IS<インフィニット・ストラトス> for Answer 作:Akimiya
更新遅れて申し訳ありません。
転校生、教室に顔を出してた一夏はそんな単語を耳にした。
桜は散り、青葉が生茂るこのごろ、一般的常識に照らし合わせれば時期的には少し外れていると言える。
暦の上ではまだ四月ではあるが入学ではなく転入だ。この現象を一夏は不思議に思った。
「転校生? こんな時期にか?」
「みたいだね。なんでも代表候補生だとか」
一夏の声に反応した女子が返答する。
代表候補生、特にいぶかしむ必要は無い。IS学園の転入条件は厳しい、一般人では不可能といえる壁だ。それに国家、大企業レベルの権力も大きな要因となってくる、つまり転入できる存在は各国家の代表候補生又はどこかの大企業の専属IS搭乗者と容易に想像できてしまうのだ。
「あら、私を危ぶんでの転入かしら?」
一組所属の代表候補生のセシリアさんがそんなことを仰る。片手を腰に当て胸を張る――何時もながらのポージングだ。
「どうせこのクラスではないのだろう? 騒ぐほどではない」
いつの間にか一夏の横に来ていた箒がいつもどおりの仏頂面で呟く。表情こそないがやはり女の子、話題には敏感に反応する。
「どんな人なのかな?」
「代表候補生って言うんだから強いんじゃないのか?」
気にならないといったら嘘になる。実力は補償できるだろうが、如何せん性格に不安を覚える。国の頂点近くに立ち続けるのだ、プライドの高さは計り知れない。
「なんで私を見ますの?」
「いや、気のせいだ」
代表候補生といっても一夏はセシリアしか知らない。つまり一夏にとって評価の基準になるのは彼女なのだ。少しげんなりするのも納得がいくだろう。
「気になるのか?」
「ん? ああ、ちょっとな」
「……チッ」
なんで舌打ちをするのか理解が追いつかない一夏である。そして同時に感情の起伏が激しい箒を少し心配に思った。
「今のお前に新しい女子を気にする余裕はあるのか? 来月には代表戦もあるのだろう?」
「そうですわ! さぁ一夏さん。私と一緒に対抗戦の作戦を練りましょう!!」
セシリアは「なにせ
因みに対抗戦はリーグマッチ制。実施理由はクラス単位での交流及びクラスの団結。一応入学時点での実力指標として利用する意味もあるようであるが、基本的に代表戦に出るのは代表候補生のようなエリートばかりであり、本来ならば一夏が代表に選ばれるのは前代未聞なのだ。
そして生徒にやる気を出させるために一つ賞品が用意されている。それは学食のデザートの無料券であり期限は半年。それゆえに女子の関心は高い。ちなみに無料券が賞品だと知った優は本当に悔しそうにしていた。
「やれるだけやってみるかな」
「やれるだけでは困ります!! 一夏さんには是非勝っていただきませんと」
「男たるもの、頂点を目指さずどうする!!」
「織斑君絶対優勝してね!!」
セシリア、箒、そしてクラスメイトが矢継ぎ早に告げてくる。「任せろ」と元気良く言いたい一夏であったが、ISに初めて触れたのもここ最近で、基本運動ですら苦戦している現状では如何せんそのような余裕は無い。
「大丈夫よ織斑君、今クラスで専用機持ってるのって一組と四組だけだから」
内訳は一組が3。四組が1。どうみても一組に集まりすぎである。だがしかし、優が専用機の事を申告していなかった事、一夏に専用機が与えられることが確定していなかったことを踏まえるとなんら不思議に思うことは無い。
知っているとは思うが専用機持ちはすなわち国家代表並みの実力を持っているという事であり、つまり四組以外は初心者ないしは、代表候補だが専用機は持たない生徒がクラス代表だということだ。
「なんだ、余裕じゃん」
余裕じゃないって、と心の中で呟く一夏であったがその欝的思考は中断させられてしまった。
そう――、
「その情報古いよ」
――この一言によって。
*
「その情報古いよ」
この一言は脅威など存在しないと談じていた一組の面々にはまさに晴天の霹靂であった。
皆は声の聞こえてくる方向――教室の入り口に視線を向けた。そこにいたのはツインテールの髪の一人の少女。
「二組も専用機持ちが代表になったの。優勝するのは私よ」
そんな少女は手を組んで入り口周辺の壁にもたれ掛っていた。
凛とした声、どうしたことか一夏は聞き覚えがある懐かしい声だという印象を持った。
一夏は記憶の糸を手繰り寄せていき、そして答えを得た。
「お前……
「そうよ一夏。中国所属の代表候補生、
鈴は不敵な笑みを浮かべ、辺りを見渡した。
