鹿屋デイズ・鹿屋ライフ   作:ミギー・ドン

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 鹿屋基地で任務をこなす艦娘たちと、おっさん提督のうるさい日常のお話です。アンチ・ヘイトというほど大仰なものはございませんが、一部口調が砕けていたり、絶対しないであろう行動をすることはあるかと思います。
 それでもいいという方はお読み下さい。


三周年だよ全員酩酊

 三周年である、英語でいうとサードアニバーサリーでありつまりめでたい。

 実際のところは、サムソンが鹿屋基地に赴任してからまだ2年半なのだが、隼鷹が「おっさん早生まれなのオ!? じゃあ宴会が早くても問題ないじゃん!」と、謎の理屈で押し切ったため、今こうして宴が催されているというわけである。

 

 ここの提督の名は寒村先生(さむらさきお)、階級は中佐である。周りからはサムソンとかティーチャーとかサムソンティーチャーとか呼ばれているが、ここではサムソンで統一させていただくものとする。

 

 ともかくサムソンがトイレから戻ると、もはや場は混沌と化していた。

 寝る者、歌う者、飲む者食う者踊る者…艦娘の外面だけしか知らない者からすれば、「なんと羨ましい!」といった感想も出ようが、実際はさにあらず、であった。

 異性の目の殆ど無い基地において、慎みや恥じらいといった概念は早晩その意味を失い、男色を趣味とした者、あるいは女性が苦手な者が落ちる地獄があるとすれば、きっとここはそれと同義であろう。

 

 「んんんんんんんn!!!」

 「ぶっこ…ンアアアアアぶっころされてぇかァアアアアアこのクソだけんがァアアアア!!!」

 

 場の中央では、高雄型重巡洋艦・摩耶と、金剛型高速戦艦・比叡の腕相撲が始まっている。

 突き出された摩耶の尻はスカートがめくれパンツが丸出しで、また比叡もおよそ女子の取っていいポーズとは言えない謎の姿勢で力をぶつけ合っていた。

 

 「こらァ摩耶ー! セクスィー! セクスィーショットじゃぞ! パンモロ警報発令中であるぞー!」

 「うるっせぇえええええ利根てめぇエエエエエー!」

 「司令よ、摩耶のパンツだぞ。今ならなんと見放題だ。写真に撮っておいて、あとでデータでやろうか?」

 「そんな事をしたら明日の夕刊に載ってしまうんじゃないかな…」

 「…どういった方向性で乗りたいかにも拠るんじゃないか、事故か事件かあるいは人事か」

 

 大騒ぎする利根型航空巡洋艦・利根と、サムソンの前のつまみをぽりぽりと齧りつつ絡んでくる陽炎型駆逐艦・磯風。利根は騒ぐだけで酒癖は悪くないのだが、こちらの磯風はあまりよろしくない。普段は真面目で物静かな娘なのであるが…

 

 「摩耶にサンドバッグにされるか、盗撮で逮捕されるか、左遷されるかってことじゃないか!」

 「いかにも左様だな…まあいい、じゃあ目に焼き付けておけばいいさ」

 「そういうのいいから…」

 

 サムソンはそう言って、グラスに満たされたハイボールを半分ほどあおる。コン、と乾いた音を立て置かれたグラスに、すかさずウィスキーを注ぐのは秋月型駆逐艦・初月であった。

 

 「いや、あの…初月さん? まだ残ってるよ?」

 「グラスが空いたら即注ぐものだと教わったぞ。まして僕はここじゃ新入りだから、そういうの気をつけないと」

 「いや、全部空いたらでいいからね? あと序列とかあんまそういうのも気にしないでいいからね? あとそれ炭酸水じゃなくてタブクリアだからね?」

 

 既に酔っぱらっているのか、初月は聞く耳をもたずドボドボとタブクリアをグラスに注ぎ、傍に散らばっていたポッキーでもってかき混ぜる。しっとりとしただけん、という評を持つ初月にそうまでされては、飲まぬという訳にもいかない。

