確かに目立っていた。羊は前世、一時期俳優やアイドルをやった経験もある二枚目で深夜も肉体年齢が中学生程とはいえ立派な美少女なのだから当然だ。
「………ナルシスト?」
「逆に聞くが俺がイケメンなんかじゃないって、といったらどう思う?」
「嫌みと思うわ」
「だろ?」
深夜ははぁ、とため息を吐いて眼鏡をクイッとあげる。羊から渡された特殊なCADで、一つの魔法しか使えないが隠蔽能力が非常に高く、CADと判断されることはない。
扱う魔法は偽装、達也や霊子過敏症の者から正体を隠すためのモノだ。ついでに髪型も変えている。全ての髪を一つにまとめた大きな三つ編みだ。
朝は早めに食事を終え穂波と羊に散々弄られた。羊はツインテールにしようとしてきたが、明らかに子供扱いするためだったので却下した。
「……くだらないわね」
講堂に入るなりそんなことを呟いた。見てみれば羊も納得した。前半分が一科生で後ろ半分が二科生ときれいに分かれていたからだ。
「でもまあ、あそこの方が良くステージが見えそうだな」
「一科生が二科生の席に座っても、いらぬ反感を買うだけだと思うけど?」
「次席、つまり前に出る新入生代表は司波深雪だ」
「何してるの羊?早く来なさい」
羊が呟いた瞬間、隣にいてはずの深夜が何時の間にか一番ステージを見渡せる場所に座っていた。
『では新入生代表の司波深雪さんによる答辞です』
やはり総代とは言わないようだ。まあ筆記も実技も両方羊が一位を取っているのだから当然総合も羊なのだから当然だが。
「そしてその眼鏡にはCADとしての機能以外にも録画機能が───」
「………」
深夜は無言で操作方法を理解したのか録画を始める。舞台に上がった司波深雪を見て、講堂が静まり返る。皆、司波深雪に見とれているのだ。隣では深夜が誇らしげに胸を張っていた。
ちなみに、この姿になった当初は残っていた幼い頃の深雪の服を別荘などから集めたのだが胸がきついと言っていたのを羊は忘れていない。
うまく誤魔化して深夜に深雪の服を着せてサイズを尋ねるのはいつか必ず叶える夢だ。かなりくだらない………。
「A組か」
「私もAね」
クラスを確認しIDカードを受け取った羊と深夜は校内を歩く。本来の総代である羊は当然生徒会からの勧誘がくるだろうが事前に約束していたわけではない。
「ああ、ここにいましたか羊」
「ん、おおリン姉…おひさー、同人誌の即売会以ら──」
「生徒会の勧誘ですが、ついてきてくれませんか?」
「強制じゃないなら断る。帰ってゲームしたいから」
「…………まあ、ノーアポですのでお気になさらず」
ゲームという理由で断られ羊を呼びに来た市原鈴音はふう、とため息を吐いた。
「さっきの子、親しげだったけど……」
「みーちゃんのBL同人誌を売りに行った時手伝いしたじゃん?その時九校戦の観戦の時知り合った人に出会ってリンちゃんと呼んだら『年上なのだからやめてください』と言われてリン姉と呼んだら『濡れる!』と面白い反応が返ってきたのでこの呼び方にしたんだよね」