「みんな大したことなさそうね。これなら二組が優勝をもらったかしら?」
明らかに他人を軽視し、見下す言葉。彼女は自信満々だったのだろう。負けるはずは無いと。小鳥は知らないのだ。頂上に控え、他の想像のはるか上を行く戦女神。そして鴉を蹂躙し全てを搾取した山猫をも食らった存在がいることを。
そして彼らは近づいてくる。刻々と時計の針は進んでいく。
「ああ、どうやら俺まで雑魚扱いされているようだな」
「まったく、変わらん奴だなこいつも」
もう遅い。頂は現れた。彼らは山猫の事知らぬが、その存在の大きさは感じ取っている。山猫は本性を表している訳でもない、戦女神同じく呆れているだけだ。だがしかし、戦女神と共に立つ姿にはどこも不足を感じない。
少女は青い顔で後ろを向く。そこに聳え立つ双璧は――。
「あ……あぁ……」
――ただ静かに、少女を見下ろしていた。
「お、優じゃないか。どうしたんだ、千冬ね……織斑先生と一緒なんて」
「まぁいろいろ話があったんだよ」
場の空気を読まないというか何と言うか、一夏と優は何時もと変わらない調子で言葉を交わす。
「はぁ……高城、早く席に着け。そろそろ始業だ。
……で小娘、お前は何時まで此処に居るつもりなんだ?」
「あ……千冬……さん……?」
「織斑先生と呼べ、さっさと自分のクラスへ帰れ、邪魔だ」
「す、すいません……」
脱兎の如く勢いで走り去っていく少女。厳しい審査、鍛錬を乗り越えた代表候補生であったはずだがその威厳などどこにも見えなかった。
鈴は直感的な性格だ。漠然とではあるが理解したのかもしれない。方や数百のミサイルと対し、破壊した白騎士。世界の中枢が雇った駒を次々に撃破し、遂には宙の貴族を地に墜とした反動勢力の英雄。二人をただの戦人ということはできない。それほどまでの濃密な時を過し、その身に刻みつけてきたのだ。
本人達は隠してはいるようであるが、その片鱗を感じたのであろう。故に発生した恐怖という感情。
他の生徒はなんで鈴が顔を青くし、走り去っていったのか理解できていないようであった。
*
優は脱兎の如く駆け抜けていく少女の姿を何とも言えない表情で眺めていた。
恐れていた事は既に分かっていた。勘が良いことも分かっていた。恐らくは自分に何かを見出したのだろう。だがしかし――。
(俺、そこまで恐がられるような事したか?)
まったくもってその通り、優は鈴と呼ばれた少女に対して何もしてはいない。先日夜中に出会った時も道を教えただけである。恐がられる要素など皆無なのである。
(うーむ、謎だ)
優自身も気づいてはいない事であるが以前の日常の習慣により特に夜間などはまるで常人らしからぬ気配を出す事がある。しかしながら今回鈴はその特性故にその気配に気づいただけであり、普通ならその片鱗さえも感じない程度のものだ。
(このままだときっと彼女の自分に対しての感情や行動は先のようになるんだろうな)
人知れず評価を改めさせ、自分に対する態度を変えさせてやるとい意気ごむ優であった。
「……で」
午前中の授業が終了し、優は一夏のところへ来ていた。
午前中はそれはそれは笑いがこぼれるような時間であった。篠ノ之妹は考えに耽るあまり授業を疎かにし、山田教諭に数回注意され、織斑教諭に数度制裁を食らった。オルコットは授業中の回答に訳のわからない返答をし、篠ノ之妹同様に制裁を受ける羽目になった。その滑稽さときたら入学して久しく感じることはなかった程でかなりの衝撃であった。
「お前の所為だ!!」
「貴方の所為ですわよ!!」
そしてその二人であるが何を思ったのか自分達の醜態を一夏の所為にしていた。
「お前ら自分の行動には責任を持てよ。滑稽だ」
見ていて面白いとは思っていたが、その責任を他人に擦り付けるのはお門違いというものだ。
「なんだと!?」
「ゆ、優さん!? 滑稽とは心外ですわ、訂正を要求します!!」
「あーはいはい。言い訳は食堂で聞くよ。一夏もそれでいいだろう?」
「ああ、それでいい」
一夏の顔には大きく「助かった」と出ていたが優は気にしないことにした。
優、一夏、篠ノ之、オルコットと食堂へ移動しようとしたが、そのときにぞろぞろと他の生徒が付いて来たとか来なかったとか。
*
場所は変わって学園の食堂、俺達は券売機の前に立ち、メニューを選んでいた。
俺と優は日替わりランチ。箒はきつねうどん。セシリアは洋食ランチだ。
これは私見だが、俺はセシリアが洋食ランチ以外を食べている姿を見たことがない。他のものに手を伸ばしてみたらいいのに。
