学戦都市アスタリスク 黒白の剣と凛姫   作:Aike

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皆様、おはこんばんにちは。
さて・・・そろそろ六花動乱編も終幕が近づいて参りました。つまりは、第1章の終わりが近いという事。
まだまだ駄文になってしまっている感じが私自身否めないですが、どうか最後までお付き合い下さいませ。






第27話 六花動乱編ー10

 

 

 

 「・・・やはり、あやつらが相手ではいくら純星煌式武装(オーガルクス)を持っていても敵わんか。」

 

 「・・・何か感じたのかしら?」

 

 アスタリスクの最下層、バラストエリア。その地下・・・水中に広がる、巨大な人造空間。かつて蝕舞祭(エクリプス)と呼ばれる非合法の武闘大会が開かれていた、現在は封鎖されているはずの空間。そこに、二人の男女が佇んでいた。

 

 「あぁ。相原リクとアリア・セニアス、嵐洞辰馬に双月塔牙が倒された。共に予想外の乱入があったようだ。しかも、その乱入者は共に純星煌式武装(オーガルクス)を持っている。」

 

 「・・・不味いわね。私が召喚した幻想人形(フィクション・パペット)も悉く倒されてしまったし・・・それに恐らく、彼は何としてでも私を探しに来るでしょう。下手をすれば、ここも特定されかねない。さて、どうしたものかしら・・・。」

 

 女ーーーイリア・フィーリエがそう呟くと、正体不明の男は背中に提げていた剣を外し、顔の前にその刃を持っていく。

 

 「まぁ、どんなものが来ようと我は破壊するだけだがな。最悪、ここが知られそうになれば我だけでも外に出て奴等を迎え撃つとしよう。我が出た後、10分が経っても戻らぬようなら我は破壊されたものと考えよ。その時は・・・良いな。」

 

 「・・・分かってるわよ。」

 

 「なら良い。何かあればまた伝えよう。もう暫し休むが良い。」

 

 男の言葉に頷くと、イリアは背を向けて去っていく。それを見送ると、男は小さく溜め息をついた。

 

 「・・・とは言ったが、幾らなんでも早すぎであろうに。仕方あるまい・・・征くか。」

 

 そう呟くと、男はその空間を出て、バラストエリアを出ていった。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「・・・んで、こっからどうするつもりだ。まだこの事態は収束できてねぇ訳だが。」

 

 「とりあえず、黒幕を探し出す。まずはこの状況を止めないと。じゃなきゃ、死傷者が増え続けるだけだし。」

 

 ーーー双月塔牙、嵐洞清雅との決着を付けた後。

 悠と剣也は、全てを終わらせるべく、黒幕の潜んでいる場所を探していた。おおよそどの辺りにいるか、その検討はつけてある。

 悠が絶煌の魔剣(ヴォルグ=ドラス)能力をアスタリスク全体を範囲として使った際、能力が弾かれる反応があったのだ。その反応があったのは、アスタリスク中央ーーーシリウスドーム周辺。より正確に言うならば、その地下だ。

 

 「とりあえず、シリウスドームに向かおう。そこに行けば、何か分かるはずだ。」

 

 「・・・だといいけどな。・・・そういや悠、聞いてなかったが・・・黒幕を見つけたとして、どうする。生かして捕まえるか、殺すのか。」

 

 剣也の問いかけに、悠の足取りが微かに鈍る。だが、それも一瞬の事。すぐに元の足取りに戻ると、はっきりと宣言する。

 

 「救いようがない位なら、殺してでも止めるけど・・・まだ救いようがあるなら、生かすよ。何でこんな事を始めたのか、何でこんな事を計画したのか・・・そうまでさせる程の何かが、あったはずだからな。」

 

 「・・・相変わらず甘いよ、お前。」

 

 「好きに言え。これが俺のやり方なんだよ。」

 

