鹿屋デイズ・鹿屋ライフ   作:ミギー・ドン

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 今回のは長い上に大した話ではありません


ひみつ解説・艤装編

 

  アドンに別れを告げ、サムソンと隼鷹、霞は鹿屋へと戻っていた。

 叢雲からの連絡によれば、佐世保の大型建造炉から、未確認の艤装が顕現する、との知らせが大本営からあったらしい。

 

 「前の時も思ったけどさぁ、これって福引とかパチンコ屋みたいじゃない? 佐世保鎮守府大当たり! 大当たりでございまーす! みたいな感じでさぁ」

 「言うなよ、僕も同じこと思ってるさ。艤装についてはまだまだ謎が多いしな、大本営も士気高揚に繋がればいいな…程度の認識なんだろう」

 「でもめぼしい戦艦、空母は大体出揃っていたわよね? あとは武蔵、ビスマルク、大鳳…伊401がまだなくらいで」

 

 霞の言葉を受けて考え込みつつ、サムソンは司令室のドアを開けた。中では叢雲に加え比叡、摩耶、足柄、雲龍の年長組が待機している。

 

 「おかえり霞、しばらくね」

 「ちょっと背、伸びた?」

 「胸は育ってねーみたいだがな」

 「うっさいわよ! 親戚のおばちゃんかアンタらは!」

 「はいはいそこまでそこまで。で、叢雲?」

 

 後になさいあとに、と小言を吐き、霞の頭や背中、胸など触りまくる年長組をかきわけ、叢雲がヘッドセットとウェットティッシュを投げてよこす。

 

 「オンラインで会議があるみたいよ。さっさと支度なさい、ヒゲ剃ってる暇はないからそのテッカテカの顔だけでも小奇麗にすることね」 

 「はいはい…しかし艤装からのアプローチか…一年以上ぶりの話だねぇ。どの艤装が出るかって話は出てるの?」

 「何でも武蔵だそうよ。これまた豪華な話だわね」 

 

 そもそも艤装の建造は、まず先の大戦で活躍した『軍艦』の遺物があるか、あるいは船体そのものがサルベージされていることが前提となる。サルベージ技術の目覚ましい発展により、海の底で眠りに就いていた彼女らは再び陽光のもとへと戻ってきて、今は大本営直轄の『墓地』とも言える場所に安置されている。

 そこで採られた詳細なデータは膨大な処理能力を持つスーパーコンピュータのもとで一元管理され、目覚めの時を待つ。

 そして目覚めるのに必要なものが、艦の遺物あるいは船体そのものに記憶された情報…言い換えるならば『魂』である。遺物、船体…そして沈んだ海域などに揺蕩う、起工から進水、就役。轟沈、解体までの記憶は、目に見えないが、たしかに『ある』のだ。

 こればかりはいくらデータがあろうともどうすることも出来ない。日本独特の『付喪神』という概念をもとに構築された、古から連綿と続く儀式でもって、その『魂』を呼び起こし、慰め、労い、再び戻ってきてもらうことが肝要となる。

 この一連の技術の詳細は当然ながら最高機密となっており、現場の指揮官である提督はおろか、その上の大本営幹部ですら知る者は少ない。

 ではどうするか、という事であるが、これには二つのパターンがある。

 一つは『魂』を呼び覚ますことに成功し、船体または遺物と一つになったもののデータを各地の鎮守府、基地、泊地に送信し、現地での資材を使って出力するパターン。

 例えば高雄型重巡洋艦のネームシップである高雄の艤装を出力したいのであれば、まずは大本営に具申をする。それを受けた大本営が査定、審査に入り、見事クリアすれば高雄のデータと出力キーコードが送信されるという仕組みになっている。

 これにより高雄の艤装は顕現し、『適合者』に着装されることによって、再び戦うことになる。

 

 そしてもう一つが、『何らかの要因で』深海棲艦たちに捕縛された『魂』を、その深海棲艦を撃滅することによって『解放』するパターンである。艤装のブラックボックスには秘かにその為の術式が仕込まれており、『解放』された『魂』はそこにいる艦娘の艤装を通してデータ化され、大本営へと転送される。

 これについては謎が多く、何故深海棲艦に囚われてしまったのか、という事に関しては不明瞭な部分が相当に多い。沈んだ場所が関係しているのでは、という見方が今のところ有力であるが、目下のところ研究中である。

 ともかく、解放され転送された『魂』は『墓地』にある己の船体(からだ)へと戻り、そこで初めて艤装の設計図として完成する。だが解放したところで船体がサルベージされていない場合はどうなるのか、という意見も当然ながらあって、こちらについても研究の進捗を待たねばならない。

