IS<インフィニット・ストラトス> for Answer   作:Akimiya

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00-02 初陣、そして蹂躙

 某年2月、ドイツはとある理由から手に入れたあるモノの研究を行おうとしていた。

 水底で発掘された()()()()()()。ISのものではない未知の技術を用いたそれは、世界が欲するものと言っても過言ではなかった。

 ドイツはこの未知の技術の解析のために内密に特別なチームを結成した。そのメンバーは錚々たる面子で、国内外を問わずさまざまな分野で認知されている凄腕の研究者、技術者達だった。

 ドイツは解析の成功を確信した。メンバーの面々が人格的に破綻している可能性があるのが玉に瑕だったが、能力だけは折り紙つきの天才ばかりだったのだから。

 

 

 しかしチームが着手しようとした前日、最強の称号が脆くも崩れ去るある事件が起こった。

 

 

     *

 

 

「くそっ……なんでこんな時にっ!?」

 

 クラリッサ・ハルフォーフは焦っていた。

 未知の機械腕が収容されている基地、そこが襲撃されたためだ。

 ただの襲撃ならそれでいい。襲撃者の中にISに乗っているものがいないということは既に判っている。通常兵器でISに勝てるなど露ほども思っていないからだ。

 ただ、今回は別に問題があった。

 明日はその基地で重要な研究が開始される事をクラリッサは知っていた。そのために国内最高峰の研究者が集められている事も。

 クラリッサを筆頭とする「シュバルツェア・ハーゼ」が召集されたのもそれが理由だ。

 今回の命令は二つ「召集された研究者、技術者の保護」と「機密の奪還」。

 クラリッサも史上最強の兵器(IS)に乗る者として、彼らの重要性は理解していた。

 

『大丈夫ですよお姉さま、きっと間に合います』

『護衛でISが二機も配備されているんですから、間に合わないはずがありません』

 

 不安になる彼女にオペレーターをしている部下と、隣で併走している部下が声をかけてきた。

 

『時間といっても五分もあれば我々の基地から十分行ける距離ですし、心配する必要はありませんよ』

「そうであればいいのだがな……」

『私たちが到着すればこちらのISは4機になるんです。負けるはずがありません。それに、到着する頃にはもう終わってるかもしれませんね』

『もう戦争が起こせる戦力ですね。問題ないでしょう』

「隊長が来られないのが不安要素だが、まぁよかろう。

 オペレーター、基地が見えてきた。誘導を頼む。いくぞ」

 

 時刻はもうすぐ深夜0時、ISのブースターの光だけだった光源に基地から発せられる光が加わる。

 

「……なんだと?」

『お姉さま……これは?』

『ひどい……』

 

 三者三様な言葉を漏らす。

 視線の先には地獄が広がっていた。

 

 捲れあがったアスファルト。

 天井が吹き飛んだ建物。火の海に包まれた内部。

 戦車や戦闘ヘリ、戦闘機等の兵器の残骸。

 そして……見るも無残な姿で転がっている、護衛であったはずのIS操縦者。

 

 クラリッサ達は顔を顰めながら基地に降り立った。

 

「なんということだ……」

 

 搾り出すように声を出すクラリッサ。足元には物言わぬ肉の塊。

護衛機でったモノの装甲の大半は消し飛び、搭乗者は元の形を保っていない。

 ちらりと視線を横の建物に動かす。確かこの建物の地下で解析が行われるはずだ。しかし、IS級の主砲を打ち込んでも耐える事ができるように設計されていたはずの鋼鉄の扉には大きな穴が開いていた。

 このようなことができるのはISだけだ。報告ではISは無いとのことだったが、間違っていたのだろう。

(新型か? 全く、厄介な)

 途方も無い火力で吹き飛ばされたのかとも思える壊れ方をしている壁はただ何も喋らず、強大な敵がいたことを語っていた。

 ……いや、過去形じゃない。

 

『地下より巨大な熱源反応。来ます』

「わかっている!!」

 

 ISのハイパーセンサーが地下から上がってくる熱反応を感知する。

 通常のISとは比べ物にならないほど大きな熱源。クラリッサは瞬時に考え、部下に距離をとる事を命じる。

 部下は何も言わずクラリッサの隣に降り立った。

 そうしている間にも徐々に熱源が上がってくる。

 護衛のISをいともたやすく、絶対防御などお構い無しに葬る悪魔が……現れる。

(さて、どんな機体だ。見せてみろ、私に!!)

 護衛機から情報を抜き取るのは不可能だろう。しかし、私ならば。黒ウサギ部隊ならば持ち帰る事が可能だ。

 

「オペレーター、ちゃんと記録しろよ」

『はい、お姉さま』

 

 武器を構え、何時でも発砲できる状態にする。

 そしてクラリッサは現れる機体を確認する。

 

「…………え?」

 

 現れたのはISとは似ても似つかぬモノだった。

 スタイリシュな流線型ボディ。淡紫でカラーリングされた装甲。赤く輝くカメラアイ。

 辛うじて人の形は保っているが、大きさはISと比べ物にならない。

 そしてその手に持っているものは……

(あれは……研究対象の)

 

 怪物は研究対象の機械腕が握られていた。くすんだ黒色の腕。劣化してはいるものの、分かる、分かってしまう。あれ(機械腕)それ(怪物)と同じものだと。

 そしてその赤目が私を捉える。

 

「――ヒッ」

 