 そう言い合いながら、シリウスドームを目指す。初めこそその雰囲気は落ち着いたものだったが、シリウスドームが近付いてくるごとに、その雰囲気は緊張を孕んだものへと変わっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・気付いてるか、悠。」

 

 「あぁ・・・殺気、だな。」

 

 シリウスドームが中央に据えられた、アスタリスク中央地区の中央広場。立ち止まり、その殺気の発信源を探す。こんな時、頼りになるのは人間の危機察知能力だが・・・この感覚は、普通ではそう高まるものではない。命に関わる壮絶な体験をしたとか、そういう人生を送っていなければまず鍛えられる機会はそうそうないからだ。そう、例えばーーー()()()()()()()()()()()()()()()経験でもない限り。

 

 「・・・あの中か。」

 

 悠が足を止め、見つめる先はシリウスドーム。悠の手は早速腰に提げた"村正"と"村雨"を引き抜いている。ここまで純星煌式武装(オーガルクス)相手が続いている上、純星煌式武装(オーガルクス)相手にこいつが無傷で戦えるのかという確証もない状況だったために抜いていなかったが、次の相手はそうも言っていられないだろうという確信があった。本気の全力でなければ、この先は間違いなく厳しい戦いになる。

 

 「・・・んじゃ、行くぜ。」

 

 見れば、剣也も純星煌式武装《オーガルクス》ーーー滅塵の斬剣(デス=フォルス)を担ぐようにして引き抜いている。

 そのまま、警戒体勢を崩さずにシリウスドームへと入っていく。エントランスホールを過ぎ、観客席へと続く通路へ。そこを通り抜け、ドーム内中心部に辿り着く。本来ならば、星舞祭(フェスタ)の会場になるはずのそこには、殺気を孕んだ濃密な星辰力(プラーナ)が渦巻いていた。

 

 「・・・来たか。随分と早かったな。」

 

 そんな声に、悠と剣也はすかさず身構える。ステージ中央ーーーそこに立つ、1人の男。全身黒ずくめの服装、中性的な容貌の、若い男だった。ただ1つ、普通と違うところを挙げるならーーー。

 

 「・・・やっぱり、純星煌式武装(オーガルクス)か。」

 

 その手に握られた、巨大な刃を持つ大太刀。そして何より、人間ではあり得ないレベルの濃密な星辰力(プラーナ)。大太刀は一見すると只の大太刀だが・・・よく見れば、鍔と刃の付け根に小さく、赤黒く輝くウルム=マナダイトがあった。さらに言えば、星辰力(プラーナ)の濃度が明らかに人の領域を越えている。そこから悠が導きだしたのは、「目の前の男が人間ではない」という結論だった。

 

 「ほぅ、中々に聡いな。左様よ。まぁ最も、今はこの身体で現界しているのだがな。」

 

 そう言うと、男は面倒臭そうに肩を鳴らす。

 

 「・・・何言ってんのか分からねぇが。」

 

 剣也が滅塵の斬剣(デス=フォルス)の刃を男に向ける。

 

 「てめぇがこの騒動の黒幕か?イエスなら構えろ、ノーならそこをさっさとどけ。」

 

 そんな剣也の言葉に、男は黙って大太刀を構えた。それを見た悠と剣也もそれぞれの得物を手に構える。

 

 「倒すっ・・・!!」

 

 最初に動いたのは、悠。瞬間的に身体強化をかけ、数十mを一気に詰めると両手の刀を猛スピードで振るう。そのスピードたるや、これまでの比ではない。

 

 「ぬぅ・・・!」

 

 男も何とかそれを受け止め、弾き、あるいは受け流す。だが、それもいつまでも続かない。お返しとばかりに振るった刃を強烈に弾かれ、体勢を崩した所に悠の"飛燕・転"が叩き込まれる。すかさず飛び退いた悠と入れ替わりに、体勢を戻した男へ今度は剣也が巨大な刃を振り下ろし、続けて胴を薙ぎ飛ばす。派手に吹き飛ばされた男はステージを囲む強化コンクリート壁に叩きつけられ、壁が崩壊した。

