充電期間をもらったというのにこれじゃあ世話ないですが、このまま続けますのでご了承ください。
学年別トーナメント一日前に停学が解けた俺たちは、練習しないままトーナメントを迎えることになった。
「……で、アンタはあの銀髪の制服とISスーツを切り裂いた、と」
「まぁ、俺だってわざとじゃないさ。ちょっと癪に障ったから腹立たしかったのは確かだが、高が声を上げられただけで動きを止める方が間抜けだろ」
そう言うと凰はクスリと笑った。
「そういえばアタシ、アイツに喧嘩売られたわよ」
「マジか」
「ええ。どうしてアタシに執拗に攻撃してくるのか疑問だったけど。なるほど、アタシをアンタの関係者だと思われていたってことね」
そんなことがあったのかと感想を抱く。
「悪いな。巻き込んでしまって」
「別にいいわ。イギリス女はダメージレベルC越えしていたから出られないけど、アタシは違うから」
「何それ怖い」
「アタシは近くの仲間を犠牲にして戦うのよ」
生きていたら正義的な理論を振りまく凰に納得の笑みを浮かべた。
「そういえば、二組でのアンタの評価は最悪よ。一組でも味方はいないんじゃない?」
「別に構わないさ。お前だって嫌われているし」
「アタシは女王様だからいいのよ」
………つい、凰が女王っぽく振舞う姿を想像してしまった。
「あ、ヤバい! 背が低すぎて王女と間違えられ―――」
「アンタは何を考えているのよ!!」
攻撃を避け、俺はとりあえず更衣室に入る。
入室すると同時に俺は何故か織斑に殴られそうになったので反射的に受け止める。
「いきなり何するんだよ、とでも言っておけばいいのか」
「……自分の罪を認めているのは素直にほめてやる。だけど君みたいな屑は成敗しないと気が済まないんでね!!」
試合前に選手に平然と攻撃できるこいつの精神に素直に驚きながら、飛んでくる拳を軽くさばいていると、
「止めなよ秋羅」
男装趣味が織斑を止める。
「何でだよシャルル!」
「今日からは学年別トーナメントだよ。倒すのはその時でいいんじゃないかな?」
デュノアの言葉に納得しつつ我慢する織斑。俺は笑いをこらえながら制服を脱ぐ。
(俺に勝つ、ね)
随分と過少評価をしているようだ、あの女は今からでもスティングに言って潰す許可をもらいたい。
『まぁ、リミットの解除はダメだけどね』
『いらねえよ。その必要すらない』
別にこれは過小評価でもなんでもない。実際の実力の指標に則っての評価だ。
「あ、対戦相手が決定したみたい」
俺は山田先生に直接出場することを聞いているので自分の名前を探すが、どうやら
探す必要はなかったみたいだ。
―――一年の部
Aブロック一回戦
織斑秋羅&シャルル・デュノアVSアイン・ウォーヴェン&ラウラ・ボーデヴィッヒ
「運が悪いな。まさか裸にした女とコンビを組むなんて」
笑いながらそう言う織斑に対し、俺は何も言わずその場から離れた。俺の心境を口にしたら織斑が煩いのが解っているからだ。
■■■
指定されたBピットに着くと、そこには敵意を剥き出しにしているボーデヴィッヒがいた。子供が初めて合う大人に対して警戒しているような姿にしか見えないのは、俺の感性と目が悪いだけだろう。
「まさか貴様のような奴と組むなんて思わなかったぞ」
「文句は弱い自分に言え」
「何だと!?」
いちいち突っかかってくるボーデヴィッヒ。大体、俺にしてみればあんな売れ残りのどこに価値があるのかが理解できない。
「事実だろう、貧乳」
「あんなもの、戦闘の邪魔にしかならない」
「その割には随分とかわいい声を上げていたぞ」
「………」
俺を睨んでくるが、それよりも後ろにいる男たちが妙に俺に向かって殺気を放っているのが気になった。気のせいだろうか、さっきからどうやって俺を処刑しようかという意見も飛び交っているが、
「………」
「何だ」
「いや、何でもない」
つまり彼女が奴らのマスコット的なだと理解すると、俺達の名前が呼ばれた。
「ウォーヴェン、行く前に一つだけ言っておく」
「何だ?」
「織斑秋羅には手を出すな」
そう言って先にフィールドに行った。すると後ろから手が伸びて俺の肩が掴まれる。
「おい、兄ちゃん。アンタ、隊長の胸を見たってのは本当かい?」
「…ほんの数秒―――って、何で殴ってくるんだよ!」
いきなり殴って来た男に対して抗議すると、別の男が、
「よくも我らのラウラたんのチッパイを!!」
「股の方も見た―――」
鎌を持ちだす男がいたので、俺は少し暴れることになった。
