IS<インフィニット・ストラトス> for Answer   作:Akimiya

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三人称練習も兼ねています

(遅くなりましたが)メリークリスマス!! 


01-08 鈴の音響く

時刻はそろそろ午後8時にさしかかろうという頃、IS学園の正面ゲート前に人の姿があった。

 それは小柄な少女であった。少女は自分の体には不釣合いな大きさのボストンバックを肩にかけ、奥にそびえる校舎を見上げた。

 

「へぇ、ここがそうなんだ……」

 

 四月の夜風に揺れる髪は綺麗な黒であった。少女はその髪を左右に分け、それをれを高い位置で結ぶ――所謂ツインテールという髪型をしていた。その髪留めは綺麗な金色で月光を浴びて幻想的に輝き、金と黒のコントラストがとても風景に映えた。

 少女は一切れの紙を自身の服のポケットから取り出す。それはくしゃくしゃでお世辞にも綺麗な状態とはいいがたいものであった。

 

「えーっと、受付は……本校舎一階総合受付……って、分かるかぁ!!」

 

 少女は大声で叫ぶ。その叫び声は夜風に運ばれて海へと消えていったが、IS学園は一般的な教育機関と比べ破格ともいえる大きさであり、構造を知らぬ者には無理も無い反応である。

 

「ああ、くそっ。自分で探せばいいんでしょ、探せば!!」

 

 そういって彼女は紙を再びポケットの中に仕舞う。その際にまた良からぬ音が鳴った気がするが、少女は気にも留めなかった。

 文句を言いながらも足は動いていた。考えるよりもまず行動、これが彼女の強みであり弱みでもある。

(出迎えがないとは聞いていたけども、まさかここまでとは)

 少女は年齢ではまだ15歳であり、このような一般的に言うか弱い乙女が異国の地で一人彷徨うことは普段なら考えもつかないことだ。

 しかしながら少女の手にかかればただの悪漢やただの人攫い程度露を払うかの如く処理できるのだが。

 それに、彼女にとって日本は第二の故郷といってもいい存在であり、思い出と因縁が詰まった場所でもあるのだ。

 第二の故郷から分かるとは思うが、彼女は日本人ではない。鋭角的でどこか妖艶さを感じさせる瞳は中国人のそれであった。

 

 その後少女は数刻学園の敷地内を歩き回るが、前述の通り彼女は論より行動のタイプであり、そして同時に……

 

「あーもう!! 面倒臭い!!」

 

 ……我慢強くなかった。

 頭を両手でわしゃわしゃと掻きながら大声で叫ぶ。その音量は思わず一理先の兎印の盗聴器が拾ってしまう位大きなものだった。

 ちなみにどこかの研究所でウサミミをつけた美女が「うにゃっ!?」と叫んだのは秘密である。

 ――誰か案内できる生徒とか先生とか居ないの?

 少女は心の中で呟くが如何せん周りに聞こえることはないし、誰かが出てくる事もない。

 冒頭でも述べたが時計の太針は既に8を指しており生徒達は例外を除き既に部屋の中である。

 一瞬『空を飛んで探す』という選択肢が脳裏に浮かんだが大判辞書三冊分にも及ぶ学内重要規約書の存在を思い出しすぐに却下する。

 それに彼女はまだIS学園の生徒ではないためISを起動させるといろいろと面倒が起こる。外交問題に発展することもあるから注意が必要だ。

 政府高官も涙目で懇願していたことでもあったし、それに問題を起こすと少女が嫌いな「歳をとっているだけのさして特筆する能力もなく偉そうにしている人」と否応無しに顔を会わすことになるだろう事を考えて現時点での展開は自重することにした。

 それにそんな今の状況を差し置いても『今は良い』と考える事ができるから一考に値する。

 篠ノ之束がISを発表し、白騎士事件が世界を騒がせた後の世は少女にとって好感を覚えるものだった。

 男の腕力など一考の価値無し。女だけが扱えるISこそが絶対。女が黒と言えば白は黒く染まるし、その逆だって可能であるのだ。

(まぁアイツに関しては別だけどね)

 少女の頭の中はこれから再開するであろう少年の事で占められていた。

 何時も自分と共にあって何時も自分を守ってくれた、それはまるで白馬に乗った王子様の様で……

 

「だから……でだな……そうではな……と……ことだ」

「……から、そのイメージがどうにも理解できないんだよ」

 

 どこからか聞こえ、徐々に鮮明になってくる声。この声には聞き覚えがある!?