 

 「何だ、こいつ・・・手応えが・・・?」

 

 斬った時の違和感に剣也が一瞬気をとられた、その一瞬。横に立っていた悠がとてつもないスピードで吹き飛ばされた。ほぼ同時に腹に入った蹴りで剣也も吹き飛ばされる。先程男がそうなったように、二人ともが壁に激しく衝突し、壁が崩壊する。

 

 「・・・随分と侮っていたらしい。」

 

 先程まで二人がいたはずのステージ中央。そこに、ほぼ無傷の男がいた。奴が吹き飛ばされた壁からステージ中央までは明らかに距離があり・・・悠でもなければ、まず一瞬で詰めるなど不可能な距離だ。

 

 「・・・っ、お前・・・やっぱり・・・!」

 

 悠が口から流れてきていた血を拭いながら、何とか立ち上がる。身体強化を全身にかけていたからか、剣也ほどのダメージは負っていないようだった。対して剣也は身体強化もしていない状況で食らったからか、立ち上がりはしたもののふらついている。

 

 「て、めぇ・・・手ぇ抜いてやがったな・・・!」

 

 剣也がそう言うと、男は小さく鼻を鳴らした。その背中目掛けて"双・弦月"を放つ。その一撃はこれまでの剣速を遥かに越えており、確実に当たる・・・そのはずだった。

 

 「・・・っ!?」

 

 その刃が、大太刀に防がれる。歯噛みをしながらま二刀目を放とうとするが、その前に迫った男の裏拳が悠の視界を焼いた。

 ふらついた悠の胴へ男が猛スピードで大太刀を振るう。身体強化をかけた肉体ですら純星煌式武装(オーガルクス)の直撃は耐えられなかった。制服を裂き、肉を切り裂き、鮮血が飛び散る。

 止めとばかりに、強烈な蹴りが悠の腹へめり込み、その身体を吹き飛ばす。その勢いは凄まじく、悠の身体は壁にぶつかって崩壊させた所か、跳ね飛んで観客席へとなだれ込んだ。観客席がバキバキと音を立てて破壊され、その中を滑るようにして悠の身体がようやく止まる。

 

 「悠!!ちぃっ・・・!!」

 

 悠を心配する暇もない。次はお前だと云わんばかりに猛スピードで飛んできた刃を紙一重でかわし、何とか反撃する。だが、その反撃もことごとく防がれてしまう。体勢を立て直そうと距離を取ろうとした瞬間、男が再び仕掛けた。

 肘鉄が顎を叩き、仰け反った所に大太刀の刃と打撃が容赦なく襲いかかる。頭を思い切り捕まれたかと思えば、激しく顔面からステージ床に叩き付けられ、振動がステージ全体を揺らす。その上さらに脇腹を思い切り蹴り飛ばされ、跳ね転げた身体は先程の悠の二の舞が如く、ステージ壁を破壊し、観客席へとなだれ込んだ。

 

 「か・・・っ、は・・・っ。」

 

 ごぷり、と。その口から真っ赤な血を吐き出す。明らかに、内臓を負傷していた。それをつまらなそうに見ていた男だが・・・次の瞬間、顔色を変えた。

 

 「うぉぉぉおっ!!」

 

 観客席まで吹き飛ばされたはずの悠が、猛スピードで空中を飛び降りながら絶煌の魔剣(ヴォルグ=ドラス)聖閃の魔剣(グロリア=フラム)を同時に振り下ろす。そのスピードは、あろうことか残影すら残らないほどの瞬間的なものだった。僅かな一瞬ではあるが反応が遅れ、咄嗟に出した左手が斬り飛ばされる。だが、それだけでは終わらない。

 

 「ぶっ倒す・・・っ!!」

 

 超スピードで両手の剣が幾度も振るわれ、最後にV字を描く軌道で両手の剣を振り下ろす。何とか大太刀で防ぎはしたが、流石に片手では取り回しが利かないのか最後の一撃を防ぎきれずに後ろへ押し下げられる。

