さて、一話丸々が基本シルヴィア達と悠の展開です。
基本シルヴィアが悠を引っ張る感じになりますが、まぁシルヴィアが悠の事だとそういうわがまま系キャラになるので仕方ないですね(笑)
「・・・はぁー・・・。」
「ほら、いい加減にシャキッとしなさい。男が背中丸めて歩いてるとか格好悪いわよ。」
寮を出て早々、深々と溜め息をつく悠に、並行する実里が呆れた顔でそう声をかけてくる。
ー数十分前ー
「・・・要するに、あれか。実里が俺の事迎えに行くって言ったらシルヴィまでついてきちゃったのか。」
「正確には私が誘ったんだけどね。3年も離れてたんだし、折角の会う機会を見逃す訳がないわ。だから連れてきたのよ。感謝しなさい。」
「何でそんな上から目線なんだよ・・・。」
洗面所で顔を洗い、歯を磨いた後。寝室でシルヴィアが用意してきたという服に着替えながら、ドアの向こうでそんな事を言う実里に、深々と溜め息をつく。
何がそんなに楽しいのか、シルヴィアもシルヴィアで鼻歌を歌いながら何かやっていた。多分、わざわざ悠の為に買ってきたという服を畳んだりハンガーに掛けてはクローゼットへ入れているのだろう。
理由は曰く、「どうせ悠君の事だから私服を着回ししてるだろうなって思ったんだー。という訳で私直々に服を選んできました!」、だそうで。実際、悠に昔から私服を着回す癖があるのは確かなので何も言えない。とりあえずさっさとシルヴィアが用意してきた服への着替えを終えると、寝室を出た。ちなみに、夜吹は既に出掛けてしまったか、そもそも帰っていないらしくベッドはもぬけの殻である。
ちなみに、彼女達も彼女達でちゃんと私服には着替えている。というか、シルヴィアに関してはそうしないと正体モロバレなんだから当たり前だが。
シルヴィアは紺のジーンズ、水色の長袖の上に白のカーディガン。それとヘッドフォンで髪を紫ではなく栗色に見せる事で「綺麗な一般人」に変装済み。
実里はロングスカートに赤のTシャツ、ついでに腰に巻いた長袖のパーカー。
対してシルヴィアが用意してきた悠の服はというと、茶のカーゴパンツと黒い長袖、それから袖無しの革ジャン。孤児院時代から悠が好き好んで着ていた組み合わせだった。
「ていうか、何で平然と敷地内に入ってこれてるのさ?ここ星導館だよ?」
「あ、それならクローディアが生徒会長権限で許可くれたんだよー。お陰でこうやって会えたんだし後で何かお返ししなきゃ。」
「・・・おかしくない?生徒会長権限ってそんな事まで出来たの?職権乱用じゃないそれ?」
「いちいちそんな事言ってたら何にも出来ないわよ、今のご時世。あんたそんな事気にするタイプだったっけ?」
何でもないようにさらっととんでもない発言と身も蓋もない発言をする幼馴染み二人に、悠は頭を抱えた。
「ほら、船の時間もあるんだからそろそろ行くわよ。シルヴィも。」
「分かってるよー。ちょっと待って。」
実里が悠を引っ張っていき、クローゼットに服を全部仕舞い終えたシルヴィアがその背中を追いかけていく。
ー現在ー
「・・・ねぇ、シルヴィ。」
「んー?どうかした?」
星導館の寮から一旦中等部の校舎敷地内へと中庭の門を使って入り、さらにそこから中等部校舎側の校門へと続く道を歩いていく。前を歩くシルヴィアは久し振りに悠に会えたのがそんなに嬉しかったのか、鼻歌だけでなく足取りも軽かった。それだけなら良かった・・・それだけなら。
「確かシルヴィの
「そうだけど・・・それがどうしたの?」
「ならさぁ・・・。」
首を傾げるシルヴィアに溜め息をつき、周りを見渡して。
「この状況どうにかしてくれないかな?すっごい人集まってるんだけど。」
そう・・・悠達が通っている道の両脇に長々と人が集まり、こっちを見ながら何か話したり写真を撮ったりしていた。中にはちゃっかり悠のクラスメイト達までいる。それら全ての視線が、完全に悠達3人に向けられていた。
『おい、誰だあの娘達!?あんな可愛いのうちにいたか!?』
『やばい、可愛過ぎる!』
『つうか一緒にいる奴誰だ!?』
『くそっ、ハーレムかよ!』
