学戦都市アスタリスク 黒白の剣と凛姫   作:Aike

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「黒白の剣と凛姫」、第2話です。そろそろシルヴィアと悠の再会フラグを立てないと、と思ったのでシルヴィア登場ですよ。


第2話 歌姫の心

 「はぁー・・・疲れたー・・・。」

 水上学園都市・六花。その一角を形成している内の1つーーークインヴェール女学園。学生寮に帰って早々ながら、シルヴィア・リューネハイムは勢いよく寝室のドアを開けてベッドに倒れ込んだ。それを見ながら、一緒に帰ってきた実里が深々と溜め息をつく。

 

 「ほら、だらしないよー、シルヴィ。着替えて手洗いうがいしなきゃ、体壊すよ。」

 

 「分かってるよー・・・。」

 

 渋々という感じでシルヴィアが体を起こす。実里も手早く私服に着替えると、エプロンをして少し遅めの夕食の準備を始めた。

 

 「にしても、まさか販売初日で通常販売分が完売するとは思わなかったなー。せめて二日はかかるかなとか思ってたんだけど。」

 

 シルヴィアがそう言いながら寝室を出てくる。その顔には嬉しさ半分、何かが気になって仕方がないという感じの表情が浮かんでいた。

 

 「・・・もしかして、悠が来ないかなーとか思ってる?」

 

 「ふぇっ!?何で分かるの!?」

 

 シルヴィアが驚いた顔で実里を見るが、実里からすれば「なぜそこまで驚くのか」と疑問を呈するところだった。何だかんだで、彼女との付き合いも6年。表情から何を考えているかくらいはすぐに分かるのだ。

 

 「いや、シルヴィが何か気にしてる顔だったから。まさかとは思ってたけど、やっぱりね。」

 

 「むぅ・・・そんなに顔に出やすいかな、私。」

 

 「そりゃもう、これでもかってくらいにはね。・・・で、どうなの?当たり?」

 

 実里がそう聞くと、シルヴィアは少しだけ寂しそうな顔をした。

 「うん、当たり。少し期待してはいるんだけど・・・多分、無いだろうなって。」

 

 「まぁ、そう思うよね。同じアスタリスクにいるのに連絡の1つもしてこないし。何よりあいつ、あれで結構自分に厳しくし過ぎる傾向があるし。」

 

 孤児院に来た時から、ずっと悠はそうだった。両親を失い、精神的にかなり疲弊しきった状態で孤児院にやってきた彼は、ひたすら周りの子供達から距離を置いていた。「ここは自分の居場所じゃない」・・・多分、そんな感覚でいたんだろう。シルヴィアも実里も、彼に完全に心を開いてもらえるまで数ヵ月はかかった。

 そこからシルヴィアと悠が実里を間に挟んで仲良くなっていき、お互いを好きになってからさほど時間の経っていない頃に、あんな事があって彼らは引き剥がされた。

 

 (ほんと、あいつも大概不器用過ぎるのよ。いくらでも連絡手段はあるんだし、会いたいって言えばシルヴィも会いに行ったでしょうに。)

 

 連絡が全く無かった、という訳ではない。シルヴィアが序列1位になり、生徒会長になった時、同時期に星導館の生徒会長になったクローディア・エンフィールドから祝辞のメールが届いた事がある。その時、追伸にクローディアが悠から頼まれた伝言として「約束は守る」とあった。

 

 (「約束」・・・ねぇ。やっぱりあいつ、自分を縛っちゃってるなぁ。これじゃ「約束」じゃなくて、「呪い」みたいにずっと付きまとってる類いのやつみたいじゃない。)

 

 テーブルに座って、電池式のフォトディスプレイに表示されている写真を微笑みながら見ているシルヴィアを見ながら、実里はそんな事を思う。

 それは、まだ小さい時に孤児院で撮った写真。孤児院でよく遊んでくれた「先生」が撮ってくれたものだ。そこには実里と、それから楽しげに並んで座っている悠とシルヴィアがいた。

 

 

 「そういやさ、悠。お前は今度の歌姫様のライブに行かないのか?」

 

 放課後、星導館の中庭で何とはなしにいつものメンバー・・・悠、ユリス、夜吹の3人で駄弁っていると、突然夜吹がそんな事を言い出した。悠がシルヴィアと旧知の仲というのはユリスも夜吹も知っているが、今まであまりそこに突っ込まれた事は無い。

 

 「まぁ、出来ることなら行きたいけどね。俺も色々と事情があるから、今はまだ止めとく。」

 

 「・・・毎度の事ながら思うのだが、悠。お前、毎日のように戦律の魔女(シグルド=リーヴァ)選神天嶺(ブレス=フィラス)の話はするが、会おうとしないのは何なのだ?旧知の仲ならば別段遠慮する事も無かろうに。」

 

 ユリスが不思議そうに聞いてくる。だが、これは今の悠の行動原理に直接結び付く話になるため、悠としては余り話したく無かった。

 

 「まぁ、遠慮する事がないってのは否定しないよ。実際、旧知の仲なのも事実だし。・・・けど、今はまだダメなんだ。詳しくは言えないけど、やらなきゃいけない事がある。」

 

 「・・・そうか。話したくない事ならば無理に話してくれなくてもいいが・・・いつか、ちゃんと話してもらうぞ。お前が私を友人と思ってくれているように、私がお前を友人と思っている以上はな。」

 

 「・・・分かってるよ。いつか、話すべき時が来たらちゃんと話す。」

 

 流石に実のお姫様に親身にされては断るに断れない悠だった。

 

 「おっと、そうだ。そういやお姫様、今年の王竜星舞祭(リンドブルス)は出るかい?」

 

 「あぁ、出るつもりだが・・・急にどうした?」

 

 「いやさ、星舞祭(フェスタ)に出るならある程度名前も売れてた方がいいだろ?だから、お姫様が出るなら決闘の斡旋でもしてあげようかと。」

 

 「・・・ふむ。話だけは聞こうか。」

 

 「じゃあ決まりな。なら明日、詳しい事は話すから考えてみてくれよ。俺はそろそろ新聞部の時間だからお先!」

 

 そう言うが早いか、夜吹は突風のような勢いで去っていく。相変わらず忙しない奴だ、とユリスと二人揃って苦笑した。

 




皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。
さて、シルヴィアも出したので、ここからどんどん話は進んでいきます。ちなみに、悠の過去の因縁だったりは間間で出していくつもりです。
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