IS ~黒き鋼の復讐者~   作:reizen

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頭痛と下痢がヤバすぎる。
今夜は三時間だけだけど深夜のバイトがあるのに。


第17話 彼女たちのみが知る

―――アインside

 

 俺たちは全員花月荘に帰還した。

 福音はあの所属不明機の茶々入れとかがあったからか、なんとか沈黙に成功はした。篠ノ之も気絶しているだけだし、今のところは問題ないだろう。

 そして俺の処分はどういうことかナシ。普通だったら完全に命令違反扱いだが、やっぱり織斑千冬自身にも思うところはあったらしい。問題は、

 

『……マジかよ。クロすら知らないセブンズバトラーって』

『完全には、ね。アテネなら何か知ってそうだけど……』

 

 アテネとはクロのコピーで技術者の人間を統括している。常時人間の姿で顕現しているためか、スティングの恋人だと思われる人物で最初に名前が挙げられたりするが、実際はISコアだからそういうのは如何なものか。ただ、

 

『確かアイツ、最近マッド化が進んで来たよな?』

『そういえば最近、人体を造って一人の人間として動く方法を研究していたような……』

 

 別の意味で近づかない方がいい女と化している気がする。案外、まんざらではなさそうだ。

 

『話を戻すけど、一応あの機体は知っているわ』

 

 俺の意識を戻すようにクロはそう言い、俺は意識をそっちに向ける。

 

『確かあれはIXIS二号機『鬼姫』。黒鋼の後継機よ』

『後継機? そんなものあったのか?』

『ええ。コンセプトは確か『たった一人で無双するために造られた最強の機体』だったかしら』

『………』

 

 まぁ、最強を目指すことは悪くはない。雑魚とはいえ専用機持ち相手に奮迅したが、

 

『もはやチートだな』

『あなたが言えないわよ』

『いや、スティングとかがいるから言える』

 

 ―――~~♪

 

 断言したと同時に携帯電話の着メロが流れ、すぐに取る。どうやら放った一羽のスパイが情報を持ち帰ったようだ。

 

『私だ』

「で、福音の操縦者はどうだった」

『命に別状はなく、軽い打ち身がある程度だそうだ』

 

 ……結構派手な爆発をしたが、どうやら軽傷だったようだな。平然と他者を殺せるあの兎だが、殺すことはしなかったようだ。

 

(これも妹を人殺しにしないためだろうな)

 

 どれだけ大義名分があろうとも、相手を殺せば人殺しなのは変わりない。例え敵だろうとも殺したことがあるからわかることだ。……次第に慣れたけどな。

 ともかく、普通に重罪だがばれない方法でそのことを伝えた俺は、旅館の外に出て人気がないところへと移動する。本来なら外に出ることは禁止されているが、今回の場合は話が別だろう。

 

「………で、いつまでお前は追いてくる気だ」

 

 それで隠れているつもりなのだろうか、俺を追ってくる影に話しかけてやる。

 

「………それとも、やっぱり昔みたいにアレを食わさなくちゃ俺が誰だか理解できないか、()()()

「……その必要はないよ、()()()()

 

 そう言って俺の前に姿を現したのはこの事件の根本―――篠ノ之束だった。

 

「せっかく改良したのにな、この毒団子」

「あのねいっくん、それはたぶん改良したらダメだと思うんだけど……」

「ISを世に広めるために白騎士事件を起こしたアンタに言われたくないけどな」

 

 そう返すと意外そうな顔をする兎。だがそれも一瞬のことで、すぐに手を差し伸ばしてきた。

 

「一緒に帰ろう、いっくん。今ならまだやり直せるよ」

 

 何がだよ。

 そんな言葉が口まで出かかったが、必死にこらえる。

 

「それに束さんは構ってくれなければ死んじゃうんだよ」

「じゃあ死ねよ」

 

 今度はこらえずにそのまま吐きだした。

 というか大した女だ。織斑千冬お手製の毒団子を食った時も少し苦しんだだけで終わったし、一度見捨てた相手を誘ったら普通に乗ると思っている。

 

