IS ~黒き鋼の復讐者~   作:reizen

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さすがに作戦会議を飛ばす勇気がなかったので予告詐欺にしました。
ギリギリ連続投稿ならず

ただ一日目の描写がなかったのは、アインの友達が少ないのと、少なくした作者が悪い―――つまり自分が悪い。


第15話 一日飛んで作戦会議

 俺は改めて、この学校内で友人と呼べる人間が少ないことを理解し、自覚した。

 

(いや、いくら何でも酷すぎるだろ)

 

 べ、別に寂しくないんだからな。勘違いするなよ。………ヤバい。吐き気がしてきた。今はボロボロで遅刻してきたボーデヴィッヒがISのコア・ネットワークについて説明していた。

 

『にしても昨日は凄かったわね。遠泳で5㎞って……』

『凄いかどうかわからない数字だな』

 

 いや、人の身体能力を考えると凄いのか? 俺の場合は改造されているからそれくらいは出しそうだが。

 

「さて、それでは各班ごとに振り分けられたISのい装備試験を行うように。専用機持ちたちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」

 

 最初から一日目に興味なかった俺は早めに寝ていたため、データ諸々はすべてクロに任せている。

 

『でもそんなにないわよ。そもそもIXAやIXISって、最初から完成系みたいなものだから弄る必要はあまりないし、あっても武器ぐらい?』

 

 そもそもIXAもここ最近生産を開始したばかりだからISよりかはあるとはいえ、そんなに数はない。だからテストを重ねて生産されるのが普通だが、白鬼や青翼は最初からその人間に合わせて作られており、俺の黒鋼もそれに当てはまる。そっちの方が早いし、技術者がISの出現で肩身狭い思いをしている人間ばかりだが優秀な人材が多いからなせる業だ。それにうちには特別なメカニックがいるからな。

 

『でもまぁ、黒鋼だけは本当の意味では完成系だよな?』

『そうね。他の機体は所々改修はされているけど。まぁ、戦闘スタイルが定まってなかったこともあるんじゃない? だから近接と遠距離の両方を扱えるのよ』

 

 納得がいく説明を聞きながら感じたくもない気配を感じた俺は視線は合わせないようにして耳だけをそちらに向ける。

 

「ちーちゃ~~~~~~~~~~~~~ん!!!」

 

 その声に危機感を感じた生徒は次々と道を開け、さも当然と言わんばかりにその女は一直線に織斑千冬の方へと移動した。

 

「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、ハグハグしよう! 愛を確かめ―――ぶへっ」

「うるさいぞ、束」

「ぐぬぬぬ……相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」

 

 というかここは関係者以外立ち入り禁止だろ。どうせセオリー無視したこいつが侵入してきたって話だろうけどな。

 妹に話しかけているそいつに一瞥すると、俺はすぐに作業に入る。後ろでは山田先生が説得していた。どうやら関係者が何を指しているのかわからないくらい知能が落ちているらしい。

 

「おい束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困っている」

「えー、めんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ、はろー。終わり」

 

 なんて適当な自己紹介。破天荒なのはいつものことか。過去に俺の晩飯を勝手に食って帰ったこともあるからな。

 

「はぁ……。もう少しまともにできんのか、お前は。そら一年、手が止まっているぞ。こいつのことは無視してテストを続けろ」

「こいつは酷いなぁ、らぶりぃ束さんと呼んでいいよ?」

「うるさい黙れ」

 

 リアルで吐き気がしたから、今後そんな呼び方で呼ぶことはないだろう。

 扱いに困った山田先生が聞いていると、

 

「むむ、ちーちゃんが優しい……。束さんは激しくじぇらしぃ。このおっぱい魔神め、たぶらかしたな~!」

 

 そう言って山田先生に飛びかかるこの女が本当に稀代な天才かというと、正直言って害悪にしか見えない。

 

『もう帰りたい』

『わかるけど我慢よアイン。我慢しないと、始まるものも始まらないわ』

 

 何が始まるかとか聞くべきなのか色々と聞いてみたいが、それよりも俺にとってこの場にいる意味がわからなくなったので先に旅館に戻ろうと思う。幸か不幸か一人部屋だった自室に。

