大変お待たせして申し訳ありませんでした。早速ですが、1章の辿る結末をご覧ください。それでは本編の方をどうぞ。
ーーー頬を風が撫でた。冬が近づいてきて、少し冷たくなった風に、意識を引き起こされる。
「・・・うぅ・・・ん?」
目を開けると、白い天井が見えた。何故か左目だけが見えなくなっていて、少し見づらいが左手側には大きな窓があり、少し空いた隙間からそよ風が入り込んできている。周りを見てみると、完璧な個室にいるのか、ウォーターサーバーやら、暇潰し用らしい本棚やら、色々と内装は整っている。
「・・・どこだ、ここ。確か俺・・・シリウスドームで戦ってて、終わった後シルヴィの所に行こうとしてて・・・。」
そこまで呟いた瞬間、フラッシュバックのように記憶が甦ってくる。
「・・・っ!!そうだ、アスタリスクはどうなった!?シルヴィ達は・・・!!」
焦りぎみに体を起こす。瞬間、痺れるような痛みが腹部に走り、堪らずそこを押さえて蹲った。そんな時、ガラガラと部屋の引き戸が開けられる。
「・・・悠君!!」
随分久しぶりに聞いたような、つい数時間前に聞いたような、聞き慣れた声。声の主ーーーシルヴィアは駆け寄ってくると、悠の背を支えながら再び彼を寝かせてやる。
「まだ治ったばっかりなんだから、安静にしてて。今先生呼んでくるから。」
そう言うと、薄紫の髪を翻してパタパタと部屋を出ていく。その背中を見送り、ここが病院だと理解した悠は、小さく息を吐いた。
「・・・ちゃんと、終わったのか。何もかも。」
「その通り。あんたやシルヴィアが頑張ったお陰でね。あと生徒会長二人組も。」
引き戸を開けて、今度はポニーテールを揺らしながら実里が入ってくる。自然な仕草で立て掛けてあったパイプ椅子を手に取ると、ドカッとそれを悠が横になっているベッドに横付けして座り込んだ。
「何だ、お前も来てたのか・・・。その様子だと、シルヴィもお前も無事だったみたいだな。」
「お陰さまでね。多少危ない目にはあったけど、何とか無事。・・・というか、無事かどうかはこっちのセリフよ。あんた、下手したらマジで死んでたのよ?」
だろうな、あの重症っぷりじゃ。と、気まずい顔をするしかない悠だった。
ー■■■ー
それからは、大分部屋が騒がしくなった。あれよあれよと担当看護師さんと医師ーーーしかも驚いた事に、月峰さん夫妻だったーーーが部屋に来て、脈や体温などを計り、体に異常が無いかとか、記憶に齟齬はないかとか、そういうのを聞かれた。特段気になる事も無かったので「大丈夫だ」と答えると、安心したように頷いた。その後は、一通り今の体の現状を説明されて終わった。
シルヴィアから聞いたところによると、あの後自分は真っ先にアスタリスク治療院に運ばれたのだそうだ。
余りにも負傷が激しく、治癒能力者の人達もかなり焦ったらしい。とはいえ、流石はアスタリスク最高峰の医療技術を持つ治療院。身体の方の負傷は体内のものも含めて完璧に治癒してみせた。
ただ、身体の方の負傷に多少時間がかかってしまったのもあり左目の方は治療が遅くなったため、傷自体は消せはしたし眼神経も無事だったのだが、負った時点で決して浅くない傷だったために光は失われてしまったのだという。移植などでもしない限り、左目は生涯全盲のままらしい。
それに目を横切るようにして表面についてしまった傷は跡が残ってしまったため、日常生活では目立たないようにと左目全体を覆う大きさの眼帯を渡されていた。
少なくとも日常生活に関しては今まで通り過ごせるくらいには支障はないらしく、このまま行けば、明後日の朝には退院できるそうだ。
「・・・まぁ、結果生きてるんだし。片目が見えなくなったくらいなら儲けものだよな。」
「・・・何と言うか・・・動じないなぁ・・・。」
「・・・相っ変わらず頭おかしい発言するのねあんた・・・。」
あっけらかんとそんな事を呟く悠に、ベッド横の椅子に座ってお見舞いに買ってきたリンゴを剥きながらシルヴィアは呆れるやら何やらで深い溜め息をつき、実里は実里でジト目で悠を睨む。
昔からこうだ。「命があるなら儲けもの」とか言って、怪我をしようが風邪を引こうが全く自分の体を気にしない。
「実里から聞いたでしょ、下手したら死んでたって。お願いだから、そういう事言うの止めてよ。この1週間、私ずっと気が気じゃなかったんだよ?」
そう。悠は何事もなく受け入れていたが、彼は治療院に運び込まれて治療を受け、第1病院に移送されて入院しての1週間、ずっと眠り込んだままだったのだ。
その間、彼と同じくあの動乱の鎮圧に動いていたクローディアやアーネストは生徒会長としての仕事もあったし毎日とはいかないもののお見舞いに来ていたし、悠より先に回復していた光や学園内で避難者の対応に当たっていたユリス、夜吹も時間の空きを見ては来ていたし、シルヴィアや実里に至っては毎日来ていた。
「・・・そうだな。悪い、不謹慎な事言った。これからは、自分の事もちゃんと大事にするよ。」
「ん、宜しい。」
そう言ってシルヴィアから渡されたリンゴを噛る。何と言うか、こうして3人でいる事が大分懐かしく感じた。
「・・・まぁ、何はともあれ何とか丸く収まったわけだし。あんたの過去に関しちゃ、今回ので大体精算できたんだろうし。少しは自分優先に生きてもいいんじゃない?というか、危なかっし過ぎて見てらんないからそうして。」
「・・・お、おぅ。」
何でそんなにキレてんだ・・・と思いながら、何とはなしに窓の外を見やる。こうも落ち着いた気分で青空を見るのも、大分久しぶりな感じがした。
ーーー2つほど、悠が知らない所についても話しておこう。
まず、動乱の収束とその後に関して。あの後、統合企業財体と
・・・首謀者であったイリア・フィーリエの事については徹底的に情報が抹消され、一般には「そもそもそんな人物は既に存在しない」という扱いになった。彼女が最後に自身の存在を犠牲にしたために遺体が残らなかった事もあり、その方が都合がいいと判断されたのだ。その代わりと言ってはあれだが、彼女の故郷に無縁墓という形で彼女の遺品が納められるらしい。近いうちに3人で行こうと、相談をした。
また、今回の動乱の根本原因が
そしてもう1つ。シルヴィア達の今後についてだ。あの動乱の最中、クインヴェールからの追放宣言を受けた事と、悠が録音しておいた音声記録もあり、鎮圧後早い段階で銀河が動いた事で、晴れてシルヴィアと実里は星導館に転入、その所属を移す事になった。
アイドル活動に関しても、これからは民間音楽会社に協力してもらって年数回のライブとCD・DVD販売を中心にするらしい。ちなみに実里が持っていた
また、身元保証人には「悠がまだ学生である」事もあり、双月美晴が個人としてつく事になった。これは上層部の間でも揉めたのだが、動乱下で真っ先に行動を起こしたのが悠であった事、あれほどの重症を負ってまで鎮圧のために動き、シルヴィア達の証言から彼が動乱鎮圧の最大功労者であると判断された事から、その功績への謝意、という意味を込めて承認されたらしい。
・・・まぁ、何はともあれ。少なくとも、悠の過去に関してはおおよそ解決を見、
ー■■■ー
「おーす、来てやったぞー親友。」
「仲良くやっている所悪いが、邪魔するぞ。」
「あ、ユリスさん。夜吹君も。」
不意に引き戸が開けられ、入ってきたのはユリスと夜吹だった。二人ともいつもの制服姿だったが、腕に腕章が巻かれている。
「あんた達、出てきちゃって大丈夫だったの?まだ避難中の人達いるでしょ?」
「心配せずとも大丈夫だ。ちゃんと交代時間で引き継いできたし、もう1週間だからな。そんなにずっとついていなければいけないほど混んでいるわけじゃない。」