『あれって双月じゃねぇか!彼女いたのかよあいつ!?ていうか二人!?』
『いかにも朴念仁そうなのに、あの二股野郎!爆発しろ!』
・・・とまぁ、こんな具合である。
「くそぅ・・・風評被害だぁ・・・。」
「そんなに気にする事ないって。ていうか、悠君は人目に慣れてなさすぎるよ。いい機会だしほら、特訓だと思って。」
シルヴィアがそう言ってけらけらと笑う。
「いや、もう人目がどうこうって話じゃないからね?あらぬ疑惑かけられてるんだけど?」
「うっさいわねぇ。黙ってさっさと歩きなさいよ。」
横から伸びてきた実里の手が後頭部をひっぱたいた。地味に痛い。というか理不尽極まりない。
「別に傷つけられるような名誉とかがあるわけじゃないんだし別にいいでしょ、これくらい。」
「酷っ!流石に酷くない!?そこは俺の味方
してくれても良くないかなぁ!?」
「大事な彼女を3年間放ったあげく寂しい思いさせるような馬鹿にフォローする余地なんか無いし。」
「・・・。」
返す言葉も無い悠、完全にノックアウトだった。
「実里ー、あんまり言い過ぎると悠君のメンタルが持たないからそれくらいにしてね。悠君もそんなヘタれないの。実里の言葉遣いが荒いのは今に始まった話じゃないでしょ?」
そう言うと、シルヴィアが悠の手を取って引っ張っていき、実里がそれに続く。その光景は、何時のまにやら孤児院でお馴染みになっていた『悠がシルヴィアに振り回されている図』と重なって見えた。
ー■■■ー
「やれやれ・・・やっとくっつきましたか。本当に、不器用な相手というのはやりづらいものですね・・・。」
一方。そんな3人の姿を生徒会長室のガラス窓ごしに見送りながら、クローディアは呆れたような、安堵したような溜め息をついた。実を言うと、クローディアは悠の過去を聞いて以来、彼に対して少なからず罪悪感を覚えていたのだ。
今のご時世、統合企業財体の利益を受けている土地はかなり発展しているが、その裏では貧富の差が広がったり、悠のように統合企業財体の関与により家族を失ったり大事な人と引き離されたりする者も少なくない。生家がそういった事態を引き起こしている財体側のクローディアは、悠の過去を聞いて以来、少しでも彼の助けになろうと色々考えを巡らせていた。
「さて・・・そろそろ此方も動きましょうか。これ以上彼に犠牲になってもらいたくはありませんし。」
誰に聞かせるでもなくそう呟くと、クローディアは端末を出してどこかへ連絡を取った。
「どうも。・・・えぇ、今出たところです。手筈通り、彼の周囲を警戒してください。怪しい者がいたら決して此方からは動かず、彼らに連絡を。確実に、迅速に対処してください。・・・えぇ、それでは、よろしくお願いします。」
そんな短めの電話をして、通話を切る。そうして再び視線を外に向けると、シルヴィア達を乗せてきたらしい車の前で悠とユリス達が話しているところだった。
ー■■■ー
「いやぁ、いいもん見してもらったなぁ。まっさか悠が彼の歌姫様とデートとはねぇ。」
「話を飛躍させ過ぎだ、夜吹。だがまぁ、実際見るとあまり釣り合っていないな、顔的に。」
「何で俺の味方が悉く居ないのかなぁ・・・。」
数多の視線にさらされつつ辿り着いた星導館の校門。そこを出たすぐ先にシルヴィア達を乗せてきたらしい車が止まっており・・・さらにその前では、ユリス達が待機していた。で、案の定そんな事を言ってくる。
「まあ、確かに釣り合ってはいないわね。シルヴィとこれだし。」
「うんちょっとタンマ。今『これ』って言わなかった、『これ』って。」
「言ったけど?」
実里が「今更何言ってるのコイツ」みたいな顔をしながら平然とそう言った。朝から好奇の目に晒され続け、あらぬ噂を立てられたせいでボロボロだった悠の日常生活面担当メンタルにさらに追い討ちをかけてくる辺り、よっぽど悠に対して不満があるらしい。
「ていうか、何で平然と会話できてるのさ君ら。会った事あるっけ?」
悠が知る限り、ユリス達に面識は無いはずなのだが・・・。
「うん?もう何回も会ってるよ?といっても、中学2年の時にだけどね。主に悠君がどうしてるか、とか聞きたかったから。」
