学戦都市アスタリスク 黒白の剣と凛姫   作:Aike

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皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。
本編は少し休んで、ここから閑話を書いていきます。閑話なので、本編よりは短くなると思いますが、まぁ休息がてらという事で。
それでは、どうぞ。






閑話ー双月本家、御挨拶 1

 

 

 

 「・・・とまぁ、そんな訳で。ちょっと色々あったけど、私が本家に戻るのはそういう事よ。」

 

 「・・・何か、随分複雑な家庭環境だったんですね・・・。」

 

 光の話に、シルヴィアがそう言いながら苦笑する。その横で実里はぐっすり眠っており、悠は悠で隣り合った席に彼女達の荷物共々座り込み、ぼけーっと窓の外を眺めていた。

 因みに、今彼女達がいるのは南関東のターミナルステーションから東海方面に向かう高速鉄道の中。期間はちょうど冬休み。要は、悠と光の帰省にシルヴィアと実里も付いて来ている訳である。

 ちなみに帰省ではあるが、流石に顔が広いのでシルヴィアも実里もきっちり変装してきている。実里はミニスカートに長袖のシャツと、その上から薄緑のカーディガン。シルヴィアも髪色を栗色に偽装した上でロングスカートに白のブラウス、薄紫の長袖シャツという、一見どこにでもいるような出で立ちだ。

 

 「そういえば、悠君全然喋りませんね・・・大丈夫かなぁ?酔ったかな?」

 

 そんなシルヴィアの言葉に、今度は実里が苦笑した。

 

 「あれなら大丈夫よ。単純に、こっちに帰ってくるのが久しぶりで色々と懐かしいんでしょう。何しろ、そっちの孤児院出てすぐアスタリスクに来たんだし。そう考えると、大体8年ぶりなのかな、帰るの。」

 

 言われてみれば、と納得する。確かに悠がアスタリスクに来たのは、院長ーーー栞に聞いた話では小学校を出てからすぐの事。おまけに帰省しようにも不安要素しか無かった当時なら、ずっと帰っていないのも無理はない。

 

 「・・・と、この後の駅で1時間ちょっと止まるわね。ちょうどいいし駅弁でも買っていきましょうか。

 ・・・あ、この路線だとね、駅同士も距離があるから1時間くらい途中で止まってくれるのよ。乗客がずっと座ったままなのも退屈だろうから、その息抜きにって事でそういう風にしたみたいね。」

 

 光がそう説明していると、悠が手早く座席上のロック付き収納スペースに荷物を次々仕舞っていく。

 

 「これで荷物は大丈夫だから、全員降りて大丈夫だろ。駅弁買うなら早くしないと大方取られるし、早いとこ行かないとな。

 実里、早く起きろー。飯が逃げるぞー。駅弁だぞー。」

 

 「駅弁!?」

 

 悠の言葉に、実里が飛び起きる。相変わらず食い意地の悪い、と悠とシルヴィアが内心思ったのは秘密だ。貴重品を持ってから、4人揃ってホームに降りる。ホームはよくある屋根付きの屋内型であり、横の窓からはすぐ近くに広がる海岸線と青々とした海が見えた。

 

 「おー・・・なんか凄い。よく分かんないけど、とりあえずいい景色ねぇ。」

 

 「お前なぁ・・・もうちょい良い表現ないのかよ。まぁ、良い景色ってのは同感だけどな。向こう着いたらもっと良い感じだぞ。なんせ家があるのが山の上だからな、町も海も一望できる。」

 

 「へぇー・・・中々良いところにあるんだね、悠君の実家って。」

 

 「まぁな。つっても、しばらく帰ってないから色々変わってるかも分かんないけど。」

 

 そう言いながら、スタスタとホームを歩いていく。アスタリスクでは完全自動化されている通行手段も、いざ本土に戻ってみれば未だ駅員が必要なご時世。4人分の乗車券を改札横の駅員に見せてから、許可を得て改札を出る。すぐ目の前の階段を降りれば、左手に海、右手に綺麗な駅前大通りが広がった。