 

 鹿屋で言うならば、例えば摩耶は前者のパターンである。

 レイテ沖からサルベージされた『摩耶』は、『魂』との融合も果たし『墓場』で眠っていたところを、火力不足に悩んだサムソンからの「火力の高い艦船を回して欲しい」という具申を受け、大本営が許可を出して出力された。そしてすぐにリストアップされた幾人かの『適合者』…これについてはまたの機会にするが、ともかく適合者が鹿屋に派遣され、艤装とのリンクを経て艦娘『摩耶』となったのである。

 そして後者の代表が雲龍である。昨年に実施された大規模作戦の折、鹿屋の部隊はマニラ近辺で、雲龍の『魂』を解放した。

 基本的に、解放され融合を果たした艦船は、その『魂』を解放した部隊に、まず所属させるか否かの権利が与えられる。言い方は悪いが早い者勝ち、あるいは当たりくじのようなものだと思っていただければよい。

 当時の鹿屋には、航空母艦の戦力は軽空母隼鷹と千代田の二名しか在籍しておらず、戦力拡大を必要としていたサムソンは迷うことなく雲龍を部隊に受け入れた。

 余談ではあるがこの翌年…つまり今年になるが、サムソンは雲龍の姉妹艦である葛城の魂も解放し部隊に受け入れている。冴えない風体とは裏腹に、意外と運の強い男でもあった。

 

 ここで佐世保に話を戻す。

 以上のことから、艤装の顕現はまず具申、あるいは敵性体の撃滅ありきということになるが、極まれに、『軍艦』の方からアプローチがなされることがあるという。これについては全くの詳細が判明しておらず、過去にも数件の前例しかない。

 何の具申もしていないにも関わらず、建造炉に出力の兆候が発生するとのことだが、詳しいことは秘匿されている。

 早い話が「さっさとシャバに出せこの野郎」といったところであろうが、基地側の都合などは当然無視されるため、資源に余裕のある基地、鎮守府でなければ対処できないのも当然のことである。

 もっともその際に消費した資材は大本営が保証してくれるので、もしそうなった場合はタダで戦力の拡充が図れることになるため、現場からは天祐の如しと有難がられることもあるようだ。

 

 過去の事例として、まず最初に発生したのは横須賀であった。大本営の喉元、正に最後の砦である鎮守府に顕現したのは、大和型のネームシップ、大和である。何分初めての事であるから、大きな混乱が起きたが、戦力になるのであれば受け入れぬ手は無いという事で、大和はめでたく横須賀の象徴となった。

 その次が舞鶴である。ここに顕現したのは翔鶴型航空母艦・瑞鶴であり、その名が示すように、瑞なる『鶴』が『舞』降りたとあっては、否が応にも全軍の士気は高まった。事実、直後の大規模作戦『渾』においては何処の基地、泊地、鎮守府も獅子奮迅の活躍を見せている。

 そして今のところ最後の事例が、大湊警備府である。ここに顕現したのは阿賀野型軽巡洋艦のネームシップ、阿賀野であった。それ相応の実力を持った艦艇であるが、大和や瑞鶴と比較した場合どうしても一段劣るのは否めなかった。だがこれらの陰口を聞き及ぶことになった大湊の司令官、佐々木が激昂し大本営に殴り込んでからというもの、誰も阿賀野について何かを言及するような真似はしなくなったという。

 

 そして今回、正に今…佐世保である。

 霞が言った通り、残る大型艦はそう多くない。大和型二番艦武蔵、ビスマルク級ビスマルク、装甲空母大鳳、そして伊号潜水艦伊401のいずれか…という予想は、どこの拠点でも酒の席、余暇の話題に上がること事欠かない。

 そしてどの艤装が顕現したとしても、大幅な戦力増になることは間違いないのである。 

 

 

 

 

 大本営からの通達により、各地の司令官達は会議用のチャンネルを開いて一同に会した。

 サムソンもヘッドセットを装着し、神妙な面持ちで待つ。カメラ並びにシステムによって、全ての司令官達の顔がVR空間に映し出される様は壮観でもありむさ苦しくもある。先ほどまで一緒にいたアドンがウィンクをしてくるが、そこは当然無視をするサムソンだ。

 

 『佐世保鎮守府司令、疋田(ひきた)です。皆さんご多忙のところ申し訳ない』

 

 軍帽を被った五十絡みの男がまず敬礼をし、口上を述べる。

 

