「・・・はぁ?行方不明だと?」
悠が不穏な言葉についつい低い声を上げると、綾斗は小さく首肯する。
時間は授業終わりの放課後。アスタリスクに来たばかりの綾斗の頼みを受け、悠は変装してからユリスと二人で彼にアスタリスクの案内をしていた。その道中で立ち寄ったファストフード店でフライドポテトやらハンバーガーやら、シルヴィアが聞いたら「体に悪い!」と怒る事必至のジャンクフードを購入し、中央区の噴水広場で休みがてら食事中にユリスが今朝綾斗の言っていた話を思い出したのか、不意にその話を切り出した。教室でそういう話をするのは気が引けるというのもあり、空気を読んだ悠が促すと綾斗は順繰りに話し出した。
ある日、突然自分に能力で封印をかけた後で天霧家から姿を消してしまった事。それ以降は全く行方も掴めず、捜索願を出すことも父親に進言したが、何故か腰をあげようとせず現在まで来た事。そして何より、最近になって姉が短期間ではあるが星導館学園へ籍を置いていた事が分かった。
綾斗が特待生としてこのアスタリスクに来たのは姉の足取りを追う事であわよくば当人を発見できるかもしれない事と、星導館学園がそのサポートをするという確約を得たからとの事だった。
「不思議だな・・・普通捜索願を出さないケースなんて早々無いぞ。親父さん、ホントに何も言わなかったのか?」
「そうだよ。『遥が自分の意志で出ていったなら自分はそれを尊重する』とか言ってさ。あれが父親かと思うと信じられないよ。」
そう憤る様子からも、本気で怒っているのは明らかだった。そんな姿を見ながら、悠は綾斗の父親ーーー天霧正嗣の事を思い返す。
確かに寡黙で、何を考えているか分からない節はあったがーーー実直で誠実な人だというのは子供目線で見てもすぐに分かる人だった。顔を合わせるのは合同鍛練交流の時くらいだったが、その度に両親と親しげな様子や自分の子供の話になると頬を緩めて楽しそうにする辺りからは先程から綾斗の言うような冷たさは感じられなかった。
「・・・あくまで俺の個人的な見解になるが、綾斗。多分、親父さんは遥さんの事がどうでもいいからそういう風にした訳じゃないと思うぜ。俺が感じた限りだが、正嗣さんは冷徹って感じはしなかった。
部外者が言うのも何だが、多分事情があったんだろ。そりゃお前は納得いかないかもしれないが、正嗣さんは正嗣さんなりに彼女の事を心配してるはずさ。ただ、お前には話せない理由があるんじゃないのか?」
悠の言葉に、綾斗は驚いたような顔をする。それを横目に残っていたバーガーを完食すると、悠はおもむろに立ち上がった。
「ま、要は『どうせ』とかそういうので勝手に決めつけないでちゃんと話を聞いた方がいいんじゃねぇのって事だ。話さなきゃ分かんない事だってあるんだしな。
じゃ、後は二人でよろしくやってくれ。俺は用事があるから。」
それだけ言うと、近くのゴミ箱に紙袋を放り込み、ヒラヒラと手を振りながら歩いていってしまう。その背中を見送りながら、綾斗は困ったように頭を掻いた。
「・・・何か、随分と性格変わったんだね、悠。昔はあんな達観した奴じゃなかったんだけど。」
「ま、あいつもあいつでこれまで色々あったのだろう。人間、色々と経験すれば性格も自然と変わってくるのが道理だからな。」
綾斗にそう返しながら、ユリスも悠の背中を見送った。その脳裏には、これまで事あるごとに見てきた悠の背中が映る。
「まぁ、あいつの場合は色々と起きすぎている気もするのだがな・・・。つくづく厄介体質というか。」
そんなユリスの、呆れたような独白を綾斗は黙って聞いていた。
ー■■■ー
「なんか、すみません。わざわざ紹介してもらってしまって。ご迷惑じゃなかったですか?」
「
アスタリスク中央区・商業エリア。静かな時間が過ぎて、いつの間にやら夕闇に包まれていたが、こんな時間でも観光客や学生の姿は後を絶たない。そんな中に、海原春樹と長瀬凛の姿があった。凛が着用しているのは、星導館の制服。
悠には言っていなかったのだが、凛は今年から星導館高等部へ編入していた。ちなみに悠はこの事を知らない。何しろ彼女がサプライズで驚かしてやろうと黙っていたのだが、肝心の悠は新・序列1位という立場や例の動乱の際に図らずも派手に動き回ったせいで、学園内外でメディアや新聞部がひっきりなしなために逃げ回っており、驚かすタイミングを失っていたのだった。