 この悲鳴は部下のものだ。圧倒的な存在に睨まれ、その顔は蒼白に染まっている。

 無論、それはクラリッサにも言えることだ。彼女ほどの実力であっても、耐えるので精一杯なのだ。

 そして同時に彼女は理解した、理解してしまった。あれには敵わないと。まともに戦ったならば、蹂躙され、護衛機のような末路を辿ってしまうだろうと。

 しかし、彼女は軍人である以上、命令に従わなければならない。

 恐怖と命令に板ばさみにされながらも、軍人であるが故に……

 

「侵入者、貴様を拘束する!!」

 

 奴が手に持っているのは軍の最高機密。なんとしても奪還しなければ。

 クラリッサは飛び上がり銃撃を開始する。部下も意図を理解したのかクラリッサと反対方向に移動しながら同じく銃を撃つ。

 

 怪物の周りを一定の距離を開けて旋回し、銃弾を撒き散らす。

 その銃弾はどれも怪物に向かって進んでいく。損傷は必至だと思われた。だが――

 

「嘘でしょっ!?」

「化け物がっ……」

 

 怪物の装甲には傷一つ付いていなかった。銃弾はすべて怪物の周りの緑の粒子に阻まれ、勢いをなくし、地に落ちる。

 直後、クラリッサの背に強烈な悪寒が走った。

 

「まずいっ、退避しろ!!」

 

 本能とも言える危機察知で部下に退避を命じる。

 だが同時に怪物も動いた。

 怪物は驚異的な速度で銃を構え、放つ。 

 轟音と共に打ち出される複数の銃弾。狙われたのは部下だった。

 必死に避けようと機体を操る部下だが、相手のほうが一枚上手だった。銃弾は命中し、部下はISを解除させられ、吹き飛ばされる。

 クラリッサは吹き飛ばされ、意識の無い部下を回収する。しかし、それは致命的な隙となった。

 (しまったっ!?)

 怪物は既に銃口をこちらに向けていた。

 なんという圧倒的な力だ。恐らく奴が使ったのはマシンガンだろう。ただISの主砲並の威力の弾を放つのは圧巻ともいえる。

 悪魔の武器は火の光を浴び、クラリッサの命を奪うかのごとく、怪しく輝いている。

 詰みだ。クラリッサはそう思った。

 たった一手でISを無力化する力。

 コレを実際食らうとなると……

(まるで悪夢だ)

 たかがマシンガンでこの威力だ。じゃあそれ以上の武装だったら。

 更にこの程度の被害、確実に手加減されている。

 誇り高き軍人として、これ以上の侮辱はない、しかしその反面、部下を失わなかった事に安堵していた。

 だが安堵もつかの間、まだ怪物はこの場に居る。

 戦闘不能の部下も連れてのこの状況。まさに絶体絶命。

 状況がどうなろうともう勝ち目はない。クラリッサは歯を食いしばりながら、手にしていた銃を()()()()()()()()

 明確な降参の意。クラリッサは自身、いやシュバルツェア・ハーゼの敗北を認めた。

 これは一種の賭けだ。自身と、部下が生き残るための。

 

 怪物はこちらに銃を向けまま、動かない。

 クラリッサも同様に動かない。

 

 そうして暫しその状況が続き、驚いた事に、怪物は銃を下ろした。

 怪物はそのまま飛翔し、高度を上げたと思うと、緑の光と轟音を撒き散らしながら彼方へと消えていった。

 その後、誰も居なくなった廃墟でクラリッサは崩れ落ちた。

 

 

 余談だが、研究者を含む非戦闘員は全員無事だった。あれほどの被害を出しておきながら戦闘員と非戦闘員を区別し、()()()()()戦闘員のみを攻撃していた事に軍部は驚いた。

 

 

 また、これは情報部の報告だが、衛星を使っても怪物は捕らえられなかったそうだ。

 

 加えて、同様の襲撃事件がヨーローッパ各国で数回発生したらしい。犯人は不明、ただ各国は亡国企業の仕業ではないかという憶測をしている。

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

「さーぁ、できたよユウ君、君の専用機が!!」

 

 ファンファーレと共に大きく胸を張る束博士。俺はげんなりした様子で博士を眺めていた。

 場所は束博士の秘密のラボ。

 俺は既に仕事を終え、機体の整備と弾薬の補充をするために帰ってきていた。

 

「君の要望通りの機能を加えたつもりだよ。場合によってはネクストよりも使い勝手がいいかもね」

「世界が違う時点でISの方がいろいろと勝手がいいのは分かってますよ。ネクストは目立ちすぎる」

「あの大きさだから仕方がないよ。基本的に君がネクストに乗る事は自分の意思以外では私の依頼でしかないんだしね」

「まあ、そうなんですがね。

 しかし――」

「ん?」

「これで俺も表舞台に出る、という訳ですか」

 

 俺は視線を側にあったテレビへと向ける。

 そこには「男性初のIS操縦者」と大きく映し出されていた。名は織斑一夏。博士が興味を持つ数少ない人物。

 

「それで各国は第二を求めて血眼になっていると。そこに紛れ込むわけですね、博士?」

「そう。国のデータベースの細工は私がやっておくから、君は検査会場に紛れ込んで検査をうけるだけ。簡単でしょ?」

「まぁ、問題はありませんが……」

 

 俺は天井を見上げ、深いため息を一つついた後、

 

「仕方がない。楽しい楽しい学生生活とやらを送ってみますか」

 

 そう博士に返事をするのだった。




次回から本編開始か?
その場合、一度原作を読み直す事になると思うので更新が遅くなるかもしれません。その場合はすいません。



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