IS<インフィニット・ストラトス> for Answer   作:Akimiya

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改稿版。


01-05 激戦を終えて

「では、一年一組の代表は織斑一夏くんに決まりました。一繋がりってことで縁起もよさそうですね」

 

 セシリアと優と代表候補決定戦をした翌日、理解を超える出来事が発生した。

 山田先生は嬉々として声を上げ、女子生徒は大いに盛り上がり、千冬姉は後ろでやれやれと頭を抱えている、がどこか嬉しそうだ。

 この中では俺だけが周りと対照的に暗い顔をしていた。

 因みに俺はセシリア、優両名と戦い、負けた。

 本来なら優かセシリアが代表になるはずである。

 故に質問してみる事にする。

 

「先生、俺は昨日試合に負けたのですが、どうしてクラス代表になっているんですか?」

「それは――」

「それはわたくしたちが辞退したからですわ!!」

 

 山田先生に代わり、セシリアが発言した。また例の如く腰に手を当てポーズ(?)を決めているが、それに関しては放っておこう。

 そして何故に上機嫌?

 

「勝負は私の勝ちという結果で終わりましたが、それは当然のこと。イギリスの代表候補生であるこの私が相手だったのですから、今考えてみれば仕方が無いことですわ。

 それで、私も大人気なく怒ってしまったことを反省しまして、『一夏さん』にクラス代表を譲ることにしたのですわ。IS操縦技術の向上には実践が一番。それにクラス代表になれば戦いを欠かさず行うことができますから」

「じ、じゃあ優は? あいつは俺たち両方に勝っただろ!?」

「優さんはわたくしと同じ理由で代表を辞退あされましたわ」

「おい、どういうことだ、優!?」

 

 後ろを向くがそこに優の姿は無かった。

 

「高城は所用で今日は欠席だ。それに、奴に文句を言うのはお門違いというもの。

 あきらめろ、決定事項だ」

「そんな……」

 

 俺はがっくりとうな垂れる。

 決定事項。つまり今更何をやっても無駄ということだ。

 優の意見もきっちり反映されているようでは、もう為す術はない。

 

「一夏さん、つづけてもよろしいですか?」

「あ、ああ」

 

 セシリアはまだ喋り足りないようだ。いや俺が邪魔をした形になるのか。

 

「そ、それでですわね」

 

 咳払いをして、あごに手を当てるポーズに変えるセシリア。そのポーズにどのような意味があるのか俺にはわからない。

 

「私のようにISの知識を持ち、実践も経験しているようなな人間がIS操縦のノウハウについてお教えさえすれば、それはそれは驚くような成長を遂げることができるでしょう」

「ちょっと待て」

 

 机が叩かれ、教室に叩音が響く。視線を向けると箒の机が音源のようだ。

 箒は注目が集まったのを感じるとゆっくり席から立ち上がった。

 

「あいにくだが一夏にこれ以上教師役は必要ない。私が直接頼まれたのでな」

「あら、Cランクの貴女が恐れ多くもAランクのわたくしに何か御用でしょうか?」

 

 セシリア、箒間に何ともいえない剣呑な雰囲気が立ち込める。視線と視線が重なり火花を散らしているようにも感じられる二人。だが少々セシリアの方が優勢のようだ。

 

「ランクなど関係ない。頼まれたのは私だ」

 

 ランクは大まかにS,A,B,C,D,E,FとありSに近いほどISを操縦する上での適性があるとされる。因みに俺はBランク、千冬姉はSランクだ。

 

「箒ってCランクだったのか?」

「五月蝿い!! だからランクなど関係ないと――」

「座れ。馬鹿共」

 

 閃光の如く勢いでセシリア、箒の順で出席簿アタックを決める千冬姉。そしてその後凄味の聞いた低い声で二人に告げるが、その威圧感はもう素人のものではなかった。流石世界最強、貫禄が違う。

 

「ランクなどただの指針にすぎん。私に言わせればそんなものゴミと同義だ。

 たかがひよっこ風情が、殻も破れていない段階で優劣を付けようとするな」

「――っ」

 

 さすがのセシリアもこれは黙るしかないようだ。何か言いたいのだろうが世界最強の圧力がそれを許さない。

 

