女神な姉ちゃんの友達が妖精や天使ばかりで辛いです! 作:葛杉
アナスタシアは綺麗で可愛い
つまり、そういうことなんですよ。
・・・デレステのイベントは如何でしたか(小声)
『白銀の妖精 熱愛疑惑!?』
戦国時代とも言われる現代のアイドル業界においてさえ、妖精と呼称される者はそう多くはない。
さらにそのなかでも、《白銀》の異名を持つアイドルは唯一人。
ご存知我らのアナスタシアちゃんである。
愛称はアーニャちゃん。
ロシア人の父と日本人の母を持つハーフ超美少女であることは賢明なる読者諸氏なら超ご存知のことであろう。
北海道生まれのロシア育ち。幼少時の多くをロシアで過ごしたためか時折ロシア語が出てきてしまうのがほんと可愛い。
容貌は一言で纏めればミステリアス。
煌めく白銀の髪と、星を散らしたような輝きを放つ青緑の瞳。遥か山奥に降り積もる純白の雪を想わせる肌。
ある種の人形めいた美しさはなるほど《白銀》の妖精と呼ばれるのも納得である。
今春に現世へ舞い降りた女神こと新田美波とのユニット『ラブライカ』を結成してアイドルデビュー。
圧倒的な歌唱力を持って一躍、期待の新人アイドルとして名を馳せた二人の仲の良さは有名で、つい先日のラジオ番組内でもリスナーからの「美波さんはとっても綺麗な人ですが、特に親しいアーニャちゃんから見て美波さんの一番綺麗だと思うところはどこですか? 指ですか?」という質問に対して「ミナミは綺麗なだけではないです。とっても可愛いです!」と発言して物議を醸したのは記憶に新しい。
最近ではお互いに単独での仕事も増えて、アーニャちゃんは今夏にソロライブを開催したりと大活躍している。ちなみに自慢ではないが筆者はこのライブに行きました。特に、自慢では、ないが!
最高に素敵だったライブの話はさておき、実はこの人気アイドルこと白銀の妖精ことアナスタシアことアーニャちゃんに熱愛疑惑が我々取材班ーーーウサミン調査隊に持ち上がったのである。
アイドルにとって恋愛は御法度ーーー業界の暗黙ルールに、アーニャちゃんが抵触している可能性がある。
アーニャちゃんが熱愛しているのかいないのか、我々が目にした恐るべき光景を検証することで、我々はアーニャちゃんの身の潔白を証明したいーーーこの一念で我々は今回の記事を掲載したことを読者諸氏には事前にご承知おき頂きたい。
さて、これは初夏の頃、ウサミン伝説の調査に疲れた我々はちょっとした気分転換のために新宿御苑に足を運んだ。
夏の陽光を受けて輝く瑞々しい若葉。平日にしては人も多い気がしたが、ひっそりとして穏やかな時間が流れる園内。久方ぶりにウサミンのことを忘れてはしゃいだ我々はこのままラーメンでも食いに行くかと話していた時、調査隊のひとりが青ざめた顔をしているではないか。
どうしたのか、腹でも下したかと聞けば彼は震える指で園内の一画を指し示した。
我々が目を向けると、そこにはレジャーシートを広げてはしゃぐ二人組。手元には手製であろうお弁当。実に健全な光景である。
私は彼に言った。いったいあの二人組がなんだというのか。新宿御苑で時を過ごす健全な二人組であろう。特に見よ。特にはしゃぐあの少女を。実に楽しげで大変宜しい。何故か真っ黒なサングラスをかけているせいで表情は見えないが、陽光を受けて煌めく白銀の髪が喜びに跳ねているではアーニャちゃん!?
我々は目を疑った。
真っ黒なサングラスのせいで顔全体は見えないが、しかし真っ黒なサングラスのせいで余計に怪しい。だいたいなんで真っ黒なサングラスなんだ。真っ黒なサングラスしかなかったのか。微妙にサイズが合ってないぞ真っ黒なサングラス。真っ黒なサングラスがゲシュタルト崩壊しちゃう!
「長、長、あの娘はもしや」
「慌てるでない。白銀の髪はたしかに珍しいが、それだけでアーニャちゃんと決めつけるのは早計というもの。我らは記者であり、確かな証拠がない限り常に様々な可能性を考えねばならん」
「んん・・・サングラス、あまりかけませんから気になりますね?」
少女が真っ黒なサングラスを外してアーニャちゃんだよあの娘っ!
