IS<インフィニット・ストラトス> for Answer   作:Akimiya

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亜式? フラジール並の紙装甲ですね、問題ありません。


01-04 亜式VS白式

「な……なんなんだ。あれは……」

 

 (織斑一夏)は感情を言葉に表す事ができなかった。

 俺は先ほどまで優とセシリアの戦いをモニター越しに見ていた。けど、その内容は見るに耐えないと感じるものだった。もうあれは決闘と呼べるものではない。

 

「圧倒的だな」

 

 千冬姉が感嘆しながら呟く。

 優のあの戦い方を認めるような発言。納得がいかなかった。

 

「どうして!? どうして優はやめなかったんだ!? あんなもの、もう戦いじゃないじゃないか!!」

「どうして? 馬鹿かお前は?」

 

 千冬姉は手元のコンソールをいじり、近くのモニターを有効化する。

 そしてそれに映し出されたもの。それは優とセシリアの試合だった。

 その映像には各人のシールドエネルギー残量を始め、様々なデータが追加、反映されており、試合を客観に判断するには有効的な素材だと思えた。

 

「織斑、オルコットのエネルギーを見ろ」

「それがどうし――」

 

 ――それがどうしたってんだ? 

 そう言おうとした。けど、言葉が出なかった。

 俺はある事に気づいた。

 画面には優がセシリアの死角に移動して何度も攻撃する姿が写っている。

 だが、どうしたことだろうか。

 セシリアのシールドエネルギーが減っていないのだ。

 絶対防御が発動しているのにも関わらずあの減少量はおかしい。

 

「やっと気づいたか?」

 

 千冬姉は「呆れた」とため息をつき、コンソールをいじる。

 すると優とセシリアの戦闘の映像が中断され、新たなウィンドウが開かれた。

 

打鉄亜式(うちがねあしき)、それがあのISの名称だ」

 

 新たに表示されたデータ。それは優の機体のものだった。

 

「これから見るに亜式は中近距離に対応した強襲機のようだ。

 なるほど、機体を軽くする事で燃費向上を図ったのか……確かに効果は出ているが、脆すぎるな……」

「どういう意味だ、千冬姉?」

「この機体は防御を全く考慮していない」

 

 表示されるのは亜式の装甲データ。

 

「装甲は源流(オリジナル)の約五割……いや、四割と言ったところか。

 白式の零落白夜一撃で消し飛ぶのは確実、第三世代以降の主砲数発で墜ちるレベルだ」

「そんなに……」

「だが、機動性は異常と言っても差し支えない。オマケにあの馬鹿でかいスラスターだ。狂気の沙汰としか思えん。

 そしてお前は気づかなかったと思うが、高城は瞬間加速(イグニッションブースト)を多用していた」

「瞬間加速って、あれのことか?」

 

 瞬間加速は千冬姉が俺に教えてくれたIS操縦技術、読んで字の如く加速の為の技術だ。

 しかし、優はあれを使っていたのか? モニターでずっと見ていたがまったく判らなかった。

 

「そうだ。まったく、あそこまで使いこなしているとは私も思っていなかった。経験としてはお前と大差ないはずなんだがな、しかし私は何もアドバイスをしていない。

 見て盗む、とはよく言ったものだ」

「じゃあ優は俺の戦いの中であれを覚えたって言うのか?」

「そうとしか言えんさ。あそこまでのことをやってのけるのだからな。全く大した者だよ、あいつは」

 

 千冬姉の言葉は即ち世界最強の言葉である。

 その言葉は世界で活躍する全てのIS乗りの中でも桁違いに重い。

 第二回モンドグロッソでは優勝を逃しているものの、実際に戦って敗北したわけではない。実力で千冬姉が負けることは無い。それはISに乗る者の共通認識であるし、第二回で優勝したIS操縦士ですらインタビューで「彼女には勝てる気がしない」と言っていたほどだ。

 その世界最強が認めたのだ。

 俺の額に冷や汗が伝う。

 

