「さて・・・話していただけますか?あの男性は何者で、貴方がどう関わっているのか。」
・・・あの後。クローディアに面倒な所を見られた翌日、悠は星導館の生徒会長室にいた。目的は当然、あの場面に関しての釈明である。ちなみに、あの男の遺体はクローディアの手配で銀河が内密に処理したそうだ。過去が過去だけに、いつもは「統合企業財体なんて無くなればいい」と思っている悠だが、この時ばかりは感謝した。
「・・・はぁ、分かったよ。話すからその無言の威圧をまず止めてくれない?」
悠がそう言うと、目の前のソファでニコニコしながら無言でこっちをジーっと見ていたクローディアは「あら、失礼」とか言いながら表情をいつもの真面目な顔に戻す。
「で、俺とあの男がどういう関わりか、だよね。要するにクローディアが聞きたいのって。」
「ええ。貴方の様子からして良からぬ関係なのは分かりましたが、具体的にどういった関係かまでは聞かなければ分からないでしょう?」
「ま、そうだね。んで・・・話の前提として聞いておきたいんだけどさ、クローディアは『
悠がそう聞くと、クローディアはしばらく考え込むようにしてから、諦めたように首を横に振った。
「まぁ、知らなくてもしょうがないか。あんまり世間じゃ聞かないし、何より『
「・・・かなり視野が狭い思想なんですね。」
クローディアの発言に、悠は激しく同意だった。
「まぁ、多分
「・・・では、あの男性も?」
クローディアの問いかけに、悠は肯定の返事を返し、話を続ける。
「そうだよ。まぁ正確には、『
「なるほど・・・ですが、なぜそのような団体と貴方が関わりを持っているのです?」
「簡単な話、その団体が俺の両親の仇だからね。」
悠がそう言うと、クローディアは少し驚いたもののさほど取り乱しはしなかった。
「貴方のご両親が、その団体にとって都合の悪い事実を知ったから、とか、そういった事ですか?」
「いんや、全然違うよ。身も蓋もない言い方しちゃうと、言いがかり。
当時、その団体は全国から
俺の両親、とある古流剣術流派の当主夫婦だったんだけど、そこに奴らが来たんだよ。どうやって突き止めたのか、たまたま入ってきたばかりの10歳の女の子に
クローディアが知ってるかは分からないけど、銀河の関係者だった母方の叔母さんが知り合いだった当時の銀河責任者をあれこれと理由つけてその団体と企業財体を潰したんだ。その後、残された子達と俺は両親の友人が経営していた孤児院に移ったから、放浪しなくて済んだけどね。」
悠が話を終えると、クローディアは少し目を伏せた。
「・・・すみません。嫌な話をさせてしまいましたね。」
「別に気にやむ事ないよ。自分の中で納得はつけてるし。・・・まさか残党が来るとは、思わなかったけど。」
そう話す悠の表情には、険しいものがあった。
「俺が話せるのはこれが全部だよ。・・・それで、クローディアに俺から頼みがあるんだけど、いい?」
「えぇ、貴方には辛い話をさせてしまいましたから。私にできる範囲ならば、何なりと。」
「ありがとう。で、その頼みなんだけど・・・。」
それを聞いたクローディアは、予想以上の二つ返事で受けてくれた。
ークインヴェール女学園にてー
「はぁ~・・・疲れるなぁ。お腹空いた・・・。」
生徒会長にして序列1位、シルヴィア・リューネハイムが生徒会長室の机に山積みにされた書類の前で突っ伏していた。現在時刻は12時30分。本来ならランチタイムなのだが。
「しょうがないでしょ。ライブの打合せとかもあって暫く生徒会長らしい仕事が出来てなかったんだから。」
「むぅ~・・・実里がやってくれてたら良かったじゃない。」
「やるべき人が決まってる仕事はその人が責任もってやるって、院長先生に教わったでしょ。」
取り付く島もない実里にシルヴィアが膨れっ面をしていると、不意にシルヴィアの携帯端末に通信があった。
通信相手の名前は・・・クローディア・エンフィールド。端末を操作しホロディスプレイを呼び出すと、そこに見知った顔が映った。