「……酷いよいっくん! 束さんとのことは遊びだったの!?」

「それ以前に男女交際に発展したことないだろうし、あの時に俺を見捨てたアンタが何言ってんだ」

 

 その言葉に目を泳がせる兎。だがすぐに逆切れした。

 

「あ、アレは仕方なかったんだよ! だってあの場所はクローン製作所だったし。それに、いっくんの髪の色が全然変わってたし!」

「あの時の髪色は全く変わってないんだが?」

 

 そう言うと次第に涙を流し始める兎。この期に及んで泣き落としできる相手だと思っているらしい。

 

「……記憶模倣術」

「本人の人格をコピーすると同時に記憶もコピーする技術だな。それがどうした」

「……あの時に同じ姿を持った人形は何体もいて、いっくんは実験体として扱われてた」

 

 淡々と語り出す兎。急なことで少し驚いたが、何故かその目は真剣だった。

 

「それを突き止めたのは、いっくんが誘拐されて二か月経っていた。だから―――」

「その施設をぶっ壊して俺を救おうとしたが、本物だと思わずに攻撃した」

「……うん」

 

 俺の言葉を肯定する兎。そして兎は再び俺に手を伸ばす。

 

「だからいっくん。戻ってきて」

 

 どこか頼み込むような感じを出す兎。だけど俺はもう、戻る気はなかった。

 

「断る」

「どうして!? 誤解はもう―――」

「そのことは良いんだよ。正直、心のどこかで「そうだろう」という気はあったんだ」

 

 ―――ただ、それが本当に信じられなかっただけで

 

 だがもう、俺は戻ることはない。

 

「俺がどれだけ裏切られようとも、お前たちの所に帰ることなんて一生ない」

 

 確かに表の世界に戻りたい。そう何度も思ったことがある。

 だけどそれはあくまで理想。そしてその理想はもう叶えられないところにある。

 

「確かにアンタにはISを造ったことは感謝している。そのおかげで千冬姉は働けたし、俺たちは両親がいないという現実を除けばそれなりに満足な暮らしができた」

 

 そのことには本当に感謝しているさ。だけど―――

 

「もう俺は元の「織斑」には戻らない。アンタの傀儡なんてまっぴらごめんだ」

「―――そう」

 

 場の空気が変わった。

 

 ――――篠ノ之束は天才科学者だ

 

 その能力故に「天災」というあだ名があり、機械だけと見られている節もあるが、俺は知っている。実際目の前の科学者の身体能力がどれだけ高く、肉弾戦という意味でもどれだけ脅威なのかも。

 

「でもそれはあくまでいっくんの希望だよね。だけど私は違う」

 

 その場で消える兎は俺の後ろに回り込み、手刀で俺の首を狙って来た。

 だがそれを阻むために回避し、一本の剣を展開する。

 

「本当はいっくんにこんなことをしたくないけど……仕方ないよね!!」

 

 そう言って再接近してくる兎に対して俺は黒い剣――黒刃(くろは)で応戦する。

 どうやら俺を気絶させるのを想定していたらしい兎の攻撃に容赦はなく、すぐに兎も黒塗りの刀を出した。

 

「篠ノ之家に伝わる宝刀の一本『陽明(はるあけ)』で相手してあげるよ、いっくん」

 

 そして俺に接近し、思いっきり振り抜く。それをなんとかもう一本の剣を出して防ぐ。

 

「……やっぱりいっくんは一本より二本の方が様になってるね」

「アンタに褒められると何故か虫唾が走る」

 

 今度は俺から接近し、陽明をもう一本の剣―――白牙で受け止め、黒刃で心臓部を突き刺そうと―――

 

 ―――下がって

 

「!?」

 

 兎から咄嗟に距離を取る。すると俺の足元に何かが浮かび上がり、見えない壁に阻まれた。

 

「な、何だこれ!? アンタ何か―――」

 

 ―――違う

 

 俺の本能がそう告げる。「それは違う」と。

 何故なら他者を陥れると兎は決まって悪魔の笑みを浮かべるが、俺が見た表情は焦る人間のそれだった。

 視界が光に包まれ、気が付けば俺は旅館の前にいた。

 

 ―――ドォンッ!!