 

 「弁当屋はっと・・・あぁ、あったあった。あそこだな。あとは出来たら時間が潰せる場所があると良いんだけど・・・。」

 

 そんな風に1人呟きながら周囲を見る悠の顔は、心なしか緩んでいるように見えた。

 

 「・・・何か、あいつ浮かれてない?」

 

 と、実里が不思議そうにそう尋ねる。どうやら実里も同じことを思っていたらしく、シルヴィアも同意するように頷いた。

 

 「まー、浮かれもするわよ。何せ久しぶりに帰るんだし。あとは・・・貴女達がいるからかもね。」

 

 「「ふぇっ?」」

 

 光の言葉に、驚いた声を出すシルヴィアと光。といっても、前者は恥ずかしいというか嬉しいというかよく分からない感情で、後者は純粋に驚きからだったが。

 

 「そんな驚く事かなぁ・・・貴女達も分かってるでしょ?悠にとって貴女達は単なる親友とか、そんなものじゃないって。特にシルヴィアさんはね。

 そんな二人と一緒に、よりによって久しぶりの実家帰省なんだからそりゃ嬉しいじゃない。」

 

 光にそう言われて、あぁ、と納得する。確かに、彼女の言うとおりだ。

 

 「・・・よし!!」

 

 気合いを入れるように、シルヴィアが声を出してから悠の方へ駆けていく。何やら話すと、二人揃って歩き出した。

 

 「・・・なーんか、私空気になった気がする・・・。」

 

 「あ、あはは・・・。」

 

 不機嫌そうにそう言う実里に、光は曖昧に笑うしかないのであった。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 ーーーそうしてしばし途中下車した後、購入した駅弁を食べつつ再び高速鉄道に揺られる事数時間。東海地方のとある駅で、悠達4人は下車した。現代的な駅舎ではあるが、内部はかつての面影を残すために木造のベンチや、木を模した人工石柱であったりと、悠の記憶そのままの風景が残っていた。

 

 「ここもまぁ、随分と変わってないのな。全然昔のままだ。」

 

 そんな風に悠がしみじみと呟くなか、一足先に改札を抜け、駅を出ていたシルヴィアが興奮した様子で周りを見渡す。

 

 「綺麗・・・!!」

 

 駅を出た先には、悠もよく覚えている町並みが広がっていた。昔ながらの木造建築の店から現代的な強化コンクリート建てのものまで、様々な店が並ぶ駅前商店街に、少し遠くーーーくぼんだ地形であるため、駅前から見て下に道路が伸びているーーーには高層ビルの立ち並ぶオフィス街。隣り合うように、住宅や商店、寺院などが繁雑と、しかし確かにバランスを取って存在していた。

 

 「言うほど綺麗か・・・?ただただ繁雑としててよく分からん街になってる気しかしないけど。」

 

 「こら、やっとこさ帰ってきた生まれ故郷に対してそんな言い草無いでしょ。」

 

 と、情緒もへったくれもない悠の後頭部に光が手刀を落とす。文句を言いたげな悠を尻目に、光はシルヴィアと実里に向かって話を始めた。いつになく饒舌な辺り、やはり彼女も帰ってきてこられた事が嬉しいらしい。

 

 「ここが私と悠の生まれた街よ。早いとこ案内もしてあげたいけど・・・まぁ、まずは双月本家に行きましょうか。確か迎えを寄越すって言ってたと思うんだけど。」

 

 そう言いながら辺りを見渡していると、行き交う車の内、赤いリムジンが不意に路肩に寄せてくると彼らの前に停車する。そして運転席のドアが開き、和装の男性が現れた。

 

 「お迎えに来ましたよー、光お嬢様に悠坊っちゃん。」

 

 「倉沢さん!お久しぶりです!」

 

 嬉しそうに、光は運転手ーーー双月本家付き送迎役、倉沢正俊に駆け寄っていく。この二人、そう言えば昔から仲良しだったなぁと悠はふと思い出した。

 