『お久しぶりですね、
「そちらこそ。相変わらず元気そうだね、
『えぇ、お陰さまで。貴方も忙しいでしょうから、用件だけ伝えようと思ってこうして連絡させてもらいました。』
「まぁ、確かに忙しいけどね。それで、用件って?」
シルヴィアがそう返すと、クローディアは不意に真面目な顔をした。
『ある人から、貴方と高原さんに伝言をして欲しいと頼まれまして。「外を出歩く時は一人にならず、最低限そっちで信頼できる人を一人か二人はつけてくれ」と。なぜ貴方と高原さんにそんな事を伝えたいのかは教えてくれませんでしたが、何か思い詰めたような感じでしたよ?』
クローディアがそう言った途端、シルヴィアの表情は一変していた。実里も少なからず気になってはいるような顔つきだ。
「・・・誰が、そんな事を?」
『すみませんが、それが誰かは。あぁ、あとそれから、「シルヴィアは何も心配しないで」とも言っていましたが・・・何かご存じで?』
「・・・ううん。分からない、かな。ごめんね。」
『・・・そうですか。なら仕方ないですね。何かあればまた連絡しますが?』
「うん、いいよ。ていうか、私としてもそうしてもらいたいかな。」
『分かりました。それでは、今日のところは失礼しますね。』
そう言って、ホロディスプレイは暗転する。再び端末を操作してそれを消すと、先程のクローディアが言った伝言を反芻する。その言葉からシルヴィアが思い出したのは、悠の過去を聞いた時に彼が言っていた言葉。
『僕がその悪い人達に狙われるかもしれないって。だから、ここに入れられたんだ。』
・・・悠は二つ、この時点で勘違いをしていた。一つは、彼自身が他者思いである故に、その他者を騙す嘘ーーそれが他者を欺く嘘であれ、他者を守るための嘘であれーーが苦手で、かつ下手であるという事。そしてもう1つは、シルヴィア・リューネハイムという少女の洞察力の高さだった。
まさかね・・・と、頭では否定しつつも、シルヴィアの胸には言い様のない不安感が澱みのように滞留していた。
ー12:30、星導館にてー
「双月君、ユリスさん達が来てるよ。」
「ん?・・・あぁ、そういえば約束してたっけ。ありがと、教えてくれて。」
「クラスメイトなんだし、気にしないでいいよ。それに双月君にはクラスの事とか色々手伝ってもらってるし。」
そう言ってはにかむクラスメイトの女の子に礼を言い、教室のドアの所で待っていたユリスと夜吹と共に食堂へ向かった。昨日、最後まで決闘を見なかった事でユリスの機嫌を損ねてしまった悠は、詫びとして今日から一週間ランチを奢る約束をしていたのだ。その奢る対象にちゃっかり夜吹も入ってきたのは言うまでもない。
「ところで、今朝はクローディアに呼び出されていたな。何の話をした?」
「あぁ、昨日の事だよ。ほら、色々あったって言ったでしょ?あれの関連でね。」
悠がはぐらかすようにそう言うと、ユリスは小さく溜め息をついた。夜吹も不満げな表情だ。
「相変わらず話す気はないのだな、お前は。」
「言ったでしょ?少し面倒な案件だから、って。関係ないユリスや夜吹を巻き込むわけにはいかないよ。」
「まぁ、お前が話したくないなら無理には聞かないがな。お前一人で手に負えなくなった時は、少しでも周りに頼れ。友人とはそういうものだろう?」
「・・・ありがと。まぁ、そういう時があったらそうさせてもらうよ。」
そう言うと、悠は少しだけ笑った。
皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。さて、第4話目ですか。
悠が抱える過去、二次創作では意外にベタなものかもしれませんが、アスタリスクでこれをやると、世界観の設定上普通にあり得てしまうので他作品でやるよりもさらにリアリティが増す気がするのは気のせい・・・かな?
まぁいいか。
ここからは悠のフラグ展開が続きます。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。