ちなみに海原が付いているのは、彼女が
去年は色々あったためにしょうがないとはいえ、それまで悠にはクラスの事でちょくちょく助けられていた。その恩返しのつもりもあって、海原には悠の友人である彼女を助けない理由が無かったのだ。
「しかし、やはり改善案を出すべきだな。いくら
そうブツブツと考え込み出した春樹に苦笑しながらも、凛は周りへ目を向ける。見るもの全てが真新しく見えるなか、不意に1人の人影に目が止まった。
商業エリアの中でも大きい部類に入る高層ビルの出入口前、白いキャップと黒のサングラスをかけ、肩から背中へバッグを提げた悠がいた。誰かを待っているのかボーっと空を見ている。その傍らには、左右にサイドカーのついた大型バイクが鎮座していた。
「あれ・・・?悠さんじゃないですか、あの人。何やってるんだろ?」
「・・・うん?あぁ、悠だなあれは。そういえば、冬休み中に免許を取ったと言ってたか。」
気になって近寄ってみれば、向こうも二人に気付いたらしく手を振ってくる。
「春樹が女の子と一緒にいるの珍しいと思ったら、何だ凛か。お前、とっくに六花に来てたんなら声かけろよな。」
そういうと、悠は腰をあげて凛の頭をわしわしと掻く。凛はされるがままで、どこか不貞腐れた表情だ。大方、思ったように反応してくれなくてつまらないのだろう。
「悠さんを驚かせようと思って黙ってたんですよ。なのに全然会わないし、ようやくまともに話せたと思ったら全然驚いてくれないし。正直つまらないです。」
「婆ちゃんからとっくに聞いてたからな」と笑いながら、悠は春樹へ目を向ける。
「しかし、何でお前が凛と一緒にいたんだ?生徒会の関係か何か?」
「いや、単純に人助けさ。学園の装備局がメンテナンスの予約で満杯でな、当てがなくて困ってたのを見つけたんだ。それで俺の知り合いのメンテナンスショップを紹介した帰りだ。」
「あー・・・そういやクローディアがぼやいてたな。装備局の問題があーだのこーだの。もうじき
つい先日、突然シルヴィ共々生徒会長室に呼び出されて一緒に昼食を取らされた時に聞かされた愚痴を思い出す。その時悠は『んなもん装備局の人員と設備増やせば解決だろう』と進言したのだが。何しろ運営母体は世界でもトップクラスの財閥集合体だ。さらに言えば、毎年の
この時期ーーーというか毎回装備局への予約依頼が殺到するのは
「まぁ、クローディアもそのままにするって考えは無いだろうしその内解決するだろ。まぁでもちょうど良かった。これからシルヴィと実里を拾ってから買い出しに行くつもりだったんだ。暇なら付き合ってくれねーかな?何しろ1週間分の生活品買わなきゃならないから、こいつだと積みきれないんだよ。サイドには二人が乗るしな。」
そういうと、寄りかかっているバイクのヘッドを軽く叩く。確かに見てみれば、バックの荷物スペースはさほど広くもなく、大きめのサイドカーが左右に取り付けてあるためか後部自体かなり細めだ。これで1週間分の買い出しは流石に辛いだろう。
「1週間分って・・・そんな一気に買い込むんですか?食材とか腐りません?て言うか、そこまでやるほど生活大変なんです?」
「仕方ないだろー。序列1位になってからやけに新聞部の連中絡んでくるし、迂闊に出歩こうもんならマスコミが寄ってくるんだぞ。引き継ぎが済んだら本格的にシルヴィと実里の付き添いもやらなきゃならないのに、ちまちま買い物とかしてらんないっての。シルヴィと一緒の外出だってここしばらく出来てないんだ。」
深々と溜め息をつきながらそう愚痴を漏らす悠に、春樹は苦々しく笑い、凛は愚痴かのろけか分からない言葉に何とも微妙な表情をするしかない。特に春樹は序列1位になり、シルヴィア渾名の二つ名も相まって学園内で突然人気が膨れ上がった上にそのシルヴィアとの仲睦まじい様子から世間のマスコミにまで注目を買った苦労人としての経緯を知っているため、同情を越えてもはや合唱している所である。
「まぁ、なら仕方あるまい。時間も思ったより余ったしな、手伝おう。ところで肝心の2人はまだなのか?」
「あぁ、2人ならもう降りてくるだろ。今日は契約とスケジュール調整だけだしな。そんな時間もかからないさ。・・・と、噂をすればだな。」