 

 「まだまだぁぁぁ!!」

 

 その瞬間を見逃す悠ではない。すかさず胴へ拳を1撃、続けて身体を回転させながら高速踵落としを叩きこむ。だがそこからも容赦なく、身体強化をかけた左右の拳で徹底的に殴り、止めに腹に両拳を突き込んでから思い切り回転蹴りで吹っ飛ばす。派手な音を立てながらステージ壁を破壊し、観客席すらも破壊しながら、何とか男は体勢を立て直して立ち上がる。

 ステージ上に立っている悠はそれこそ、制服はボロボロで身体のあちこちから出血していたが、あまり影響にはなっていないらしかった。・・・いや、少しふらついているのを見るあたり、影響は出ているのだろうが、根性で耐えてでもいるのだろう。

 男の方も、先程の悠の攻撃で少なからずダメージを負っている。左腕を失い、かつ胴にまともに攻撃を喰らったからか、口元からは血が流れ出していた。

 

 「お前・・・そんだけ打ち込んでもまだ動くか・・・!」

 

 「貴様こそ、死に損ないの分際で・・・!」

 

 お互いにそんな言葉を吐きながら、互いを睨み付ける。その横に、ガラガラと瓦礫を押し退けながら、ふらつきながらも剣也も歩いてくると、男目掛けて刃を構えた。

 

 男と悠&剣也・・・その死闘は、まだまだ終わらない。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「ふっ・・・!!」

 

 薙ぎ払われた鎌を避け、胴に一撃を叩き込む。だが、相手は僅かに数歩下がっただけでまだまだ足取りもしっかりしていた。その目がクローディアを見据え、捕らえて離さない。

 

 「なるほど・・・パン=ドラの能力かえ。随分と面倒な相手に会ってしまったものじゃなぁ。」

 

 「あらあら・・・随分と評価していただけるのですね。そちらとて純星煌式武装(オーガルクス)でしょうに。」

 

 そうクローディアが言い返すと、相手ーーーしかも女は、つまらなさそうに鼻をならした。

 

 「生憎と、儂のは純星煌式武装(オーガルクス)相手では分が悪いのでな。それが未来予知などというはた迷惑な能力持ちともなれば尚更じゃ。・・・それに、予期せぬ援軍も来たようだしのぅ。」

 

 女は呆れたように溜め息をつくと、両手で構えた大鎌を高速で振り回す。その軌跡と交差するように剣閃がぶつかり合い、火花を散らした。

 

 「今のを防ぎきるのか・・・中々の手練れと見た。」

 

 「っ・・・!アーネスト!?」

 

 そうーーー女が言う「援軍」とは、クローディアの背後から援護のために駆けてきていたアーネストの事だった。アーネストは一旦距離を取ると、クローディアの横までやって来る。

 

 「はぁ・・・なぜ学園内で指揮を取るべき貴方がこんな所に?仕事放棄ですか?」

 

 「それを言ったら君もだろう、ミス・エンフィールド。学園はパーシヴァル達にちゃんと任せてきたさ。こんな事態だ、おめおめと座っている訳にはいかないよ。」

 

 「聖がラードワース学園生徒会長、アーネスト・フェアクロフ・・・聖剣と謳われる白瀘の魔剣(レイ=グラムス)の使い手か。はぁ、面倒じゃ・・・。」

 

 女がそう呟く中、アーネストは一旦白瀘の魔剣(レイ=グラムス)を下ろして女を見る。

 

 「一応、確認のために聞きますが・・・投降、という選択肢はありますか?」

 

 「それが許されるなら、そこの娘を相手にした時点でとうにしておるよ。どうしようもないからに、こうして今立っておるのじゃが?」

 

 女は何を今さら、とでも言いたげにそう返す。それを確認したアーネストは、小さく溜め息をついてから白瀘の魔剣(レイ=グラムス)を構え直した。

 