 サムソンは面白い表情でもってそれを呷った。

 

 「ああああああアアア! んだらこの金剛型がァアアアア! 高雄型ナメんなこらァアアアアア!!」

 「ふっふっふ…タカオタイプがいかに優れていようと、それは重巡でのお話ですよ摩耶ちゃん」

 

 初めは拮抗していた力比べであったが、そこは比叡、戦艦である。摩耶の腕はもはや接地寸前であり、彼女もおよそ女子がしていいものではない表情を浮かべて耐えていた。

 

 「うぐぐぐぐ…!」

 

 負けん気の強い摩耶は、いくら宴席での余興とは言え、負けることに我慢が出来ないのであろう。そこでふと、何かを思いついたようである。

 はた、裏技か、奥の手か。それともそれ以外か。

 

 「おいィイ比叡てめェこらオイ、お前の後ろにな! ヒゲ生やしてメガネかけたおっさんが見えるぞ!」

 「なんと!?」

 

 その言葉で十分であった。比叡は力比べの最中であるにも関わらず、体勢を変えて真後ろを見た。

 次の瞬間、比叡の身体は叩きつけられた己の手の甲を中心として回転し、そして吹き飛ぶ。

 

 「あいたー!!」

 「フゥーッ、フゥーッ、ハハハッ、ぜぇぜぇ、どうした比叡ちゃんよ、知らないヒゲのおっさんはいたかよ」

 「き、汚いですよ摩耶ちゃん! あれ提督じゃないですか!! ヒゲのおじさんはもっと雅でやんごとなき顔してましたよ!!」

 「へへへ…どのヒゲのおっさんの事だと思ったんだよ、あたしは別にあのヒゲのおっさんの事なんて言っちゃいねえぜ…」

 

 比叡の手を取って引き起こし、摩耶はギタリと笑ってみせた。確かにそうだ、と比叡も納得して笑い、そのまま座って酒を飲み始めた。あのおっさんがどのおっさんの事かはここで明言するのは避ける。

 

 「…ちょっと胃が痛いんだけど」

 「まあ、うむ…あれはギリギリだなあ…」

 

 

 

 さて、宴もたけなわである。

 寝てしまったものは適当にどけて、今度は隠し芸大会が始まろうとしていた。

 

 「はい! 一番叢雲! やるわ!」

 「イエーーー!」

 

 割れんばかりの拍手と歓声を受け、お立ち台に上がったのは鹿屋基地最古参の艦娘、特型駆逐艦・叢雲である。

 酒を飲むと割と人当たりがよくなるので、こういう席においては大抵飲まされているようだ。

 そんな叢雲は腕を組んだまま動かない…いや、身体の一部分だけが動いていく。

 

 「あれ動くんだ」

 「あぁ、アタマノウエニウイテルーノのことね。私も最初驚いたけど、これはもうオチが見えたわね」

 

 カルーアミルクを舐めていた千歳型軽空母・千代田と、水割りを呷る妙高型重巡洋艦・足柄。比較的静かな部類に入るが、どちらも一癖ある艦艇である。

 ともかくそんな彼女たちを前に、叢雲のアレ…通称アタマノウエニウイテルーノが、移動を終えて頭にくっつく。

 

 「クワガタ!」

 「…」

 

 場が一瞬しいん、と静まり返る。

 叢雲は完全に滑ったと、そう悟ったのか、アタマノウエニウイテルーノと頬を真っ赤に染めつつお立ち台から降りていく。

 

 「叢雲ちゃんそれ前にもやったっぽい…」

 「えッうそ、何時!? マジで!?」

 「二周年の時にやったな、あの時は受けたが…まあ相当酔っぱらっていたからな…」

 「そ、そういうのは早く言いなさいよバカァ!」

  

 同期の白露型駆逐艦・夕立と初春型駆逐艦・若葉に突っ込まれ、叢雲はソファの上で悶絶する。

 だが今更どうなるものでもなく、次の挑戦者がお立ち台に立った。

 