そう言いながら、屋内エレベーターからビル1階に出てきた3人へ手を振る。それに気付いたのか、先頭の少女ーーー勿論変装済みのシルヴィアだーーーが小走りに悠の元へ駆け寄ってくる。
「ごめんねー、私から呼んだのに待たせちゃって・・・と思ったけど、春樹君に凛ちゃんもいたんだね。ならそんなに暇させなくて済んだかな?」
「まぁ、良い話し相手になってもらったしな。そんなに暇せずに済んだよ。これから買い出しに付き合ってもらうとこだ。とりあえずは2人ともお疲れ様。」
2人にそう労いの声をかけながら、2人の背後に立つペトラへ顔を向ける。
「ペトラさんもすみません。俺がきっかけとはいえ、2人の転入手続きから何から助けてもらいっぱなしで・・・。俺も何か出来たら良かったんですけど。」
そう言って頭を下げる悠に、ペトラは一瞬面食らった顔をした。しかしすぐにいつもの冷静然とした表情に戻る。
「構いませんよ。経緯はどうあれ、あの時貴方が動いてくれていなければ2人ともどうなっていたか分かりませんから。それに、貴方がどれだけ本気かはもう十分に分かっているつもりです。今後も私が出来る範囲の事は力になりますから。」
そう言って実里に書類一式を手渡すと、「それでは」と言って近くに止まっていたタクシーを掴まえて去っていく。それを見送ってから、悠はシルヴィア・実里に春樹と凛を加えた4人と共に1週間の買い出しを済ませるべく近くの大型デパートに向かうのだった。
ー■■■ー
アスタリスクの商業エリアは、大きく分けて飲食街区商店街区・ビジネス街区に大別される。基準としては名前通り、飲食店が中心かデパート等大型商店が中心か、あるいはビジネスビルが立ち並んでいるかだ。悠達は商店街区に入ると、真っ先に区域内最大規模の複合デパートへ向かった。そのデパートで食料品のついでに洗濯洗剤等の生活用品を揃える算段だ。
「そういえば、買い出しはいいが具体的に何を買うつもりだ?食料品は当然だろうが・・・。」
「んー・・・そうだな。最近服が増えたから、洗濯洗剤とか柔軟剤は多めに買っておきたいんだよ。ほら、変装しないとマスコミに追われるし・・・。
あとは家電回しまくってるお陰でコンセントがそろそろ寿命だからそれも買い換えなきゃならないんだよな。あれ以外だと・・・あぁ、そういや防災具も足りないな・・・食料品以外だとそれくらいか・・・?正直、預金残高的にギリ足りるか足りないかだけど・・・。」
若干ひきつった笑いをしながらブツブツ独り言が漏れだした悠を見た瞬間、春樹も凛も彼の生活の大変さはすぐに理解できた。そんな横でシルヴィアは苦笑いを浮かべ、実里は呆れたような顔でこめかみに指を当てている。
「だから言ったじゃない。素直に学生支援制度を申請しとけば良かったのよ。あんた、仕送りしてもらってるとはいえバイトとかしてるわけじゃないでしょう?月に使える預金なんてそりゃたかが知れるわよ。そういうとこは相変わらず馬鹿なんだから。」
「俺だって好きでこんな生活してないっつーの。仕方ないだろ、出来たばっかで試験運用段階の支援制度とか安心出来ないって。仕送りだって、送ってくれてるだけ有難いんだから今以上に要求するのも忍びないし。お前も一遍俺と同じ生活してみりゃ、嫌でも俺の大変さが分かるぞ。」
「あ、それは断るわ。嫌だし。」
「おいこら、ちょっと待て。人に色々言うだけ言って逃げるな。」
そんな風にじゃれる悠と実里を見ながら、苦笑するシルヴィアが会話に入ってくる。その顔はどこか楽しげだ。
「まぁまぁ、足りないようだったら共通の預金から出せばいいから。何ならこれから私も付き合えばいいし。いつかは2人で使う事になるし、ね?」
「・・・あー、そういや共通預金口座作ろうって言われて作ったっけか。もしかしてこういう時のためか?」
悠が何とはなしにそう聞いてみると、シルヴィアは満面の笑みで首肯した。そうして今度は、二人で何やら相談し始める。そんな様子を見ながら、2歩後ろ程の距離を開けていた実里は横に並んで歩く春樹達へ言葉を向ける。
「あー、もう、甘ったるいったら。砂糖が口から出そう。・・・あー、一応言っとくけど、あれでまだ恋人だからね。勘違いしそうだから言っとくけど。」
「・・・恋人の間で共同の預金口座って作るものなんです?」