再び真っ黒なサングラスをかけなおすアーニャちゃん。その口元は実に楽しげな笑みが浮かんでいる。
「長、長、あの真っ黒なサングラスはいったい」
「・・・変装、ではないかな?」
「変装」
変装、変装ってなんだ? と哲学に沈んでいく部下の隣にいる部下が手を上げる。
「長、長、この状況はもしや・・・でぇと、なのでは」
馬鹿を言うなっ! 私は小声で怒鳴った。アーニャちゃんはアイドルである。それも人気急上昇中のアイドルである。人目は常に気にしているであろうし、そも関係者がそんな迂闊なことを許すはずがない。そんなアーニャちゃんが、気軽にでぇとに興じるものだろうか。いや、ない。
そもそも状況をよく把握もせず、決めつけるのはよろしくない。我らは記者であり、確かな証拠がない限り常に様々な可能性を考えねばならんのだ。
だいたい、でぇとと呼べる状況でもなかろう。平日の午後、暖かな陽射しが降り注ぐ新宿御苑、人気もまばらで静か、手元には手製の弁当があり、真っ黒なサングラスで一応変装しているだけではないか。完全にでぇとコースですたまげたなぁ・・・。
いや、しかしである。でぇとはでぇとでも健全なでぇとやもしれない。手製の弁当を食べて、ちょっと園内を散策して、日が沈む頃にお手てを振ってさようならかもしれない!
「はい、あーんしてください・・・ウインナー美味しいですか? ふふ、よかったです」
嗚呼、アーニャちゃんがウインナーをあーんしているぅ!?
「ウインナー美味しい(意味深)」
「夜は私にあーんしてね(意味深)」
「落ち着けみんな! たかがウインナーで慌てるな・・・うっ、ふぅ・・・・・・・・・長、そろそろラーメン食べに行きませんか? お腹空きましたよ」
落ち着け貴様らぁ! 私は小声で怒鳴った。認めるしかない。あのアーニャちゃんが、けしからんでぇとに興じている事実を。あのウインナーが決定的な証拠である。
とんでもないスクープだ。この記事だけでどれだけウサミン調査隊の活動費を手にできるのか。考えただけで身が震える。
しかしこの事実が世間に公表されたら、アーニャちゃんの経歴に傷がつき今後の活動に影響を与えることは間違いない。アーニャちゃんの一ファンとして、そのようなことはしたくない。
だが私は記者なのだ。己が目にした真実を、自らのエゴで隠すことは記者の矜持が許さない。
そっと私の肩、背中、お腹に触れる部下たち。皆の表情は一様に悲しみと切なさを訴えている。だが、その瞳には確かな決意の輝きが灯っている。
・・・書くしかない。私は悲しみに満ちる胸中を抑え込んだ。せめて、相手の顔をしっかりこの目に刻みこもうと決心する。ウインナーをあーんされた羨ま・・・げふんげふん・・・羨ましい奴はどこのどいつだぁあ!?
色素の薄い茶髪、服越しでもわかる魅惑の体型、真っ黒なサングラスでも隠せない神聖なる雰囲気ーーー
「はい、ミナミ。あーん」
「おにぎりは自分で食べれるよアーニャちゃん」
現世に舞い降りた救世の女神こと新田美波様や!
