IS<インフィニット・ストラトス> for Answer   作:Akimiya

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日常シーンは苦手です。
















その兵器は日常を……コジマする


01-07 閑話、学園にて

「まったく、俺が居ないうちに世界は大変な事になっているな」

 

 SHR前、まるで何事もなかったかのように優は言った。

 

「いやいや。お前今までどうしてたんだよ? 所用というのは分かってるがよく学校が認めたな!?」

 

 結果から言おう、優は2日学校を欠席した。本来なら俺と優は学園に軟禁さえれてもおかしくはない身分であり、二日連続の欠席を誰が許すだろうか。

 特に、時を同じくして発生した基地群壊滅事件。ただでさえ世界は混乱しているというのに、なんでコイツはこんなに無関心なんだ?

 

「まぁ特別な理由があったのさ。基本的にどうでもいい事を学園が認める訳ないだろ?」

「それはそうだが……」

 

 まぁ口で優を負かす事なんて出来るわけない。それはわかってる。ISでも勝てないのは悔しいところだが。

 

「優さんっ!! ご無事でっ!?」

 

 優の入室に気づいたのか、セシリアが走りよってきた。

 

「ああ、オルコットか。幸いな事に俺の身には何も起こってはないから、心配する必要は無いよ」

「そうですか。それならよかったですわ」

 

 セシリアは笑顔で優と会話を交わしている。やっぱセシリアも心配してたんだな。

 

「ところで――」

 

 優は俺に向き直る。

 

「代表決定おめでとう。いや、悔しいな。一歩上いかれちまったよ」

「……本音は?」

「面倒な役を引き受けてくれて……って何言わすんだよ」

「……ハァ」

 

 俺は頭を抱える。だめだ。こいつには敵わない。

 

「まぁ、がんばれ。

 さて、俺は席に行く。じゃ、また後で」

「おう」

「また後ほど」

 

 優が席に着いたのと同時にチャイムがなり、千冬姉が入ってくる。

 千冬姉も優が出席しているのを見て、少し安心しているようだった。

 

 

         *

 

 

「では、これよりISの実習授業に入る。今回行うのは飛行の基本についてだ」

 

 織斑先生の声の元、授業の開始が告げられる。今日の授業はISの飛行についてだ。

 時期は四月末、暦の上ではもうすぐ五月にさしかかろうかとしている今日のこのごろ、俺は欠伸を必死に我慢しながら織斑先生の言葉に耳を傾けていた。

 

「さて、では分かりやすいように少し実践してもらおうか。織斑、オルコット、そして高城。やってみろ」

「わかりましたわ」

「は、はい」

「了解しました」

 

 返事はオルコット、一夏、俺の順だ。

 織斑先生から指示を受け、俺たちは瞬時に行動を開始する。

 まずは、ISで飛行する前段階、ISの展開だ。

 俺は首にかけてあるペンダントに意識を集中する。俺にとって、このペンダントがISの待機状態だ。

(亜式)

 変化はすぐに現れた。

 俺の周りに粒子が集まったかと思うと、一瞬で装甲を形成する。

 装甲は薄く、脆い。まるで陽炎のようなイメージ、されど砥ぎに砥いだ名刀のような威圧感を放つISが展開された。これが俺のIS『打鉄亜式』。

 ふと視線を隣へ動かす。

 そこには蒼いIS『ブルー・ティアーズ』を纏ったオルコットがいた。

 さて、残るは一夏か。

 で、その肝心の一夏はというと――

 

「早くしろ。熟練者は展開程度に一秒もかからないぞ」

 

 ISをまだ展開できていなかった。

 イメージが固まっていない時にはよく起こることらしいのだが、今の一夏には仕方が無いことか。

 暫しの時間を経て一夏はISを起動する。白き騎士、白式だ。

 

「――――」

 

 思い出してしまう。ラインアーク防衛の際、共に戦った伝説の姿が。

 こいつが彼に届くことはあるのだろうか。

 できれば、そうなって欲しいものだ。いやそうなってもらわなければ困る。

 彼の存在はこれからの計画に必要なのだから。

 

「準備できたな。では――飛べ!!」

 

 織斑先生から指示が入る。

 俺とオルコットはすぐさま行動を開始した。一拍して一夏も動き出す。

 俺は一旦地面に降り立ち、膝を曲げる。その後すぐさま地面を蹴り、空中に飛んだ。

 亜式の異常ともいえる推進能力をもって一気に飛翔する。手加減は忘れない。ここで見せ付けるのはまだ早い。

 途中オルコットを追い抜き一足先に指定高度に到達する。その後、スラスターの出力を落とし、空中に静止した。

 数秒後、オルコットが到着、俺と同じように空中に静止する。途中、一夏に何アドバイスをしていたようだが、まぁそこは置いておこう。

 さて、残りは一夏だ。

 一夏は姉の叱責をうけながらも懸命に此方へと向かってこようとする。動きはとてもぎこちないが、仕方ないといえば仕方ないだろう。

 