「というか、あれでまだ恋人なのが信じられんのだが・・・。」
正直言って、何も知らない人が端から見たら夫婦だと思うだろう雰囲気の2人に、3人は揃って呆れた顔をするしかない。大体、昔からこの2人は放っておくとこうなのだ。
「・・・あ、そうだ。なぁお前ら、今晩予定ある?」
不意に、悠が顔だけを後ろに向けてそう聞いてきた。急な問いに戸惑いながらも、2人とも予定らしい予定は無かったのでそう答える。
「そっか、ならちょうど良かった。今晩俺の部屋に来いよ。今日のお礼も兼ねて晩飯奢るからさ。」
「え、いいんですか?確か今悠さん、共同寮の方に部屋あるんですよね。入居者以外は基本入れなかったと思いますけど・・・。」
「心配いらねーよ。確かに入居者以外は基本入れないけど、そこは
あっけらかんとそんな事を言う悠に、春樹も凛も少しだけ驚いた。少なくとも2人が知る限りでは悠はそういうものを「使わないで済むなら絶対使わない」スタンスだったからだ。2人の考えている事を察してか、悠が頭を小さく掻く。
「今まで通りにやってたから色々持たないって気付いたんだよ。シルヴィアと実里の事で財体に作りたくもない借り作っちまったし・・・多少は"序列1位"らしくってな。使えるもんは使っといて多少示しをつけなきゃ、いざって時に相手にマウントとられかねないし。それじゃ後々困るだろ。」
苦虫を噛み潰した顔でそう言う悠に、事情を知る2人はどこか複雑そうな表情をし、事情を知らない2人は意味が分からないといった表情で呆けるのだった。
ー■■■ー
ーーーそれから時は飛んで、7時を回った辺りの事。あの後一旦別れた春樹と凛は、共通寮の悠の部屋を訪れたところだった。インターホンを鳴らせば、悠が(クローディアが勝手に改造をしてくれた、正直面倒臭さしかない)ドアロックを解除してくれたので中に入る。
「荷物は適当にそこのソファにでも置いておいてくれ。実里、麦茶あるから出してやって。シルヴィアは2人と一緒に座ってな。料理は俺がやるし。」
「えぇ・・・私はあんたの召し使いじゃないんだけど。」
「いつも飯食いに来てる時は俺が出してるんだから、来客の時くらい手伝え。今度から食いに来てもお前だけ飯抜きにすんぞ。ちなみに食費が嵩んでる元凶、主にお前だからな。無駄に大食いだし、一回で使う食材量が馬鹿にならないんだよお前の場合。一体あんだけ食ってどこにエネルギーがいくのやら。」
と、悠が実里の身体のある一部分を見ながら言い放つ。その瞬間実里の顔が茹で蛸の如く真っ赤になったかと思えばーーー悠の肩を力強く掴む細い腕。
「・・・ゆうくん・・・何をナチュラルにセクハラしてるのかなぁ・・・?」
「あ、ヤベェ」と思ったときには、既に時遅し。顔だけを後ろに向ければ、暗い微笑と共に据わった目をしているシルヴィアさんが全身から
「あ、いや、別にそういう意図は無くてだな・・・?とりあえず話を・・・」
「そうだねぇ~・・・じゃあ今晩、ゆ~~~っくり、"お話"しようかなぁ・・・?」
この瞬間、悠は悟った。明日は100%無事では済まないと。
「・・・恐妻?」
「ん?なぁに?」
横でボソリと凛が呟けば、ぐるんと顔を回転させてシルヴィアが見てくる。その目がぐるぐるしているように見えて、反射的に「あ、いや、何でも」と返してしまうのは無理もない事で。
「今度からシルヴィアだけは絶対怒らせないようにしよう・・・うん、あれはヤバい。」
「その前に、お前は明日無事で済むかどうかの心配をしたらどうなんだ・・・?」
ひきつった顔で料理へとあからさまに視線を集中させる悠の1人言を聞いていた春樹がそう言うと、深い沈黙がその場を満たした。
ー■■■ー
「・・・よし、完成。」
先ほどの会話から1時間半ほどが過ぎた辺り。鉄鍋を揺らしていた悠は、満足げに頷くとIHヒーターから鍋を取り上げた。見計らったタイミングで、シルヴィアが横から大きめの耐熱皿を差し出してくれる。それを受け取って鍋ごと乗せると、ゆっくりダイニングテーブルに置いた。
「こいつが今日のメインな。『魚介と豚肉のパエリア』、一応母さんのレシピノート通りにやってみたから味は大丈夫だと思う。まぁ、とりあえず食ってみてくれよ。」
ダイニングテーブルには、これでもかという量の夕食が並んでいた。基本の白米に味噌汁は当然ながら、『根菜とチキンのサラダ』に『味噌カツ』、『ベーコンとキャベツのスープ』等々。普通に食べるには余りある量の料理が並んでいる。