「遅いぞ貴様! 何をやっていた!」
かなり遅れたからか、ボーデヴィッヒが俺を怒鳴るが、原因は向こうだ。俺は悪くない。
「ちょっと、男同士の対話をしていたってだけだ」
「……何を言っているんだ、貴様は」
呆れるボーデヴィッヒと俺を見て笑う織斑。お前、マジで殺してやろうか。
「随分と頼りないお仲間じゃない。大丈夫?」
「心配される必要はない。お前たちなど、私一人で充分だ」
アレが男なら、あふれる男気で織斑千冬みたいに何人もの女をオトしていただろう。
カウントダウンが開始され、それが「0」になった時、織斑が叫びながら突っ込んだ。
「おおおッ!」
「ふんっ!」
ドイツ製第三世代型IS『シュヴァルツェア・レーゲン』に備わっている第三世代の特殊兵器は
「開幕直後の先制攻撃か。わかりやすいな」
「……そう? 以心伝心で何よりだよ」
「ならば次に私が何をするかは予想できているだろう?」
そう言ってレールカノンを起動させるボーデヴィッヒ。俺はそこまで聞いて欠伸をする。
『これ、ボーデヴィッヒの敗北は確定だな』
『どうして? 彼女はあんな性格だけど、強いわよ。調教したいくらいには』
…………もう嫌だ、このAI。
『織斑は曲がりなりにも天才だぞ。何かをしてくるに違いないし、AICは元々複数相手にするのは苦手だ。いずれ限界が来る』
『それにアインの支援も受けられないのも辛いわね』
『……クロ、俺が認めていない奴に支援すると思っているのか?』
『ないわね。じゃあ、漁夫の利?』
『最終的にはな。まぁ、素直に見守っておくよ』
そう言って俺は試合が終わりくらいに待つ。するとデュノアが勝負に出るのか、
『意外に早く終わるな』
『そうね』
俺はシュペーア・ゲヴェールを展開して拡散追尾モードで織斑とデュノアをロックする。そして俺は引き金を引き、ビーム弾が分裂して上から強襲しようとした織斑に当たるが、デュノアはレーゲンから発せられた電気で吹き飛ばされて回避された。
「……おいおい、マジかよ」
一度装甲が解け始め、再構成されるのを見たことある俺は動揺を隠せない。
「シャルル!!」
デュノアが吹き飛ばされたのを見て、織斑と違って俺はそれを追いかけずに近接ブレード《龍牙》を展開する。
そして攻撃する前に織斑が攻撃した。
だがそれを感じた黒い何か―――というか、偽物が織斑に対して攻撃し、吹き飛ばされた。
「………が、どうしたぁあああああ!!!」
叫びながら突っ込むので俺は織斑の足元に向けて発砲する。
「何するんだ!!」
「邪魔だ、失せろ」
「何だと!?」
というか、大体どうして織斑が切れる。姉の真似をされただけだろ。
「ここは僕がやる。お前はすっ込んでろ!」
「……姉の真似をされたから?」
「そうだ!!」
「………じゃあ、死ね」
俺はシュペーアで織斑を攻撃するが、デュノアが間に割って入り、俺に向けて発砲する。
「悪いけど、君には下がってもらう」
「シャルル……」
「……はぁ、次から次へと……」
ため息を吐いている間に瞬時加速で接近してくるデュノア。俺は《焔》を一基ぶつけ、その隙に上へと上がって織斑に対して攻撃する。
「!? 邪魔するな!!」
そう言って攻撃してくるが、後ろに迫ってくる偽物―――いや、VTシステムの攻撃を受け流して吹き飛ばす。
「さっさと終わらせる」
『コード・スピード』
途端に瞬時加速を超えるスピードでVTシステムの前に立って連続で攻撃し、蹴り飛ばして龍牙をぶん投げる。
戻ってくる龍牙を受け止め、さっき飛ばしたせいで膜が開き、俺はそこに手を伸ばして引っこ抜いた。
俺はVTシステムがこれ以上暴走しないように器を用意してやり、落ちていくそれを回収する。
『任務、完了?』
『だとしても完了していないだろ』
最近、暴れていないから、クロのフラストレーションが溜まっているようだということがわかった。
とりあえず、今にも逝きそうなボーデヴィッヒを入り口に近いピットに運び、すでに待機していたらしい医療関係者がこちらに寄ってくるので、持ってきていたらしいストレッチャーに乗せて離れると、ボーデヴィッヒが連れて行った。
「良くやった、と言いたいところだが、どうして織斑たちを攻撃した?」
いきなり現れた織斑千冬と警戒心を露わにしている山田先生。
「あの中に俺が認めることができるほどの人間がいるとは思えなかったので。それに最初に攻撃してきたのは向こうだ」
「………わかった。この件は不問とする。事情聴取も今ので終わりだ」