「だが、やり様は幾らでもある。

 まず奴の武装だが、軽量化している所為で威力はさほど高くない。マシンガンについては注意しろとしか言いようが無いが、ブレードについては寧ろチャンスだと思え」

「チャンス?」

「言っただろう? 奴の装甲は脆すぎると。そして近接武装も脅威ではない。

 だがな、向こうにすればお前は脅威にしかならんのさ」

「そうか、零落白夜」

零落白夜の能力はエネルギー無効化。装甲が薄く、エネルギーシールドだけが防御の頼りの亜式にとっては、確かに脅威だろう。

 そして亜式は中近距離型の武装構成。攻撃の機会は少なくはない。

 

「そうだ。だが、高城もそれは理解しているはず。警戒を怠ることはないだろう。だが、それをどうにかしなければどの道お前に勝ち目はない。

 チャンスを見逃すな。機会はそう多くはないぞ」

「ああ、わかってる。セシリアの時のようにはいかないさ」

「フッ、期待しているぞ弟よ。勝てとまでは言わん。だが、無様に負けてくれるなよ」

「おう。じゃ、行ってくる」

 

 そして俺は白式を展開し、アリーナで待つ『亜』に戦いを挑むべく、地を蹴った。

 

            *

 

 恐い……まず頭を過ぎったのはこの感情だった。

 圧倒的な機動力を持つIS、そしてその手綱を握り、完璧に操る教え子。

 今年の主席入学をまるで赤子の手を捻るかのように叩き潰した卓越した技術。

 その実力を推測するに恐らく現IS学園生徒会長と同等、もしくはそれ以上。

 ISを扱うようになってまだ一ヶ月も満たないであろうはずなのに関わらず、その動きはどこか完成されていた。

 まさかオルコットとの戦いが全力とは言わないだろう。

 先ほどの戦いを眺めて、不審な点は幾つかあった。

 まず武装。

 高城のIS『打鉄亜式』の主武装は近接ブレードとマシンガンの二つ。近接ブレードの方は銘を『哀歌』といい、片手で扱えるよう、通常打鉄に装備される近接ブレードと比べて少々小型化されている。だが、小型化されていると言っても、両手剣が片手半剣になった程度の差異であり、絶対防御が発動したとしたとしても、損傷の度合いに対して差は出ないはずなのだ。

 しかし今回の場合、オルコットが負った損傷は本来と比べてはるかに小さかった。尤も、周囲の観客共は絶対防御が発動したことすら認知できていないだろうから、その違和感にすら気づいていないのだろうが。

 認知できていなかった。いや、認知させなかったと言うべきか。

 奴はあたかも装甲に攻撃か当たっているかのように見せていた。そしてそれに見合った量のダメージを与える。

 勿論オルコットが意図してやっているわけではない。やっているのは高城だ。

 これは両者の実力の差があればこそできる技であり、高城とオルコットの間にはとんでもなく大きい差があったという事だ。

 マシンガンについてはただの銃剣付きであるという事しか分からない。

 スペックシートが手元にあれば話は別だが、ISはその全てが機密情報でありその機密を公開するかしないかは企業、国の自由であるために一教師が我侭言う訳にはいかない。

 一夏には奴の武装は脅威ではないと嘯いてしまったが、真実を伝えないと言うのも姉の優しさというものだ。

 それと、気になる事がもう一つ。オルコットとの戦いで見せた相手の死角に回る移動の際に使用した移動法……あれはまるで……

(いや……まさか……な……)

 考えるのはやめておこう。その疑問も時が解決してくれるはずだ。

 今はこれからあの怪物に挑む一夏()の心配をするとしよう。

 

 

*

 

 

 高城優VS織斑一夏の戦いはセシリア・オルコットVS高城優の直後に行われた。

 本来ならば機体修復の為に少々モラトリアムを間に挟み、完了後試合を行うのだが、今回はその時間が殆どとられなかった。

 理由は簡単。高城の機体『打鉄亜式』の装甲の損傷が皆無だったためである。

 また、同様の理由によりシールドエネルギーの消耗も少ない。

 このような状況から試合時間の繰上げが行われたのである。

 

 そして鐘が鳴り、白と亜の試合が始まった。

 一夏は開始と同時に瞬間加速(イグニッションブースト)を使用し、高城へ特攻とも取れる攻撃を仕掛けた。その完成度は高く、セシリア戦で用いたものよりも形になっていた。

 同時に零落白夜を発動。その姿はまるで流星のようで見物客を魅了した事だろう。だが、奇をてらうことなく真正面で放たれた攻撃は言うまでも無く高城に通用しなかった。

 高城は哀歌を一夏の雪片弐型の柄部分に押し当て、瞬間加速を使用。押し当てた部分を基点として一夏の死角に移動した。

 そしてすれ違いざまに一撃、背後に移動した後転回して一撃、計二発の斬撃を一夏に放つ。

 