 『やりましたな疋田さん、武蔵だとか。久々の天祐だ』

 『あぁ丸目(まるめ)さん、もうご存知でしたか。いやはや日吉(ひよし)の方々はせっかちですな、気持ちはわかりますがね』

 

 その言葉に場は笑いに包まれる。堂々と『佐世保鎮守府、武蔵! 武蔵でございます!』と宣言したかったのだろうと、サムソンもつい笑顔になった。ちなみに日吉というのは現在、海軍の本拠地…俗に大本営と呼ばれるもの…が置かれている場所であり、横浜市と川崎市の境目にほど近い土地である。

 まず祝辞を述べたのは、横須賀の司令官である丸目であった。ついで呉、舞鶴、大湊と、大手の基地司令がそれに倣うが、疋田の顔はどうにも複雑である。

 

 『どうなさったのです疋田司令、浮かない顔に見えますけど』

 

 誰もがおかしいな、と思い始めたころ、アドンがそう尋ねた。昔から単刀直入なところがあるが、それがかえって重用されることもある。疋田はふ、と笑い、口を開いた。

 

 『ご存知の様に、武蔵の顕現…それ自体は大変喜ばしいことだ。これにより奴等に対して更なる優位性を確保できる…のだが、我が佐世保には既に、長門とItalia、霧島の三隻と、翔鶴、飛龍の二隻を基幹とし組成した艦隊が揃っている』

 『それが何か…』

 『率直に言えば、大仰すぎる。この五隻にあとは北上、鳥海、島風などといった各艦種のエース級を加えて連合艦隊を編成すれば、大抵の相手は黙らせることが出来るからだ』

 

 佐世保はその規模、所属する艦娘たちの練度、どれをとっても最強クラスの鎮守府である。その事はここにいる誰もが理解しているし、それ故に大本営も重要な作戦を幾度となく任せてきた過去がある。

 

 『つまり武蔵が加入したとすれば、逆に持て余す可能性があると?』

 『有体に言えばそうなるな。贅沢な悩みだということは判っているつもりだが、こう、素直に諸手を挙げるわけにもいかないというのが正直なところでね』

 『なるほど。では話は早い、武蔵の艤装が出力されたら、他所へ回せばいいだけのこと』

 

 佐世保とは常に競い合い、比べられることも多い呉の司令官である塚原が、若干シニカルな笑いを浮かべつつそう言うが、疋田の表情は晴れぬままである。

 

 『そこですよ塚原さん。私もそれはすぐに考えましたがね、武蔵自身がこの佐世保を選んで産まれてくるというのなら、私は彼女の親のようなものだ。産まれたばかりの子を追い出す親が何処にいましょうか』

 『ロマンチストな疋田さんらしい考えだ。それに艤装は艤装でしかない。魂があれどものを言うわけでもあるまいに。適合者があなたの娘だというのならともかく、それはちと考えすぎなのではないですか』

 

 疋田と塚原は海軍学校の同期であり、それ故にお互い遠慮なしに意見をぶつけ合う間柄でもある。他の司令官たちは黙ってそのやり取りを聞いていたが、やがて丸目が二人を制するように口を開いた。

 

 『うちには大和がいるのでわかる事だが、ぶっちゃけて言うと、あれはとにかく燃費が悪い。もともと決戦用の兵器だからだというのは勿論判っているが、どうということの無い作戦…いや、実地演習に出しても、他の者の数倍から数十倍の燃料弾薬を消費する』

 『それは仕方のないことなのでは』

 『そうだ。だが更に言ってしまえば、だ。大和一隻と、うちの金剛とRomaを足して比べた場合ですら、もたらされる戦果は同等であるにも関わらず、消えていく資材は大和の方が多い』

 

 そこまで黙って会議を傍聴していた比叡たちであったが、丸目のその言葉を聞いて、ひそひそと何かを話し始める。

 

 「何か雲行きが怪しくないかしら」

 「あァ、確かにな…」

 「大手には大手の悩みがあるってことかー…」

 「佐世保も呉も横須賀も、保有戦力は十分みたいだしね」

 

 『つまり、失礼を承知で言わせていただければ、武蔵は持て余す、と』

 『大和型は、と言った方がよいだろう。彼女らの力がどうしても必要、という局面が今までにあったろうか?』

 

 丸目の問いに、その場の司令官達は皆押し黙ってしまう。丸目は話がそれたな、と前置きし、シガーカッターで葉巻を切っては銜え、火を点けた。

 

