鹿屋デイズ・鹿屋ライフ   作:ミギー・ドン

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超久々の更新となります。
後書きにちょっとしたお願いがございます。


おさいじゃったもんせ、鹿屋基地・前編

 

 これまでのあらすじ

 

 大和型戦艦二番艦・武蔵の着任が決まった鹿児島県は鹿屋基地。

 代わりに転籍していった山城、隼鷹、千代田との別れ。そして春を待つ鹿屋の艦娘達……彼女らの日常は穏やかに、時に激しい。

 

 

 ◇

 

 

 「フゥ───ン!!」

 

 各鎮守府に贈られてきた、ダイキャスト製の瑞雲でブンドドする、本日の秘書艦である朝霜。

 瑞雲がそんな動きをしてたまるか、といったマヌーバをしながら、朝霜は作戦室を走り回る。

 

 「清霜のヤツは戦艦になりたがるけどよぉ、アタイは瑞雲になりたいと感じるな」

 「ン……夢のある話だな……それはそうと朝霜君、危ないから走り回るんじゃあないよ」

 「艦娘がコケたりぶつかったりした程度でケガするかよぉー!」

 「家具が壊れるからね!? あんまり落ち着きがないと摩耶を呼んでくるけど……」

 「はー!? なんでそういう事言うかねえ提督はさぁ! アタイが摩耶さんにびびって大人しくなるって、出会ってからもう結構経ってンのにさ、ワンパよワンパ!」

 

 良くも悪くも子供らしい朝霜が、瑞雲を宙返りさせつつ、サムソンに噛みつく。

 こういった艦娘達の相手は、彼女の言う通り慣れたものであるが、だからといって毎度毎度効果的に諫めることは出来ない。サムソンは手元の受話器を無言で取り上げ、ニヤリと笑った。

 

 「あ、ちょ! 良くないぜ提督、良くないと思うぜアタイはさ!」

 「ワンパですまんね。まぁ別に足柄でもいいんだけどさ」

 「ガミガミオババとの二択かよ! わかった、わかったよ……はい、瑞雲着水しましたよーっと」

 

 さすがに足柄と摩耶の威力には怯えたのか、朝霜は瑞雲を所定の位置に戻しては、己の席についた。

しかし彼女に、秘書艦としての仕事を完璧にこなす技量はない。手紙を読んだり、片付けなどは出来るものの、それだけである。

だがサムソンは、固定の秘書艦を用いることはしていない。多少の不便があっても、それを踏まえて、皆と仕事をする……それが彼の信条でもあった。

 

 「オババとか言うんじゃないよ、彼女まだ若いんだから」

 「そうかねえ? アタイらピチピチのギャルからしてみりゃ、あのくらいのチャンネーは皆オババだろ」

 「それ僕以外に言うんじゃないぞ……血尿出るまで訓練させられるよ」

 「うへえ」

 

 そうこうしているうちに、日は傾き、日中業務が終わる。

 朝霜は迎えにきた清霜と連れ立って、風呂へと行ってしまった。サムソンは胸ポケットから煙草を取り出してはくわえ、喫煙室へと歩いて行く。

 そして途中すれ違った利根、天城らと二言三言交わして、室内へと入った。

 

 「ふー……」

 「ペェ~ポニ~みんななかまなぁんだぁ~……っと、あら提督」

 「何その歌……」

 

 入ってきた足柄はその問いには答えず、加熱式タバコの吸い口を銜える。

 

 「ふぅ……」

 「天城は大分、慣れてきたみたいだね」

 「あァ、そうね。雲龍と葛城に面倒見て貰ってるから、まぁ正空としての仕上がりはまずまずになるんじゃないかしら」

 「隼鷹たちの抜けた穴は、そこまで心配せずともいいか?」

 「ン……私には断言できかねるけど、ね。雲龍型三姉妹、はべらせてンだから、ドンと構えておきゃあいいのよ」

 

 意図してのことか、あるいは天然か。足柄の言葉に、サムソンが若干ではあるが眉根を寄せる。

 

 「侍らせてる、っていうのは心外だな……」

 「そお? 提督だっていつまでも着任したてのボウヤじゃないんだから、ある程度は図太く生きてもいいんじゃないの」

 

 今日の足柄はどこか意地悪な物言いをする。こういう時は波風を立てず、穏やかに返すのがサムソンのやり方である。

 彼は部下、あるいは大事な戦友である艦娘達の扱いについては、細心の注意を払って接してきた。

 

 「僕はそういうガラじゃないって、長い付き合いなんだからわかるだろう」

 「甲斐性なしともいえるわね。女ってのは意外と、グイグイ行く男も嫌いじゃないのよ」

 「……君もか?」

 