「オルコット」

 

 オルコットに無線を飛ばす。

 

「何でしょうか? 優さん」

「操縦に関してだが、お前は一夏をどう見る」

「そうですわね……今はまだ何とも言えませんわ」

 

 オルコットは一夏に視線を向けて呟く。

 一夏はまるで赤子のようにフラフラと辺りをさまよっている。

 

「しかし、何か光るものを持っていると私は確信していますわ」

「光るもの……なるほど、お前もそう思うのか」

「と言いますともしかして優さんも?」

「ああ、今はまだ石ころかもしれないが、磨きようによっては……化けるかもな」

「そこまで……」

 

 思い当たる節があるのだろう。オルコットは少し悩みながら呟く。

 対オルコット戦にて、まだ卵から孵ったばかりの雛鳥があろうことか代表候補生を撃墜寸前まで苦しめたのだ。まだオルコットが未熟であるという点を鑑みたとしてもそれは異常な出来事である。

 ISについて技術どころか知識すらない素人がたった一戦であそこまで伸びたのだ。あれに可能性を感じずしてどうする?

 そう、『戦闘』という点においては一夏は天才なのだ。

 他の追随を許さぬ圧倒的センス。その手の機関にしてみれば、咽から手が出るほどの逸材であることだろう。

 

「そして、奴に戦闘を叩き込むのはあの世界最強だ。間違っても潰れるものか」

「そうですわね」

「まぁ俺たちは、精々高い壁になることにしよう。このまま追い抜かれるのも癪だしな。

 さて、来たぞ」

 

 時間はかかりながらも一夏は到着した。姉に怒鳴られ、幼馴染に怒鳴られ、精神的にはちょっと拙そうだが、まぁ問題あるまい。

 一夏が休憩しようした矢先、次の指示が飛ぶ。

 

「よし、全員指定高度に到着したな。では織斑、高城、それとオルコット。急降下と急停止をやってみろ、目標は地表十センチ」

 

 ハァ……、と肩を落とす一夏俺は無線で一言『がんばれ』と贈った後、オルコットに視線を向ける。オルコットはそれに頷き、

 

「わかりましたわ。では、一夏さん、優さん。お先に」

 

 すぐさまスラスターを制御、地上に向けて降下した。綺麗なフォームで操縦するオルコットの姿を見て一夏は「綺麗だなぁ」と呟いた。確かに綺麗だ。無駄な空気抵抗をかけないように考慮された体制は降下中に崩れることは無い。

高速を保ちながら地面との距離を詰めていくオルコット。そして地面すれすれで反転、危なげなく停止した。距離は地面から十センチ弱、成功だ。

 さて、次は俺か。

 

「一夏、お先」

 

 俺はオルコットと違い、スラスターの出力を切ることで降下を開始した。

 オルコットは制御して等速で降下していたのに対し、俺のは等加速。つまり垂直降下。速度は時間と共に増していく。

 制御などしていない。風と空気摩擦などの影響を受け、刻々と状態は変化していく。

 シールドエネルギーの形は流石に降下に適した形にはしているが、初心者には負担は大きかろう。

 下では俺の一夏への一言を聞き取れていない女子たちが少し慌てているが、織斑先生はまるで品定めをするかのような視線を向けている。

 俺は地面近くでスラスターを操作。強烈なGが体に襲い掛かるが、それを我慢しスラスターの出力を上げる。

 狙うのは静止、急上昇ではない。故に状況を性格に把握し、細やかな調整を加えていく。

 そして結果、目標を上回る形、地面からの距離が十センチ以下で静止した。

 周りからは感嘆の意が篭った声が発せられる。

 

「二人とも、とりあえずは問題なしだ。さて、あとは――」

 

 直後、轟音。砂煙が舞い上がり、小石は弾丸となって人を襲う。

「やれやれ」と織斑先生が頭を抱え、俺は天を仰ぐ。砂煙が晴れるとそこには、大きなクレーターを作った一夏がISを纏ったまま横たわっていた。

 

「グラウンドに穴を開けるな馬鹿者が。墜ちろなどとは一言も言っていないぞ」

「す、すいません」

 

 体勢を立て直し、復帰する一夏。体に傷一つ付かず、何も体に影響が無いのだから、ISというものは生命維持の観点から見ると異常なものだと言わざるを得ない。

 

「自爆特攻の練習か? それとも地面を愛しているのか?」

「どっちも違うって!!」

 

 辺りから笑いが湧き上がる。一夏は恥ずかしそうに、悔しそうに頬を赤らめた。

 

 

                 *

 

 

「では織斑、武装を展開しろ。その位はできるようになったのだろう?」

 

 俺が着陸に失敗した後、箒とセシリア小競り合いを始めた。雰囲気が混沌になろうかというその時、千冬姉が割って入り、事態を収拾した。

 そして罰だといわんばかりに与えられた課題が「武装の展開」だった。

 

「はい」

 

 これを拒否する理由はない。俺は礼儀正しく返事をし、周りに誰も居ない事を確認して武装を展開しようとする。

――大事なのはイメージ……そう刃。鋭く、磨かれた名刀。斬る、それだけを追求された形を――

(――来い、雪片!!)