「代表候補生も一から勉強してもらうと前に言っただろう。十代というのは特別な期間ではあるが、だからといって和を乱すわけにはいかん。それに今は私の授業だ。自重しろ」

「……わかりましたわ」

「では確認する。クラス代表は織斑一夏、異論は無いな」

 

 俺を除くクラス全員が賛成する。まぁクラス代表という役職が俺にとって何か良い影響を与えてくれると信じるとしよう。

 

 

*

 

 

時は遡り前日。

 セシリアは自室のベッドの上に呆然と座っていた。

 圧倒的、今日彼女はその言葉の意味を身をもって知った。

 自分の常識が一切通用しない相手。

 もっとも、彼女の実力が成熟していないのは確かな事だ。それは彼女自身も認めている。

 彼女のIS『蒼い雫(ブルー・ティアーズ)』はビット兵器『ブルーティアーズ』と自機の操作ができなければその性能を充分に発揮できない。それを出来ない今の彼女では精々50%引き出せていればいいほうであるのだ。それほどこの機体には並行操作の技術が必要になる。

 それが出来ないのは自分が未熟であるという事であるし、ならばこの学園でそれを可能にすればいいだけのことだ。

 だが、セシリアは考えた。「それでも彼に勝てるのか?」と。

 何度考えても「自分が勝利する」という答えが出てこない。それどころかどれも「瞬殺」という答えが返ってくる。どれだけ自身が強くなっても彼に届くことはないのか。

 織斑一夏はまだまだ発展途上、そんなイメージがあった。しかしその心には自分が見惚れるほどの意思を持っていた。自分の父親とはまるで逆。

 もっと知りたい、もっと知りたい。彼にはそのような考えが湧き上がってくる。

 彼にとっては抱く感情は『憧れ』。

 対して高城優に抱いたのは全く逆の『恐怖』だった。

 次元が違う。勝てる気がしない。あの時抱いた感情はブリュンヒルデと対面した時と全く同じ感情だった。だが織斑千冬(ブリュンヒルデ)の時は畏怖の念こそ抱いたが純粋な恐怖は抱かなかった。

 彼を形容するに相応しい言葉が見つからない。

 しかし、恐怖の対象になるものの、どうしてなのか『知りたい』と思ってしまう。

 憧れと恐怖は全く逆の感情。だが、行き着く渇望は全くの同じもの。

 ああ、どうしてか。どうして彼らが気になるのか。分からない。答えは出ない。だが知りたい。

 そう、意識しただけでこの胸のいっぱいにするこの感情の正体を。

 

 

*

 

 

 一年一組の代表決定騒動が終わったその晩、織斑千冬は一人酒盛りに興じていた。

 場所はIS学園内の自室。広義で言えば今も仕事中であり、酒を飲むなぞご法度であるのだが、IS学園は少々特殊な教育機関のためある程度教師は自由にできるのだ。

 特に今は授業中などではない。消灯時間は当に過ぎている。

 つまり今は数少ない教員にとっての自由時間。

 千冬は本日何本目なるか分からない缶の蓋を開けた。そしてすぐにそれを飲み干し、「ふう」と深く息をついた。

 

「少し、疲れたかな」

 

 まず脳裏に浮かぶのは自分の弟の事だ。

 親に捨てられ、姉の手一つで育て上げた自慢の弟。優しく、甲斐性があり、私の事を慕ってくれる。

 少し優柔不断なところもあるが、それを踏まえて私は「良い」と思っている。

 大事な弟。だが私はその大事な弟を一度危険な体験をさせてしまった。

 そう、確か第二回モンドグロッソの時か。不覚ながらも我が弟を犯罪者の手に渡し、耐え難い恐怖の念を抱かせてしまった。

 あの時はドイツの助力があった為短時間で救出できたが、『もし情報がなかったらと』考えると今でも背筋に悪寒が走る。

 あの時私は誓ったのだ――『一夏はISと関わらせない』と。

 そしてそれに反しないよう、私は様々な手段を講じて弟からISに関するものを排除していった。そう、それは自分であっても例外ではなかった。

 だがどうしたことか、結果は全くの逆だった。

 あろうことか弟はその渦中に身を投じてしまった。

 ああ、どうして。一夏が初めてISを動かしたと聞いたとき、何よりもまずこの言葉が口から出てしまった。

 本来ならば喜ぶところだろう。だが、素直に喜べない。また、私は弟を不幸にしてしまうのか。

 モンドグロッソの際、私は試合を放棄して一夏のところへ駆けつけ、誘拐犯を始末した。だがそのとき弟は私に向けたのは恐怖だった。奴はもう覚えてはいまいが、私は覚えている。今でもあの光景を思い出すと何かこう……胸に鋭利なものが刺さるような感覚に襲われる。