 「ミス・エンフィールド。援護を頼んでいいかな?」

 

 それは、彼女の連携の練度を見込んでか、彼女の純星煌式武装(オーガルクス)の能力が利用出来ると踏んだからか。どちらにせよ、今のクローディアに断る理由は無かった。

 

 「えぇ、お任せを。お互い、足を引っ張らないように頑張りましょうか。」

 

 フッ、と。アーネストはそんなクローディアの言葉に小さく笑うと、意識を戦闘へと切り替える。

 

 「2対1・・・あぁ、面倒じゃなぁ・・・。」

 

 そんな事を呟きながら、女の方も大鎌を構える。しばしの緊迫の後、動いたのはーーー。

 

 「はぁっ・・・!!」

 

 「ぬぅっ・・・!!」

 

 ーーーアーネストだ。下腹部から抉るように放たれた斬撃を鎌を回転させながら振るった刃で絡めとり、受け流す。

 そのまま反撃に転じようと斜めに振るった鎌をアーネストは紙一重でかわし、逆に回転袈裟斬りを浴びせる。が、女もそう簡単にはやられない。振るわれた白瀘の魔剣(レイ=グラムス)の柄を大鎌特有の長柄で押さえ、その軌道を強引に変えさせる。その懐へクローディアが潜り込み、すれ違い様に二閃。反応され、直撃こそならなかったが、浅い傷は負わせられた。

 傷をつけられた事に驚いたのか、僅かに動きが鈍った隙にアーネストが白瀘の魔剣(レイ=グラムス)を再び袈裟懸けに振り下ろす。今度は見事に直撃し、女の肩を深く抉った。

 

 「・・・中々にやってくれるのぅ、主ら。じゃがな・・・儂とて黙ってはやられぬよ!」

 

 今度は、女の反撃。大鎌のリーチを活かした連続攻撃が、クローディアとアーネストへ襲いかかる。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「・・・シルヴィア、どうするの?」

 

 「私達はイリアさんを探そう。多分、どこかに隠れてると思うんだ。」

 

 そう言うと、シルヴィアは立ち止まって周りを見渡す。あまり見渡しが良いとは言えないが、シルヴィアには絶対に見つけられる確信があった。不意に両腰に提げていた煌式武装(ルークス)2つを起動させ、フォールクヴァングの形態にすると地面に立てる。その様はさながら、ステージ上でスタンドマイクを前に立っているようだ。

 

 「ーーー暗い旅はもう終わり ここから先は光満ちる道 僕らはきっと辿り着く 僕らが望む場所へと」

 

 澄んだ歌声が響き、星辰力(プラーナ)の波が流れていく。その波が地下にも浸透していき・・・反応を示す。同時に、イメージが流れ込んでくる。

 

 「だから進もう どんなに傷付いても どんなに大変な道のりでも・・・!」

 

 その歌は、悠と別れてアスタリスクに移住してきて間もない頃、悠がこのアスタリスクにもしも来た時、すぐ分かるようにと作った歌。悠に、自分の居場所を知らせる事が出来るようにと作った歌。

 その思いは性質として具現し、この歌を聞いた者に彼女の存在を知らせると同時に、彼女に目的の相手の存在を感知させるものへと変化した。

 

 「・・・見つけた。地下か・・・やっぱり見つからないようなとこにいるね。」

 

 「地下って・・・具体的には何処にいるのよ・・・。」

 

 実里の言葉に、シルヴィアは先程のイメージを反芻する。

 

 「・・・水面下に空間がある。多分、そこ。下水道から地下通路が繋がってるから、そこから行こう。」

 

 「・・・分かった。念のため、気を付けていきましょ。」

 

 近くのマンホールをこじ開け、下水道へと降りる。お互いに煌式武装(ルークス)を準備すると、シルヴィアがイメージを反芻しながら地下通路を進んでいき・・・いくらか進んだ所で、不意に周りの雰囲気が変わる。だが、目の前には突き当たりしかない。