「そーそー。それよか、俺らとしちゃこいつの安否の方がよっぽど大事な事なんでな。」
そう言うと、夜吹達もベッドを囲むように椅子を置くと座り込んだ。
「そうそう、今日は悠に耳寄り情報があんだよ。」
「見たらきっと驚くぞ。お前達もな。」
ユリスが悠達3人に向けてそう言う中、夜吹がポケットから取り出したのは、いつも彼が使っている携帯端末だった。それを何やら操作すると、悠に画面を見せてくる。
『序列1位選抜決闘開催』
「「「・・・は?」」」
星導館学生向けの学生ポータルのお知らせ最上部に、そんなタイトルがあった。夜吹がそこをクリックすると、詳細な情報と現状の参加者リスト一覧が出てくる。
『現序列1位・双月光さんの進路決定に伴い、新序列1位を決定するための選抜戦を行います。エントリーされる学生の皆様は期日までに総務課に必要書類の提出をお願いします』
「・・・あぁ、そういう事か。結局本家に戻るんだな、姉さん。」
文面を読み、一転して納得したように悠がそう呟く。怪訝な顔をする周りに、悠は事情を話した。
「そっかぁ。だから急にこんなもの始めたんだね。」
シルヴィアがほむほむ、と頷く。
「んで、その下の参加者リストは?実際どんだけエントリーしてんの今。」
「あ、そうそう。お前へのニュースってのがそれなんだよ。ほれ。」
夜吹に渡された端末に表示されているリストを順々に見ていく。序列3位・刀藤綺凛、序列4位のネストル・ファンドーリン、序列5位のファードルハ・オニールなど、実力者揃いのメンツが勢揃いしている。
「随分な実力者がエントリーしてるな。・・・ていうか、これ参加者よく見たら
「あぁ。お陰で他の奴らは尻込みしてしまってな。ろくに参加者が集まっていないんだ。まぁ最も、こんなメンツでは無理もないがな。」
はぁ、と小さく溜め息をつきながらユリスは呆れた顔をする。
「私のように特段序列に余り拘らないのはまだしも、序列を上げたいと言いながらエントリーしない奴らがいるのが気に入らん。」
「確かに、ユリスさんて余り序列の事気にしないよね。このトーナメント戦が発表された時も、最初から参加する気ないとか言ってたし。」
シルヴィア達とユリスがそんな会話を弾ませる中、悠はリストの一番最後・・・『特別推薦枠』に書かれた名前に頭を抱えていた。そこにあったのは・・・
『特別推薦枠 双月悠』
・・・まさかの、自分の名前だった。
「・・・姉さんとクローディアの仕業か・・・。」
「だろうな。ま、頑張れよ?」
夜吹がニヤニヤしながらそう言ってくる。軽く一睨みして黙らせると、悠は深い溜め息をついた。
「俺、あんま序列とか気にしてないしどうでもいいんだがなぁ・・・それに左目見えないのって何だかんだハンデなんだが・・・。」
「んなもんあんたなら気合いでどうとでもなるじゃない。今までもずっとそうだったんでしょ。」
実里が横からそんな野次を飛ばしてくる。その言葉に、ユリスも夜吹も「そうだそうだ」と言いたげに頷いた。
「俺はお前らの中でどんな認識されてんだよ。流石に俺でも気合いで視界制限されるのをどうにかするのは無理だっての。よくある『アニメ主人公の隻眼キャラ強い現象』と一緒にすな。
・・・いやまぁ、やろうと思えばやりようはあるんだけどさ。」
悠の最後の独り言に、周りが揃って「ほれみた事か」という顔をする。なぜか人間として見られていない気がするのは気のせいだろうか。
「実際あんた、人外もいいとこでしょ。剣の腕とか、決闘の時の実力にしたって。
正直、あんた相手にまともに戦えるのってアーネストとか光さんとか、あとはクローディアくらいなんじゃない?
悠の思考を読んでいたかのように、実里がそう言ってくる。
「え?何で思考先読みとかしてくれてんの?てか何?俺の
助けを求めてシルヴィアに目を向けるのだが、彼女は彼女で曖昧に笑うだけだった。
ー■■■ー
「ありがとうございました。」
「はい、お気をつけて。お体、大事にしてくださいね。」
ーーーそうして慌ただしくも騒がしい時間は過ぎていき、目覚めて2日後の朝。受付の人と、わざわざ見送りに来てくれた月峰夫妻に礼を言って病院を出る。隣では真新しい星導館学園の制服に身を包み、髪色もカムフラージュして変装済みのシルヴィアが心底嬉しそうにしており、悠の私物を一通り・・・といっても、村雨・村正の2本と
「そういや、引き継ぎとかはもう終わったのか?あと荷物とか。」
「大丈夫だよー。仕事の引き継ぎは実里と一緒にすぐ済ませておいたし、荷物は昨日までに星導館の学生寮に送ってあるから。」
そんな他愛もない話をしながら、星導館へと続く道をゆっくり歩いていく。学園へ続く鉄橋に差し掛かったところで、ふと足を止める。
(・・・これからは、同じ学園での生活か。)
そう思うと、自分がそうさせたにも関わらず、恥ずかしいような、こそばゆいような気分になった。
「悠君、どうしたの?早く行こうよー。」
いつの間にか先へ行っていたシルヴィアが、そう声をかけてくる。「何でもない」と、それだけ言うと、悠は彼女を追いかけた。
「・・・何か、不思議な感じだな。」
「・・・?何が?」
「いやさ、シルヴィと実里と同じ学園で暮らすなんて、思いもしてなかったから。クインヴェールは女子校だし、そうホイホイ連絡も出来なかったし。ましてや、生徒会長で序列1位と序列外の一般学生だろ?立場が違いすぎてなぁ。」
悠がしみじみそう言うと、シルヴィアはふわりと笑う。
「私も実里も、もうどこにも行かないよ。これからは、ずっと一緒にいるからね。」
その言葉に、つい悠は言葉を失ってしまう。そして・・・大分久し振りに、心の底から笑った。
「・・・そうだな。その通りだ。」
そうして、二人並んで学園への道を歩いていく。冷たくなってくる空気の中、明るい陽光が二人を照らしていた。
ー■■■ー
「ここが星導館かぁ・・・!改めて見てもすっごい広いね。クインヴェールとはまた違う感じが良いなぁ。」
学園の敷地に入るや否や、シルヴィアが興奮気味に周りを見る。悠にとっては見慣れた光景だが、他学園と比べるとやはり違いが分かるらしい。
「そんな大したものじゃないぞ。・・・と、そういや避難者の人達がまだいるってユリスが話してたような気がするんだけど・・・どうしたんだろ。」
「まだ避難されている方々なら、運動場の方に移動して頂いていますよ。」
不意に、背後から声がかかる。シルヴィアと悠が振り向いてみると、そこにいたのはクローディアだった。
「流石に1週間も経つと、避難者も居住区の方に戻ったり、本土に帰る人でかなり減りましたからね。最初はあちこちに仮設テントを置いたり、屋内に案内していましたが。いつまでも本業を再開しない訳にもいきませんから。」
「なるほど」と、1人納得する。聞けば、シルヴィアや実里も荷物を運び込みがてら、避難者支援を手伝っていたらしい。
「まぁ、それは後に話すとして。私は生徒会長室にいますから、まずは荷物を置いてきては?新しい寮も出来ている事ですし。」
「新しい寮・・・?」
クローディアが「はい♪」と素晴らしいまでのニコニコ顔で示す先には、今まで無かったはずの建造物があった。
ー■■■ー
「
あきれたような困ったような、そんな顔で悠は目の前に立つ新しい寮を見上げた。星導館学園・
「クローディア曰く、私と実里のプライバシー保護のためらしいよ?ほら、クインヴェールから電撃転入してきた訳だし、急に同じ寮に入っちゃうとパニックになるだろうって。」
「・・・普通にあり得るから笑えないな、それ。」
何せシルヴィアは「世界の歌姫」だ。それが急に自分の学校に転入してきた上、同じ寮に入ってきたなどと分かればパニックになること必至である。