 「光お嬢様もお元気そうで何よりですよ。悠坊っちゃんも大きくなりましたねぇ。あんなちっちゃかったのに。」

 

 「顔合わせて早々言う事がそれっすか・・・。てか家、リムジンなんていつの間に買ったんだよ・・・。絶対高いだろこれ。」

 

 悠は呆れた顔でそう返す。それに対して、倉沢は「あっはっは」と笑い飛ばした。

 

 「いやーほら、いつまでも人力車ってのも大変でしょ?てな訳で当主代理が送迎用に用意してくれたんですわ。流石にあのお客人を人力車で送迎ってのはアカンでしょう。」

 

 そう言うと、倉沢は話についていけずに棒立ちしていたシルヴィア達を見る。

 

 「初めまして、送迎役の倉沢です。早速ですが当主代理がお待ちなので、リムジンに乗ってください。本家までお連れしますよ。」

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「風情があっていいでしょ、この辺り。この辺り一体は昔から長続きしてきた血筋や老舗が多いんで、古臭い感じはしますけど風情や情緒で言えば一番なんですよ。」

 

 「いいなぁ・・・悠君こんなとこに住んでたんだ。羨ましいなぁ。」

 

 倉沢さんが送迎がてらにしてくれる街案内に、実里とシルヴィアは楽しそうにしている。そんな様子を見ながら姉は笑い、俺は窓の外に広がる光景をボーッと見ていた。

 

 「そう言えば、悠坊っちゃんはよく「街探検だー」とか言って飛び出していってましたよね。それで帰ってくるのが遅いと、大抵ここにあった駄菓子屋で休んでたの、今思い出しましたわ。」

 

 「いや、現代の家庭で門限4時って早すぎでしょ・・・。普通に考えて家がおかしかったんだ。だからノーカンだ、ノーカン。」

 

 わりと本気で思うんだけど、門限4時って明らか早いよな?他の奴らは5時とか6時まで平然と遊んでたんだが。

 

 「心配性だったからねぇ、お母さん。お父さんはむしろ「もっと遊んできていいぞ」って言ってたけどさ。それでよく喧嘩してたよ。」

 

 「息子の門限で言い争いどころか真剣ぶつけ合う親って嫌すぎるんだけど。」

 

 わりとマジでそうだったから困る。門限の事に俺が遠回しに文句を言ったらそこに親父が便乗し、それに母さんが怒って言い争いに。でもっていきなり真剣抜いてきたもんだからマジでびびった。下手すりゃ殺人事件待ったなしだったのだから尚更である。

 

 「・・・何それ怖い。」

 

 シルヴィアと実里がドン引きしてた。うん、まあその反応が普通だよね。大丈夫、俺も当時同じ反応してたけど何回も見てると慣れたから。慣れって怖い。

 

 「てかそろそろ着くな。右に小高い丘あるだろ?あの上だよ、家。」

 

 「お、流石に家の場所も覚えてるのね。忘れてたらぶっ飛ばしちゃうとこだったわ。」

 

 「ナチュラルに暴力振るおうとする辺り、やっぱ遺伝だなぁ・・・。」

 

 昔は母さんも鍛錬とか言ってナチュラルに本気出してきたからなぁ・・・あ、思い出したら竹刀でぶっ叩かれた辺りがまた痛んできた。大分トラウマになってるなぁ。

 

 「うん?何か言った?」

 

 何でもないですはい。てかその黒い笑顔止めない?女の子が一番出しちゃいけないオーラ出てて怖いんだけど。

 と、そんな馬鹿みたいな話をしてたら右に曲がって坂を登りだした。そろそろ着くなぁ。帰ったら何しよう。まずはまぁ、シルヴィア連れて墓参りだよな。あ、でもその前に婆ちゃんと話しとかないと。シルヴィアとの事も伝えときたいし。

 

 「皆さん、もう着きましたよ。」

 

 あ、もう着いた。まぁ、丘って言ってもそんなに高くないしね。そりゃすぐ着くか。

 

