IS<インフィニット・ストラトス> for Answer   作:Akimiya

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改稿版。


一部
00-00 プロローグ


『カラードのリンクス。マクシミリアン・テルミドールだ』

 

 照明のついていない部屋の中、唯一の光源は目の前で依頼内容を流しているディスプレイだ。

 俺は椅子に座って依頼内容を見ていた。

 

『君がこれを見ているということは、私は既にこの世にはいない。恐らくはアルテリア施設"クラニアム"に斃れていることだろう』

 

 俺はORCA旅団に参加していた。どんな経緯だっただろうか、今でも鮮明に思い出せる。確か……アルテリア施設「ウルナ」の破壊だったか。

 これが原因で俺は企業連と縁を切り、ORCAになったわけだが、普段、淡々とミッションを告げるはずのテルミドールの様子がおかしい事に疑問を持っていた。

 そしてこの言葉である。

 

『メルツェルもビッグボックスを制することはできまい。つまりORCAは、君を除き全滅したことになる』

 

『そこで頼みがある。私に替わって、クラニアムを制圧してほしい』

 

『クラニアムの停止は即ち、クレイドル最後のエネルギー供給源の消失を意味する。エネルギーを失ったクレイドルは等しく降下し、貴族たちは再び大地へ足を降ろすことになるだろう』

 

『その後、衛星軌道掃射砲はクレイドルに供給されるはずの膨大なエネルギーをもって、アサルト・セルを清算し、人類に宇宙という新たな途を指し示す』

 

『最後の希望。君に全てを託そう』

 

『最後に、君と、人類と、共に戦った我らが同胞のために、この言葉を贈る』

 

 

 

 

『人類に、黄金の時代を』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テルミドールが死んだ……?」

 ブリーフィングが終わった後、言葉の意味をかみ締めるように呟く。テルミドールが死んだ? 信じられない。

 

「確かに、信じられんな」

 

 俺の言葉に返事をしたのはセレンだ。セレンも「ありえない」という表情をしている。

 

「しかし、嘘を言う奴でもあるまい。文面どおりに解釈すると、どうも、お前以外のORCAは全滅したようだな」

「まさかこんな事になってるなんて……」

「過ぎた事を言っても仕方あるまい。決めたのだろう、お前は。新しい世界を創ると」

「はい」

 

 ORCAに参加し、すでに数機のカラード所属のネクストを葬った。もう首輪付きには戻れない。

 

「もう戻れないところまで来ている。ここで怖気づくようじゃ、散っていった仲間たちに顔向けができない。それに、俺は一人になってもやってみせる。ORCAの目的は俺の目的だ。俺がやらないで誰がやるんです?」

 

 その言葉を聞いてセレンは「フッ」と表情を和らげた。

 

「いい顔になったじゃないか。当然か、私が見込んだのだからな。

 行って来い。最後まで、私が見守ってやる」

「ありがとう。セレンさん」

 

 俺はそう言って椅子から立ち上がる。

 そうして格納庫に向かって歩を進めた。

 

 

     *

 

 

<ASSEMBLE>

 

HEAD:HD-LAHIRE

CORE:CR-LAHIRE

ARMS:AM-LAHIRE

LEGS:LG-LAHIRE

 

 

 アセンから分かるように、俺の機体はオーメル社のネクスト「TYPE-LAHIRE」ベースのカスタム機だ。

 背中にはレーダー、コジマミサイル、手にはレイレナードのマシンガン、GAのスラッグバズーカという構成になっている。

 その機体は淡い紫に染められ、落ち着きのある色合いになっている。

 

「さて、最後の作業だ」

 

 俺は機体の左肩の方に移動し、エンブレムを張り替える。

 今まで使っていたものからORCA旅団のものに。

 

『改めて依頼を説明する。今回の依頼はアルテリア・クラニアムの占拠。防衛にあたっている敵ネクスト「マイブリス」と「レイテルパラッシュ」を撃破せよ』

 

 スピーカよりセレンの声が聞こえてくる。

 

「うへぇ、よりにもよってウィン・Dかよ」

『そう言うな。お前なら負ける事はないだろうさ』

「だといいんですけどね」

『レイテルパラッシュは軽量二脚、マイブリスは重量二脚だ。マイブリスそうでもないかもしれんが、脅威はレイテルパラッシュの背面武装、インテリオル製のハイレーザーだ。

 気をつけろよ。あれを喰らえばその機体ではひとたまりもないだろうからな』

「わかりました。喰らわないよう努力します」

 

