学戦都市アスタリスク 黒白の剣と凛姫   作:Aike

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「黒白の剣と凜姫」、第5話です。本格的に悠の周りはシリアスになっていきますよー。


第5話 拡散

 「・・・なぁ、お姫様よ。」

 

 「何だ?夜吹。」

 

 5限と6限との間の休み時間。夜吹がユリスに話しかけてきた。

 

 「いやさ・・・悠の事なんだけど。あいつ、放っといて大丈夫かなって思って。」

 

 「あいつが話したがらない以上、どうしようもないだろう。現段階で私達に出来るのは、あいつが一人ではない事を念押しする事くらいだ。」

 

 「そりゃそうだろうけどさ。何て言ったらいいのかね・・・何つうか、あいつ、いなくなっちまいそうな気がするんだよ。」

 

 夜吹が不安げにそう呟いた。その言葉に、ユリスが懐疑的な視線を向ける。

 

 「・・・考えすぎではないか?あいつが私達の前からいなくなるなど。」

 

 「・・・だといいけど。悪いな、縁起の悪い話して。」

 

 そう言うと、夜吹は自分の席へと戻っていく。ユリスは、口では考えすぎと言いながらも夜吹の言葉を内心否定できていなかった。

 最近の悠は、見た限りでは普段通りだったが、どこか表情に影のようなものが見え隠れしていた。遠い目をする事が多くなった事、そして何より、周りと距離を置こうとしているような感じがするのだ。

 (そうだ・・・あいつが私達の前からいなくなるなど、あり得ない。そのはず・・・だが・・・。)

 そう思いながら、ふと空を見上げる。昼時には晴れていた空には、いつの間にか黒雲がかかり始めていた。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「うーす、帰るぞー・・・って、あれ?」

 

 放課後。ユリスと夜吹が一緒に帰ろうと悠を迎えに隣の教室に行くと、既に悠の姿が消えていた。

 

 「あ、ちょうど良かった。悠くんから二人に伝言預かってるんだ。」

 

 いつぞや知り合った、悠が仲の良い方だという女子クラスメイトが二人に気付いて駆け寄ってくる。

 

 「伝言?」

 

 「うん。今日からしばらく二人で帰ってくれって。何か用事があるからって言ってたよ?」

 

 「・・・用事?」

 

 ユリスが夜吹は揃って顔を見合わせた。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 一方。ユリスと夜吹をおいて先に寮に帰宅した悠は、私服に着替えてアスタリスク中央区の商業エリアに来ていた。理由は単純。例の魔術師(ダンテ)魔女(ストレガ)至上主義団体の残党を見つけ出し、自身の周りの人間に危害が及ばぬように始末するためだ。ただ、一つだけ問題があった。

 

 「よくよく考えたら、あいつら端から見れば普通の一般人なんだよね・・・しかも市街地自体広いし・・・見つけ出すの、大分苦労しそうな予感がするなぁ。」

 

 そう、魔術師(ダンテ)魔女(ストレガ)至上主義者といえど、それを知らない者たちが端から見ればただの一般人でしかない。つまりは、こういった場所に紛れる事だって造作もない事なのだ。

 

 「さて、どうしたものかな・・・一番手っ取り早いのは叔母さんに頼る事だけど、流石に2度も個人の願いで銀河も動いてもらえないだろうし。」

 

 正直な話、この件に関して悠は銀河、というか統合企業財体の手を借りる事はしないつもりでいた。自分たちの利益を侵すような事態や自分たちに都合の悪い状況が発生すれば動いてはもらえるだろうが、流石に2度も個人の願いでは動いてもらえないだろう。6年前の時は、銀河責任者が叔母の友人であり、そのよしみからだったそうだし。

 そして何よりも、悠自身が統合企業財体に対して不信感しか持っていないからだ。過去が過去故に仕方がない事であり、その点では悠も被害者と言っていい。

 

 「一番怪しいのは再開発エリアだけど、あそこは星猟警備隊(シャーナガルム)がちょくちょく見回りに入ってるからアジトとしては使いづらいだろうし、連絡は通信で取り合えば集合しての相談は数時間とかで済むしなぁ。それに商業エリアなんか相談出来る場所なんてこれでもかってくらいあるし・・・まぁ、一番居て欲しくないのは行政エリアとか他学園内なんだけど。」

 

 道の端っこでアスタリスクの地図を広げながらそう考えを巡らせる。やろうと思えば何処にでも潜り込む事が出来る奴らである以上、下手をすると行政エリアや他学園内にまで潜り込んでいる可能性も無くはない。もしそうなれば、ただの一般学生で尚且つ星導館の学生である悠が入るなど100%不可能だ。

 

 「まずいな・・・これ、もしかしなくても手詰まり感出てきたぞ。」

 

 「何が手詰まりなのかしらね?」

 

 「いや、ちょっと・・・って!?」

 

 聞き覚えのある声に驚いて悠が顔を上げると、目の前に件の叔母ーーー双月美晴がいた。その横にはなんと姉もいる。その両手には一杯にブランド物の買い物袋が吊り下げてあった。

 

 「びっくりさせないでよ・・・ていうかどうしたのさ、こんな所に二人で来て。」

 「見ての通り、二人で水入らずの買い物だよ。それよりか、悠の方が何でいるのか不思議なんだけど?」

 

 「あー・・・いや、それは・・・って、叔母さんいつの間に!」

 