「そういうわけで、急遽新しく寮を作ったんだって。ちなみに現在入れるのは悠君と私と実里だけ。貸しきりだよやったね♪」
素晴らしいまでのニコニコ顔でシルヴィアがそう言ってくる。なにが「♪」なのやら、訳がわからない。
「・・・まぁ、とりあえず部屋に荷物置いてくるかぁ。」
そう呟きながら、2階建てで長方形に配置された真新しい寮へ入っていく。広々としたエントランスで管理人さんに挨拶し、エレベーターで2階へ上がる。2階は4つに部屋が分かれており、悠の部屋は201号室だった。
「あったあった。201号室・・・ここか。」
ガチャリ、と渡された鍵を差し込み、ドアを引く。目に飛び込んできたのは、悠が見慣れたこぢんまりとした部屋ではなく、だだっ広い大部屋だった。
「おぉー、広いね。悠君の新しい部屋かぁ。1人で住むには広そうだけど・・・。」
「まぁ、広い分には良いだろ。ちょうど炊事洗濯なんかの生活用品は全部揃ってるしな。色々使う分にはスペースあった方がいいし。」
そう言いながら、シルヴィアから受け取った荷物を床に降ろす。一通り見てみると、悠が男子寮の方に置きっぱなしだった衣類や私物も既に運び込まれた後だった。
寝室は勿論だがリビングやキッチン、浴室も個室に分かれており、共同利用だった男子寮の方の部屋と比べると大分変わっている。内装も整っており、初めて入るはずの部屋だが居心地の良さはすぐに分かった。
「んじゃ、ちょっと持ってきた物置き直すかな。シルヴィも荷物、まだ整理しきれてないだろ。先にやってきなよ。」
悠がそう言うと、シルヴィアは「それもそうだった」とパタパタ部屋を出ていく。それを見送ってから、悠は改めて部屋の窓から学園内を見渡してみる。
教室棟の方を見てみれば、いつも通り授業を受けたり、大学部なのか出歩いている学生がいる。クローディアが言っていた運動場の方を見れば、ギリギリではあるが、避難テントの天辺が微かに見える。
多少違いはあれど、確かにその光景は「平穏」そのものだった。
「・・・戦った意味はちゃんとあった・・・か。」
そう、誰に聞かせるともなく呟く悠の顔はどこか清々しげであり・・・どこか、憑き物が落ちたようだった。
「じゃ・・・整理するか。このままでもいいけど、馴染むって感じがしないんだよな。」
そう言うと、部屋に纏めて置いてあった私物や着替えを1つ1つ、丁寧に置いていった。
ー■■■ー
『これより、序列1位選抜戦を行います。参加される選手の皆様は、それぞれ準備をお願いします。』
そんなアナウンスが流れ、星導館学園内敷地にある大型アリーナのステージ上電光板に「序列1位選抜戦」の参加者顔写真が並ぶ。観客席には星導館の学生がみっしりと座っており、その熱狂ぶりは空気からも伝わってくる。
ーーー悠達が星導館に帰ってきて2週間。あの事件も一通り収拾がつき、避難者達もそれぞれの生活に戻った頃。ついに、「序列1位選抜戦」が始まった。
『さぁ、始まりました!序列1位選抜戦!今回実況させて頂きますのは星導館放送部部長の私、朝川凛と』
『現地取材的な感じで参加してます、星導館新聞部の夜吹英二郎っす。よろしくー。』
実況席に座るのは星導館学園放送部の部長で、昼休みの放送や学内イベントでは率先して指揮を執っている朝川凛。そして、何故か新聞部の癖に実況に参加している夜吹だった。
『さぁさぁ、まずはこの選抜戦の形式について説明しましょう。電光掲示板の方をご覧ください。』
観客の視線がアリーナ中央上部の電光掲示板に向かうと、そこに参加者全員の名前が映る。
『今回、参加者は特別推薦枠を含めて8名。まずはこの8名をランダムに割り振って二日間にかけてのトーナメント戦を行います。その後、このトーナメントにて上位成績を修めた順に2名を選出。明後日の午前10時より、現序列1位である双月光選手と各選手による決闘を行う、という流れになります。
選手はこの8名の中で1位を獲得し勝ち上がった順に現序列1位・双月光選手と戦闘。双月光選手の敗北か全選手の敗北が決定した時点で試合終了となります。』
『星導館学園では序列は入れ替え制だからな。最終的には現序列1位に勝つ必要がある。まぁ、これで誰も勝てなかったらどうするんだって話なんだが。』
『そこは生徒会長が何とかするでしょう。続けて、注目選手の紹介に移ります。』
そうして、今度はアリーナ上電光板に映る参加者顔写真が次々展開され、以前の決闘や序列戦の映像が流れていく。
『まずは序列3位!"疾風迅雷"の二つ名を冠し、まだ中等部ながら瞬く間に
電光板に銀髪の少女の顔が映り、その横に彼女の戦績、そして以前の決闘や序列戦の映像が映る。瞬間、観客席からは激しい歓声が上がった。
「まぁ、そりゃ人気もでるよな。あの容姿でしかもあの強さだし。」
控え室でシルヴィアと実里と、自分の出番を待ちながら悠はそう呟いた。
クローディアが才色兼備、かつ生徒会長で見てくれが大人びている所から人気なのに対し、綺凛の場合は中学生らしくまだまだ幼い容姿とは裏腹に圧倒的な剣術1本、しかも入学して間もなく序列入りした事から非常に人気がある。
『彼女は剣術界では有名な「刀藤流」の出身で、その剣術はまさしく圧倒的です。これまでの決闘や序列戦でも、バリエーション豊富かつ隙のない連続攻撃で何人も倒されていますね。』
『ま、第1候補はやっぱ彼女だろう。明確に実力が分かっていて、かつその実力は飛び抜けてるからな。』
お互いに、実況席に立つ二人がそんな評価を述べていく。それが済むと今度は別の選手が映る。そうして次々と参加者が紹介されていき、遂に最後の参加者・・・悠の顔が映った。
『さぁ、そして最後です。生徒会長と現序列1位からの特別推薦枠。序列としては序列外ですが、1度だけ行われた現序列1位・双月光との決闘では彼女を目前まで追い詰めた唯一の相手!双月悠選手!』
瞬間、先ほどの綺凛に勝るとも劣らない歓声が上がる。それに一番驚いたのは、当の悠本人だったのだが。
「何で当のあんたが驚いてんのよ・・・。」
「いや・・・まさかこんな歓声上がるほどとは思ってなかったし・・・。」
困惑気味にそう言う悠に、シルヴィアは苦笑した。今更何度も思うが、やはり悠はもう少し自分に自信を持つと言うか、人から見られる事に慣れた方がいいんじゃないだろうか。
『双月悠選手は序列外ではありますが、実際のところは実戦記録に乏しいのが現実です。事実、序列戦や
唯一明確に残っている記録が現序列1位である双月光さんとの決闘なんですが、この決闘で彼は光さんをあと1歩の所まで追い詰めているんですよね。他にも、あくまで噂ではあるんですが、あの"剣聖"ことアーネスト・フェアクロフさんと決闘して勝利したとも・・・。』
実況席から聞こえてくる言葉に、悠は試合前の落ち着きも兼ねて飲んでいたスポーツドリンクを思いっきり吹き出した。横ではシルヴィアが小さく笑っているし、対面のソファに座る実里は何故かニヤニヤしている。
『・・・さて、長くなりましたが早速試合に入りましょう。まずは第1戦、組み合わせは・・・ファードルハ・オニール選手と双月悠選手!!いきなりの登場です!!』
電光板にファードルハ・オニールと悠の顔が映る。同時に、観客席からは興奮気味に声が上がった。
「・・・初っぱな俺かよ。」
「ま、あんたの実力証明するにはちょうどいいんじゃない?ぱぱっと済ませてきなさいよ。」
「悠君なら大丈夫だよー。頑張れ!」
他人事のように(実際確かに他人事ではあるのだが)そんな呑気な言葉をかけてくる二人に溜め息をつきながらも、悠は控え室を出てアリーナへと向かった。
ー■■■ー
『さぁ、選手入場です!まずは序列3位!"