 

 「シルヴィ、突き当たりじゃない。ホントにこの先にいるの・・・?」

 

 「間違いないよ・・・。でも、どうしたら・・・。」

 

 困惑気味に、突き当たりの壁を撫でた・・・その瞬間。ゴゴゴ・・・、と、重苦しい音を立てて突き当たりの壁が左右に割れた。息を呑む二人の前で完全に壁が割れ、奥に更なる通路が姿を見せる。重苦しい鋼鉄の通路の奥・・・そこには、くすんだ銀色の両面ドアがある。

 

 「これ・・・もしかしてエレベーター?」

 

 「みたいだね。・・・多分、下に行く用かな。」

 

 そう呟きながら、実里がドアに触れる。すると、チーン・・・と、独特の機械音を立てながらドアが開いた。中はおおよそ2メートル四方の空間。想像通り、エレベーターだった。

 

 「・・・じゃあ、行くよ。」

 

 「・・・うん。」

 

 そうお互いに声をかけ、エレベーターに足を踏み入れる。エレベーターのドアが閉まると、またしても二人の予想通りにエレベーターは下へと降りていく。数十秒としない内に、エレベーターは目的地についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・何よ、ここ・・・。」

 

 「・・・こんな空間があったなんて・・・。」

 

 エレベーターを降り、下を見渡す。眼前に広がっているのは、地下とは思えないほど広大な空間だった。

 改修前のステージのようなフィールド。六角形のステージであり、その各角に柱が立っていた。天井は驚くほど高く、淡い光源がはめ込まれた柱が6本、さらにステージ周りを囲む観客席があり、その周りに6本の柱がそびえ立っている。シルヴィア達が乗ってきたエレベーターはその観客席外周部の柱を通ってきていた。

 

 「・・・あっ、シルヴィ・・・。あそこ・・・。」

 

 「・・・うん。」

 

 二人で観客席を降り、ふわりとした動作でステージへと降りる。

 

 「・・・まさか、貴女達が真っ先にここに来るとは思いませんでしたよ。・・・どうしてここが分かったんですか?」

 

 ステージ中央へと向かってきたシルヴィアと実里に気付いて、イリアが振り返る。その目は彼女達が知っているはずの彼女とは違い、精気もなく、光が消えていた。

 

 「・・・お久しぶりです、イリアさん。」

 

 「えぇ・・・そうね。久しぶり。元気そうで何よりだわ。」

 

 シルヴィアの言葉に、イリアはそう返す。だが、その声すら彼女達が知るものとは違い、感情が全く感じられなくなっていた。

 

 「・・・イリアさん。・・・何で、こんな事をしたんですか。」

 

 実里がそう問い掛ける。イリアは視線を外すと、何かを思い返すように話し出した。

 

 「・・・貴女達には、分かるかしら。魔女(ストレガ)だから、星脈世代(ジェネステラ)だから・・・そんな理由だけで苛められたり、存在を無視される気持ち。」

 

 その言葉は、酷い重みを伴ってシルヴィア達に届く。

 

 「私ね、中学3年生までは普通の学生だったの。初等部から高等部まで、順繰りに上がっていくタイプの学校でね。

 初めて魔女(ストレガ)としての能力に目覚めたのが、初等部3年の時かな。たまたま飛んできたボールから身を守ろうとして、能力が目覚めてね。よりによって、そんな時に呼び出しちゃったのが大きな犬。おかげで、すぐに周りから気味悪がられて距離は置かれるし、『化け物』なんて言われるし。今にして思えば、それから色々と狂い出したのかなぁ。」

 

 

 

 

 

 「そこからは子供ながら地獄だった。周りからは距離を置かれて、陰口を叩かれて。机やカバンにもよくイタズラされて。

 でも、両親には心配をかけたくなくて。だから必死で耐えてたわ。・・・まぁ、両親には中学3年生の時にバレちゃったけど。

 それで、私の精神状態を危惧した両親に連れられてアスタリスクに引っ越してきて。苛められたりとかは無くなって安心できたけど、私の中で今度は怒りが湧いてきた。『何で周りと違うだけであんな目に合わなきゃいけないの』って。