 いつの間にやら悠の手から地図をひったくった美晴がそれを凝視していた。

 

 「ふぅん、アスタリスク市街地の拡大地図ね。で、あちこちに何かの印。・・・これは、面白いものを見ちゃったかしら?」

 

 そう言ってこちらを見てくる美晴の目は、さながら完璧なはずのアリバイに小さな綻びを見つけられた犯人に刑事が向けるのと同じ雰囲気だった。

 

 「・・・何か隠してるでしょ、悠。」

 

 それを見た姉が疑いの目を向けてくる。この場に悠の味方はいなかった。

 

 「・・・い、嫌だなぁ、そんな隠すような事あるわけないだろ?心配しすぎだよ。」

 

 「・・・あぁ、自覚ないのね。悠。貴方ね、自分が思ってるより大分顔に出やすいのよ。今だってそう。」

 

 その言葉で、完全に悠は沈黙した。この二人の察しの良さに関しては、はっきり言って悠ではまず間違いなく勝てない。まぁ、それに関しては悠の演技が下手というのもあるが。

 

 「・・・はぁ。分かったよ、降参。」

 

 結局、悠は折れざるを得なかった。この二人を相手に嘘を突き通すのは無理だと判断したからだ。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「・・・何ですって?」

 

 「ちょっと、悠・・・本当なの?それ。」

 

 「今更嘘をついたってしょうがないだろ。それに、俺が一番信じたくないよ。」

 

 吐き捨てるように、悠はそう言うとウェイトレスが運んできてくれたコーヒーをあおった。場所は商業エリアのとあるカフェテリア。道ばたで話すのもどうかと、叔母がよく通っているという店に連れてこられたのだ。

 

 「でも、何でよりにもよって悠に・・・。」

 

 「あの時、姉さんはとっくにアスタリスクにいたろ?それに、手を下したのは銀河であって叔母さんが直接やったわけじゃない。姉さんの場合はアスタリスクの、具体的に何処にいるか分からなかったんだろうね。そして多分、叔母さんに関してはそもそも関連があったのか確証が無かったんだと思う。基本的に統合企業財体の関係者の身分証明は秘匿されるのが暗黙らしいし。」

 

 悠の言っている事は至極まともであり、最も有り得る事だった。統合企業財体が母体になっている各学園の生徒ーー中でも、特に序列上位の生徒ーーの個人情報すらも統合企業財体の財産として大事に扱われるくらいだ。それを管理する統合企業財体の構成員の個人情報が厳重に守られるのも何ら不思議はない。

 

 「一応聞くけれど、他にこの事を知っているのは誰かいる?」

 

 「えーと・・・生徒会長かな。一応、話せるギリギリまで話したから。」

 

 悠がそう言うと、美晴は険しい顔をしながら立ち上がった。

 

 「・・・分かった。この事は一度銀河に持ち帰ってみる。悠、貴方はいつも通りにして、今後こういう詮索はしてもいいけど頻度は押さえるようにね。あと、その時は光もついてあげて。一人でやらせた方がよっぽど危険だわ。とりあえず、今日はもう帰りなさい。」

 

 「う、うん・・・。」

 

 姉の返事を聞きおわる前に、美晴は足早に去っていく。こんな時に言う事でもないが、ブランド物の袋を下げているのが何となくシュールだった。

 

 「・・・はぁ。ま、そういうわけだから、今後は私もついていくからね。・・・ていうかさ、こんな大事を悠一人で抱え込もうって方がよっぽど無茶だよ。」 

 

 姉の呆れた視線に、反論のしようがない悠であった。 

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 『・・・それは本当ですか?クローディア。その少年が『魔術師(ダンテ)魔女(ストレガ)至上主義』団体の残党に狙われる事になったと?』

 

 「えぇ、間違いありませんよ。私がこの目で見ています。」

 

 悠が姉と共に帰路についた頃。クローディアは生徒会長室で誰かと会話をしていた。ディスプレイには「SOUND ONLY」と表示されている。

 

 「しかし、彼の様子では銀河が完全に潰したと聞かされていたようですが。なぜ残党が今になって出てきたのでしょうね?」

 

 「・・・知りませんよ。とにかく、彼らのような思想は危険です。こちらで対処しますから、貴方はその少年を極力一人にしないよう配慮してください。」

 

 「それは難しいかと。何せ、本人が周りを巻き込まないようにと距離を置くつもりのようですから。」

 

 「・・・なら、貴方がどうにかしてください。その範囲は貴方がやるべき事でしょう。」

 

 そう言うと、一方的に通信は切られた。クローディアもディスプレイを消すと小さく溜め息をつく。

 

 「全く・・・シルヴィアから聞いてはいましたが、予想以上ですね。不器用と言うか、責任感が強すぎると言うか・・・。」

 

 そんなクローディアの独白は、誰に聞かれるでもなく虚空へ吸い込まれていった。




皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。
さて、悠とその周りはどんどんシリアスになっていってますね。一応、ここからは少し悠に関しては和やかな感じになります。回りはさらにシリアスが続きますけどね。
そう言えば、他作品とかを読んでいて気付いた傾向があるんですが、悠みたいに一人で抱え込むキャラって結果的に周りが勝手に入り込んできちゃったり、隠してた事がバレるパターンが多いんですよね。まぁ、現にこの作品でも一部周りにバレてますが。
まぁ、いいか。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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