悠然と、蛇腹剣を手にアリーナへ入ってきたのは序列5位のファードルハ・オニールだ。その立ち居振舞いには、緊張は微塵も感じられない。手にした蛇腹剣・・・
『続けてもう一人!序列外ながらもその実力は現序列1位に勝るとも劣らず、規格外な事に
ゆっくりと、しかし確かに地を踏みしめながらアリーナへ悠が入ってくる。左目を大きな眼帯で覆ったその顔は真剣そのものだが、殺気だっているわけでも、緊張してもいない。全てを見通すかのように、その目は静かだ。
「さぁ、始めようオロロムント。僕らのステージを。」
そう言いながら、ファードルハはオロロムントを構える。対して、悠も背に差していた
『さぁ、両者準備が揃ったようです!』
10・・・9・・・8・・・
悠は目の前にたつファードルハを見据える。その構えを、目付きを、心象を・・・全てを見通すが如く、しっかりと右目を見開く。
7・・・6・・・5・・・
ファードルハは、何とか悠の隙を探そうとする。彼自身、
4・・・3・・・2・・・
お互いに、握る武器に力を込める。互いの
1・・・
『
機械音声が試合開始を告げる。真っ先に動いたのはーーーファードルハだ。
「ふんっ・・・!!」
オロロムントの刃が縦横無尽に走り、様々な軌道を描いて悠を襲う。だが、悠が動じる事はない。
悠が
「何っ・・・!?」
何が起こったか理解が追い付かず、ファードルハが驚きの声を上げる。悠は涼しげな顔でファードルハを見やる。
実際、悠は何も特別な事はしていない。ただ単に、一番最初に迫ってきたオロロムントの刃を弾きーーー同時に
『な・・・何が起きたのでしょう!?ファードルハ選手の攻撃が一気に弾かれました!』
『今のは最初の一撃を弾いただけに見えたが・・・何をしたんだ、あいつ?』
実況席の二人も理解できず、困惑気味だ。それもそうだろう。一瞬の事だし、元より悠がやった事を理解出来るのは「力」を見る能力を持った
「・・・っ、ならば!これでどうだ!」
一瞬怯みながらも、戦意を取り戻したファードルハが今度はオロロムントの刃を頭上に振り上げる。すると、その刃が次々に分離して1つ1つの鋭刃に変化し宙に浮いた。そしてその切っ先が、悠を捉える。
「どんなトリックを使ったのか知らないが、これは防げないだろう!?いけ、オロロムント!!切り刻め!!」
ファードルハの言葉に応えるように、オロロムントの刃が悠目掛けて飛来する。それに対して、悠は「ドンッ」という振動と共に足元を踏みしめると、両手の相棒を構えた。
それを挑発と解釈したか。ファードルハは歯を軋ませると、声を張り上げる。
「貫け!!」
ファードルハの声に呼応し、さらにオロロムントの刃が出力を増す。だが、それにすら悠が動じる事は無かった。
「・・・その程度かよ?」
拍子抜けした様子でさらりとそんな事を言う悠に、ファードルハは目を剥く。次の瞬間には、その顔は驚愕の色に落ちていた。
「生憎だけどな・・・この程度。」
「今更怖くもなんとも無いんだよ!」
そう言うや否や、迫り来るオロロムントの刃を次々と叩き割っていく。悠が両手の剣を振るうたびに叩き斬られた刃が砕け散り、火花を散らす。両手の剣が剣閃を描くたび、手に握るオロロムントが悲鳴を上げるように震えた。
「・・・馬鹿な・・・オロロムントが・・・。」
オロロムントの刃が破壊されていく光景を前に、ファードルハは膝をつく。目の前の信じられない光景に、戦意は敗北の絶望へと塗り変わっていた。
「じゃあな。ファードルハ・オニール。」
全ての刃を斬り砕いた直後。悠が地を蹴り、その一瞬の後にファードルハの背後へ、両手の剣を振り抜いた姿を現す。ファードルハの身体が崩れ落ち・・・同時に、機械音声が判定を告げる。
『
ー■■■ー
「やっぱ人として可笑しいわよアイツ・・・何あれ怖い。」
「あはは・・・まあ、悠君の滅茶苦茶は今に始まった事じゃないから・・・。」
悠の控え室で試合を見ていた実里とシルヴィアがそんな言葉を交わす。画面のなかでは、歓声を受けながら悠がステージを出ていくところだった。
「いやあれは滅茶苦茶なんてものじゃないでしょ・・・。誰が
実里の呆れたような、おまけにどこか気に入らなさそうな顔にシルヴィアは苦笑いをするしかない。
「ま、まぁ、ほら。悠君だし・・・今更じゃない?それは。」
「・・・あんたも大概毒されてるわよねぇ・・・。」
呆れた目を向けられ、苦笑いを深くするしかないシルヴィアであった。
(・・・強いな。綺凛でも勝てるか分からぬとは・・・。)
また別の控え室。悠の試合を見ながら、男・・・刀藤鋼一郎は顔をしかめていた。その後ろのソファでは、小柄な銀髪の少女が目を閉じて静かに瞑想している。
(・・・いや。私のプランを達成するためにも、綺凛には勝ってもらわねばならん。そうでなくては困る。)
「・・・勝てよ、綺凛。勝たねばお前の父親は助からんのだからな。」
「・・・はい、叔父様。」
目を開けてそう返す綺凛の目は、静かではあったが・・・どこか陰って見えた。
ー■■■ー
『さぁ、続けて参りましょう!4名選抜の最後を飾るのはこの二人!我らが序列3位、"疾風迅雷"の2つ名を持つ女剣士、刀藤綺凛!!』
観客席から興奮の歓声が上がる。腰の日本刀"千羽斬"に手を添えながら綺凛は入場すると、深く深呼吸した。
『そしてもう1人!"
