たぶんしばらくは投稿がまちまちになります。
――魔法の森
椛は走っていた。無我夢中で走っている間にも、永琳の言葉と思い出してしまった記憶が頭の中で渦巻いていた。
(違う、違う、違う!私はご主人様のために戦っている!蔑ろなんかにしていない!)
でも、と心のどこかで考えてしまう。
(でも、否定できなかった、八意永琳の言葉を否定できなかった!また、捨てられてしまう!ご主人様に見限られてしまう!)
(嫌だ、嫌だ!せっかく力を手に入れたのに!ご主人様の役に立てるのに!)
今の椛は酷く動揺していた。永琳に心の隙を突かれて精神が弱っていた。
だから、直前まで攻撃に気づかなかった。
――「幻想風靡」
ぎりぎりで弾幕に気づいた椛は全ての弾幕をグレイズし、回避する。
ここでようやく椛は目の前を飛んでいる人物に気が付いた。
「射命丸、文…」
「上司を呼び捨てですか、椛?いえ、今のあなたは椛ではなかったわね。」
文は冷たい表情で椛を見下ろしている。その眼は明らかに「敵」を見る目だった。そして、文は烏天狗としての任務を全うするために言葉を紡ぐ。
「天魔様からの命令よ、「暴走している犬走椛を捕獲せよ」とね。降伏するならば、手荒い真似はしないけど?」
「わ、たしは…、駄目です、降伏などできません。そうしたら私は私であることまで否定することになる…!」
椛は少し迷う素振りを見せるが、臨戦態勢をとる。
文はため息を一つ吐くと、呆れたように言う。
「そう…、残念ね、あまり椛の体を傷つけたくないのだけど。最後に一ついい?
貴方の名前は?いつまでも椛じゃややこしいわ」
「私に名前は無いですが、そうですね、…紅刃。周りの人間は私をそう呼んでいました」
「そう。それじゃ、紅刃。さようなら」
――「無双風神」
先ほどとは比べ物にならないほどの弾幕が椛、いや、紅刃に襲いかかる。
紅刃は刀を振り、弾幕を消し去るが、文はすでに次の攻撃を仕掛けていた。
――疾風「風神少女」
紅刃が反応できないほどの速度で文が突進する。その威力は文が操っている風の力も合わさり、局地的な台風を生み出すほどだった。
当然、避けきれなかった紅刃はそれをくらい、吹き飛ばされる。
「がっ…はっ…!?」
げほげほ、と紅刃がむせると、口を押さえた手には吐き出した血がべったりと付いていた。
ここにきて紅刃は文に勝てない、と悟る。
(速すぎる…っ!幻想郷最速だと聞いていましたがこれほどとは!これでは私の能力が当たらない、いや、彼女に対して使うことさえできない!)
「ふうん、八雲紫が警戒してたからどれほど強いのかと思ったけど、拍子抜けね。ここまで戦闘経験が無いなんて。能力に依存してるのが丸分かりよ?」
そう言いながら文は紅刃に近づく。その姿には、どんな距離からでも紅刃の斬撃を避けられる、という自信が見えていた。
だから、紅刃は逃げる算段をした。文が紅刃まであと5歩まで近づいた時、刃は振られた。
当然、文は斬撃を避けた。紅刃はもう一振りしつつ、逃走を開始した。
「待ちなさい!」
文は紅刃を追おうとする、だが、それはできなかった。
(体が動かない…!?いや違う、これは紅刃を追おうとする動作だけが封じられている…!?)
結局、文が紅刃を追うことができるようになったのは、これから30分後のことだった。