「凄いですね・・・よくまぁこれだけの料理作れるなぁ・・・。」
「まぁ、元々料理は昔から散々やらされたからさ。それにシルヴィは元々料理上手だし、一緒に料理担当してたし。これでも自炊は得意な方なんだぞ俺。」
「そういえばそうだったね。悠君、初めはすっごいぎこちなかったのに、いつの間にか私以上に手際よく料理作っちゃうんだもん。料理に関しては私の方がお姉さんのつもりだったのにさぁ。・・・って、誉めたってさっきの事は許さないからね!?ちゃんと夜通し"お話"はするから!」
「引っ掛からなかったか・・・。」
「ちょっと!?騙す気だったの!?」
「いやだって、"お話"とか怖いし・・・」
「悠君が悪いんでしょ!変な事言うしセクハラするし!私だけならまだしも実里を巻き込むし!」
「巻き込んでない・・・って、ちょっと待てぇ!?何気に誤解を招く発言だぞ今の!?てかいつ俺がシルヴィにセクハラしたよ!?」
「ナチュラルに腰に手回してきたりしたじゃない!やるなら一言言って!」
「恋人なんだから普通だろ!ああいうのは黙ってやるもんじゃないか!てか一言言えば許されるの何気に優しいな!?」
「そりゃ私だって恋人っぽい事はしたいもん!でも不意打ちは何か嫌!」
「ああいうのは不意打ちでやるからいいんだろ!雑誌にも書いてあったぞ!」
「そんな雑誌読まなくていいよ!?ああいうのがぴったり当てはまる人そんなに居ないからね!?」
「・・・何ですか?これ。のろけ話です?」
「・・・痴話喧嘩の間違いじゃないか?」
「正解は"いいえ"。あれ、単なるバカップルの無自覚イチャイチャよ。しばらく止まらないし放っときましょ。ていうかこの程度でそんなんじゃ、あいつらとの付き合い大変になるわよ。割と冗談抜きで。」
「・・・出来れば食後にブラックコーヒー下さい。何かすっごい甘ったるいです。」
「・・・すまない、俺も頼めるか。何だか甘過ぎて砂糖を吐きそうだ。」
そんな会話を続ける間にも甘々な痴話喧嘩を続ける2人に、3人は揃って深~い溜め息をつくと目の前の料理へ手をつけるのだった。
ー■■■ー
「・・・。」
「・・・。」
「お夕飯ご馳走さまでした・・・。あの、帰りますね?」
「そうだな。そろそろお暇させてもらおう。悠、中々旨かった。機会があればこの礼をさせてくれ。」
「・・・おぉ。」
「・・・また明日ね。」
一拍遅れて、悠とシルヴィアがそう返す。ちらちらとこちらを見ながら部屋を出ていく2人を見送ると、実里は大きな溜め息をついた。
「あんた達ねぇ・・・後でそんな顔真っ赤にして挙動不審になるくらいなら端っから痴話喧嘩なんかするんじゃないわよ。普通に仲良くできないの?」
「・・・仕方ないだろ。」
「・・・仕方ないじゃない。」
目を合わせる事なく、使った鍋や食器を片付けながらそんな事を言う2人に実里は再度深い溜め息をついた。これではバカップルどころかケンカップルである。
「・・・まぁ、とりあえず悠は今後シルヴィアを怒らせない事ね。あとシルヴィアも変に悠刺激しないであげて。コイツ変なとこでスイッチ入るのはもう分かってるでしょ。」
「「・・・善処する(します)。」
本当に大丈夫か・・・と言いたげにジトっとした視線を向ければ、その先でシルヴィアと悠はそれが当たり前のように協力して片付けをしている。何だかんだとこういう日常生活でもお互いをよく見ている以心伝心ぶりなのだから、まぁ結局大丈夫なんだろうと1人納得する実里だった。
皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。大変お待たせしてしまいました・・・ようやく最新話更新です。いやぁ、割と本当に大学の方が大変でして・・・単位をなるべく埋めるためのレポート課題に+で就活準備や卒論とやる事が多くて。ヤバイですねこれ・・・。
とまぁこういう状況なので、多分これ以降の更新はまた止まると思います。早めに就活が上手く終わってたらもしかしたら・・・という位でしょうか。
こんな亀更新作ですが、ちゃんと完結させるつもりなのでお付き合い頂ければ幸いです。それでは皆様、よいお年を。新しい年もお互い頑張って参りましょう。