鹿屋デイズ・鹿屋ライフ   作:ミギー・ドン

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 今回は下ネタがやや多いです。それでもよければお読み下さい。


サムソンティーチャー危機一髪

  

  力を合わせて戦わねば、生き残れない。綻びは不和を生み、不和は惰弱をもたらす。

 そうなればかの深海棲艦どもと渡り合うことなど到底不可能である。そしてそれは、滅びを招く。

 

 昔の人は言った。

 

 『みんな 仲良うせんといかんよ』

 

 ではどうするか。

 サムソンは考えた。艦娘達が皆、過不足なく過ごせる環境をまず整えよう…と。

 鹿屋基地の建物は、廃校になった小学校を改装、増築してリノベーションしたものである。それ故に最初はあちこちで不満が挙がった。トイレが暗い。部屋がかび臭い。夜中に変な音がする。裏山から変な虫が飛んでくる…などと、枚挙に暇がなかった。

 サムソンがまず手を入れたのは風呂であった。艤装を修理する入渠ドック…艦娘たちが『お風呂』などと呼ぶ施設…は新造したものの、基地の浴場、つまり本物のお風呂はお世辞にも広いとは言えず、一つの艦隊…即ち6名が入ればそれで一杯になってしまう。

 サムソンは地元の工務店と相談し、基地の地下階、物置と化していた区域を、そのまま大浴場へと改装した。予算を口八丁で取り付け、当時所属していた全ての艦娘の希望を叶えた結果、6名で一杯だった浴場は4艦隊を受け入れてもなお余裕のある、メイクイットポッシボーなスーパー大浴場へと変貌を遂げたのだった。

 サウナにジャグジー、電気風呂に岩風呂など、どれを取ってもゴージャスな出来である。

 

 そしてその大浴場で今、サムソンは窮地に陥っていた。

 話は30分ほど遡る。

 

 

 「ジェーナイジェーナイなさけ~むよ~」

 

 アステロイドベルトのアウトローも震えだす感じの歌を口ずさみつつ、サムソンは軍服を脱ぎ、ネイキッド提督へと生まれ変わる。大変お見苦しいところであるがそこはご容赦いただきたい。

 サムソンの部屋にも小さなバスルームがあり、普段はそこで日々の垢を落としているのだが、今日は初月の釣ってきた魚でパーティが開かれ、その後に艦娘達は皆風呂に入ってしまったので、地下の大浴場を使うものはもういなかった。

 叢雲に何度もそれを確認し、更に先客がいないか何度も確かめて、そこで初めてサムソンは脱衣(クロス・アウト)したというわけである。

 

 「コズモレンジャージェナァーイ…」

 

 広がるプラズマな感じの歌は2ループ目に突入する。

 普段は当然ながら使えない大浴場であるから、その特別感は格別だ。まとめた衣服をカゴに入れて隅っこに放り投げ、キンキンに冷えたビール3本と、ジップロックに入れたタブレットを手に、サムソンは扉を勢いよく開く。

 24時間いつでも入れる仕様になっているため、常に清潔に保たれている大浴場は、近所の源泉から湯を引き、かけ流しが実現している。そこらのスーパー銭湯にも引けをとらない、鹿屋自慢の施設であった。

 

 「フフ…フハハ! 貸し切りじゃないの!」

 

 日曜の最後を飾るにふさわしい、たった一人の贅沢を前に、サムソンのテンションは爆上げである。ビールとタブレットを湯船の縁に置き、手桶に湯をくんで頭からかぶる。

 

 「アーーーー! よし!」

 

 サムソンはそう叫ぶと、気持ち悪いポージングを決めたのち、湯船に飛び込んだ。いくら人がいないとはいえ、行儀の悪い34歳児もいたものである。

 そうしてタブレットを手に取り、まずはタイマーをセットする。風呂に酒を持ち込む際、酔っぱらって寝てしまわないための小賢しい工夫であった。そしてビールを拝むように掲げると、一気呵成に栓を開け、飲む。飲む。

 

 「ナーーーーーーー!!」

 

 なにがナなのか、もう判ったものではない。だがこういうのは理屈でないのだ。熱めの湯にさらされ、温度の上がった体内を、つい先ほどまで冷蔵庫に入っていたビールが駆け抜けていく爽快感は、筆舌に尽くしがたいものがあった。

 

 「フォービューテフォーヒューマンラァイフ!」

 