 

(やっぱり更識みたいに休めばよかった)

 

 あれが本当に賢い選択だと言うことがかなり身に染みる。担任に蹴り飛ばされた篠ノ之束を見ているとかなり思う。

 すると篠ノ之が姉の方に近づき、こう言った。

 

「それで、頼んでおいたものは……?」

「うっふっふっ。それは既に準備済みだよ。さあ、大空をご覧あれ!」

 

 そう言うと全員が上を見る。俺も試しに上を見ると、上から何かが降ってきた。

 その何かの正面らしき壁が倒れ、その中から自動的に姿を現す。

 

「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製ISだよ!」

『そして使ったら呆気なく沈むのね。なるほど、理解したわ』

『俺も同じことを思ったさ。……なんという欠陥機だよ、これ』

 

 全スペックということは攻撃、機動、防御すべてがどのISよりも上だということだろう。明らかに堅物には似合わない代物だ。

 ゴミ女がフィッティングとパーソナライズを始める。その傍らで織斑が手伝い始めた。

 

『にしてもやっぱり近接よりか』

『どうしてそうと?』

『アレは未だに織斑と関係を気付けない堅物だぜ。しかも女とイチャつけば安易に刀を抜こうとするほどだ。そんな奴が銃や策略なんてできると思うか?』

『無理ね』

 

 まるで夫が浮気しているからという理由で殺そうとするヤンデレそのものだ。

 などと思っていると白式の話になり、織斑は白式を展開する。しばらく話していると、紅椿が飛行試験を開始した。

 

『どうだ?』

『見なくても勝てるレベルだから問題ないでしょ』

 

 いくらどれだけ力を持っていても、所詮は操縦者の腕次第ということか。自信満々な声が上から聞こえてくるが、所詮は見せかけだろうし。

 

「―――たっ、た、大変です! お、おお、織斑先生っ!」

 

 尋常じゃないほど慌てている山田先生が現れ、織斑千冬はそっちの方を向いた。

 

「どうした?」

「こ、こっ、これをっ!」

 

 差し出された端末を受け取ると厳しい表情をする。

 

「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし……」

「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働をしていた―――」

「しっ。機密事項を口にするな。生徒たちに聞こえる」

「す、すみませんっ……」

「専用機持ちは?」

「ひ、一人欠席していますが、それ以外は」

 

 更識のことを話し終えると生徒の視線に気付いて手話でやりとりし始める。

 

「そ、そ、それでは、私はほかの先生たちにも連絡してきますのでっ」

「了解した。―――全員、注目!」

 

 さっきの手話の内容は俺には理解できなかったが、会話の内容である程度理解した俺はすぐにクロを飛ばす。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ。連絡があるまで各自室内待機すること。以上だ!」

 

 そう言い伝える織斑千冬。その言葉に何人かが会話をするが、

 

「とっとと戻れ! 以後、許可無く室外に出た者は我々で身柄を拘束する! いいな!!」

「「「はっ、はいっ!」」」

 

 その言葉で全員が動き始める。

 

「専用機持ちは全員集合しろ! ウォーヴェン、織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰! それと、篠ノ之も来い」

「はい!」

 

 何故か気合いが入った返事をする篠ノ之。そんなに専用機を持てたのが嬉しいらしい。

 

(邪魔にならなければいいんだけどな)

 

 そう思いながら、俺は専用機持ちに追随した。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

「では、現状を説明する」

 

 旅館の大座敷で専用機持ちと教員が集められ、薄暗い室内に大型の空中投影型ディスプレイが浮かび、そこにいくつかの写真が映し出される。

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」

 

 随分とまぁ、笑える話で。

 

「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから二キロ先の空域を通過することがわかった。時間にして五十分後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった。教員は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦のかなめは専用機持ちたちに担当してもらう」

 

 競技用が軍用に勝てるとは思えないけど、訓練機に比べるとマシということか。ついでに鹵獲できれば最高っちゃあ最高だが、ここでそんな目立つマネはできるだけ避けるべきだろうな。

 

「それでは作戦会議を始める。意見がある者は挙手するように」

 