反対側から、綺凛と向かい合うように入場してくるのは序列4位のネストル・ファンドーリン。気合いが入っているのか、体からは既に冷気が放たれている。
『この二人の相性的には、ちょっとファンドーリン選手の方が不利ではありますね。ファンドーリン選手の持ち味は氷を活かした多彩な攻撃ですが、刀藤選手の持ち味は2つ名にもある通り、素早い動きと剣戟です。あの素早い動きに対処できるだけの攻撃手段がファンドーリン選手にあるかどうかが鍵になるでしょう。』
『何せ、速さだけなら現序列1位より上って当人に言われた位だしな。あの素早い動きをどう抑えるかが肝になってくるだろう。』
実況席から二人がそう言葉を交わすなか、ステージ中央で綺凛とネストルが相対する。綺凛は抜刀の態勢で腰の柄を握り、ネストルはグローブを嵌めた拳を握りしめる。
『
試合開始のブザーが鳴り響く。同時に、綺凛が飛んだ。ネストルは即座に正面へ氷の壁を展開し、自身は後方へ飛びすさる。
直後、氷の壁を叩き切って綺凛が現れた。そのままネストルに迫ろうとするが、あちらも相当な実力者。そうはさせまいと、大量発生させた無数の氷塊を飛ばす。それらを叩き落としつつ、綺凛が迫る。しかし、ネストルは氷の剣を大量発生させてそれを迎撃した。
(・・・やりづらい・・・!)
縦横無尽に、不規則な軌道を描きながら迫ってくる氷刃を何とか叩き落としつつ綺凛は内心そう毒づく。確かに、刀藤綺凛は強い。だが、明確な弱点もあった。
彼女は複数方向からの同時高速攻撃への対応が苦手なのだ。基本的に、彼女が経験してきた決闘は1対1。1対多の戦いも経験こそあれ、数としては余りに少ない。
(・・・でも・・・負けたら、お父さんは・・・!!)
試合前、鋼一郎に言われた言葉が頭をよぎる。
「・・・っ!!」
刹那、綺凛の動きが加速する。迫る氷刃を目に止めもせず、一直線にネストル目掛けて突っ込んだ。背後から氷刃が迫り、彼女の制服を裂くのも気にしない。
「こいつ・・・っ!?」
予想もしなかった動きに驚きながらも、ネストルは氷刃を真正面から飛ばして迎撃する。しかし綺凛は戦闘継続にあたって致命傷になり得る攻撃だけを切り払い、他は全く以て気にも止めない。
そうこうしているうちに綺凛は持ち前のスピードで距離を詰め、ネストルの目と鼻の先にいた。
反応が遅れ、急いで対処しようとするがもう遅い。ネストルが能力を発動するより早く綺凛の"千羽斬"の刃が閃き、ネストルの胸に輝いていた校章を真っ二つに割った。
『
『
ふぅ、と小さく綺凛が息を吐き、少し下がってからネストルに向かって礼をする。同時に、激しい歓声が沸き上がった。
『試合終了!ネストル・ファンドーリン選手を破った刀藤綺凛選手、4名選抜に入りました!』
『まず今日の4試合で勝ち抜けたのが決定だな。序列6位・東薙茨、序列7位・遠野百舌妃。そして序列3位・刀藤綺凛と序列外・双月悠。明日はこの4人が争う事になる。』
実況席でそんな会話がされる中、綺凛はステージを去っていく。その背を、控え室のモニター越しに悠は厳しい視線で見ていた。
ー■■■ー
「とりあえずお疲れ様ー、悠君。というわけでまず1日目突破のお祝い!」
「そうそう、こういうのは派手にやらないと。何事も楽しくってね。」
1日目が終わった夜。中央区・商業エリアで買い物を済ませ、夕飯を作ろうとキッチンに立った悠の腰を折るように部屋に入ってきたのはシルヴィアと実里だった。その手には商業エリアで買ってきたのだろう、ケ◯◯ッキーの箱が提がっている。
「お祝いって・・・気が早すぎるだろ。ていうか今から夕飯作ろうとしてたとこだったんだけど・・・。」
「あんたってそんなに家事やるタイプだったっけ・・・?」
そんな返答を返され、悠は軽く頭を抱えた。その顔から見るに、本気で言っているらしい。
「するしないも何も、孤児院にいた頃に朝昼夜と院長と一緒に料理作らされたり掃除やら洗濯やら色々とやらされたんだが・・・?自慢じゃないが色々やらされたんで家事スキルでそんじょそこらの奴等に負けない自信はあるぞ。」
悠の言葉に、何故かシルヴィアまで「え?」という顔をする。このせいで後々まで悠がシルヴィアと実里に対して根に持つ事になったのは言うまでもない。
ちなみに結局、その日の夕飯は「せっかく買ってきてくれたんだし」との事で悠とシルヴィアと実里と3人、悠が買ってきた野菜で作ったサラダとケ◯◯ッキーになった。
ー■■■ー
翌日、早朝。まだ薄暗い中、共通寮の前の広場で悠は1人鍛練に励んでいた。その手には
(やっぱり何か違うよなぁ・・・何て言ったら良いか分からんが。)
何というか、能力を引き出す事が自然にというか、スムーズに出来るようになっていた。以前のように「発動しろ」と指示を出さずとも、悠が少しでも
「
「お疲れ様ー、悠君。で、どうしたの?」
そんな悠の所に、タオルとスポーツドリンクを持ったシルヴィアがやってくる。悠の朝鍛練を知っていたのか、きっちり悠が上がろうと思っていたタイミングだった。
「あぁ、いや、何でもない。気にしないで大丈夫だ。それよか、俺が鍛練やってるってよく分かったね。」
「まぁ、悠君の事だしね。やってるだろうなぁって。」
そんな風に笑いながら、シルヴィアからタオルとスポーツドリンクを受けとる。汗を拭き、ドリンクを飲みながらシルヴィアと揃って寮への帰り道を歩き出す。
「そういえば次の相手って、まだ発表されてないんだっけ?」
「あぁ。実際に始まってから抽選されるしな。まぁ・・・誰が来てもどうにかなるだろ。最悪この『眼』でどうにかなるしな。」
「『眼』・・・?」
不思議そうに首を傾げる中、悠は曖昧に笑いながら寮へと歩く。
ー■■■ー
『さぁー、いよいよ2日目!今日、現序列1位に挑む最強の選手が決まります!早速ですが始めていきましょう!』
観客席だけでなく実況席も興奮に沸くなか、ステージに入場してきたのは東薙茨。そして反対から、双月悠。
「貴方と戦えるのを楽しみにしてたわ、双月悠。あの双月光の弟だし。しっかり見せてもらうわ、貴方の実力。」
「・・・何を見ているのか知らないけどさ。」
そんな茨の言葉に、悠は背から抜き放った
「俺は『俺』だ。『双月光の弟』も、『序列外』も関係ない。俺は『双月悠』として、あんたを倒す。」
その言葉に、何を感じ取ったのか。茨はそれ以上何も言わず、真剣な表情で構えを取る。対して悠は、
『さぁ、両者準備が整ったようです!それでは、カウントダウン!!3・・・2・・・1!!』
試合開始のブザーが鳴った瞬間。両者が同時に地を蹴った。
茨が剛拳を連続で突き出してくるのを最小限の動きで回避し、お返しに
「まだまだぁ!!」
今度は拳と蹴りを織り混ぜた休みなしの連続攻撃。だが・・・悠にとってはどうという事もない。
「それが・・・どうした!!」
突き出された拳をかわし、抑え込み、反撃に蹴りを叩き込む。派手に吹き飛んだ茨は直ぐ様体勢を立て直そうとするが、そこへ即座に飛び込んだ悠が