 次にサムソンはタブレットを手繰り寄せ、YouTubeを開いては壁に立てかける。彼は特定のジャンルではなく、本当にその場のノリで見る動画をチョイスする。

 今回チョイスしたのはハンティングの動画であった。アメリカ人のハンティングというものは大変にワイルドで、銃で撃つ、罠にハメる、爆破する…どれをとっても日本ではあり得ない、エクストリームな代物が揃っている。

 ここで誤解の無きように言っておくが、彼は別に野生動物を殺傷する趣味がある訳ではない。しつこいようだが、「なんでもいい」のである。アニメだろうとドラマだろうとスポーツだろうペット動画だろうと、それこそ何でもよい。時間を潰せればそれでよい。

 

 「オイオイオイ死ぬわイノシシ……死んだわ」

 

 餌で釣られた大量の猪達が、爆破によって吹っ飛ばされるという害獣駆除のシークエンスに、ビールはすすむ。体はほぐれる。酔いは回る。あっという間に20分ほどが過ぎ、彼は体と髪を洗うため、湯船から出た。

 そして彼はアルコールと湯でもってすっかり赤くなった体に冷水をぶっかけ、備え付けのボディソープを手にとった。

 

 「スッシタッベタイ スッシタッベタイ」

 

 オレンジレンジの怪曲、SUSHI食べたいfeatソイソースを口ずさみつつ、顔を洗い、体を洗う。そしてシャンプーを手に取り、お次は髪だ。早い者なら30を超えるとそろそろ怪しくなってくる生え際や頭頂部であるが、サムソンのそれは幸いにして10代の頃と大差がない。

 

 「よし…」

 

 泡を洗い落とし、再び冷水を浴びたサムソンはぬうっと立ち上がり、再び湯船に浸かる。垂れ流していた動画は猫VS熊の対戦動画となっていて、サムソンは2本目のビールを開けては一気に飲み干す。

 

 「んんんんんんーーーー!!!!」

 

 正にフリーダム。正にパラダイス。明日からの活力へと変わる全てのものに感謝しつつ、サムソンは湯船の縁に体を預けて目を閉じる。寝てしまっては危険だが、そのためのタイマーである。

 

 「また明日から頑張りますかぁー」

 

 そう呟いた瞬間である。彼の耳は何かの物音を捉えた。

 

 「うん…?」

 

 

 

 「いンやァー遅くなっちまったよぉアハハハハ」

 

 隼

 鷹

 ?

 

 それは隼鷹の声。

 

 「今日は皆でお魚パーティだったのに」

 「いやァ、岩川でもピザ食わしてもらったよぉ~あとビールな」

 「あまり迷惑かけたらダメよ」

 

 雲

 龍

 ?

 

 それは雲龍の声。

 

 

 「なんで…?」

 

 なんてこった、航空母艦のエントリーだ!

 体内に回ったアルコールは、肝臓の急速稼働と共に排出され、冷や汗となる。

 そしてリラックスしていた脳細胞は、通常の三倍のスピードで演算を始める。

 

 サムソンは考える。

 そうだ。隼鷹は岩川へ行っていたのだ。姉妹艦の飛鷹と酒でも飲んでいて、今戻ってきたのだろう。

 当然寝る前に風呂に入る。叢雲もそこは忘れていたのか、隼鷹については触れなかった。  

 そしてもう一人は雲龍である。彼女もとっくに休んだものだと思っていたが、起きて隼鷹を待っていたのだろう。感情をあまり表に出さない雲龍だが、仲間を思う気持ちは強い。ついでに言うと相当なオフロスキーでもあるから、隼鷹を迎えるついでに一っ風呂、という算段なのであろう。

 

 だが問題はそこではない。彼女らは脱衣所で服を脱ぎ、ネイキッド空母としてサムソンの領海へ侵入してくるのだ。航空戦力こそ持たないが、かわりに全裸(フル・フロンタル)というクラスター爆弾やデイジーカッターも真っ青な大量破壊兵器を引っ提げた彼女らは、正にワンマンアーミーと言っても過言ではない。

 それが二人である。隼鷹も雲龍も、その豊満なスタイルは鹿屋…いや全ての鎮守府の中でもトップクラスを誇っている。

 言うなれば全盛期のチャック・ノリス(アメリカ人の死因第二位)とジャン・クロード・ヴァンダム(御存知ヴァンダミングアクション)が攻めてくるようなものだ。ハッスル空母二倍ニバーイである。木曜洋画劇場かよ。

 

 領海侵犯っ…! 国際問題っ…! 提督の沽券っ…! 露見っ…左遷っ…! 