「随分と簡単なんですね」
「今回は向こうに聞く方がいいと判断しただけだ」
そう言って二人は離れていくので、解放された俺はとりあえず移動を開始すると、
―――ジャララ…
俺は思わずそこから飛び、銀色の剣を展開した。
「『VTシステムの撃破ご苦労、アイン・ウォーヴェン』」
「……誰だ?」
「『ゼロ。それが俺の名前だ。お前とは一度会っているがな』」
……まさかこのタイミングで接触してくるとは思わなかった。
「何の用だ? ここで仕掛けたら目立つぞ」
いくらアリーナの外とはいえ俺たちがいるのは入口からほんの少ししか離れていない地点。そんな場所でうかつに接触なんて間抜けすぎるが。
「『それなら大丈夫だ。今、俺たちは俺が作った
「……マジかよ」
「『悲観することはない。話が終わればすぐに解放してやる』」
「その保証はないだろ」
「『……まぁ、信じろって言う方が無理な話か』」
そいつは明らかに笑っていた。
「……で、何の用だ?」
「『……いくつか忠告しに来た。そのVTシステムは一部設定が加えられているからそれを解除するのに時間がかかるが、零落白夜が使える。が、お前は使うな』」
「何故だ?」
「『最悪の場合はボーデヴィッヒのようになるし、お前は特別なISを使っているだろう? 俺もどういうことかISを使えるが、自我を持つISでそれを使うと最悪コアが壊れる。一度試したことがあるが、壊れた』」
あっさりとバラすと、さっきまで声も出さなかったクロが声を上げる。
「じゃあ、アンタは私の弟か妹を殺したの?」
「『……幸い俺がプログラムに強かったから抽出して無事だったけど、弱ってからは俺が作ったコアで補ってる』」
「「………は?」」
何を言い出したんだ、この男は。作ったコア?
「それって、ISコア?」
「『俺が作ったのは実際それ以上だけどな。正確に俺が使っているのはISじゃないから』」
「………ヒント、か?」
「『ついでだよ。それともう一つ―――』」
気が付けば俺の前には仮面を着けたゼロがいて、人差し指と中指の爪が伸びて俺の喉仏に触れていた。
「『楯無が接近したのはともかく―――あれ以上は更識と布仏には関わるな。必要以上に関わったら―――殺す』」
シャドウナイツで浴びたどの殺気より鋭く、痛い。
「アイン!!」
「来るな!!」
ゼロに飛びかかろうとするクロを止める。いくらクロだとはいえ、たぶんやられる。
「『これで忠告は終わりだ。じゃあな』」
さっきまでの景色はどこ行ったのか、気が付けば俺の目の前にはさっきまで見ていた景色が広がっていた。
「……何だったんだよ」
しかも不幸なことに、俺はまた事情聴取された。
それが終わった後に戻ると……不幸の手紙があった。
■■■
―――ゼロside
「おかえりなさいませ、我が主」
俺がIS学園から帰ると、そこには仰々しく頭を垂れる三人の姿がいた。三人とも欲望ダダ漏れであり、二人は恋愛だが一人は健全でもう一人はレズ、そして最後の一人は―――もう完全に俺を利用しようとする顔だ。
「顔を上げろ、三人とも。特にM、さっきから密かに写真を見ない」
「……チッ」
「舌打ちするなよ」
とはいえ、Mの気持ちもわからなくはない。そいつはイケメンだし、気遣いもできることはすでに確認済みで、実は俺が所属する組織では織斑秋羅よりも人気が高い。……一応、裏組織なのにな。
「それで、ウォーヴェンはどうでした?」
「外れだな。確かに強いだろうが、まぁ、十中八九俺が勝つだろうよ」
自信満々にそう言える。だが、俺でもあの環境には同情する。
(まぁ、あっちとの交渉はすでに終わっているからなぁ)
一組織を統率する身としてはあれだが、それでも自分たちが悠々と闊歩できる環境は与えてあげたい。それに、あの取引が終われば、
「まぁ、お前ら各々の欲望を否定する気はないが、もう少し隠すように努力したらどうだ?」
「え?」
「は? 何言ってやがる」
「仕方ないだろう。気になるんだから」
上からスコール、オータム、そしてM。Mさんマジ素直すぎです。
「まぁ、お前らがそれでいいならいいけどさ」
俺は背にあるIS学園、そしてタブレットの中に入っている大きな屋敷の写真を見てニヤついた。
(お前たちは絶対に誰にも渡さない……手を出すなら誰であろうと殺す)
だって彼女たちをもらうのが俺の悲願だから。その悲願を達成するなら―――何人殺しても俺は傷つかない。俺という男はそういう男なのだから。