東方呪刀話   作:村雨 晶

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無駄に長いです。
もう少しうまくまとめたい。
しかもまた主人公出てない…。



6話目

 

 

――博麗神社 縁側

 

 

「先代の巫女が現役だったころは、幻想郷が最も混乱していて、物騒な時期だったわ。スペルカードルールなんて無かったし、妖怪は好き勝手に人を喰らい、弱い妖怪は大勢の人間に袋叩きにされる。わたしが理想とした楽園は未だに出来上がっていなかったの。紅魔館の吸血鬼が幻想郷に来たのもこの時期ね。

だからこそ、その代の博麗の巫女には人と妖怪、両方を打ち倒せる実力が必要だったの。そして先代は肉弾戦においては鬼と同格の実力を持っていたわ。

その代わり、術を行使するのが苦手で、彼女ができたのは、身体強化と簡単な退魔術、博麗大結界を維持するための術だけだった。先代は、妖怪退治や人間と妖怪の仲を取り持ったり、当時はまだ危険が多かった人里の警護などをしてたのよ。

そして、あの刀が幻想郷に流れ着いたのは先代が引退する直前だったわ。

恐らく、外の世界で存在を忘れられてここに来たのでしょうね。そして、その刀を人里の男が無縁塚で拾ってしまった。その結果、彼は人里の人間を殺しまわるようになった」

 

 

紫は静かに昔のことを話し始めた。

霊夢が巫女になった時には既に先代は死んでおり、彼女のことを知る人間は今はほとんど老人になってしまっている。そして先代を知る妖怪たちはすすんで彼女のことを話そうとしなかったため、霊夢が先代について知るのはこの話が初めてだった。

 

 

「それで、その男は先代に倒されたのか?」

 

 

「ええ、先代は彼と一騎打ちをして、勝利し、刀を封印したの。もっとも、先代が倒したというよりは自滅した、というのが正確だけど」

 

 

「自滅?どういうこと?」

 

 

「彼の体は今の犬走椛と同じように刀の意思に乗っ取られていたわ。でも、彼の体はその意思が使うには脆すぎたのよ。だから、戦うたびに体は激しく消耗し、最後には立つことすらかなわないほどに弱っていた。先代はそんな彼から刀を取り上げて、封印した」

 

 

「それで、男は無事だったのか?」

 

 

「いいえ、彼は肉体を酷使されたことで虫の息で、思考も完全に狂っていたわ。

自分の意識と刀の意識、どちらが自分なのか分からなくなって自我が崩壊したまま死んでいったの」

 

 

魔理沙はその話を聞いて、少しの間考え込むと、

 

 

「なら、今回も椛がある程度弱るまで待てばいいんじゃないか?もちろん、自我が崩壊するまでは待てないけどな」

 

 

と、意見を紫に述べた。しかし、紫は首を横に振った。

 

 

「いえ、今回はその手は使えないわ。以前は使い手が人間だったから刀の意思や戦い方に耐えきれなかったの。それに、彼の体が激しく消耗したのは、妖力を無理矢理使っていたからなのよ」

 

 

そこで霊夢が納得したように言う。

 

 

「今回は使い手が妖怪で、しかも剣の扱いに長け、肉体も普通の人間に比べれば頑丈で、妖力が扱える。つまり、以前の弱点が全て無くなっている状態なのね」

 

 

まさに鬼に金棒ね、と霊夢が呟く。

 

 

「そういえば、紫たちはなんでその刀を壊さなかったんだ?そんな刀があっても、百害あって一利なし、だろ?」

 

 

魔理沙は紫に疑問をぶつける。紫が幻想郷を最優先事項として考えているのは彼女も知っていたし、そんな彼女が幻想郷を壊しかねない物を残す理由が分からなかったからだ。

 

 

「私も壊そうとしたわ。でも壊せなかったのよ」

 

 

「壊せなかった?紫の能力でも?」

 

 

魔理沙は驚いた。霊夢も顔には出ていないが内心驚いている。

紫の能力は万能に近い能力だ。いくら妖刀だったとしても、有無の境界をいじればその存在は消えてしまうだろう。なのに、紫は壊せなかったと言うのだ。

壊さなかったのではなく、壊せなかったのだと。

 

 

「刀の境界をいじろうとすると、私の能力が使えなくなったのよ。まるで刀が能力を無効化したみたいにね。だから私と先代は刀の妖力を利用した封印を施した。いくら能力や術を無効化できても自分の力は無くせないでしょう?」

 

 

「そう…、だから呪い返しの術と似てたのね。あの術式」

 

 

霊夢は合点がいった、とうなずく。

 

 

「霊夢が妖力をあの刀から感じなかったのはその術のせいでもあるわ。ほとんどの妖力が封印のために使われてたから外には漏れなかったのでしょうね」

 

 

紫が補足すると、魔理沙は声を上げる。

 

 

「でも、それが分かっても、事態の解決にはならないぜ。封印の方法が分かっても、椛の抵抗を止める方法がない」

 

 

紫の能力が効かないならお手上げだぜ、と魔理沙は言う。

 

 

「ええ、だから今回は幻想郷中の力を借りますわ。紅魔館、白玉楼、永遠亭、人里、冥界、妖怪の山、守矢神社、地霊殿、命蓮寺、人間たち、妖怪たち、果ては妖精たちの力も」

 

 

「数で押す、というわけね。確かに相手の力がほとんど分からないうえに能力を無効化する力を持っている以上、それが一番でしょうね。でも、あいつらがそう簡単に動くかしら?」

 

 

紫は優雅に微笑むと、答える。

 

 

「そう簡単には協力はしないでしょうね。けど、彼女のことを伝えれば各々独自に動き始めるでしょう。それだけでも彼女を追い詰めることができますわ」

 

 

その後、八雲紫により、犬走椛の情報が伝えられ、事実上の包囲網が築かれることになる。

 

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