 サムソンは頭を抱えた。三倍に高まった脳の演算速度が、バッドエンドだけを投影し始める。だが彼とて男である。このまま座して死を待つ訳にはいかない。死ぬなら前のめりになって死ね、と昔の人は言った。

 

 彼は今しがた開けたばかりのビールを手に、浴場の端にある岩風呂へと隠れた。

 正に間一髪、次の瞬間にはもう扉が開き、真っ裸の隼鷹と雲龍が入ってくる。

 

 「岩川で風呂借りてくりゃーよかったかなァ」

 「あっちのお風呂はどうなの?」

 「おぉ、ちょっと見たけど綺麗だったよ。あそこのオカマちゃんも福利厚生にゃ大分気ぃ使ってるみたいでさ」

 「へぇ」

 

 普段は遊戯王みたいな髪型をした隼鷹だが、今はタオルを巻いて纏めている。そのかわり体には当然、何も巻いていない。サムソンがいるなど露ほども思っていないのだから当然といえば当然だ。

 一方の雲龍はタオルで体の前を隠し、やりすぎなくらい長い三つ編みは頭の上でとぐろを巻いていた。

 

 「……!」

 

 状況が判らなければ撤退も出来ない。それ故にサムソンはこっそりと二人の様子を伺っていたが、そのあまりの破壊力に思わず声が出そうになる。

 歩くたびに震度7である。震える山とはよく言ったものだ。それに加えて長い脚と暴力的な尻。白い肌、くびれたウエスト。こんなものをタダで見てしまってよいのだろうかとサムソンは唾を飲んだ。

 だがここで露見するわけには行かない。狙いは二人が髪を洗うその時…隙を見つけて脱出すると、サムソンはそう決めた。

 だが当然と言えば当然のこととして、サムソンの体に変化が起きた。男ならば誰でも、心に銃を持っていると言ったのは誰であったか…と、そうではない。

 変化が起きたのは、どんな男であろうと生まれつき持っていて、多彩な用途と無限の可能性をもつ、股間の銃である。いや、ここ海軍では単装砲と言うのが適当であろうか。

 その単装砲に稼働命令が出たのである。

 

 ※イメージ映像をお楽しみください。

 

 「4時ノ方向ニ敵影見ユ! ソノ数2!」

 「了解セリ! 単装砲ニテ迎撃ヲ開始スルモノ也! 仰角一杯!」

 「了解! 単装砲、仰角イッパーイ! 目標、敵空母胸部バルジ! 4ツ!」

 

 ~おわり~

 

 

 「……!!」

 

 股間の46㎝単装砲(一部誇張表現を含む)が、サムソンの意思を無視して臨戦態勢を取る。これはもう危機というより緊急事態である。国家存亡の秋である。彼の34年の人生の中でも一二を争うエマージェンシーであった。

 

 「それでさー、若葉が…」

 「そうなの、ふふ、おかしい…」

 

 おかしいのは僕の股間だよ、主に君らのせいでな…! と言わんばかりに聞き耳を立て、サムソンはただ待つ。薬室内の圧力はとうに120%を超え、あとは理性というトリガーを引くだけだ。だがそれをすれば本当に終わりだ。サムソンは拳に歯を食いこませ、ただ耐える。

 永遠とも思われる時間が過ぎていき、ジャグジーに浸かっていた二人が洗い場に向かう。

 好機。今しかない。だがこの単装砲はどうする。もし万が一があったとして、状態が仰角と俯角であった場合、どちらがダメージが少ないか。三倍速で稼働しすぎてオーバーロード寸前の脳細胞が出した結論は『冷却』であった。

 サムソンは握りしめていた缶をひっくり返し、ややぬるくなったビールを股間にぶちまけた。

 

 ※イメージ映像をお楽しみください

 

 「撤退!? 撤退デアリマスカ!?」

 「左様。現在ノ状況ヲ鑑ミ、ココハ撤退セヨト提督ハ仰セラレタ」

 「馬鹿ナ! アト一歩デ敵艦ヲ討チ果タセシトコロデ!」

 「砲身冷却セヨ! 繰リ返ス、砲身冷却セヨ!」

 

 ~おわり~

 

 「~~~~~~ッッ!?!?!?」

 