「ガアッ!!」

 

 その鋭い斬撃に体勢の崩された一夏が対応できるわけがなく、直撃。絶対防御が発動し、多量のシールドエネルギーが削られる。

 

「おまっ、おかしいだろ!? なんでこんなに減るんだよ!?」

「喋ってると舌噛むぞ」

「おおおおっ!!」

 

 開いてしまった距離を詰めようとする一夏だが、優はマシンガンを連射してきた。

 牽制の意図があったのだろう。狙って撃つのではなくただ弾をばら撒く。

 雑だと思う人もいるかもしれないが反面、効果だけはあった。

 ばら撒くということは狙いをつけずに撃つということだ。これは当然のことだが、人の気配等から弾道を読み取ることができなくなる。

 優ならば損傷を最小限に抑えてさっさと距離を詰めてしまうという方法を選ぶのこともできるだろう。いや、優だけではない。方法は違うにしろ、慣れている者はさも当然の如く対処をすることだろう。だが一夏はISだけではなく戦闘全般に関しても初心者だ。

 この状況を打破するに有効な方法、それは基本的に戦場で十分な量の経験を積み重ねるか、戦闘に関して十分な量の知識を蓄えての上でないと思いつくことは難しい。例外は勿論あるが

今の一夏には不可能な事だろう。

 故に一夏の選択は一つに限られる。

 一夏は零落白夜を切り、物理ブレードに戻した後、その(ブレード)の腹を盾にするかのように構え、銃弾を回避しながら距離を開けた。

 

 この状況では武装が近接ブレードだけ(ブレオン機)の一夏に攻撃を行う機会は無い。

 優は哀歌を拡張領域(パススロット)に戻し、別の武装を呼び出した。

 それは――

(こいつはヤバい……!!)

 マシンガン(コブラ)だった。

セシリア戦ではこいつの銃撃が決め手だったな、と一夏は奥歯をかみ締める。

 近中距離での制圧力は素人でも恐怖を覚えるぐらいだ。

 見た感じ優には他の装備がないように思える。新たに展開した様子も無い。つまり、現在の優の武装はあれだけということ、裏を返せばこれ以上は必要ないということだ。

 優は新たに展開したコブラ(マシンガン)を水平に構える。

 警告音と共にハイパーセンサーに表示される新たな情報が短い一文で表示される――『ロックされています』――と。

 

「簡単に墜ちてくれるなよ」

 

 まるであざ笑うかのような表情を浮かべる優。その表情は深く、恐怖こそ覚えはしないが、なにか演技のような錯覚を覚えさせられる。

 因みコブラは優の元居た世界のマシンガン『03-MOTORCOBRA』を参考にして作られたものであり、知る者はこの場では存在しないが、知っているのならば誰もが「すばらしい兵器だ」と口を揃えて言う事間違い無しのレイレナードの傑作である。

 無論、ネクストに乗っていた優にとっては使い慣れた武装であり、小型化されているといっても使い勝手は原版(オリジナル)と大差ない。

 簡単に言うならば優にとってISは小型のネクストと変わりないのである。

 故にこの笑み。

 やっと戦える。蹂躙ではなく、同じ力を持つ者と。

 それは純粋な歓喜。嗜虐的な欠片など断じて混ざっていない。

 

 天才的な技能の主から放たれる銃弾。二匹のコブラが白式の装甲に食らいついた。

 

「ぐ……ああああっ!!」

 

 装甲は消し飛び、シールドエネルギーは減少する。装甲状況を確認……中破。エネルギー残量を確認……残り290。

 一撃、あと一撃分だけもてばいい。あの銃撃の嵐に耐え、奴の懐に入れさえすれば、もしかしたら――

 しかし優は弾を無駄にばら撒いている訳ではない。二挺に切り替えた後、集弾率は格段に上がっている。

 今は方向を(無理矢理)変えながら高速で移動し、どうにか蜂の巣になるのだけは回避している状況だ。このままではじり貧、長引かせれば不利になるだけだ。

 シールドエネルギーの残量が2500を下回る。

 やるしかない。ここは損傷を覚悟して一撃に賭けるしかない。

 