「なんだ妖精のお相手は女神様か」
「ウインナー(健全)が美味しいんだってさ」
「アーニャちゃんが美波様にウインナー(健全)をあーんしているとか微笑ましいな・・・うっ、ふぅ・・・・・・長、お腹空きましたね」
「二発目・・・っ!?」
我々は安堵した。
迂闊なことに、我々は妖精の魅力に惑わされて女神の神聖なる身姿を見失っていたらしい。まだまだ記者としての修行不足といったところか。ラブライカの仲の良さは実に有名な話であり、今日は久し振りにオフが重なった二人の息抜きなのだろう。実に健全、実に尊し。
ラーメン行くか。私は小声で言った。これ以上眺めているのは無粋である。後はお若いふたりに任せて、我々は醤油なり塩なり豚骨なりのラーメンを啜りに行くのが正しい選択である。
踵を返したところで、いまだに青ざめた顔をした部下がいた。部下は再び震える指で指し示した。いったいなんだというのか。再び振り返った我々は
「あっ、ミナミ。口元にご飯粒、ついてます」
「えっ? どこかしら?」
「アーニャが取りますよ・・・ふふ、美味しい」
「やだアーニャちゃん! どうして食べちゃったの!?」
「ダー。日本語勉強しました。口元についたご飯粒は、おべんとう、言いますね? 仲良しの二人はこうやっておべんとうを食べるのがОбычай、習わしだとナオが教えてくれました」
「あのねアーニャちゃん。な、仲良しと言ってもそれはまた違う仲良しというか」
「アー・・・ミナミ、迷惑でしたか?」
「迷惑とかじゃないのよ? ただちょっと、違うというか」
「・・・ミナミ、アーニャと仲良し、違いますか?」
「仲良しよっ!? アーニャちゃんのこと大好きだもん。でもねさすがに」
「ダー! アーニャもミナミのことЛюбовь、大好き、です!!」
「・・・ふふ、私も大好きよ。アーニャちゃん」
ーーーーーー気が付けば、我々は会社にいた。
ラーメンを食ったのかはさだかではない。だがこの胸を満たす暖かな何かはきっと、人生における大切なモノを見つけた証であるような気がする。
私は無我夢中に、キーボードを叩いていた。
・・・以上が、我々が目にした恐るべき光景である。
アーニャちゃん熱愛疑惑について、検証の結果を述べよう。
アーニャちゃんは潔白! 熱愛なんてなかった! 以上!
えっ? いささか仲良し過ぎないかって?
・・・はぁ、あのね? ラブライカの二人はアイドルである前に妖精と女神なの。そんな神聖存在のお戯れが我々俗世人に理解できると思いますか? できませんよ!
そんなわけで、アーニャちゃんファンの皆様は安心して今後もファン活動を続けていきましょう。
さて、来週の記事は江戸時代の文献から見るウサミンの謎に触れたいと思う。
それでは来週もよろしくウーサミン!!
「じっさい、どうなんですかね」
夏休みも終わって早数日。給食食べてお腹一杯、よっしゃ昼休みだしサッカーしようぜ! と校庭に出てきたはいいが思った以上の気温の高さに数分で気力喪失。早々に木陰へ逃げ込みぐだぐたと無駄な時間を過ごしながら、誰がサッカーをやろうなんて馬鹿なことを言い出したのか責任の押し付けあいをしている俺達がいた。
俺は絶対に鈴木さんが言い出したと主張しているのだが、しかし鈴木さんは一向に認めようとしない。それどころか頭髪の薄い佐藤が提案者だとぬかしおる。とんでもない奴だ。提案者は俺だというのに、こともあろうに関係ない奴に罪を着せようとしていやがる。絶対に許せん、必ずやこやつのせいにしてくれると義憤に燃える俺の横で、田中はひとり教室に戻ろうにゃー教室に戻ろうにゃーと鳴いておる。馬鹿め、俺達は動くのも億劫なのだ。
流れる汗を手のひらで拭いながら、人気のないグラウンドを茫と眺める。あっ、蜃気楼。
「あの、聞いてます?」
声のする方へ向く一同。そこには眼鏡をくいくいしながら汗を流す学年一マニアックインテリジェンスを持つ木村がいる。
顔を合わせて頷く俺達。
「「「きいてませーん」」」
「ひどくないっ!?」
「ひどいのはお前だよ。なんでサッカーしに外へ来たのに雑誌を持ってんだよ」
「置く暇もなく連れて来たのは誰なんですかねぇ・・・」
ひどい奴もいるもんだ。そういえばなんかテンション上がってひたすら誰かの背中を押していた気がするけど、俺は関係ないな(確信)
「仕方なかろう。雑誌を眺めてによによしているお主をなんとかせよと百合子嬢に言われたのだ。拙者ら、百合子嬢には逆らえん(恐怖)」
「あっ、そっかぁ(納得)」
納得しちゃう木村は頭髪の薄い佐藤よりも素直な男子なのだ。素直すぎてつい教室でによによしちゃう系男子で、そのせいで女子からはちょっとひかれてる状況にも喜びを感じちゃう系男子でもある。レベルたけぇなおい。
「だいたい、なんで教室で読むんだよ。家かせめてトイレで読めばいいだろ」
「いやぁ・・・教室で読んでると女子たちが遠巻きにひそひそしてくるじゃない? それがほんと、えへへ(はにかみ)」
ほんとレベルたけぇなこいつ(身震い)
木村が持っている雑誌は毎週月曜日発売の『週間 フライデーは金曜日』だ。知ってるよ。
いわゆるゴシップ誌で、有名人のないことないこと書くのが評判であり、目玉は定期的に扱うウサミン調査隊の記事である。
今週はウサミン調査隊番外編らしく、表紙にはでかでかと赤字で『白銀の妖精 熱愛疑惑!?』と書かれている。
「で、なにが聞きたかったのよ」
「だからさ。ラブライカの実態はラブラブラブライカなのかってことが聞きたかったのよ」
「お、おう」
どうしよう田中、俺こんなときどんな顔したらいい?
