東方呪刀話   作:村雨 晶

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8話目

 

 

――迷いの竹林

 

 

 

「そちらから出てきてくれるとは好都合です。永遠亭に行く手間が省けました」

 

 

椛はニヤリと笑うと、標的を鈴仙から永琳に変える。だが、永琳は気にせずに言葉を続ける。

 

 

「あなたの能力は「ありとあらゆるものを斬る程度の能力」、でしょう?」

 

 

永琳が言うと、椛は驚きの表情になる。

 

 

「私の能力を見破るとは、さすがは天才と呼ばれるだけはあるようです。ですが、それが分かったところで防ぎようがないでしょう?」

 

 

「いいえ、防ぎようはあるわ。鈴仙、私が攻撃したらあなたも弾幕で攻撃しなさい」

 

 

永琳は鈴仙に言うと同時に攻撃を開始する。

 

 

――神符「天人の系譜」

 

 

痛みに耐えながらも鈴仙も永琳に言われた通りに弾幕を張る。

 

 

――波符「月面波紋(ルナウェーブ)」

 

 

「無駄だと…、言っているでしょう!」

 

 

椛が刀を振り、弾幕を消した瞬間、椛の肩に矢が突き刺さった。

 

 

「なっ…!?」

 

 

椛は被弾したことに動揺する。

 

 

「やっぱり、種類の違う攻撃は同時には無効化できないみたいね。それで、あなたは何故幻想郷の主要な人物ばかり狙うのか、聞かせてもらおうかしら?」

 

 

「知れたこと、私があなたたちを斬ることで、ご主人様に勝利を捧げる、それだけですよ」

 

 

「果たして本当にそうかしら?」

 

 

「何が言いたいのです?」

 

 

椛がイラついたように問うと、永琳は答える。

 

 

「あなた、本当はただ人を斬りたいだけで、ご主人様なんかどうでもいいんじゃない?」

 

 

「そんなわけがないでしょう。私はご主人様のために存在し、戦い、勝利を捧げる。これのどこにご主人様を蔑ろにしている要素があるというのです?」

 

 

「ならば何故あなたはそのご主人様の体を乗っ取って戦っているのかしら?主人に勝利を捧げたいだけならあなたが実体化して戦えばいいじゃない」

 

 

その言葉を聞き、椛が動揺する。

 

 

「そ、れは…」

 

 

「私が当ててあげましょう。あなたは主人を大義名分にして相手を斬りたい、と考えているだけの戦闘狂だからよ」

 

 

永琳の言葉を聞くたびに椛の頭の中で記憶がよみがえり始める。

 

 

――この鈍らめ!石すら斬れないなんて!

 

 

「違う」

 

 

「あなたは本当は主人なんてどうでもいいと考えている」

 

 

――もう、こんな刀いらないだろ

 

 

「違う!」

 

 

「主人なんてまた新しいのを見つければいい、と考えている、そうでしょ?」

 

 

――ああ、捨てちまおうぜ、こんな欠陥品。

――どうせ、代わりなんていくらでも見つかるだろ。

 

 

「違う、違う、違う!私は、わたしはあああああああああああああああ!」

 

 

永琳の言葉とよみがえる記憶を振り払うように、椛は刀を振った。

 

 

「っ!…逃げたか…」

 

 

その一振りは永琳の右腕を切り落とした。そして、永琳が一瞬怯んだ隙をついて椛は姿を消していた。

 

 

(追うのは無理ね、うどんげの怪我も治療しないといけないし)

 

 

永琳は右腕を蓬莱人の驚異的な再生能力で治すと、鈴仙に近づき、傷の具合を確かめる。

 

 

「ごめんなさいね、うどんげ。あなたを囮に使ってしまって」

 

 

「大丈夫ですよ、師匠。私から言い出したことですし、私が見えなかったせいか傷も浅いですしね」

 

 

笑いながら鈴仙は永琳に答える。鈴仙の言うとおり、その傷は浅いものだった。

 

 

(それにしても、彼女の動揺具合からして私の言葉以外にも動揺してたみたいだけど、いったい何に動揺したのかしら?)

 

 

永遠亭に戻る永琳の疑問は竹林の中に消えていった。

 

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