記憶に間違いがなければ――

 気がつけば自分は行動していた。会いたい遇いたい逢いたいと言葉だけが心の中にリフレインする。

 顔を見たい、話をしたい。

 頭の中はその願望で埋め尽くされていた。

 声の場所、アリーナ・ゲートまではそうかからなかった。時間に表しておよそ十数秒。これぞ愛の成す力なのか、と少女は思った。実際はただ近かっただけなのだが少女の純粋さに免じてあまり追求しないでおこう。

 ゲートから出てくる二つの人影、その一つは少女が良く知るものだった。

 心臓の鼓動が早くなる。手を胸にあてるとその鼓動を感じる事ができるほど強く打っている。

 頬が紅潮する。鏡で確かめなくても分かる。

 

「いち――」

「一夏、どうして分からんのだ!? 先ほどから全然進展がないではないか!?」

「……進展するわけないだろ? 擬音ばっかで理解できると思うか、普通? 『くいって感じ』とか言われてそれがどんな意味なのか分かるのか?」

「……くいって感じだ」

「いやだから全然わからないんだって――ってどこ行ってるんだよ、待てよ箒!?」

 

「……」

 

 言葉が続かなかった。

 声の数からして一人ではないと予想してはいたがこれはどういうことだ?

 アレは誰だどうして彼と一緒に歩いているどうして名前で呼び合っているどうしてあんなに親しそうなのだどうしてどうして……

 疑問だけが頭の中でぐるぐると回る。

 先ほどまで高鳴っていた鼓動はすでに通常時に戻っていた。上がっていた体温も下がり、外気がまるで自分に付きまとう不快なものように感じられる。いや、馬鹿なことを考えていた自分を窘めてくれるのならば評価を改めなくては。

 奥で渦巻く感情は「怒り」。そしてそれに付随するいくつかの冷たいナニカ。

 ああ、馬鹿らしい。なぜ今まで私はあんなに興奮していたのだ。

 少女は彼らに背中を向け静かに歩き出した。

 他の誰か、案内できる人を探さないと。

(ん?)

 その他の生徒らしき人物はすぐに見つかった。その人物はIS学園の制服を纏っており、一人で建物に向けて歩いている。

 

「ちょっとそこのあなた!!」

 

 先ほどの機嫌を隠すことなく感情丸出しの言葉を投げかける。

一瞬「拙い」と思ったがもう口にだしてしまったこと、いまさら後悔しても仕方がない。

 その人物は声を聞いたためか、足を止めた。そして振り返る。

 

「……」

 

 髪は所々茶が混じった黒。綺麗な黒色に輝く眼が少女を捕らえる。

男だった。

 自分が好意を抱いている少年に良く似ている、一瞬そんなイメージがよぎったが、それはすぐにくしゃくしゃに丸めてゴミ箱へ投げ入れた。

違う、根本的に何かが違う。雰囲気は似ている、ただそれだけだ。

 

「何か用かい?」

 

 男は先の自分の発言に機嫌を悪くする様子も無く返事をする。

 だが少女の不安は消えない。普段から直感に頼って行動するからだろうか、少女は男の瞳の仲に形容し難い恐怖を覚えた。

 この恐怖は一度感じた事がある。そう、何時か訪れた基地で見た、ISによって地位を奪われた男性兵達の――本当の戦場を潜り抜けてきた――目に晒された時に。

 

「あ、あのっ。そ、総合受付ってどこか分かりますか?」

 

 つい敬語で話してしまう。声色から判断して自分がとてつもなく焦り、緊張しているのが分かる。

 杞憂だというのに、ありはしないとわかってはいるのに、最悪な事態を想定してしまう。

 

「ああ、それならすぐそこだよ。ほら、あそこの入り口を抜けた先が総合受付だ」

「あ、ありがとうどざいます」

「いえ、どういたしまして」

 

 離れなければ、この考えだけが少女の頭を支配する。つい先ほどまで抱いていた感情など吹き飛んだ。

 ただ、歩を進める。その後姿を原因となった男は薄い笑顔を浮かべながらじっと眺めていた。

 

 

                   *

 

「というわけで、織斑君のクラス代表就任を祝いましてー、乾杯」

「「「乾杯」」」

 

 グラスとグラスが叩かれる心地良い軽快な音が響き渡る。

周りはわいわいと楽しそうに騒いでいるが対して一夏はとても疲れた様子で苦笑いを浮かべていた。

 今は夕食後の自由時間。普段であれば部屋でごろごろと時間を潰しているような時間帯だ。そして本来ならばこんな展開では一緒に楽しむべきであるが如何せんそんな気にはなれなかった。

 一夏は視線を近くの壁へと向ける。そこにはでかでかと『織斑一夏クラス代表就任祝賀パーティー』と書かれた紙が貼られていた。

――俺はなりたくてなった訳じゃねぇっ!!

