東方呪刀話   作:村雨 晶

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一旦戦いから離れて休養。
この二人の組み合わせはいつか書きたいと思ってました。
にしても、この主人公、最近負けっぱなし…。





10話目

 

 

――人里近くの街道

 

 

「はあっ…、はあっ…」

 

 

紅刃は満身創痍な体を引きずりながら林の中を歩いていた。

 

 

(追撃の概念を切断してやっと撒けましたか…。しかし、やはり概念を切断するのは妖力を使いますね…。回復に回す余裕がありません。どこかで体を休めなければ…)

 

 

紅刃は近くの木に寄りかかると、ずるずると座り込む。

 

 

(ここで、休むのは、まずい…、いつ、あの、烏天狗、に、み、つ、か…)

 

 

痛みに苛まれながら紅刃の意識は無くなった。

 

 

 

 

 

 

「♪~~~♪~~~♪~~~」

 

 

多々良小傘はご機嫌だった。

今日は珍しく、3人もの人間を驚かすことができたからだ。(その3人とも他の何かに怯えていたようだったが、小傘は気が付かなかった)

 

 

「今日はもうお腹いっぱいだなあ。もうそろそろ帰ろうかな」

 

 

小傘が住処に帰ろうと林に足を踏み入れると、何かが足に引っ掛かり、転んでしまう。

 

 

「ぷぎゃっ!?もう、いったい何なのよ!…って、うわ!?」

 

 

小傘が足を引っかけたものを見ると、それは傷だらけで気を失っている紅刃だった。

 

 

「この人、妖怪の山の天狗、だよね。なんでこんな所で倒れてるんだろう?とにかく、この人を看病しないとね」

 

 

小傘は後ろから紅刃の脇に腕を通して足を引きずりながらも、紅刃を自分の家に運んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――多々良小傘の家

 

 

「ん…、ここは…?」

 

 

紅刃が目を覚まし、起きあがると、額に乗っていた手ぬぐいが布団の上に滑り落ちた。

紅刃は落ちた手ぬぐいを拾い上げると首をかしげる。

 

 

(私は確か、森の中で気を失ったはず…。拘束されていないとなると、少なくとも妖怪の山の者たちではない…。ではいったい誰が…?)

 

 

「あ、起きたんですね、よかった」

 

 

紅刃が思案していると、小傘が扉を開けて入ってくる。

その手には水の張った桶と新しい手ぬぐいがある。

 

 

「あなたは?」

 

 

「私は多々良小傘。この家に住んでる傘の付喪神だよ。あなた、妖怪の山の天狗でしょ?」

 

 

「いえ、この体――私のご主人様は確かに白狼天狗ですが、私はこの刀です」

 

 

そういって紅刃は傍らに置いてあった刀を持ち上げる。

 

 

「え?じゃあ、あなたも付喪神なの?」

 

 

「いいえ、そんな高尚なものじゃありません。今私がやってるような主人の体を乗っ取るような、呪いの装備のようなもの、ですよ。それより、あなたも、と言いましたよね、あなたは付喪神なのですか?」

 

 

――ならば何故あなたはそのご主人様の体を乗っ取って戦っているのかしら?

 

 

――主人に勝利を捧げたいだけならあなたが実体化して戦えばいいじゃない

 

 

永琳の言葉を思い出し、自嘲しつつも小傘に問いかける。

 

 

「うん!私は傘の付喪神なの!嬉しいなあ、私と同じ付喪神に会えるなんて!ああ、でもあなたはもうご主人がいるんだよね。いいなあ」

 

 

紅刃は再び付喪神という点を訂正しようとしたが、小傘があまりにも嬉しそうなのでそのままにしておこうと口をつぐんだ。

それに、紅刃自身も道具から生まれた小傘に親近感を持っていたのもある。

 

 

「それじゃあ、よければ私のこれまでのご主人様達について話しましょうか?」

 

 

「ほんと!?じゃあお願い!」

 

 

「ええ、では、私の最初のご主人様は…」

 

 

その日の深夜まで小傘の家からは楽しそうな話し声と笑い声がこぼれていた。

 

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