 足柄はふうっと煙を吐き出しては、目の前にいる男を見た。

 

 「そうねえ……この戦いがいつ終わるか、それは判らないけれど……もしそうなったら、提督の横に立っていたいって気持ちはあるわ。それがこの先、膨らんでいくのか、萎んでいくのかは……判らないけど」

 「あ、うん……そ、そうか」

 

 迂遠なのか、直球なのか、ともあれ足柄の表情に嘘は感じられない。サムソンは若干どもって、答えるのが精いっぱいであった。

 

 「ふふン……なんちゃってね。はぁさて、今日は演習だなんだで疲れちゃったから、部屋に戻るわ。また明日ね、提督」

 「ああ……お疲れ様、足柄」

 

 サムソンは腕を組んで、中空を見据える。

 この基地において、男性は彼一人だ。出入りの業者はあれど、艦娘を口説くといった行為に及ぶものは、今のところ報告されていない。禁止されているわけでもないのだが、艦娘は皆、国防の為に身を捧げた乙女たちであるから、手を出そうものならおっかない憲兵さんたちがやってくるのだと、そう思われているのだろう。

 

 「ふふ、僕がそういうガラかね」

 

 下世話な言い方をすれば、ハーレムである。

 だが女というものは怖い。誰か一人を重用し、あるいは恋愛関係などにもつれこんだとして、それがどんな悪影響を及ぼすか。

 さればこそ細心の注意を払って彼女らと接するわけである。

 そんなサムソンの心に、足柄の言葉は不思議な波紋を起こした。

 

 いつの間にか燃え尽きていた煙草を捨て、彼は喫煙室から出る。

 冬の空はいつしか暮れて、星が瞬き始めていた。

 

 

 ◇

 

 

 翌朝。

 

 「さて、今朝みんなに集まってもらったのは他でもない」

 「ボーナスでもくれるのか?」

 

 磯風の言葉に苦笑しつつ、サムソンは部屋の灯りを消し、手元のPCをいじってスクリーンに映像を映し出した。

 

 「お……?」

 「見て貰えばわかると思うが……」

 「まさか、それが武蔵……か?」

 「マジで!? えっちょっと待って超かっこよくない!?」

 「すごい服装っぽい!」

 

 映し出された一人の艦娘の姿に、皆思い思いの反応を示す。

 確かに、露出された豊かな胸部はさらしが巻かれているだけだし、スカートの丈も長門や陸奥もかくや、といった短さだ。

 しかし背負った艤装は並大抵のものではなく、それについて隣の者と話す艦娘もいる。

 

 「はいはい静かに。ともかく、これが武蔵だ。僕もつい先日この資料を貰って見て、まぁそれは驚いたよ」

 「眼鏡褐色サラシ巨乳巨女とかちょっと盛りすぎじゃない?」

 「いや巨乳に関してはうちには雲龍がいるから大丈夫だろ」

 「……なに言ってるの摩耶さん?」

 「ていうか摩耶もデカいじゃろ」

 「あたしはそこまでデカくねえよ! こんなタッパもねえよ!」

 

 女子が一堂に会せばこの騒ぎである。サムソンは再び制しつつ、続ける。

 

 「大和型超弩級戦艦二番艦・武蔵。佐世保での基礎訓練がもうすぐ……今週中には終わるとのことだ。あとは艤装の最終調整を済ませれば、晴れてこちらへの着任とあいなる」

 「聞いちゃいたけど、いざ本番となると、やっぱりこう……わくわくするわね」

 「疋田司令によれば、彼女は何というか、武人のような性格らしい。しかしその性能を鼻にかけたり、周囲を下に見るようなことはないという。まァ、どこだってそうだろうが、協調性は大事だからね」

 

 サムソンは語りながら画像を切り替えていく。

 

 「これは模擬戦の様子だ。46砲が標準装備であるから、超長距離からの砲撃が期待できる」

 「マジかよすっげえな!!」

 「比叡さんと二隻体制でいけるね?」

 「ひぇ~……負けないようにしないと」

 

 そんなこんなで全ての映像を見たのち、サムソンは灯りをつけ、着席する。

 

 「さて、それで……だ。全て終えた武蔵は、本来ならば軍の輸送機でこちらに来る手筈となっていたんだが、僕は一つ提案をしたんだ」

 「どんなー? 佐世保土産持ってきてー? とか?」

 「佐世保名物って何だろう……?」

 「バッカおめえ初月、佐世保バーガーに決まってんだろ?」

 「レモンステーキも有名ですよね」

 