 叫んだところで状況が変わるわけではない。仕方がない事なのは分かっている。けど……納得したくない。

 因みにこのパーティーへの出席率はほぼ100%。一組のメンバーは思い思いの飲み物(アルコールではない、決して)をもって談笑に勤しんでいた。

 

「いやーこれで代表戦が盛り上がること間違い無しだね」

「羨ましいわ。イケメン二人と同じクラスだなんて」

「……同感」

「ふふふ、ほらほら。その件の二人の写真だけど、いる? 今ならお安くしとくよ」

「「買った」」

 

 ……おいこら、人を使って商売するとは何事だ。肖像権の侵害だぞ? それに写真を買った二人は二組じゃなかったけか? なんでここに居るのさ?

 そう疑問に思っている一夏であったが、実を言うとこのパーティーの参加者は一クラスの定員を大きく上回っており、つまりそれは一組以外も参加しているという事を意味していることなのだが残念ながら彼は認識していなかった。

 

「人気者だな。よかったじゃないか一夏」

「箒……本当にそうだと思うか?」

「フン」

 

 隣に立っている箒は機嫌悪そうにお茶を胃に流しこむ。なんでこんなに機嫌が悪いのか、理由が知りたいとこだ。

 

「そういえば、優は?」

「アイツは神出鬼没だからな。どこにいるかなど想像つかん」

 

 高城優のスキルに『神出鬼没』が追加されました。

 

「そうか……」

 

 一夏は視線を彷徨わせる。慣れたとはいえ、彼も健全な男子であり、どうにも対応に困る場合がある。

 ここで彼がいたのならば解決策や対策などを教授してくれるはずなのだが、如何せん彼はここには居ない。

 

「はいはーい新聞部でーす。沈んでいるところちょっとすいませんねー。織斑一夏君に突撃インタビューにやって参りました!!」

 

 おおっ、と周りがどよめく。どよめいたところで所詮学園の一部活なのだが、と心の中で呟く一夏である。

 

「新聞部副部長を務めてます黛薫子と言います、以後お見知りおきを」

「あ、どうも」

 

現れた女性は名詞を渡しながら自己紹介してくる。なんとも画数の多い漢字なのだろう。本人は辛かろうに。

 

「さて、じゃあ早速インタビューに移らせてもらいます。織斑君、クラス代表に就任した感想を率直にどうぞ」

 

 どこからかボイスレコーダーを取り出し、ずいずいっと一夏に近づける。

 

「えーっと、が、がんばります」

「もうちょっとかっこいいコメント無い訳? 『私は全てを愛している』とか!!」

「すいません。自分、不器用なんで」

「前時代的な発言ね……まぁいいわ。適当に捏造しておくから」

 

 セリフを思いつかなかったのは自身の落ち度といえることだが、変な事を広められるのは勘弁してほしいところだ。声をかける前に先輩はそそくさとセシリアの控える席まで移動してしまうし、ここは願うしかなさそうだ。

 

「さて、ではオルコットさん。コメントをどうぞ」

「本来ならば、このようなことは遠慮させてもらうのですが、まあいいでしょう」

 

 口では嫌そうな事を言っているが行動まったく逆のようだ。髪は普段より煌びやかに輝いており、顔はうっすらとメイクされている。

 

「それでは、最初にどうして私が代表を辞退したのかという理由から説明させていただきますわね」

「カットで、写真だけ頂戴」

「ちょっ、最後まで――」

「適当に捏造しとくから大丈夫。高城君か織斑君に惚れたってことにしておくから」

「なっ――」

 

 セシリアの顔が一瞬で沸騰する。赤面した顔はまるで熟れた林檎の様で少し可愛かった。

 

「何を馬鹿なことを言ってるんですか? そんなことありえませんよ」

「えー? そうかなー?」

「そうですわ!! 何を根拠で馬鹿なことといっているのかしら!?」

 

 おい、こらセシリア。何故俺の言葉に反論する。

 

「オルコットさんそこ並んで、写真取るよ」

 

 何故か怒り出したセシリアを宥め、写真を撮影しようとする薫子。一夏は転換のいい機会だとある疑問をぶつける事にした。

 

「そういえば、優……高城には会ったんですか?」

「探してるんだけどねー、まるで消えたかのように見つけることが出来ないや。まぁコメントはもらってるし、写真はまた別の機会にって約束取り付けてるから問題ないのさ」

「はあ、じゃあ高城はどんなコメントを?」

「ん? えーっとね……『今はまだ石ころかもしれないが、磨き整えられ見事な宝石となった姿を見てみたい』って言ってたね。よかったねー織斑君、認められてるじゃん」

 