「双月流体術ーーー」
ギリギリ体勢を立て直した茨が飛びすさる。その瞬間、悠の拳が地へと叩きつけられ、纏った
「ーーー"烈破"!!」
弾けた
強く吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がる。ようやく止まるも薄れ行く意識の中、悠に視線を向けた茨が見たのは驚きのものだった。
(・・・何、で。
悠が纏う、圧倒的なまでの
それが何か、考えるより早く・・・茨は、意識を失った。
『
ー■■■ー
その次の試合。刀藤綺凛が持ち前の俊足で一気に距離をつめ、上手く立ち回る遠野百舌妃が徐々に距離を詰められ、一矢も当てられぬ完全試合で勝利。これで、最終戦を戦う二人が決定した。
刀藤綺凛と、双月悠。最初から飛び抜けて凄まじい実力を見せつけた二人が争う事になったのだ。
『さぁー、早くも最終戦となりました!最終戦を戦うのはこの二人!!まずは刀藤綺凛選手!!』
凄まじい歓声が上がり、ステージへ綺凛が上がってくる。流石に最終戦ともなると緊張してくるのか、その顔は流石に固い。
『続けて双月悠選手!!なんとここまで数分もかからず相手を圧倒し続けています!!』
そして反対から、悠。顔は緊張もなく、落ち着いている。そして何より、動作1つ1つに隙がない。
ステージ中央でお互いに足を止め、互いを見据える。
「・・・こうして刃を向け合うのは、初めてですね。」
「確かにな。まぁ、こうやって顔を合わせるのもほとんど初めてみたいなものだけど。」
そんな会話を交わす中、お互いに視線を外す事はない。お互いに隙を伺うように、視線は相手を向いている。
そして、どちらからともなく刃を抜いた。綺凛が千羽斬を正眼に構えるのに対し、悠は背から抜き放った
『さぁ、準備が整ったようです!!それでは
実況席からの合図と同時に、ブザーが鳴り響く。直後、ステージ中央で刃同士がぶつかり合い、火花を散らした。
"巣籠"、"花橘"、"青海波"・・・次々と繋ぎ手を放つが、それら全てを悠は弾き、打ち崩し、あるいは回避してくる。そして綺凛が次に繋ごうとする刹那の内に踏み込んできては反撃の1撃を叩き込んでくる。
何とかギリギリで綺凛もそれを回避、あるいは受け流すものの、余りの衝撃と重さに否応なく自身のリズムを崩されていた。
「ーーーっ!」
「遅い!!」
綺凛の剣の軌道が走るより速く、深く踏み込んだ悠が両手の剣を振り抜く。
「"地走蛇"!!」
高速回転しつつ振るわれた二刀が綺凛を襲う。恐ろしいまでの剣速に、綺凛は咄嗟に距離を取った。制服を刃が掠め、裂かれた制服が散る。
(速い・・・!!)
タイミングを計るためにも距離を取りたいのだが、悠は常に動き回り、綺凛の動きに合わせて回り込んでくる。刀藤流の奥義たる"連鶴"の本質は繋ぎ手の連続により相手の動きのコントロールし確実に追い込む事だが、現状では綺凛に打つ手がない。
しかも相手が相手である事もあり、出し惜しみしていては勝てないが故に、綺凛は初手から刀藤流の奥義ーーー"連鶴"を開放しているのだ。それでも追い込む所かこちらが劣勢に立たされている辺り、悠の実力は疑うべくもなくトップレベルだと言えた。
「ーーーぜぇらぁっ!!」
「くぅ・・・っ!!」
悠が放った"連舞・落"を受け止めようとするが、強すぎる衝撃に堪らず吹き飛ばされる。何とか体勢を立て直すが、腕が痺れていた。
「ーーー凄まじい剣技ですね。正直、辛いです。」
「それはどうも。刀藤流きっての天才に誉めて貰えるとは光栄だ。」
綺凛の言葉に、悠は小さく肩を竦める。その様子に、一切の気負いはない。
「ーーーですが。私は、負けるわけにはいかないのです。私が負けたら、私の願いは叶わない。叶えてもらえないーーー」
「ーーーその割には、剣に重さが感じられなかったけどな。」
悠の言葉に、綺凛は驚いた顔をする。その顔を見ながら、悠は言葉を続けた。
「剣には、多かれ少なかれ『意志』の重さが載っかるものだ。本気で何かを為そうとか、覚悟がある奴の剣が重く感じるってのはそういう事なんだよ。でも、君の剣はまだ軽い。
ーーー本気でその願い、叶えたいと思ってるのか?」
悠の言葉に、綺凛は何も言い返せずにいた。
「この際、先輩としてはっきり言っておくけどな。何かを為そうと思うなら、本気でやれ。自分の力だけでやってやる、位じゃなきゃ、どんなに心では叶えたいと思ってても実現なんて出来る訳がない。」
その言葉が、重く響く。悠の言葉には、確かにそうだと思わせるだけの説得力・・・というか、重みがあった。
「私、は・・・。」
「ーーーそんなに負けられないってんなら、こっちから本気で行く。負けたくなきゃ、そっちも本気で来い。」
そう言うと、悠は不意に顔の左半分を覆う眼帯に手をかけた。それを外すと、隠されていた左の顔が露になる。その瞬間、僅かに観客席がざわついた。綺凛も、その顔を僅かに硬直させる。
左目の上から下にかけて、目を横切るように大きな斬疵があった。それは端から見れば単に痛々しいだけのものだったが、控え室で彼を見守るシルヴィアと実里からすれば彼が命を賭けて戦った事の証左であり、彼の人生の重さを示すものでもある。
「・・・何を・・・?」
綺凛が不思議そうにそう言う中、悠は
ーーー瞬間。左目を上下に走る疵に、青白い光のラインが走った。疵をなぞるように走っていくそのラインは、紛れもなく
『・・・こ、これはどういう事でしょう!?余りの攻防につい実況を忘れてましたが、さらに予想外の光景が見えています!!』
実況席からも、観客席からも驚愕の声が上がる。
「・・・行くぞ。」
明らかに纏う雰囲気が変わった悠に、綺凛は堪らず半歩下がる。刹那ーーー悠の姿が、掻き消えた。
「ーーーぁっ!?」
突然、肩に激痛が走る。見れば、制服が裂けていた。いつの間にか背後に現れていた悠が、あくまで突き放すように刃を向ける。
「ーーーその程度で弱音か?」
そう言い放つと、悠は容赦なく斬撃を叩き込む。綺凛の制服が裂け、身体のあちこちに裂傷がつけられる。圧倒的な剣速と身体能力の前に、綺凛に為す術はない。
悠が刃を振るう度、綺凛の身体に傷がつき、激痛に呻く声が響く。
「はーっ・・・はーっ・・・はぁっ・・・。」
「ーーーそれが今の君の限界か。その程度で何かをやり遂げようって言ってるなら、身の程知らずも良いところだぞ。せめて俺に一太刀でも当てられたなら話は別だったけどな。」
膝をつき、もはや立ち上がる力も残されていない。"千羽斬"を支えに何とか身体を起こしている状態の綺凛を、悠は見下ろすように立っていた。
「私、は・・・」
「これが最後のチャンスだぞ、刀藤綺凛。本気なら、立て。本気なら、気力を振り絞ってでも打ち込んでこい。」
悠の言葉に、綺凛の身体がピクリ、と反応した。
「私、は・・・。」
フラフラと、覚束ない足で立ち上がる。
「私、は・・・負けられ、ない・・・。」
振り絞るように、自分に言い聞かせるように、呟く。
「・・・負けたく、ない・・・!」