 あなたがもし好奇心旺盛かつ健康な男子であるなら、最大仰角になった単装砲に炭酸飲料をかけてみて頂きたい。多分びっくりすることが起きるだろう。

 なおどうなっても作者は責任を負わないものとする。

 

 サムソンはバチバチと明滅する視界をそれでも出口へと向け、歯を食いしばり進軍を開始した。岩風呂から扉までの距離はそう長くないが、油断は禁物だ。

 二人とも髪が長いので、洗うのには結構な時間を要する。サムソンは一歩また一歩と進軍し、冷却されしょんぼりしていく単装砲をいたわりながらも状況を進めていく。

 ゆっくりと、だが確実に近づく勝利を前に、彼は安堵の息を漏らした。あとは服を着て何事もなかったかのように出ていくだけだ。勝った、勝ちまくった…長かった戦いよさらば…! サムソンは一抹の寂しさを覚えつつも、ドアに手をかける。

 その瞬間である。

 

 タブレットにセットされたアラームが鳴り響く。

 川井憲次 Gundam00 OST2より Track20 -Fight- 

 目覚ましに使うと非常に効果が高い。お試しください。

 

 「うん? 誰かTRANS-AMした?」

 「ん…」

 

 二人がそれに気づいた時にはもう、サムソンの姿はなかった。

 

 アーアアー アーアアー アーアアー

 TRANS-AMを発動させたサムソンは、GN合唱団のコーラスを背に赤変、人生最速のスピードでもってパンツを履き、脱衣場から離脱していた。ありがとう太陽炉。ありがとうGN粒子。ありがとうイオリア・シュヘンベルク。

 なお人間にそういった機能はない。

 

 

 「ハァ ハァ…」

 

 口からぽわぽわを吐きつつ、サムソンは何とか司令室へと辿り着いた。疲労を癒すための風呂が、地獄に変わるとはまさか思うまい。筋違いではあるが、叢雲に明日文句を言おう…そう心に決めたサムソンであった。

 

 

 

 

 「ンモー誰のタブレットだよう。空き缶も置きっぱなしにして」

 「磯風か葛城のかしら…? でもあの子たちお酒はほとんど飲まないし…」

 

 湯船に浸かりつつ、タブレットをいじる隼鷹と雲龍。プライバシーに配慮してメールフォルダや個人情報などは見ないものの、ホーム画面の背景には一枚の写真が表示されていて、それが誰の物であるかということを明確に語っていた。

 

 「…写真のここの人、提督よね? 他の人は…海軍の人かしら」

 「あ、ホントだ。んじゃこれ提督のか…ここ使ったんだ」

 「ひょっとしてニアミスしてたかも…明日、返しておくわ」

 「空き缶も片付けろって言ったれ言ったれ」

 

 雲龍はそう言って、タブレットの電源を切った。

 

 

 

 翌朝。

 

 「おはよう提督、今週もまた頑張りましょう」

 「あ、ああ…それより叢雲…体温計あるかな。何だか熱っぽくて…」

 「ン…ちょっと待って」

 

 叢雲は戸棚の片隅にあった救急箱を開き、電子体温計を持ち出してはサムソンに渡す。何やらぼーっとしたまま、サムソンはそれを脇の下に突っ込んで、椅子に座り込む。

 

 「…八度四分…!? 大分高いじゃないの、風邪?」

 「そ、そうかも…頭もぼーっとするし」

 「そうかもじゃないわよ! 寝てなさい!」

 「い、いやでも…大丈夫だよ」

 

 大丈夫ではない。叢雲はサムソンをぎっと睨みつけ、無理矢理に立たせては部屋へと押し込んだ。

 20xx年11月中旬、サムソン今年初の風邪にかかる。

 誰が悪いというわけではない。運が悪かったのだ…サムソンは朦朧とする意識の中で、そう結論付けた。 




 横浜ウォーカーの表紙が加賀&吹雪だったのでつい買ってしまう男!
 わたしです。劇場版は多分観ませんけど。
 今回のお話のサムソンは、アトリエかぐやなら助からなかったと思います。どうでもいいですね。

 秋イベ始まりましたがどうでしょうか。
 油12万弾18万鉄12万ボーキ11万 バケツ500からのスタートです。wikiが充実したら出撃します。山風やコマンダンテちゃんもいいけどやはりサラトガが別格すぎて辛いです。しずま艦で二番艦ってエロい要素しかありませんからね!!
 作中にサラトガが出てきたら入手したものだと思って下さい。
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