 エンブレムの貼り付けが終わったので機体に乗り込む。

 続いてエンジン始動。システム、オールグリーン。

 

「じゃあ行ってきます、セレンさん。

 ネクスト『ヴァイオレット』、出る!!」

 

 

 

 

 

         *

 

 

 

 

 

『この…大馬鹿者がっ!!』

 通信機越しにセレンの声が聞こえてくる。そうとう怒っているな。

 

「すいませんね……セレンさん。まさか伏兵がいたとは……」

 

 俺はそっと視線をずらす、そこには自機に良く似た機体が足を折り、沈黙していた。

 ネクストAC「ステイシス」。乗っているのはカラードランク1、テルミドール、いやオッツダルヴァと呼ぶべきか。

 

 

 

 

 

 俺は先程までマイブリス、レイテルパラッシュと激戦を繰り広げていた。

 戦力はほぼ互角、だが長時間の戦いで、天秤は少しずつ傾いていった。

 最初にマイブリスが沈んだ。至近距離から放たれたヴァイオレットのスラッグバズーカがマイブリスのコアを貫いたのだ。

 その後レーヴェシュタインはレイテルパラッシュとの一騎打ちを繰り広げた。

 事前の情報どおり、レイテルパラッシュは遠距離からハイレーザーを打ち込んできた。立ち回りについても、巧みに飛び回るり、距離を詰めさせようとしなかった。

 しかし、それも時間の問題。徐々に距離を詰められ、ヴァイオレットの銃がレイテルパラッシュのメインブースターを打ち抜いた。

 機動力が低下してしまったレイテルパラッシュには、もう紫色の悪魔(ヴァイオレット)から逃げる力を持ち合わせていない。

 

「終わりだ。ウィン・D」

 

 向けられる銃口、その引き金が引かれる寸前、俺のレーダーに多数の反応をキャッチした。

 

「ミサイルっ……伏兵かっ!?」

 

 すぐさまに肩部に付いていたフレアを発射し、ミサイルから逃れる。

 打ち込まれたのはPMミサイル。敵機を確認するべく、ミサイルが飛んできた方に目を向ける。

 その機体をみて俺は驚愕した。

 

「……ステイシス……」

『テルミドール……裏切ったか…… 元より貴様らが始めたことだろうが!!』

 

 セレンの怒号が無線を通して浴びせられる。

 

『テルミドールは既に死んだ。ここにいるのはランク1、オッツダルヴァだ』

 

 ステイシスはOB(オーバードブースト)でこちらに近づいてくる。こちらに応戦以外の手はない。

 だが馬鹿な俺はある事を失念していた。敵は一人ではないことに。

 

『どこを見ている。これは戦争だぞ?』

「――ぐっ」

 

 背後からハイレーザーが打ち込まれる。とっさの回避で直撃は避けたが、それでもダメージは大きい。

 幸いなことに今のレイテルパラッシュのメインブースターは使い物にならない。これは避けられない。使いたくなかったんだが、使うしかないだろう。

 

「コジマの輝きを知れ!!」

 

 背面武装を展開、それと同時にコジマミサイルを発射した。

 爆音と共に緑の閃光が辺りを覆う。

 レイテルパラッシュはコジマに巻き込まれ、沈黙した。

 俺はそれを確認し、コジマに巻き込まれないよう全速力で離脱し、ステイシスに向かう。

 十全な状態のステイシス。対しては弾薬の残りも多くなく、損傷を負っているレーヴェシュタイン。正直に言って状況は芳しくない。

 同じライールベースの機体を使う者だ。機体の長所も弱点も当然のことながら理解している。

 故に、勝敗に関ってくるのは互いの実力のみ。

 

「ORCAの名に懸けて、お前を倒す!!」

 

 言葉と共にOB。軽量機故の驚異的なスピードでステイシスに向かう。

 

『フッ、増長だな。貴様ごときがORCAを気取るなど』

「口だけは達者だな!!」

 