教室に戻ろうにゃあ・・・。
だめだこいつ(笑)
口を半開きにして虚ろな目をした田中を放置して、俺は木村と向き合った。さてなんて言おうか。正直暑すぎて頭が回らない。だいたいこんな暑いなかサッカーしようとか言い出すとか頭沸いてんのか? 誰が言い出しっぺだよすずきぃ!
「あのさ、姉ちゃんの好みはともかくアーニャさんとは普通の友達だと思うよ。たしかに仲が良すぎるところもあるけど、お互いに親友だって言い合ってたし。女子の親友関係ってそんなもんなんじゃないの?」
そうなんかー。とひとまずの納得をして皆が黙りこむ。みーんみーんうさみーんとセミが鳴いている。あっ、風が涼しい・・・。
「・・・ん? いまの話なんかおかしくない?」
「おかしくないよ(断言)」
「そうか? そうか・・・いやいや、おかしいよ。女神様はともかくアーニャちゃんもそう言っていましたみたいな発言でしたよ。まるで直接聞きましたみたいな・・・」
途端に場が緊迫する。まさか、いやありえないでもこいつなら・・・っ! みたいなアトモスフィアが周囲に満ちる。俺がいつでも戦えるように体を動かすと、鈴木と藤田が静かに俺の両脇へ移動する。油断ならない奴らだ。特に頭髪の薄い佐藤がなんだか嬉しそうに俺の背後に移動しているのがなぜか一番恐怖を感じる。田中はうにゃーうにゃーと呻いていた。きもい。
「拓海さん・・・うそ、ですよね?」
眼前にいる木村の瞳には、様々な感情の色が浮かんでいた。驚愕、困惑、猜疑、憤怒、悲哀ーーーだがなによりも、俺を信じたいという、そんな切なる祈りが宿る瞳。
俺をそっと、木村に告げた。
「ーーーえへ☆(かわいい)」
「ん"あ"あ"い"あ"あ"あ"う"ぬ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
俺も俺の両脇を固めようとした二人も思わず硬直するほどの叫びだった。
木村は泣いていた。
ガチ泣きだった。
・・・ええ?(困惑)
「と"お"し"て"そ"ん"な"こ"と"か"て"き"る"ん"た"よ"お"お"お"!"!"?"」
「どうしたらそんな発音ができるんですか?(恐怖)」
「ぼくはっアーニャちゃんのふぁんでぇえすっ! んふっ! アーニャちゃんがぁだいすけでぇえ!! あふっ! ずっどずっどがんはってっ! みんなじでぇ・・・だれがおうえんしてもおんなしやとぉおもってるぅっ・・・だげどぉおぼくのおうえんはぁああしゅごいっ! ぶふっ! そのきもちで、ごごまで・・・ただぼくはぁあただぼくはぁっ! ふひゅん! アーニャちゃんにぃあ"い"た"い"っ"!!」
「いまのおまえに会いたいと思うアイドルはいないよ(震え声)」
つーか何て言ったのか半分も解らなかった。なんだこいつ面白すぎかよ(愉悦)
俺はそっと、崩れ泣く木村の肩に手を置いた。
「なあ木村。俺だってアーニャさんが来たときはそら驚いたさ。皆とこの感動を分かち合いたいと強く思った。でもな、アーニャさんはアイドルとしてじゃない、新田美波の親友としてここH県にまで来てくれたんだ。プライベートな時間だったんだよ。そういった時間を守ってあげるのもファンとしての勤めだろ」
「・・・うん」
「アーニャさんが好きなんだな」
「・・・うん」
「すっげー美少女だったよ(微笑)」
「アヒン」
木村は倒れた。
透き通るような青空を眺めながら、俺は生きることの哀しさについて想いを馳せる。いつの間にか、蝉の鳴き声も消えていて、夏の終わりを予感した。
俺達は、まだまだ子供だったーーーーーーーー
んでんでんで
虚ろな目をした木村の背中を虚ろな目をした田中が慰めるようにさすりながら一緒に青空を眺めている光景を眺めながら、俺はアーニャさんがやって来た経緯を適当にごまかしながら話していた。