 「二番時津風ぇ、お歌を歌うよぉ」

 

 何処から調達したのか、マイク代わりの長ネギを持って壇上に上がったのは陽炎型駆逐艦・時津風であった。

 無邪気な子犬との評を持つ時津風は、部隊のアイドルと言っても過言ではない。その時津風が歌を歌うとなれば、皆が優しいキモチでもって眺めるのも無理ないことである。

 

 「~~~~~♪ ~~~~~~~♪」

 

 ジャス何とかとかいう謎の組織に配慮した結果、その歌詞は何故か表示が出来ないが、時津風の喉からはどこか電子音めいたボーカルが流れ出てくる。

 

 「こ、これは…」

 「なぁ磯風さんや、あれはアレかね」

 「アレだな…ツインテールと緑のチョッキが目印のアレ」

 「チョッキて」

 

 その歌声を聞き、跳び起きて壇上に登ったのは同じく陽炎型駆逐艦の雪風と、扶桑型航空戦艦の山城であった。

 

 「「「~~~~~♪」」」

 

 「わはははははは!! 三人ともえーとホレ、何じゃっけ、初音? 初音ナントカの真似が上手いのー!」

 「そりゃまあ、そうだけども…いや何かズルくない!? ズルいよね?」

 「僕も歌くらいなら出来そうな気がするよ、次までに練習しておこうかな」

 

 曲が終わり、急造のユニットが頭を下げれば、否が応にも場は盛り上がる。時津風は何故か集まった同僚たちに胴上げをされ、嬉しそうである。

 

 「まぁ、いいか…あれで作った歌って著作権とかどうなってるの?」

 「それは知らん。さて、アレがいいなら私にも出来ることがあるぞ」

 

 そう言うと磯風は手にした梅酒をかっと一息に呷り、傍にあったフランスパンを手に壇上へと向かっていく。

  

 「三番磯風、物真似をさせていただこう」

 「おっいいねー! サンマの物真似とかどう!?」

 「それはまたの機会とさせて頂く。今回はそうだな…んん、ん!」

 

 『青いのとか赤いのとか白いのとか黒いのとか沢山いるけど大体同じ顔してる人の真似』

 

 磯風は瞑目し、咳ばらいをいくつかすると、フランスパンをサムソンに突きつけては穏やかな声で、

 

 「問おう、貴方が私のマスターか?」

 

 とだけ呟いた。 

 だがすぐに、ブーイングの嵐が巻き起こる。 

 

 「磯風てめェー! やめろや! 汚ないぞそれェ!!」

 「それいいなら誰かしら何か出来るじゃん!!!」 

 「何故だ、時津風は良くて私のこれが何故いけないのだ」

 「オラー提督ゥー! 何か言ってやれ何かー!!」

 「あー僕ァどっちかっつーと赤毛で途中で髪型が変わる幼馴染の方をやって欲しいかな…って」

 

 日和ったサムソンの言葉を受け、磯風はニヤリと笑う。だがその後ろから、今までおにぎりを食べていた雲龍が壇上に上がり、そしてしなを作って、口を開く。

 

 「おはよう浩之ちゃん、今日もいい天気だね!」

 「誰だよ浩之って!!!!」

 

 誰だろう。

 

 

 

 かくしてちょっと早い、三周年記念パーティは幕を閉じた。

 協議の結果時津風と磯風、雲龍の芸はノーコンテストとなり、次回以降は禁止処分となるのだが、それはまた別の話である。

 なお繰り上げで優勝した叢雲には、ボーキサイト一年分が送られた。

 

 「意味ねぇー…」

 




 ブラウザ版をプレイしていて思ったこと考えたことをネタとして書いております。
 元ネタ解説などは無粋なのでしませんが、気になる点や誤りなどありましたらお伝え下さい。

 ちなみに嫁は雲龍です。
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