 『まぁこれは横須賀の意見としてであり、他の方々がそう考える必要はない。あの忌々しいレ級にぶつけたい、と思う方もいようが、あれは特定の海域から出てはこんからな』

 『ふむ…では丸目中将、失礼を承知でお聞きしますが、そちらでは大和はどうなっているのです』

 

 大湊の司令官である佐々木が、紙巻のタバコに火を点けつつそう尋ねた。男だらけの海軍を、己の才覚のみでのし上がってきた女傑である。

 丸目はふうっ、と紫煙を吐き出し、佐々木を見る。

 

 『観艦式に出して、周辺住民や企業への広告塔代わりにしているよ。大和ここにあり、深海棲艦なにするものぞ、と…そう思わせられれば、フェミニスト団体や反戦派の胡散臭い宗教団体なんかもひとまずは黙るのでね』

 『彼女はそれで納得しているのですか』

 

 フェミニスト、という単語が引っ掛かったのか、佐々木の声が一段低くなる。だが丸目は意に介さず、続ける。

 

 『納得はしておらんだろう、彼女とて軍艦(いくさぶね)たる矜持はあるだろうからな。だが先ほども言った通り、費用に対する効果が優れているとはとても言えん存在だ。日々訓練とコマーシャルだけで、まるでアイドルの如しさ…』

 『我々は広告代理店ではありません』

 『いかにも左様。戦って勝つ、奪われた海を取り戻す、国民…いや、人類を守る。その為の組織である。だが活動をする為には当然ながら金が、資源が要る。国民が納めた血税がな。無駄遣いをすれば叩かれる、揚げ足を取られる。そして今のところ、大和が必ずしも必要な局面がない…となれば、取るべき道は自ずと見えるだろう』

 『強くある為に気を遣わねばならないというのは、政治屋が考えればよいことです。我々現場の人間は、使えるものは何だろうと動員して、一刻も早くあの深海棲艦どもを、一匹残らず地獄に叩き落してやるのが第一だと考えますが』

 

 「要するによ、大和は金かかるから滅多に使えねーってことだろ?」

 「要しすぎだけどまぁそういう事よね。金剛とRomaで同等の戦果を上げられて、なおかつかかる費用はトントンでないと来れば、大和をわざわざ出す必要なんてないもの」

 

 当然ながら摩耶、足柄の会話は拾っていないが、おそらくは何処の司令室でも同じような会話がなされているのだろう。

 サムソンも複雑な表情で、叢雲の淹れてくれたほうじ茶を啜った。

 

 『まぁまぁ佐々木さん、丸目さんとの議論はまた後日にしてですな』

 

 関係のない方向へ舵を切っていくその議論を押しとどめ、場をリセットしたのは舞鶴の司令官である上泉だった。

 予備役からの復帰であるのと、一番年上でなおかつ温和な人物であるため、皆から慕われている老将である。上泉は湯呑をコトリと置いて、口を開いた。

 

 『今は武蔵をどうするか、ということに心を砕きましょう。手元のデータによれば、適合者は幾人かに絞れてはいるものの、まだ決定はしていない。疋田さんが武蔵をどうするかは、それからでも遅くはないと思うのですがね』

 『いやその前に疋田さん、佐世保は武蔵を引き取らないということでいいのですか』

 『…それはこれから、部隊の皆と話し合って決めますよ。上泉大佐が言うように、まだ時間はあるのですから』

 

 そう、時間はまだあるのだ。今現在、深海との状況は緊迫しているわけではなく、また侵攻を許している訳でもない。結論を急いだところで益はないだろう。

 そこで上泉は、ずっと黙ったままのサムソンやアドン、柱島や佐伯湾、辺境、それに海外の基地に赴任している、比較的若い司令官達に視線を投げた。蚊帳の外だな、と思っていたらしく、顎髭をいじっていたサムソンは叢雲に背中をぶっ叩かれて我に返る。 

 

 『若い方々はどうですかな、疋田さんの仰られた意見に何かあれば、発言するといい。ここはそういう場なのだから』

 『岩川は訓練基地ですし、資源や設備もまだまだこれからですからねぇ…武蔵を下さい! なんて事は逆立ちしたって言えませんわぁ』

 『つまり欲しいという気持ちはあるんだなアドンさん』

 『キモチはキモチよぉ鐘捲(かねまき)さん、現実はちゃんと見えてるから安心して頂戴』

 

 単冠の司令官である鐘捲とアドンが絡む横で、サムソンは天井を見上げた。VR空間の会議室ではなく、鹿屋基地の天井である。ここがかつて学び舎であった頃の子供たちが悪戯をしたのか、微かに残るチョークの後が見える。