そうして、霞む目で悠を見据える。その時・・・悠の口元が、微かに笑った気がした。
「う、あぁぁぁぁ!!」
残った力を振り絞って、"千羽斬"を振り下ろす。重い感触と共に、"千羽斬"が力尽きた手を離れ、後方に跳ねて突き刺さる。
悠が身体強化をかけた右腕で、"千羽斬"を受け止めたのだった。鋼鉄レベルにまで強化された右腕で受け止められたために刃が弾かれ、綺凛の手を離れて飛んでいったのだ。
前のめりに倒れ込む綺凛の身体を、悠が片手で受け止める。薄れ行く意識の中・・・綺凛の耳に、悠の声が響いた。
「その気持ちを忘れるな。それを忘れなければ、君の中で自然と固まっていくはずだ。君なりの覚悟が。・・・その時は、また挑んでこい。」
(・・・あぁ、そうか。だから、この人はこんなに・・・)
そんな事を思いながら、意識を手放す。
『
ー■■■ー
「というわけで説明してもらうわよ悠・・・あんた、いつの間にあの『眼』を開眼したわけ!?」
「いや説明は別にいいけど勝手に寮に上がり込んだ挙げ句人の部屋に堂々と侵入してくるなよ!?」
「大丈夫、その辺は序列1位の権限でどうにかしたから!!」
「権力乱用過ぎるだろ!?」
試合が終わり、寮に帰った直後。部屋に帰るや否や、何故か部屋で待機していた姉に迫られ、現在に至る。
「あ、あの!悠君も試合が終わったばかりですし、とりあえず落ち着きませんか?」
シルヴィアが何とかその場は仲裁し、姉を落ち着かせる。
「・・・で、改めて聞くけど。あの『眼』、どうしたの?」
ひとまずその場は落ち着き、リビングでシルヴィアが入れたお茶を飲みながら再びそんな事を聞いてくる。その目は、再び大きな眼帯に覆われた左目を見ていた。
「あの・・・というか、悠君のあの『眼』って何なんですか?見た限りは
シルヴィアがそんな風に聞いてくる。横では実里も「うんうん」と頷いていた。まぁ実際、気になるのも無理はない。
「あれね。実は、私と悠のお母さんも同じのが使えたのよ。といっても、実際に使ってたのを見たのは悠がまだ小さい頃に私の目の前でお父さんとお母さんが大喧嘩した時くらいだけどね。
双月流では『天眼』って呼ぶんだけど。お母さんとお婆ちゃんは『剣士が持つ力の最奥』って言ってたかな。」
「・・・え?マジで?母さんこれ使えたの?初耳だよ俺?」
実際、知らないのも無理はない。光は小さい頃といったが、実際悠が2、3歳の時だからだ。
「まぁね。んで、話は戻るけどどうやったのよそれ。」
「どうやってって言ってもなぁ・・・今まで身体強化に関しちゃ結構やってきたし、視力もそれでどうにかなるだろって感じでとにかく鍛錬しつつ左目に
「何よそれ・・・。」
全く持って参考にならない返事に光が溜め息をつく。悠も悠で、別段特別な鍛錬をやっていた訳ではないのでどう反応したらいいのか分からない。
「その『天眼』って、具体的にはどういうものなんですか?」
「それが、よく分からないのよねぇ・・・。『あらゆるものを見通す眼』とは言われてるんだけど、具体的にどんなものなのかはあんまり伝わってなくて。お母さんも単に凄いものってくらいの認識だったし。よくて、9代目の秘伝書に関連する文言が残ってたくらい。」
母・・・美咲の場合は特に
「じゃあ、あんたが使った時はどうだったのよ?現状あんたしか実体験者いないわよ。」
「確かにそうだけどな・・・実際使ったところで別に滅茶苦茶変化を感じたわけじゃないぞ?いやまぁ、感覚というか何というか、それが相当鋭敏になったのは感じたが。」
実際、そうとしかいいようがないのが悠の体感だった。自身の周りの空気の流れや
そんな感覚は初めてだったのだから、そんな表現しか浮かんでこないのだ。
「・・・何か、私の弟がどんどん普通の人間辞めてってる気がするんだけど・・・。」
「同感です・・・。」
「同感だわ・・・。」
3人揃って深い溜め息をつく。そんな3人に囲まれ、理不尽極まりない言葉に「えぇ・・・」と困惑するしかない悠だった。
「・・・まぁ、いいや。とりあえず夕飯の用意しよ。」
「・・・え?スルー?」
驚いた顔をする実里。そりゃまぁこれだけ理不尽な事を言われ続けていれば慣れもする。
「いや、いちいち突っ込んでたらキリないだろ。スルーした方が利口だよなぁと。」
「何か、それも違う気がするけど・・・まぁいいや。よーし、私も手伝うよ。」
キッチンに立った悠を追いかけるように、シルヴィアもキッチンに歩いていく。
「とりあえず姉さんは帰れよ。自分で飯くらい作れるだろ。」
「嫌だよ。それに悠の作るご飯私も食べたいし。」
「生憎と余裕もって買った分含めて3人が限界だから。諦めて帰ってください。」
「あ、それなら私ちょうど冷蔵庫に余裕あるし持ってこれるよ。持ってこよっか。」
「シルヴィアちゃんナイス!お願いしまーす!」
「ちょ、シルヴィ!?」
「1回くらいいいじゃない。それに食事は人数多い方が楽しいよ?」
「いやそういう問題じゃないから!」
結局、その日は大食い癖のある(その癖太りもしないが色々な所が育ちもしない)姉に予定の倍の夕飯を作る事になり・・・実家からの仕送り以外に収入がある訳でもない悠が出費を抑えるべく買いだめした食材は、一夜にして心もとない状態になったのであった。ちなみに、これがクローディアに伝わった事で後に学生への生活援助制度が出来るのだが・・・それはまた、別の話である。
ー■■■ー
翌朝。いつも通り6時に目を覚ました悠は、部屋の窓を開けると深く深呼吸した。別に特別やる事がないのもあり、いつも通り7時まで寮前の広場で鍛錬をし、シャワーで汗を流してから手早く朝食を作って済ませる。
「・・・よっし。行くか!」
そうして肩にリュックをかけ、部屋を出る。出た先にはシルヴィアと実里が待っていてくれた。
「今日の昼過ぎからだよね、最終戦。控え室で私達は見てるから。」
「折角だし、この際ぱぱっと序列1位になっちゃいなさいよね。負けたら承知しないから。」
・・・この二人、相手があの姉だという事を忘れていないだろうか。特に実里。
「簡単に言ってくれるなよ・・・まぁ、負けるつもりはないけどな。」
そう返すと、悠はふっと笑った。
『さぁー、始まりました!!序列1位選抜戦、最終戦!!クライマックスを飾るのはこの二人!!』
実況席から興奮に満ちた声がアリーナ全体に響く中、ひときわ明るいライトが両端の入場口を照らす。
『まずは現・星導館序列1位!!入学早々に
長い髪を靡かせながら、引き締まった顔で姉ーーー光が歩いてくる。その顔はいつも悠に見せていた姉としてのそれではなく、1人の剣士としてのそれだ。
『そして、もう1人!!この選抜戦までは余り目立つ事もなくその本当の実力を隠してきましたが、この選抜戦でその実力をこれでもかと見せつけてきました!!かつて決闘では光選手にあと一歩の所まで迫りましたが、この試合で遂に勝利を掴むのか!!双月悠選手!!』
そしてその反対からステージへと入ってくる悠。その顔もまた、剣士としてのそれだ。