 優も俺と同じISに関しては初心者だった気がするのだがと一人頭を傾げる一夏であるが、彼の実力の一端をあの戦いで目の当たりにした人々にとっては現実味を帯びるものとなっている。

 

「高城君は個別で特集組むからいいとして、織斑君オルコットさん、ツーショット頂戴。握手とかしてくれるといいかも」

「あ、あの着替え――」

「ダメ。時間かかるから」

 

 セシリアの提案(懇願)は一蹴された。普段なら機嫌を悪くするセシリアだが今回はそこまででもないらしい。

 薫子に手を引かれて、強引に撮影に適した体勢にもってこさせられているが一夏との距離が近づくに比例して赤面の度合いが酷くなる。

 そして同時に一夏の手も引かれ、セシリアと重なる。

 

「――あ」

 

 どちらの口から漏れた言葉だろうか。もしかしたら外野から漏れたものかもしれない。

 一瞬この空間は静寂に支配された。

 

「さて、じゃあ撮るよ」

 

 二人と周りの意識を呼び戻したのは唯一の例外である薫子であった。空気に飲まれず自分の意思で行動できるのは勝算に値するものであろう。薫子は暖かな笑みを顔に浮かべながらカメラの操作をする。

 

「25×42÷210は?」

「へっ? えーっと……2?」

「残念でした、正解は5です」

 

 甲高い電子音と共に焚かれるフラッシュ。切られるシャッター。

 

「なっ、あなた達!?」

 

 セシリアの声が響く、いやそれは尤もな疑問だ。一組の生徒達の行動力の高さを舐めていた。

 一組生徒一同が撮影の一瞬の間を有効に活用し写真の枠内に入っていたのだ。

 

「セシリアだけにいい思いはさせない」

 

 女子達の意見はこの一言に集約されているような気がする。しかしながら、いい思いとはどういうことか、一夏はこのことを疑問に思うばかりである。

 

 

           *

 

 

「さて、ついに我々が表へ出る時がきたんだよ!!」

 

 ピシャーッと背景が稲妻の如く光音を発す中、篠ノ之束は宣言した。

 その手は大きく振り上げられておりまるで選挙活動で演説する時に政治家が取るような行動であった。

 

「我々って……実際に出るのは俺達でしょうが」

「サジ、黙りなさい」

 

 その演説を聴いていたのは二人、一人は面倒臭そうに頬杖をつき、半眼で束を見上げて、もう一人は目を瞑りながら相方を窘めている。

 

「ユリィちゃんは何時もの事だから何も言わないけどさ、サジ君はなんでそんなにノリ悪いのさ?」

「いやなんかテンションが異様に高いなーって」

「ひどいよ! 束さん悲しいよ」

 

 およよよ、と袖で顔を隠しながら崩れ落ちる束。

 

「ああ、とりあえず話進めませんか?」

「ホントに君酷いね?」

「まぁ今は重要な会議なんで」

「仕方ないか、じゃあブリーフィングを始めるよ」

 

 起き上がり服装を直す束。その後「えいっ」と懐から取り出した機器を操作すると束の後ろのモニターに光が走った。

 

『やっとか』

 

 作戦情報とは別でウィンドウが開かれる、そこには"sound only”と添えられたデフォルメした兎の画像が表示された。そして聞こえてくる声。

 

「おっ、来たね」

「来たんじゃなくて待ってた気がするんですが」

「サジ、うるさい」

 

 漏らした感想は三者三様。だがどれも不思議なことに登場を忌諱する感情は含まれていない。

 

『はぁ、まあいい。

 博士、ブリーフィングを始めてください』

「はいはーい」

 

 再び束は機器を操作する。すると画面上に幾つものウィンドウが展開された。その一つ一つはこれからの作戦に必要な情報を表しており決して余分なものは存在しない。

 

「今回は、『IS学園』を襲撃してもらうよ」

 




ここで登場、旧三話の面々。
『私は全てを愛している!!』by獣殿(dies_irae)


評価が高くなると執筆速度が高くなる今日のこのごろ。
感想もいただければ幸いです。
誤字指摘は泣いて(?)喜びます。

5以下の評価をつける方は可能ならば「どこが悪かったのか」「どういう所を直したら良いのか」というのを感想の方に記述してくださいますようお願い申し上げます。

2012/12/28 感想でご指摘があった箇所を修正
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