もうこの小説見てる人いないんじゃないかと思うけど投稿を始めた以上完結までは持っていきたい。
最早意地です。
次の更新はいつになるやら…
自我を得た妖刀――紅刃は初めて目覚めた戦いの後、様々な持ち主の手を渡り歩いた。
最初の持ち主である陰陽師が倒された後、戦利品として別の陰陽師の手に渡り、その後はそれの繰り返し。
時代が流転していく中、紅刃の正体に気付く者は少なかった。
気付いたとしても、紅刃によって斬殺され、その事実を知らせることができずに死んでいく。
時には徳川家の刀として、そして時には外国のある独裁者の手に渡ることもあった。
その度に紅刃は持ち主の一番暗い欲望を感知し、肉体を乗っ取ることでそれを実現しようとした。……それが成功することは一度としてなかったが。
そして、明治時代となり、科学が発展し、幻想が薄まってきてから紅刃は自身の力が弱まっていることに気が付いた。もはや自身の意思を持ち主に伝えることも、肉体を乗っ取ることもできない。
幻想の力がなければ紅刃はただの刀だ。
切断の能力どころか、自らの劣化すら止めることができない。
やがて、紅刃の刀身は錆が浮き、鈍となった紅刃を求める者はいなくなっていた。
それどころか、使われたとしても欠陥品として捨てられることもあった。
かつては妖刀として知られていた紅刃だったが、時代が変わるごとにその名は薄れていき、やがて、紅刃は世界から姿を消した。
忘れられた者たちの理想郷、「幻想郷」へと渡っていたのだ。
しかし、紅刃が辿り着いたのは無縁塚と呼ばれる場所だった。
そこは博麗神社に次いで外の世界に繋がりやすい場所だ。
故に紅刃がそこに流れ着くのも当然と言えば当然だった。
幻想郷に辿り着いた紅刃は力を取り戻していた。
錆びついていた刀身は綺麗になり、妖力も能力も元に戻っていた。
だが紅刃は単体では動くことができない。
だから紅刃は待つことにした。
自分を見つけ、そして使ってくれる新たな主人のことを。
紅刃が幻想郷に流れついてどれほどの年月が経っただろう。
やがて無縁塚に来た一人の人間が紅刃を拾い上げた。
「こんなところにこんな立派な刀があるなんて。おいらはついてるな!」
紅刃は自分を拾い上げた人間を見る。
やや大きい身長に適度についた筋肉。精悍な顔に少年らしさを残した顔は、20代になったばかりといったところか。
青年は紅刃を腰に差すと、家へと戻る。
青年の家には一人の女がいた。
女は病気だった。
青年は女の夫だった。
青年は女の病を治したいと常々考えていた。
薬草を探して、薬を作りたかったが、能力を持たない彼にとって人里の外はあまりにも危険だった。
今回、紅刃を拾った無縁塚に行けたのも、博麗の巫女に頼み込んでようやく手に入れた妖怪除けの札があったからだ。
紅刃は青年の心を覗いた。
そこにはかつての主人達のような欲望は無かった。
あるのは、目の前の女の快復を望むことのみ。
今まで会ったことのない心の持ち主。
紅刃には理解できなかった。
この男は女に力を求めているわけでもない。金を求めているわけでもない。名誉も、権力も求めていない。
ただそばにいてほしい。そこにいるだけでいい。自分を愛してくれるだけでいい。
そこで紅刃は男が思い浮かべた一つの単語に興味を持った。
「愛」とはなんだ?
感じる限りでは、それは自分が主に捧げる忠誠ではない。
似て非なるもの。
そういえば、と紅刃は今までの主人の行動を思い起こす。
異性、もしくは同性の者とで体を重ね合わせていたのを見たことがある。
あの時の主人の心境によく似ている。
だがそれとも違うような気がする。
何なのだ?愛とはいったい――。
紅刃は今の主人を見つめながら答えのない問いを重ねていくのだった。