夏休みの半ばの話、姉ちゃんが帰省した日、玄関で出迎えた俺、久しぶりの大好きな姉ちゃんの後ろから姿を現した美少女、つまりアーニャさん、姉ちゃんいわくサプライズ、腰を抜かしてびびる俺、笑うアーニャさん、可愛い、なんとお泊まり、部屋を掃除する俺、晩御飯が豪勢、お風呂を沸かす俺、アーニャさん可愛い、結局なにもないまま過ぎる夜(嘘)、アーニャさん好き、次の日帰る姉ちゃんとアーニャさん、やだやだ、また会う約束をする俺達、好き、以上。
非常に正直に偽りなく話したところ、なんだなにもなかったのか信じていたよブラザーとか何とか言いながら背中をばしばし叩いていく阿呆共。はは嫉妬は醜いぞ(嘲笑)
個人的にはアーニャさんの件がばれた時点で第97次勇者軍内輪揉め聖戦勃発を覚悟していのだが、話を聞いていた木村が定期的に奇声を発して倒れたため他の阿呆共の気勢が削がれて助かったようだ。ありがとう木村。おまえにだけ後で姉ちゃんとアーニャさんの私服ツーショット写真を見せてやろう。
そんなこんなで時間を潰して、昼休みも終わるからそろそろ戻るかなんて話しているとふと思いつきましたといった感じでこのメンバー唯一の彼女持ちであらせられる加藤様が呟いた。
「そういや皆、志望校決まった?」
加藤の質問に俺意外の全員が声を揃えて言った。
「「「A高校」」」
A高校はH県内有数の進学校で、特にここ数年は志望者数が多くとんでもないことになっている。でも今年から落ち着くといった噂も流れているが、姉ちゃんが卒業したことはか、関係ないから・・・(目そらし)
でもそうか。全員がA高校志望か・・・。
「うちの学年はほぼ全員がA高志望だろ・・・誰かは落ちるんだろうな。あっ、佐藤。学校が違っても俺らのユウジョーは不滅だぜっ!」
「まるで僕だけ落ちるみたいな言い方はよしてくれませんっ!? 言っちゃあ何ですがこのなかで一番成績高いの僕ですよっ!」
事実である。なんと《全能者》田中より成績が高い。頭髪が薄いのに生意気な・・・っ!
「でも佐藤ちゃん、本番に弱いから・・・」
「ば、馬鹿にしないで欲しいですね!? 試験なんてしっかり準備しておけば余裕ですから! 例え高校受験であろうと例外はありませんから・・・きっと・・・たぶん・・・うぅぽんぽん痛い・・・」
受験前からライバルを追い詰めていく加藤様の鮮やかな手際は本当に恐ろしい。
それからお互いに相手の苦手科目を挙げてプレッシャーを掛け合う阿呆共の共食いを楽しく眺めていると、鈴木さんが急に俺に向かって言った。
「んで、たくみんは?」
ふっと、息が詰まった。
いつか聞かれるだろうと思っていた。そのときは堂々と、はっきりと、かっこつけて答えてやろうと思っていたのに、実際は動揺してみっともない姿を晒してしまう。やっぱり俺なんてこんなもんだよなんて、諦めにも似た自己嫌悪が胸を満たしていく。
・・・それでも、この事だけは誤魔化しも嘘も、隠す事もしないと決めていた。
「・・・東京に、行こうかなって・・・」
「「「ふーん。いいんでない?」」」
「東京かー。定期的に限定グッズを送って欲しいな」「やっぱあれか。お姉さんと同居か。き、禁断の夜・・・っ!」「でもよっしゃ! これで受験ライバルがひとり減ったぜ!」「それは思っていても言ってはならんのでは?」
思わず呆然とする。
そんな俺をよそに、皆は昼休み終わるぞ戻るぞいえーいとか言いながら先に歩いて行ってしまう。
「どうしたよ?」
田中が隣に立っていた。
「・・・語尾はどうしたんだ?」
「今ぐらいはいいじゃないか。おまえと俺しかいないんだからさ」
「・・・そうかよ」
「そうだよ・・・思っていたのと違ったか?」