 ・・・それからよ。一般社会に対する復讐心が止められなくなったのは。」

 

 

 

 

 

 「アスタリスクを卒業して、それからは私みたいな思いをした人達を集めてグループを立ち上げて、私の思いに賛同してくれる人を探して、協力関係を作って。

 確かに私達は非人道的な事もやってきた。それが許されるものじゃない事も分かってる。・・・でもね、そういう行動に至った根本的な原因は私達を拒絶した彼らの方よ。『自分の事をちゃんと見て欲しい』『自分の事を認めて欲しい』・・・たったそれだけの願いすら叶わなかった。叶えてもらえなかった。そんな目に合ったのに、『普通』でいるなんてできる訳がないでしょう?

 ・・・そうして生まれたのが、貴女達が魔術師(ダンテ)魔女(ストレガ)至上主義者と呼ぶものの正体よ。自分という存在を認めてもらえず、理不尽な目にあってきた星脈世代(ジェネステラ)の集合体。」

 

 

 

 

 

 長い長い、彼らの始まりの話が終わり、イリアは小さく息を吐く。対して、シルヴィアと実里は何も言えずにいた。

 

 「・・・これで分かったでしょう。どのみち、私達を・・・私を止める事なんて無駄なだけよ。だって、今更後に引くなんて出来るわけ無いんだし。」

 

 何かを諦めきったような、落ち着き払ったような・・・どちらとも取れない表情でそう言うイリアに、シルヴィアが重い口を開く。

 

 「・・・イリアさん。2つだけ、確認していいですか。」

 

 「・・・何かしら。」

 

 イリアが僅かに顔をあげ、シルヴィアを見る。シルヴィアも同じく顔を上げ、イリアを見る。

 

 「悠君のご両親が亡くなった事と、悠君を狙ったのはどうしてか。それに・・・私達の前で、見せてた優しいイリアさんは、嘘だったのか。

 ・・・お願いだから、ちゃんと答えてください。」

 

 「・・・双月君の事は申し訳ないと思っているわ。私達の仲間を増やすためだったとはいえ、必要もないのに死なせてしまったから。双月君を狙ったのは、私達の行動をまだ知られるわけにはいかない時期だったから。彼の両親を巻き込んでいなければ、その必要も無かったわ。

 2つ目に関しては・・・ノーコメント、としか言いようがないですね。」

 

 「・・・そう、なんだ。」

 

 少し悲しそうに、シルヴィアは目を伏せる。その横で、実里は人形師の万能鋼糸(ワイア・オブ・ドールマスター)を起動し、人形達を生み出して構える。

 

 「・・・やるしかないよ、シルヴィア。話を聞いてくれる雰囲気じゃないもの。

 ・・・イリアさん。私達は、貴女を止めます。これ以上、貴女の手を汚させる訳にはいきませんから。」

 

 その言葉で覚悟を決めたのか、シルヴィアもフォールクヴァングを構える。

 

 「・・・っ、いきますっ・・・!!」

 

 シルヴィアがフォールクヴァングを構えて突撃し、実里が生成した人形をその援護に飛ばす。イリアが短刀型の煌式武装を構え、同時に幻想人形(フィクション=パペット)を召喚する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーそれぞれの、最後の戦いが始まった。

 

 

 







皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。
漸く書き上がりました・・・いやほんと、ここらへんの描写どうしたら上手く出来るか悩んでました。いい感じになってるといいなぁ・・・(願望)
さて、個人的な話はまぁ置いときまして、前書きにも書きましたがそろそろ終幕が近いです。当然、前にも書いた通り第2章もありますが、まずは第1章、終幕までぜひお付き合い頂ければと思っております。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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