 光が発せられる。粒子が集まり、形を成す。

 白式専用近接ブレード『雪片弐型』。俺が持つ唯一で最強の武器。

(よし、成功だ)

 かかった時間は0.7秒、1秒の壁を超えたのだ。これは初心者の俺にしてみればかなりといっていい程の進歩であり、満足のいくものだった。

 

「遅いぞ、織斑。0.5秒以下で展開できなければ使い物にはならんぞ」

 

 だが千冬姉から発せられたのは褒め言葉ではなかった。厳しい事を言ってくれる。まだまだ上を目指せるから精進しろという意味で言っているのは理解できるのだが、俺の一週間を否定されているようでとても悲しかった。

 

「では次だ。オルコット、武装を展開しろ」

「わかりましたわ」

 

 セシリアは左手を肩の高さまで掲げると、思い切り突き出した。次に起こったのは一瞬の発光。そしてその光が収まる頃には彼女の手には巨大な銃器が握られていた。

 データ照合……完了。武装名『スターライトmk.Ⅲ』

 クラス代表決定戦で俺を苦しめたレーザーを弾とする狙撃銃だ。青系統の色が中心にカラーリングされており、既に弾薬は込められている。セシリアが視線を銃に送ると白式が『セーフティーが解除されました』と情報を伝えてくる。

 そしてここまでに経過した時間は……1秒をきっている!?

 セシリアは俺とほとんど同じ時間で展開し弾薬を装填し、射撃可能の体勢までもっていったのだ。

 これが代表候補生か。先の戦いでは特に感じる余裕は無かったが、こうして見ているとその

凄さというものがひしひしと伝わってくる。

 

「十分だ、オルコット。流石は代表候補生、と言ったところか」

「この程度、(わたくし)にかかれば造作も無いことですわ」

 

 自慢げに胸を張るセシリア。嬉しいのだろう、だが千冬姉の言葉でその表情が固まる。

 

「だが、そのポーズはやめろ。横に向けて銃身の展開させてお前は一体誰を狙い撃つつもりなんだ?」

「お、お言葉ですがこれは私のイメージを纏めるために必要不可欠な行為でありまして――」

「直せ。命令だ」

 

 有無を言わさない発言。普通ならここで引き下がるだろう。だが如何せん、セシリアは強情だった。

 

「で、ですが――」

「私なら、お前がその無駄な行動をしている間に3回は殺している」

 

 雰囲気が変わった。千冬姉から放たれているのは紛れも無い、殺気だ。

 セシリアの顔はみるみるうちに青く染まっていく。

 千冬姉はそれを見ると満足そうに口角を吊り上げ、殺気を収めた。

 

「お前のそれは玄人にとっては隙であり格好の的だ。死にたくなければ直せ」

「……わ……わかりましたわ」

 

 恐ろしい。殺気に当てられていたのはセシリアだけだったはずだ。なのに俺や他の生徒はその余波だけでセシリアと同じ感情を抱いてしまった。

 

「さて、本来ならばオルコットには近接武装を展開してもらうのだが、その様子だと難しそうだな」

 

 この話は終わったとばかり話題を変える千冬姉。その視線が辺りを観察するように横に動く。

 先のことがあったからだろうか、視線にさらされる女子たちは皆怯えているようだ。

 そしてその視線の移動が止まる。その先に居る者は……

 

「高城、お前は近接、遠距離両方の展開だ。やってみろ」

「はい」

 

 優、だった。

 優は千冬姉の鋭い視線を一身に浴びているがその表情が変わることは無い。体が硬直するとか口調がたどたどしくなることもない。強がっている様子さえもその態度からは読み取る事ができない。

 腕を組んでいた優はそれを解き、力を抜いたように下げる。

 瞬間に発光。その一瞬が収まる頃には両手には武装が展開されていた。

 データ照合……完了。

 右腕武装:近接戦闘用ブレード。武装名『哀歌』

 左腕武装:近中距離戦闘用マシンガン。武装名『毒蛇(コブラ)

 展開にかかった時間はセシリアよりも早い。いや、単純な速度から言えば大差ないだろうが、無駄な動きをしていない優の方が戦闘行動に移るまでの時間が短いだろうことが推測できた。

 無駄の無い展開と自己主張を含む展開。二人の展開を表現するならばこうだろう。

 

「問題無しだな。オルコット、覚えておけ。これが本来行うべき展開だ」

 

 千冬姉が満足そうに頷いてセシリアに言葉を投げる。セシリアも理解したようだ。顔は少し強張ったままだが、このまま相対すると先制されてしまうことを感じ取ったのだろう。頷きながら返答した。

 それにしても、優の規格外さにはいつも驚かされるばかりである。

 

 これはよりいっそう努力しなければ彼には追いつけないだろうと考えを改める一夏であった。




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