「負け……るかあっ!!」

 

 戦いの前、優は何を俺に言った。こんな状況を打開できるような事をいったのではないか。

そう、確か『動きは緩急をつけて軌道を予想させないこと』。

 一夏はただ我武者羅に動き回った。時には瞬間加速を利用して、時には重力に身を任せ巧みに銃撃から逃れ出る。

 しかしそれはただの時間稼ぎであり、ついにエネルギー残量が2000をきった。

 だが、一夏の努力は無駄ではなかった。逃げ回る中で差し込んだ一筋の光。

(ここだ)

 移動する中で唯一反応が遅かった箇所があった。本当に感覚の話でしかないが一夏は確かに感じ取っていた。

他に術がないのならこの可能性を信じるのも悪くは無い。

 成功した場合、待っているのは勝利。失敗すれば完全なる敗北。

 成功する確率は限りなく0に近い。相手はセシリアをまるで赤子のようにあしらった優だ。確立はさらに低くなる。

 だが――

(ここでやらなきゃどこでやるってんだ)

 千冬姉が認めた強者と戦える機会がこれから先あるかどうかはわからない。

 故に俺はこの少ない機会に技術を吸収しなければそこらの有象無象と変わらない。

 千冬姉の名に恥じない弟になるんじゃなかったのか。なら俺は、今この機会を大切にして貪欲にいくべきだろう。

 ならば。

 一夏は本日何度目になるか分からない瞬間加速を使用した。

 だが、それには明確な意思が篭っていて、先ほどとの差に疑問を覚えるものもいたことだろう。

 分からない人たちは、ただ目の前に起こった事象だけを認識する。

 

「ねえ、なんで織斑君地面に向かってるの?」

「さあ? なんでだろうね?」

「あーっ、あぶないあぶない!!」

 

 このように。

 この会話から多少は想像できるだろうが、一夏は墜ちていた。ただ、垂直に。重力に身を任せ、更には瞬間加速をも利用して。発生する加速力は重力と推進力の和であり、時間も速度上昇に力を貸している。

 毒蛇の牙が何度も襲うがどれ一つ一夏を捉えることはできない。

 一夏の目論見は当たったのだ。

 一般的な銃器は使用の際、必ずと言っていいほどリコイルが発生する。リコイルとは銃の射撃時の反動で銃が跳ね上がったり、状況によっては後退して体に食い込む現象の事だ。

 リコイル現象で銃口は上へと向く。つまり元の向きに戻そうと思ったら少なからずタイムラグが発生する。通常ならば別段気にする必要も無い些事だが、一撃一撃が重要になってくる状況では話しが変わってくる。

 優は完全に銃撃姿勢に移行している。哀歌は展開していないため、一夏の斬撃を防ぎきるのは不可能。

 

「オオオオッ!!」

 

 激突間際で方向転換。一夏は雄叫びを上げ地面すれすれを滑空する。

 優は懸命に銃撃するも一夏には届かない。

 瞬間加速だけじゃ足らない。もっと速く、もっと疾く。

 一夏は貪欲に速度を求める。

 白式は主の意思に応え、自らの体を食いちぎりながらもそれを提供する。

 シールドエネルギーはみるみる減少し、ついには1000を下回った。

 だがそれでも彼らは加速を止めない。

 

「くっ」

 

 優が焦りの表情を浮かべる。続いて銃撃の雨が途絶えた。

 弾切れ。一夏の脳裏を掠める可能性。

 一夏はこれを機に一気に急上昇。刀剣の有効距離に入る。

 そして――

 

「届けぇ!!」

 

 零落白夜を発動。雪片弐型の刀身が実体からエネルギーに変化する。

 そして一夏は雪片を上段に構え、亜式にむかって振り下ろした。




<今作でのシールドエネルギーの定義について>
ACネクスト(大きさは14mと仮定)のAPを約40000と考えまして、ISの大きさを2mと仮定します。純粋に大きさの比で計算してISのシールドエネルギーの初期値:約5000~6000ということで。




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