 あれ食べたいこれ食べたいの応酬になりそうなところを大げさなリアクションで制し、サムソンは無理矢理に話を続ける。

 

 「佐世保からこの鹿屋まで、海路で来てもらうことさ」

 「ほうほう」

 「船あったっけ?」 

 「何処の基地にも高速艇はあるでしょ」 

 「いやいや……君ら、艦娘だろう?」

 「ああ、なるほど!」

 「そう。戦艦ゆえ遠征に出て貰うことはそう無いだろうけども、それでも慣熟訓練は必要だ。だから、佐世保で艦隊を組織したのち、ここらの海域に明るい君達が先導して、ここまで戻ってくる」

 

 その提案に、皆がざわめく。

 無茶なことではないが、前例があるかと言われればそうでもない。

 

 「疋田司令にその旨伝えたところ、是非やるべきだと言ってくれた。一足先に、武蔵と我々の交流にも役立つだろう」

 「なるほどなぁー」

 「だが、ぞろぞろと皆で行ったところで意味は無いから、武蔵を含めて4隻。つまり僕の佐世保行きに、君達の中から3名同行してもらうことになる」

 

 察しのいい者はなるほど、と首肯したのち、やがて足柄が眼を輝かせて立ち上がった。

 

 「……日帰りじゃないわよね?」

 「疋田司令曰く、ささやかではあるが、歓待の用意をするとのことだ。つまりまァ、一泊二日だね」

 「期せずして佐世保旅行ってことですか!」

 「遊びではないけどもね!」

 

 今までで一番の盛り上がりを見せる一同。しかし、サムソンは『3名』の部分を強調しては釘を刺す。

 このままでは全員が佐世保に行くと言い出しかねないからだ。

 

 「じゃあじゃあ、どうやって決めるっぽい?」

 「ンなもん腕相撲に決まってんだろ」

 「はい摩耶勝手に決めない。提督が選ぶの?」

 「いや、僕が選んでは不公平だ。ここは公平に、くじ引きでいいかと思うが」

 

 そこで皆が、ある一人を注視する。

 そう、雪風である。

 

 「え、あの……?」

 「くじ引き無敗の女雪風は内定として……」

 「雪風はパーでチョキに勝つからのー」

 「雪風がチョコボール買わないのは金のエンゼルを見飽きたからだからね」

 「雪風はガリガリ君で外れたことがないからな」

 

 こと運が絡む事象に、雪風は無類の強さを発揮する。

 彼女が魂を受け継いだ駆逐艦のことを考えれば、得心のいくことではあるが。

 しかしそれをあまり意識しない雪風は、周囲の羨望混じりのからかいに、目を白黒させてサムソンに助けを求める。

 

 「こらこら! 雪風を困らせるんじゃないよ君達ィ! はいじゃあ、今からクジ作るから! この紙をこうして切って……それぞれの名前を書いて……と。霞は岩川に出向中でちょっと残念だね」

 

 サムソンは書いた紙片をボードに張り付け、皆に確認させる。

 

 比叡 足柄 摩耶 利根 雲龍 天城 葛城

 矢矧 朝霜 清霜 雪風 夕立 若葉 磯風

 初月 叢雲 時津風

 

 鹿屋所属の艦娘たちは現在17名。強敵であるヲ級改・『甲型』との戦いののち加入した天城。そして転籍していった山城、千代田、隼鷹のかわりに、武蔵が参加することが決定しているわけだ。

 

 「以上17名。漏れはないね」

 「この磯風は異名を256通り程持っているのだが」

 「漏れはないね! はいじゃあこれをえーと……何か入れ物……」

 「箱ティッシュならあるけど」

 「カイジかよ」

 

 ティッシュは満載だったので、サムソンはとりあえず己の軍帽にその紙片を四つ折りにして入れ、がさごそと振り回したのち、机に置いた。

 

 「はい、じゃあこれを誰か……手の空いてる妖精さんに引いてもらおうか」

 

 程なくして、家具担当の妖精さんがとことことやってきて、ふわりと机の上に乗る。

 彼女は皆の期待の眼差しを受け、初めは戸惑っていたものの、サムソンから説明を受け、笑顔で頷いた。

 

 「はい、ではよろしくね。まずは一人目から───」

 

 佐世保へと向かうのは、果たしていずれの艦娘か。   




佐世保へ向かわせる3名は誰になってもいいように書きます。
なので、この3名がいいぜ、という方は何らかのコメントを頂ければと思います。

特になかった場合はそのまま進めると思うので特に問題ありません。
よかったらお願いいたします。
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