女神な姉ちゃんの友達が妖精や天使ばかりで辛いです! 作:葛杉
出だしなのでアイドルはまだでません。
しょうがないね(溜め息)
ごめんなさい!
お前、前世で世界でも救ったんか?
小学6年生になったばかりの頃、家に遊びに来た友人達のひとりがひどく真面目な面で放った一言である。
なにを馬鹿なことをと笑い飛ばそうとしたのだが、他の友人達も皆一様に真顔でじっとこちらを見つめているのである。
さながらホラー映画の如しであり、ひとりだけ無言でベッド上のイルカ枕をひたすら叩いていてさらにホラー感。とりあえず枕はお気に入りだから叩くなと言えば素直に止める辺りいい奴だった。
部屋のテレビ画面には大人から子供まで怒り狂えると評判の苺電鉄がスタートボタンを押されるのを待っているのだが、もはや誰も気にしていない。先日の誕生日プレゼントに買って貰ったと言った時には皆が羨ましがり放課後走って我が家まで来たのにこれは一体全体どういうことか。
皆の視線の意味が分からず、されど気軽に口を開くことも出来ず、俺もまた無言のまま時間が過ぎる。
床に置かれた盆の上、ガラスのコップの中でからんと氷が鳴った。
その盆は俺の姉ちゃんが持って来たものだった。
ふと、最初に馬鹿なことを言った奴が口を開いた。
「お前の姉ちゃん、女神やん」
からんとまた氷が鳴った。
それから一週間もしないうちに、クラスでの俺の渾名は勇者となった。理由は前世で世界を救ったに違いないかららしい。凄いな俺。どんな世界を救ったんだ。
俺を何故だか勇者と崇め始めた連中に、勇気を振り絞って聞けば、奴らはごく自然な様子で、女神が姉になるのだからきっと前世ですごい徳を積んだはずだ。最低限世界くらいは救っているだろうから、あなた様は勇者に違いない。
俺は悟った。嗚呼、こいつらは阿呆なのだ。
勇者と崇めてくる連中を、俺は優しく見守ることにした。
別に眺めている分には愉快な奴らだから放置していたわけではない。
だが、俺はこの時に真剣にこいつらを止めるべきだった。
例え間違いなく止まらなかったとしてもその努力はすべきだった。
そしていつしか他クラスの連中からも勇者と呼ばれるようになり、そして小学校を卒業して中学校に入学してからは先輩方からも勇者と呼ばれるようになることを俺は知らない。
ましてや中学校を卒業するまで、恐るべき魔王軍『エロース』との凄絶な闘いー血で血を洗うかの如き攻防、脳髄が震える程の知略戦、勇者軍『始まりの四人』がひとり『全能者』田中の裏切り、そして魔王軍幹部がひとり『百合弓』との儚き友情と悲しき愛ーの物語が始まることを、この時の俺は知る由もなかったのだ。
女神の名は、新田美波。
勇者の名は、新田拓海。
これは女神が新天地を目指して消えた後。
ひとり残されながらも、女神の誇りを守るために戦い続けた男の涙なしでは語れない、後世に語り継がれる愛と勇気の物語・・・。
そんな黒歴史確定な未来が待ち受けていることを、幼い俺は知らなかったのだ。
知りたくもなかったよくそが。
ともあれ、この時の俺は嫉妬で頭のネジが飛んだ愉快な連中を心底見下しながら無為な時間を過ごしていたのだった。
無言の時間が過ぎるなか、再び部屋の扉をノックしてから入ってきた姉な女神がクッキーの缶を片手にまっこと愛らしくはにかみながら、
「ごめんね弟くん。お菓子持ってくるの忘れてたわ。クッキー、いる?」
「いります!」 「クッキー大好きです!」 「お姉さんが持って来てくれたクッキー欲しいです!」 「お姉さんのクッキーが好きです!」 「お姉さんが好きです!!」 「裏切り者だ!コロセ!!」 「「「ザッケンナコラー!!!」」」 「ヤメロー! ヤメロー!」
何故か勝手に返事をして共食いを始めた阿呆共を横目に、何故か部屋に居座ろうとする姉の背中を押しながら俺は心の中で盛大な溜め息を吐いた。
小学校6年生になった、暖かな風が吹く心地好い日。
この日、俺は自らの前世が世界を救った勇者となった。
いみがわからない。
姉の名前は、新田美波。
弟の名前は、新田拓海。
これは女神が姉だったために前世が勇者となった弟が。
姉が東京の大学へ進学して地元を去り。
ひとり残されながらも、姉の名誉を守るために戦い続けた男の、(あまりにも情けなくて)涙なしでは語れない、(H県のごく一部の地域でそれなりに長く)後世に語り継がれてしまう(エロスな)愛と(エロスへの)勇気の(出来るなら忘れたい)物語・・・っ!!
なお、共食いしつくして落ち着いた友人達と改めてクッキーを一枚でも多く食べようと互いに妨害しながら苺電鉄を遊び初めて、当初は皆で俺を嵌めようとしていたが最終的には再び共食いを始めて俺が勝ちました。見ていて楽しかったですまる
お姉ちゃんあんまり出なかったじゃん!(怒り)
次から本気だすからごめんなさい!