「嘘ぉ!?ていうかどうやってユリス達と俺が友達だって知ったのさ!?」
悠が知らなかった衝撃の真実。というかユリス達は会ってたのを黙ってたのか!と思いながら非難の目を向けるが、二人ともそ知らぬ顔でそっぽを向くだけだ。
「それもクローディアが教えてくれたよ?凄いあっさり。」
「・・・ごめん、もう勘弁して。味方ゼロな上に俺のプライバシー駄々漏れとか・・・。」
もはや頭を抱えて唸るしかない悠であった。そんな様子を見ていて何が楽しいやら、シルヴィアがけらけらと笑い、実里は実里で相変わらず呆れた顔をする。
「ま、最近忙しそうだったし少し羽伸ばす位はしてこいよ。あんまし根詰めすぎるのも良くないぜ?」
そう言って夜吹が肩を叩いてくる。いつもの飄々とした感じではあったが、彼なりに気遣ってくれているらしかった。
「・・・そこまで言うなら、行ってくるよ。留守番任した。」
悠が観念したようにそう言うと、シルヴィアが悠の左腕にピタッと引っ付いてくる。その顔は、心底嬉しくてたまらないという顔だった。瞬間、主に悠のクラスメイト集団から盛大な舌打ちが聞こえてくる。当然ながらスルー安定。
『おい、どうする?殺るか?』
『いや、それはまずいな。物理的に殺るのは俺達が困る。』
『なら、社会的に殺るか。あいつの部屋を盗・・・ゲフンゲフン、ガサ入れすれば何か出てくるだろう。』
・・・という訳にもいかないらしい。というかやることが醜悪すぎる。
「安心しろ。クローディアが色々防犯対策を施してあるらしいからな。それに扉は自動ロックでしかも認証式ロックを何重も解除しないと開かないように改造したらしいぞ?」
「あぁ、そう・・・。何かもう、どうでもいいや。」
留まるところを知らないクローディアの職権乱用に、悠はもう突っ込むのを諦めた。というか便利すぎるだろう、生徒会長権限。
さらに言うなら、認証式ロックを解除しないと入れないのに今朝シルヴィア達が入ってきた事を考えると二人のデータまでクローディアが認証対象に入れているという事である。悠としては勝手な改造やら何やらで大変困るのだが、相手は生徒会長。対して自分は一介の生徒だ。立場的にも権力的にも太刀打ち不可である。
「シルヴィア、そろそろ船に乗らないと。向こうに10時半には着いておかないといけないんだから。」
「分かってるよー。ほら、悠君も!」
「はいはい、分かったよ・・・。」
シルヴィアが先に車へ向かっていく実里の後を追うようにして、悠を引っ張っていく。悠も疲れたような顔ではあったが、その口元には微かに笑みが浮かんでいた。
ー■■■ー
「あ、そうだ。悠、これ今の内に着けておいて。」
シルヴィアに引っ張られる形で乗った車がアスタリスクと外を繋ぐ港へ走っていく。車自体は某自動車メーカー製の軽自動車だが、運転はオートで、且つシートは対面式というよく分からないものだった。
ちなみに悠とシルヴィアが普通の軽自動車で言う後部座席、実里が対面式に改造されている前部座席に座っている。そんな車中で、実里からそう言って手渡されたのは首から下げるタイプのスタッフ証だった。
「あぁ、そういえば俺、今日は招待客兼臨時スタッフなんだっけ。」
「今後は普通にライブスタッフとして働いてもらう事になってるのも忘れないでよ。それさえ飲めばシルヴィアと堂々と会えるんだから、ペトラさんに会ったらちゃんとお礼しなさい。」
「何でお前が偉そうにするかな、そこで・・・。」
はぁ、と溜め息をつくと、実里がキツい視線を向けてきた。それをスルーし、悠は窓の外に目を向ける。一面の青空が、何故か眩しく見えた。
皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。
さて、悠とシルヴィアの再会する回ですが・・・やっぱりシルヴィアのキャラがブレッブレですかね。キャラ設定上、公私によってキャラは使い分けてるんですが。
公と私のキャラのギャップがなぁ・・・。
まぁ、概ねキャラ設定には沿ってますしいいですかね。
読んでくださり、ありがとうございました。