正直に言えば、もっと色々と言われるだろうと考えていた。ある意味自意識過剰で、でも過剰でもいいと思えるぐらいの付き合いはしてきたつもりだった。
だからこそ想像外の淡白な反応に、かなり戸惑っていた。
「勘違いはしてないだろうけどよ。皆、もっと色々言いたいことはあると思うぜ」
「・・・・・・」
「おまえが何かに悩んでいるのも知っていたし、俺達が力になれない類なのもなんとなく分かってた。正直、美波さんのこともあったから東京に行くってのも可能性としてあるかなって思ってた。
だからさ。おまえがどんな答えを出しても、道を踏み外さない限りは受け入れて、応援しようって決めてたんだ」
「・・・そっか」
「俺らみんな、おまえのことが大好きだかんな。安心しろよ。東京に行ってもたいして変わらん。困ったことがあったら東京までぐらい留年しない程度に学校ふけてでも駆けつけてやる」
「かっこつけんなばーか」
「俺は素でかっこいいから諦めな。一応聞いとくけどさ。なんで東京なんだ」
「・・・まだないしょ」
「そうか。言いたくなったら言えよ。そんで思いっきり笑ってやる」
「さいていだな」
「当たり前じゃん。なんたって俺達は、勇者軍なんだぜ。まっ、おまえが東京の高校に落ちたら大爆笑間違いなしだな」
「不吉なこと言ってんじゃねぇよ」
肩を組んでくる田中がほんと暑苦しくてうざーい。歩き難いじゃないかよばーか。あーほこのいけめーん。
こいつらはほんとに馬鹿で阿呆で、俺の前世を勇者とか信じちゃうどうしようもない連中で、ほんとにほんとに、しょうがない奴らなのだ。
小さく小さく、絶対に聞こえないように、俺はそっと呟いた。
「ばーか・・・・・・・・・ありがと」
「拓海がーーーデレたにゃーーーっ!!!」
「「「まじかようっひょー!!!」」」
猛ダッシュで戻ってきた阿呆共にもみくちゃにされながら、俺は眩しい青空を見上げたーーー本当に、阿呆な奴らだ。
こうして俺の青春は過ぎていって。
花咲き誇る暖かな春を目前に迎えた俺はーーーーー
ーーーーーー受験に落ちた
『東京女神 偶像崇拝』編ーーー完!!
嘘なんじゃ。
まだまだ続くんじゃよ。
ふぅ・・・うん。
いや違うんですよ(唐突)
ほんとはもうちょっと早く投稿する予定だったんです。
デレステですよ。イベントだったんですよ。回りのプロデューサーたちが本気なんですよ。そんななかでちひろさんが温泉に行こうとか誘ってくるんですよ。なら仕方ないじゃないですか・・・(悔しさの滲む漢らしい声)
僕は プロデューサー なんですよっ!(強エコー)
怒ってませんか?(震え声)
なんならお腹、ね? お腹見せますよへへ(卑屈な笑みで仰向けになる葛杉)
気がついたらお気に入りが100越えておりましたこと、本当に嬉しかったです。ありがとうございます。
当初は「お気に入りなんて全然興味ないな・・・な、ないんだからなっ! ふんっ」なんて麗しきオンーナ騎士みたいなことを言っていたんですが、体は正直なもので「や、やだ・・・お気に入りで嬉しくなっちゃうのほぅ!!(アヘアヘ)」と皆様に調教されちゃった☆
怒ってませんか?(震え声)
なんならおry
この喜びを伝えるためにはどうしたらいいでしょう?
脱がせますか?
脱がせばいいんでしょ?
脱がしましょうか?
脱がせましょうよぉ(ねっとり)
そんなわけでそのうちサービスシーンを出します。
期待するかは皆様自身の下半身と相談してお決めください。
次回投稿ですが、早いとか遅いとか言うから駄目なんだと葛杉は学んだ気になりました。
大まかな目安で言ったほうがいいような気がします。
よし。
次回はデレステで早苗さんのSSRが登場する時です。
きっと、すぐだから(無垢なる魂)
こんなところまでお読みくださり本当にありがとうございます。
楽しんで頂けていましたら幸いです。