 後悔しても仕方が無い。分かっている。分かっているつもりだ。だが気づけばいつも『あの時こうすれば――』『こうしてさえいなければ――』などと考えてしまっている。

 一夏の入学が決定した際、『関わらせない』から『関わっても対処できるぐらいの実力を「つけさせる』という風に方針を変えたつもりだったのだが、後悔だけは捨てられなかった。そう、あいつが来るまでは。

 一夏というイレギュラーが現れて各国は躍起になって二人目を発掘しようとした。

 そして見つかった二人目、それは奇しくも私たちと同じく日本人だった。

 高城優。

 経歴も学歴も普通。年齢が現役で入学する者と比べて1,2歳ほど上である点を除いたら何も不思議なところは無い。

 どうも発見された二人目が既に高校に入学していると知った国は『転入』ではなく『再入学』という形をとったそうだ。

 ISについては素人であるという点であるからというのが理由らしい。

 だが高城は勉学においてかなり優秀であったらしく、特例によって『ISに関する授業以外は本来の学年である二年生と共に授業を行う』という追加措置がとられた。

 奴と最初に話したのは入学式の日、決闘騒動の後だ。

 私は高城を部屋に呼び出し、個別に話をした。他愛の無い戯言だったはずだ。だが去り際、奴は私にこう言った『昨日を見るよりも明日を見たほうがいいのでは?』と。

 私は呆然とした。他愛の無い会話だったはずなのに私は奴に心の奥を見透かされていたらしい。そして、その言葉には私の苦悩を全て払いのけるような強い力があった。

 恐らく、奴は上辺だけでこの事を言っているのではない。自らも経験し、考え抜いた結果の浮かび上がった答えなのだろう。

 たかがまだ成人していないような生徒に指摘される。

 かつて最強とも呼ばれたこの私が今では一生徒に諭される、私は何をやっていたんだ?

 暫くは自問自答の時間が続いた。そしてついに答えが出た。

 

『別に後悔をしても構わない。だが、その後悔を胸に次が起こらない様に明日を生きていけ』

 

 曲解かもしれない。間違っているかもしれない。だが、私は答えを得た。

 すがすがしい気分だった。だから私は迷いを捨てた。

 ――今度こそ、我が弟の目指すものとなる為に。

 

 

 

「すこし飲みすぎたかな」

 

 気分が良い。頬が熱い。少し酔いが回ってきたようだ。

 時計はそろそろ午前一時を指そうとしている。ここは素直に睡魔に身を任すべきか。

 幸いな事に今日は当直業務はない(ないからこそ酒盛りをやっていたようだが)。

 ここは明日に備えて布団に入るとしよう。

 

 千冬は布団に入ろうと体を動かす。だが、それは慌しい足音と、

 

「織斑先生っ!!」

 

 という声で中断せざるを得なくなった。

 

「どうした山田君!?」

 

 入ってきたのは山田麻耶だった。その息は荒れており、肩を上下させながら呼吸をしている。

 千冬は瞬時に理解した。これは尋常な事ではないと。

 

「それが……それが……」

 

 すぐ言葉に出来ないほど慌てていたのだろう。口をパクパクさせて苦しそうに息をする。

 ああ、酔いなど吹き飛んでしまった。もう完璧に素面だ。

 

「落ち着いて話すんだ、山田君」

「は、はい……」

 

 深呼吸をして山田麻耶は気分を落ち着かせる。そして、喋れるようになった後、口を開く。

 

「ちゅ、中東の国家が協力して建設した基地があるのはご存知ですか?」

「ああ、確かアメリカやロシアなどの強力な国家に対応すべく中東各国が協力して建設した基地群でトライアングルとか言われているやつだな? それがどうしたんだ?」

「え、ええ。その基地が……基地が……」

「ああ、基地がどうしたんだ?」

「き、基地群三つ全てが同時期に未確認の兵器によって壊滅させられました」




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