券売機から出てきた食券を調理の人に渡し、料理を受け取る。
そしてどこか空いている席を見つけようと視線を動かした時、正面から大きな声が聞こえてきた。
「待ってたわよ一夏!!」
ああ、もうわかってる。この声、この口調、そして箒とセシリアの敵意の篭った視線、優の呆れた様子を見れば考えるまでもない。
鳳鈴音。始業前に教室で宣戦布告を行ったあの少女だ。
「とりあえずどいてくれ、他の人の食券を出す邪魔になるし、通行の邪魔にもなってるぞ」
「うるさいわね。そんなこと言われなくても分かってるわよ」
そういう鈴のお盆にはラーメンが乗っていて白い湯気を上げている。
「ならお前も一緒に食おうぜ。じゃないと伸びちまうぞ」
「わかってるわよ。ていうかアンタを待ってたんでしょーが!! そのぐらい理解しなさいよ!!」
誰が理解できるか、俺は超能力者じゃないっての。
ちなみに「待ってたわよ一夏」の時点で自分を待っていたと理解できない朴念仁である。
その後俺達は鈴と一緒に適当なボックス席へ移った。
「で、久しぶりだな鈴。元気してたか?」
「言われるまでもないわよ。あ、アンタこそ、元気にしてたの?」
「おう、怪我病気なにひとつないぞ」
「たまにはしなさいよ」
「なんだよそりゃ」
なぜ俺の周りの女子はこんなに攻撃的なのか、まったく理解できない。男は常識人が多いのに。
「まぁそれはそれとして、お前何時日本に帰ってきたんだ? 一言ぐらい言ってくれればよかったのに」
「一夏、情報統制って言葉知らないの? 今や世界の重要人物なのに、個人情報なんてホイホイと晒してある訳ないじゃない。アンタに関する情報全部ブロックされてんのよ、そんな状態でどうやって連絡取れっつーのよ。それにISを動かしたなんて。ニュース見ててびっくりしたじゃないの!?」
「なんで俺動かせるだろうな。けどさ、動かせるのは俺だけじゃないぞ、優もだ」
「だれよ、優って。女だったら動かす事に不思議はないでしょ?」
「会話に割り込んで申し訳ないが、俺は男だぞ」
「え――ッ!?」
鈴は少し離れたところに居る優に視線を合わせるや否や息を呑んだ。
優は呆れながら、
「どうしてここまで俺を恐がるのか理解しがたいが……まあいいだろう。俺が優だ。よろしく」
「――アンタっ、本当に朝のと同一人物なの!?」
「あのことを言ってるのであればYesだが、どうかしたのか?」
「いや……なんでもないわ。鳳鈴音よ、よろしく」
「ああ、よろしく」
鈴の怯えた様子も最初だけで、優が一言発するとそれも消え、普通に会話するようになったようだし、良しとしよう。
「んんっ……一夏。そろそろその少女について説明してほしいのだが」
「そうですわ!! 早急に説明を要求します!!」
おーおー、二人とも目が本気でいらっしゃる。
二人はどうも俺と鈴の関係が気になるようだ。ちなみに周りの女子達も揃って頷いている。
「なにって、鈴は俺の幼馴染だぞ」
「「「「幼馴染?」」」」
「ああ」
女子達の声が重なる。皆驚いてはいるが、鈴に視線を向けると何故か表情を暗くしている。
「幼馴染……」
箒が言葉をかみ締めるように呟く。おそらく幼い頃の記憶でも探っているのだろう。
「あー、えっとだな。箒が転校していったのが小四の終わりだったろ? その次の年、つまり小五の時に鈴が転校してきたんだ。そうか……丁度入れ違いになってたんだな。
鈴、彼女が箒。前に話した事があると思うけど、小学校からの幼馴染で、昔俺が通っていた道場の娘だ」
「へぇーこの娘が……」
じろじろとまるで値踏みするかのように箒の体を見る。なぜか胸ばかり見ているが気にしない。
箒はその視線に気づいたのか何故か勝ち誇ったような表情をする。対して鈴「ぐぬぬ」。
「篠ノ之箒だ。よろしく」
「よ、よろしく」
二人の間に一瞬火花が散ったような気がしたがその勢力は箒が優勢。何故かは敢えて言わない。
さて、では昼食を食べて――
「んんっ。私の存在を忘れては困りますわ。鳳鈴音」
「「「あ、いたんだ」」」
「ひどいですわ!?」
忘れ去られたのはセシリアでしたー。
高評価をいただければ幸いです。
また、誤字指摘を含む感想も受け付けております。
一言いただければ、と思います。
5以下の評価をつける方は可能ならば「どこが悪かったのか」「どういう所を直したら良いのか」というのを感想の方に記述してくださいますようお願い申し上げます。
タイトル表記をAB-CDのように変更しましたがABの方は原作だと何巻に対応しているのかを示しています、今のところ