 すれ違いざまに互いの銃口が光る。

 俺はその後すぐに反転し、コジマミサイルを放つ。

 ステイシスは自慢の機動力を生かし、QB(クイックブースト)を多用しミサイルから逃れる。

 余計な動きで発生したほとんどないような隙を狙い、スラッグガンを撃ち込む。

 弾は機体に命中し、装甲に穴を開ける。しかし、決定打にはならない。

 負けじと向こうもライフルを撃ち込んでくる。俺はQBを用いて攻撃を巧みに避け、マシンガンで応戦する。

 

『やるじゃないか』

「当然だ!!」

 

 銃撃戦が続く。互いの武装が互いの装甲を吹き飛ばし、内部を傷つけていく。

 俺の機体はそもそも十全な状態ではない。実力が拮抗しているのであらば当然ならばこちらが不利になる。しかし、実際の状況は違った。

 

『馬鹿な。このステイシスが押されているだと!?』

 

 互いの装備していた武装の差だった。向こうはアサルトライフルにレーザーライフル。こちらはマシンガンにスラッグバズーカ。狭い戦場ではこちらの方に分があった。

 スラッグバズーカは近づきさえすればなかなかの火力を持つ優秀な武装となる。

 この武装がステイシスを苦しめているのだった。

 だが、元々残弾に不安がある以上、持久戦に持ち込むわけにもいかない。

(仕方がないか……)

 

「テルミドール!!」

 

 名を叫び、OBで空中を駆ける。

 これは賭けだ。これを失敗してしまえば自分は否応無しに窮地に立たされる。だが、このままこの状況が続けば、いずれ弾切れという形で終わりが訪れる。

 十分な推進力が発生したところでOBを止め、QBを織り交ぜながら通常推力で近づいていく。

 そして―――、

 

「消え……ろっ……!!」

 

 ほぼ密着といっても過言ではないほどの距離で俺はAA(アサルトアーマー)を使用した。

 光に飲み込まれるステイシス。

 

『最期に敗れる、そんな運命か…』

 

 こんな言葉が聞こえてきたが幻聴ではないだろう。

 

 

 

      *

 

 

 

 そんな状況があって、今がある。

 視線を配れば三機のネクストが沈黙している。

 俺は、勝ったのだ。

 機体共々、かなり消耗しているが。

 

「まぁ、いいじゃないですか、結局は勝ったんですから。

 ここは素直に褒めてくださいよ」

 

『……まったく、お前という奴は……』

 

 セレンの声が和らぐ。普段は見せないセレンの一面を見て、不覚にも少し驚いてしまった。

 

「ま、帰るまでが遠足っていうし、帰ってからゆっくりと褒めてもらいますよ」

『言うようになったじゃないか……』

「ご指導の賜物です」

『フッ、本当にお前は面白い奴だ。さっさと帰って来い』

「そうします」

 

 そう言って飛び上がろうとしたその時、

 突然、空間にぽっかりと()が開いた。

 

「――なっ!?」

『なんだこれは!? なにか判らんが早く脱出しろ!!』

「ちぃっ!! 出力がたりねぇ!!」

 

 穴はブラックホールのように貪欲に機体を吸い込んでいく。ブーストの出力が足らないせいでどんどんと吸い込まれていく。

 

『OBは? OBで脱出しろ』

「無理だ!! さっきまAA使ったばっかりなんだ!! OBどころかPA(プライマルアーマー)すら展開できねぇ!!」

 

 どんどんと吸い込まれていく機体。高機動型でも拮抗できないほどの吸引力が継続して襲ってくる。

 メインブースタをフル活用してどうにか持っている状態だ。そして、残念な事にライールの燃費は良いものとはいえない。

 限界が……来る。

 

「セレンさん。掃射砲を……頼みます……」

『なに馬鹿なことを言っている!! 耐えるんだ!!』

 

 ああ、また機嫌が悪くなってしまったな。俺の所為か……。

 

「ENが……きれる……」

『くそっ……くそおおおっ!!』

 

 セレンの叫び声が響く。

 

 

 そして、ブースターが切れる。

 

 

 

 

 

 

 機体はそのまま闇に飲み込まれていった。




評価が上がると執筆速度が上がるこのごろ



5以下の評価をつける方は可能ならば「どこが悪かったのか」「どういう所を直したら良いのか」というのを感想の方に記述してくださいますようお願い申し上げます。

2013/05/12 誤字修正
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