 

 『疋田さんは先ほど、艦娘は我が子のようなものと仰いましたが、それは私も同じ思いです。やもめで結婚の予定もない私ですが、こう長いこと彼女らと付き合っていると、たまに思うんですよね、「娘がいればこんな感じなのだろうか」と』

 『おや寒村さんは独身でしたか、何でしたら縁談の一つや二つ、お力になりますよ。いや、私でなくうちのカミサンがですがね』

 

 どっ、と場が沸く。上泉の細君は、その世話焼きっぷりが殊に有名で、現に疋田と塚原の両名は、どちらも上泉を仲人として現在の妻と結婚をしている。

 

 『ああ、これは失敗失敗。失礼したね寒村さん、続けて下さい』

 『え、ええ。ともかく、彼女らにはキモイだの鬱陶しいだの思われるかもしれませんが、それを含めて父親というのはこういった心持であるものか…と、たまに考えます。だからコストがどうとか、持て余すだとかそういった話はさておいて、まずは武蔵がこの世界に何事もなく還ってこれるように準備してやるのが大事かと』

 『まぁそれはそうよねぇ』

 

 黙って聞いていた疋田や塚原、丸目などもそこに異論は無いようである。

 とは言えやはり、どうしても付きまとうのが運用にかかるコストであり、そこを蔑ろにする訳にもいかない。サムソンの意見はただ己の感情を述べただけであるし、大勢に特に影響を与えるというものではなかった。

 そして武蔵の扱いについては、適合者が見つかってから改めて考慮する、ということで会議は終了した。

 

 

 

 

 「ふーっ。僕ぁ会議ってのがどうしても苦手だな」

 「何かキモイこと言ってたし顔もキモかったわよ」

 「勘弁しておくれよ…僕だってやらかしたな、とは思ってるけど、でも武蔵が何かちょっとかわいそうだなってのは本心だよ」

 

 父親だの娘だのの発言はしっかりと聞かれていたようで、サムソンもそれについてあれこれ言われるのは覚悟をしていたようだ。しかし摩耶、足柄、雲龍の誰もがそれに触れず、かといって不快であるといった態度も見せずに、霞のお帰りパーティの手筈などを確認するに留まった。

 そして武蔵の一件は、やがて鹿屋に大きな転機をもたらすことになる。

 

 

 

 「はイッ! 霞先輩お帰り記念パーティ隠し芸大会! 一番葛城! 物真似をさせて頂きます!」

 「いよっ葛城!」

 「えー、『戦車に乗っててちょっと愛が重くて蟹座で無線の免許も取っちゃう女の子の真似』」

 「ふざけんな帰れ!!!」

 「やだもー!」

 

 大騒ぎの宴席の外れで、一人ハイボールをなめるサムソンの横に、スルメと清酒の小瓶を持った雲龍が座る。

 二つもった猪口を差し出されれば、サムソンとて受けない訳にもいかない。注がれた清酒をかっと呷り、一息つく。

 

 「どしたの雲龍」

 「さっきの会議のことなんだけど」

 「え、あ、うん…あれはちょっとカッコつけすぎたと思ってるから言わないで…」

 「別にそんなこと思ってないわ」

 

 少し酔っているのか、頬を紅潮させた雲龍という珍しい絵面である。

 ちぎったスルメをサムソンの口に指ごと突っ込むあたり、少しではなく相当に酔っぱらっているようにも見えるが、どこか嬉しそうでもあった。

 どう反応したものかと戸惑うサムソン。ただ笑う雲龍。

 

 「ちょっとだけ嬉しかったかなって。こんな大きな娘がいられても困るでしょうけど」

 「あ、ああ…? う、うん」

 「それだけ。武蔵、無事に還ってこれるといいわね」

 

 そう言うと雲龍は立ち上がり、今度は葛城のもとに歩いていく。そして、禁じ手の物真似を披露したはいいが例によってアレだったためブーイングを浴びる妹を助けるかのように、「二番雲龍、物真似をします」と宣言して壇上に上がった。

 

 「えーでは、大淀の真似をするわ」

 「帰れや!!」

 

 宴の夜は更けていく。 




 艤装に関しての設定はもう何番煎じだか判らない代物ですね。
 軍や兵器の知識に疎いので、この手の話を考えたり書いたりするのって脳が異常に疲れてつらいです。かかった時間の半分くらいは漫画読んだり艦これやったりしてました。
 ですのでここはおかしい、ムジュンしてる、というところがあれば教えて下さると助かります。


 「双亡亭壊すべし」面白いですね。
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