 するとオルコットがISの詳細データを要求した。注意事項を述べられたが、話半分で聞き飛ばす。

 スペックを見て広域殲滅型の機動型という事実を知り、どう攻めようかと考えている。

 

「このデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルもわからん。偵察は行いのですか?」

 

 ボーデヴィッヒの言葉に織斑千冬はそれを否定した。

 

「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。最高速度は時速2450㎞を超えるとある。アプローチは一回が限界だろう」

 

 ………そこでふと、黒鋼の最高速度を思い出した。

 

「じゃあ、偵察は行えるな」

 

 俺の呟きに全員が注目した。

 

「どういうことだ、ウォーヴェン」

「俺の黒鋼は単機で、どんな状況下でも長時間戦えるようにできている。言うまでもなく、シルバリオ・ゴスペルも例外じゃない」

「だがお前の機体は最高でも1500㎞程度だったはずだが?」

「黒鋼には俺が上手く扱えるようにリミッターが付いている。まぁ、スラスターの調整次第だからぶっつけ本番でやるが、今は緊急事態だから仕方ないだろう」

 

 「それにスラスターを弄る程度だからすぐに終わるさ」と続けると、織斑千冬は考え始めた。

 

「でもそれで君は戦えるのかい? その様子だと高速戦闘は慣れていないのだろう?」

「「できないから辞退します」なんてタマじゃないんだよ、俺は」

 

 というか実際昔はそれで戦っていたから慣れているんだけどな。

 

「いいだろう。ウォーヴェン、偵察を頼む」

「りょーかい」

 

 室内を出て準備を始めようとすると、その後ろから何故か凰が現れた。

 

「何だ?」

「ちょっと、言いたいことがあってね」

 

 そう言って俺の袖を引っ張り、顔を近づけて唇をナチュラルに奪う。そうか。キスって柔らかい―――って、

 

「おま、何やってんだよ!?」

 

 まさかキスされるとは思わなかった俺はあまりのことに引いてしまう。

 

「………今度こそ、ちゃんと帰ってきなさいよ」

 

 そう言ってさっきの部屋に戻って行く凰。特に怒られていないということは許可を得て出てきたのだろう。

 

『……まさか、ね』

 

 クロの呟きが妙に気になったが、俺は気にせずにすぐにスラスターの調整に入った。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 その頃、太平洋を横断して日本に接近しようとする一隻の小型な艦があり、その操縦席で一人の少女が地図と住所、そしてとある男の写真を見ていた。

 

「ふ~。ようやく日本か~」

 

 まさか両親が自分たちが生きているなんて思うまい。

 小さい頃に自分を捨てた両親の顔を思い出す少女だが、天才的な頭脳を持っていたためその心情を理解した上で再び会おうと目論んでいた。死んでいるかもしれないと思うが、その時はその時だ。それに、生きていた場合は暴れなければいけないかもしれない。

 

「まぁ、私たちじゃ問題ないか」

 

 そう言って自分の首元を優しく撫でる。そこにはある機体が下げられており、まるで意思を持っているかのように一瞬だけ光った。

 するとその艦はある異物を感知し、少女はそれを空中投影ディスプレイで表示した。

 

「…これって、確かゴスペルっていう奴よね?」

 

 ―――ああ、あの人か

 

 少女の脳裏に一人の女性が現れ、舌打ちしてあるところに繋いだ。

 すぐに出たその連絡相手は陽気な声で返事をする。

 

『どうしたんだい? まだ君が日本に着くのは先だろう?』

「ごめんなさいスティング。ちょっとある女の邪魔をしたくなっちゃったの」

 

 その言葉に連絡相手―――スティングは察してこう言った。

 

『いいよ。君の好きなように暴れておいで。ただし、察しられないようにね』

「それはわかってるわ」

 

 通信を切り、その少女は艦の高度を下げて近くの無人島に止めて簡易基地をすぐに作成した。

 そしてカタパルトに移動して胸元にあるネックレスに触れ、装甲がその少女を纏う。

 

「行くわよ、鬼姫」

 

 深紅の装甲を纏ったその少女は空を飛び、銀の福音の後を追った。

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