 ドアを開けて、久し振りに門前の土を踏む。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「おぉ・・・何か、凄い・・・。」

 

 やっと着いた悠君の実家。何と言うか、凄いとしか言いようがなかった。

 一体どれだけの敷地を持っているのか。坂を上りきった先には広場と駐車場があり、その先では綺麗に切り開かれた丘の上を巨大な門と白く塗装された高塀が囲っている。それだけでも、相当な広さである事は容易に分かった。

 

 「・・・え、何?悠って昔こんな所に住んでたの?マジで?」

 

 「さっきから随分な言い様だな・・・そんなにおかしいか?」

 

 悠君が不機嫌そうに実里を見る。あ、これは本気で不機嫌なやつだね。流石に失礼過ぎるよ実里。

 

 「いや、こいつがこんなとこに住んでたなんてすぐ信じられるわけないでしょ・・・今でこそ高級な生活出来るだけの資産あるけど、私なんてちっちゃい頃はごく普通の一般家庭よ?」

 

 まぁ、確かに。実里の場合は本当にごく普通の一般家庭だったし、私も6年前こそ孤児院に居たけれど、元々はとある山間の集落の出身。決して裕福ではなかったから、実里の言いたい事はよく分かる。

 

 (・・・あぁ、そっか。だから悠君の事が気になったんだな、私。)

 

 故郷の事を思い出したからだろうか。不意に幼少期の記憶が甦ると同時に、「先生」ーーーウルスラ・スヴェントに連れられて行き着いた先の孤児院で、初めて悠君を見た時の記憶が甦った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 元々、生まれ育った集落で唯一の子供であった上に唯一の星脈世代(ジェネステラ)であったシルヴィアは、周りとの壁を感じながら育った。疎外されたり排斥されたり、といった事は無かったし、可愛がられていたくらいだが、一番身近な両親の愛からもやはり壁があり、自分が周りと違う事は子供ながらに感じ取っていた。結果として、シルヴィアは引っ込み思案で部屋に籠りがちな子供になった。

 転機は彼女の暮らす集落に偶々訪れた、後の「先生」ーーーウルスラ・スヴェントとの出会いと、両親の突然死。曰く両親が死んだ原因は統合企業財体という組織だが、理由は不明。壁があったとはいえ少なからず愛していた両親を失い、塞ぎ込んでいた彼女に声をかけたのがウルスラだった。彼女の話を聞く内に、シルヴィアの中で外の世界に対する好奇心が膨れ上がっていった。自分と同じような人が沢山いる事も、彼女から聞いて初めて知った。

 そんな彼女に何を見たのか。ウルスラは集落の大人達に直談判し、シルヴィアを集落を離れ、外の世界に連れ出してくれたのだ。しばらく一緒に色々な場所を周った後、まだ周っていなかった日本に二人で腰を落ち着けた。だが、ずっと一緒にいるのも、もし万が一危ない目にあった時に困る。その際、シルヴィアを保護できる場所として彼女が一時的に居たのがあの孤児院ーーーシルヴィアの母親の友人だった水無月栞に可愛がられ、そして悠と出会ったあの場所だったのだ。

 そして、双月悠との出会い。初めて会った時の、悠の目。それがどうしようもなく、昔の引っ込み思案で、部屋に籠って、両親を失い失意の中にあった自分と重なった。境遇こそ違えど、周りとの間に壁を作り、迷惑をかけまいと距離を取っている様子が、何故か昔の自分に重なって見えた。だからだろうか。彼の事が、どうしようもなく放っておけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おーい、どうしたんだよシルヴィ。行かないのか?」

 

 「あ、うん!今行く!」

 

 急いで悠君の後を追いかける。その背中は、どこか伸び伸びとして見えた。

 

 

 




はい、おはこんばんにちは。Aikeです。
さて、やっと書けました。閑話としまして、シルヴィアの双月家訪問です。
しばらくはこんな感じで短めの閑話を出していきます。
よろしくお願いいたします。
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