「よーし、本気でいくからね悠。今度こそそっちも本気で来てよ。じゃないとやる意味ないからね。」
「言われなくてもそうするって。流石にこういう場で手抜いたりするほど馬鹿じゃないしな。」
そう言うと、早々に左目を覆う眼帯を外した。そして、体内で増幅させた
(改めて見ると、その眼の迫力すごいわね・・・何か、何もかも見透かされてる感じ。)
『おぉーと、悠選手!!早速あの不思議な『眼』を披露してきました!!これがどう影響してくるでしょうか!!それではカウントダウン、開始です!!』
10・・・9・・・8・・・
光と悠。同じ両親を持ち、姉と弟として生まれた二人が、1人の剣士として、この場でお互いに向き合う。
7・・・6・・・5・・・
爆発的に増幅したお互いの
4・・・3・・・2・・・
お互いに構えた
1・・・
『
機械音声が試合開始を告げる。直後ーーー激しい衝突音と共に、悠と光の剣がぶつかり合った。
ー■■■ー
「"崩空"!!」
「"流月"!!」
光が放った6連撃を、悠が同じく6連撃(正確には「同時の」だが)の"流月"で迎え撃つ。激しく刃がぶつかり合い火花が散る中、光が強引に距離を詰めた。
「"蹴葬乱"!!」
左右の蹴りと拳を組み合わせた多段攻撃。それら全てが恐ろしい速度で迫るが、悠はそれら全てを確実に受け止めた。そして、悠はお返しとばかりに全力の回し蹴りで光を吹き飛ばす。
「悪いけど、完璧に『視えて』るよ。」
「・・・そういうわけね・・・それが"天眼"か。」
体勢を立て直す光に、悠はそう言葉をかける。そして同時に、悠の言葉と過去に見た秘伝書の文言から、光は全てを理解していた。であれば、この選抜戦で悠が見せてきた芸当も全て納得がいく。
「あらゆるものを見通す『眼』・・・何かの言い回しかと思ってたけど、まさかそのまんまの意味だとは。そりゃ私の攻撃が丸々防がれる訳だわ。」
"天眼"・・・双月流において「あらゆるものを見通す『眼』」と称される、不思議な力。その発現は「感覚の鋭敏化」という形で現れるが、本質はそんな次元のものではない。
その本質は、
それこそが"天眼"であり、それを完璧に掌握した者が扱える力なのだ。
「・・・まぁ、それでも。」
「弟に恥ずかしい負け方は出来ないから、まだまだ全力でいくけどね!!」
その言葉に、悠はにっと笑い。
「・・・そう言うと思ったよ。まぁこっちも、そうしてもらわなきゃ困るからな!!」
お互いに構えた武器を構え直し、再びぶつかり合う。
「ぜぇらぁぁ!!」
双月二刀流・絶技"鐵雷"。アクロバットの動きを取り入れた技であり、相手の周囲360度を激しく動き回りながら無数の斬撃を叩き込む大技だ。
「流石に・・・ちょっと大変かなぁ!!」
そう言いながらも、ギリギリの所で悠の攻撃を防いでくる辺りは流石である。
「ほら、お返し!!」
「こりゃ、ちょっと・・・大変だなぁっと!!」
悠は若干冷や汗をかきながらも、
『・・・す、凄まじい攻防!!両者、全く引いていません!!恐ろしい剣の冴えです!!』
『・・・はは、こりゃ誰も勝てない訳だわ。いくらなんでも規格外過ぎんぜ、この決闘。』
実況席でそんな会話が交わされるなか、悠と光は再びぶつかり合う。
「"車連斬・連"!!」
縦回転しながらの連続斬りに加え、着地と同時に地面を横回転しつつさらに連続斬りを叩き込む。
間を置かず次々叩きつけられる刃に、堪らず光は引き下がる。後方へ飛びすさると、両足に強化をかける。
「"月空"!!」
直後、残像すら残らない速度で突進。悠目掛けて正面から下段→上段への鋭い斬り上げを放つが、それを悠が最小限の動きで避ける。それを確認するより早く、背面に回り込んで再度一閃。それを悠が切り返しの回し斬りで弾くと、今度は悠の頭上から刃を突き下ろす。それを刃の側面で受け止めた悠は、刃を撥ね飛ばすと光の胸ぐらを掴んで後方へと投げ叩いた。
「痛っ・・・たいなぁ・・・!!」
ゴロゴロと転がりながらも、すぐに光は体勢を立て直す。
ーー二人の戦いは、まだ終わらない。
ー■■■ー
『・・・こ、このような展開を誰が予想したでしょうか!?何とこの最終戦、未だに激しい攻防が続いております!!』
『・・・ここまでの試合時間、とっくに1時間を越えてる。こりゃ、今までの決闘の中でも最長だぜ。いい加減に2人共
実況席からそんな会話が聞こえてくる中、ステージ上では悠と光が未だに刃を向けあっていた。しかし、流石にお互い全力で1時間以上も戦い続けていれば疲労もする。二人互いに、荒い息を吐き、額から汗を流している。
「あんた・・・どんだけしぶといのよ・・・あー、もう、しんどいなぁ・・・!!」
「そりゃ・・・こっちのセリフだっての。こっちはただでさえ
光が身体強化と
悠の"天眼"は母・美咲のものとは異なり、現状では圧縮・増幅した
それでも、1時間以上維持できているのは悠の異常に膨大な
(いい加減、勝負つけないと
「・・・悠。」
「・・・何?」
光が若干ふらつきながらも、悠に言葉をかける。
「一撃勝負にしましょ。このままやっててもキリないし・・・ぶっちゃけジリ貧だし。早いとこ決着つけたいのはお互いに同じみたいだし。」
「・・・いいな、それ。んじゃ、それでいくか。」
・・・そうして。お互いに最後の全力を振り絞り、剣を構える。悠は
光も、残された
「極天秘技ーーー!!」
「我流極天秘技ーーー!!」
悠と光が同時に飛ぶ。
「ーーー"無窮千斬"!!」
「ーーー"朧雷"!!」
それは、ごく一瞬。中央点で悠と光が交錯し・・・刹那、一際激しい火花が弾け・・・コンマ1秒の後に悠が、続けて光が姿を現す。お互いに、剣を振り抜いた姿勢で止まっていた。
悠の"朧雷"が「時間を超越した刹那の1振り」とするならば、光が放った"無窮千斬"は「千の斬撃を収束させた1振り」。技における剣速は悠が上だが、1振りの重さは光が上。勝負を分けるのは、どちらの技が先に相手を捉えるか。その1点のみ。
『・・・ど、どうなったのでしょう?』
実況席も、観客席に座る者も、控え室にいるシルヴィアも実里も、全員が固唾を飲んでステージを見守る。その先でーーー。
ーーー光の身体がゆっくりと倒れ込み、
『双月光、
はい、皆様おはこんばんにちは。Aikeです。
今回はマジですみませんでした!!
論文購読が終わったら終わったで内容が後日談かつ書きたい事を書いた結果、最終文字数2万越えという・・・マジで今回は時間かかりすぎました。大変申し訳ありません。
おまけに一部の戦闘描写が適当になった気が・・・うん、まぁ、多少期間空いちゃったし・・・うん。あぁ、でも、しばらくまた戦闘描写無いんですよねぇ・・・いやまぁ、今後の展開で悠が本気の戦闘をする事自体あまり無いんですが。
とりあえず、ここまで読んでくださりありがとうございました。次もまた、空いた時間で書きつつ投稿になりますのでまた時間がかかるかもしれませんが、暇潰しと思って気長に待っていて頂ければ幸いです。