 

 さっきまで俺がいたはずの場所が爆発し、旅館にいた従業員や生徒が姿を現したために俺は動きを封じられた。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

(……危なかった)

 

 爆発がした場所にいた束はなんとかその場から逃げることができたが、その代償というべきか左腕がダラリと垂れていた。

 

(さっきの爆発。たぶんだけど私を狙った)

 

 ISが登場して以来、束に対する世間の評価が変わっていることを束自身も重々承知している。

 だから自分を狙っても秋羅や箒を使った人質ぐらいしかしないと思っているし、こんなことをする人物なんて次第に限られている。

 

「………まさか、いっくんの後ろ盾」

「―――ご名答よ」

 

 その声を聞いた束は思わずその場から離れる。

 

「………どうして、お前が」

 

 束がこの言葉を吐き、幽霊でも見るように震えを見せるのはおそらくこの世界に二人しかいないだろう。

 どちらも殺したはずの人間であり、目の前の人間は束が初めて殺した―――はずの人間。

 

「ちょっとした技術の応用で、飛んできたミサイルと一緒に私がいた付近を爆発させたってだけよ。そんな簡単なこと、私たちならできる」

 

 微笑みながらそう返すその少女の手にはある刀が握られており、その刀は束にも見覚えがあった。

 

「あ、この場で「復讐」と称してあなたを殺すってのもありだけど……それじゃあつまらないでしょ? だからこの場は退散するわ。だってそっちの方があなたにとっては苦渋でしょ? 「格下だと思っていた奴に舐められつつ、見逃されるのは」、ね」

 

 その言葉に反応した束はすぐに目の前の少女を殺そうと陽明を振るうが、少女はその対となる刀『影刃(かげのは)』を展開して受け止め、その刀の持ち主らしく音もなく消えた。

 しばらく探してた束だが、やがて諦めて待ち合わせの場所へと向かう。

 

 ―――そしてその場所から去った少女はというと

 

「別にあなたを殺すつもりはないんだけどな」

 

 束の絶望的な表情を思い浮かべながらその少女はひっそりと笑い、自分が持つ投影型パソコンを起動させてあるリストを出す。

 そこには自分を含め六人の名前が出ており、その内三人は「IS学園所属」と書かれていた。

 

 ―――もっとも、その内の一人はすぐに所属から外されるが

 

 そのことを知っている少女は本来の目的を思い出しながらも、自分の後ろにいる気配に話しかける。

 

「そろそろ出てきたらどう? ここには私以外の誰もいないわよ」

 

 そう言われ、大人しく出てきた女―――凰鈴音は驚いたような顔をした。

 

「……いつからわかってたの?」

「あなたがメス豚一号と彼の会話を聞いていた時から。一回はバレないように戻してあげたのにまた来るなんて驚きよ」

「め、メス豚……?」

「うん。彼のね。一応あなたもその「メス豚」として名前を連ねているわよ」

 

 そう言われて一夏が好きな鈴音は複雑に思う。

 

「まぁ、後は五反田蘭をどうしようか迷っているんだけどね」

「はぁ?!」

 

 意外……でもないが、それでもこの場で出てくる名前だとは思わなかった鈴音は驚いた。

 

「だって彼女は兄よりかは勉学とかでは優れているし、彼のことを好いているからすぐに従順になるかなぁって。でも彼は五反田蘭がこっちの世界に入ることは嫌がるしさぁ」

「……まぁ、一夏なら嫌がるわね」

 

 少女の言葉に同意する鈴音。彼女は同時に相手を探ろうとするが、

 

(……隙が無いどころじゃないわ)

 

 明らかに自分との格差があることを察した鈴音。それを感じたその少女は、

 

「帰らないの?」

「え?」

「さすがにもうそろそろ帰った方がいいと思ってさ。私というあの時の敵と会話して下手に監視が付いて身動きが封じられるより、自由でいたいでしょ」

「……じゃあ、あなたは―――」

「うん。あの紅い機体の操縦者」

 

 真実を告げる少女。その少女から何かを感じ取った鈴音は逃げるようにその場から去った。

 

「やっぱりああいう幼児体型は良いわね。私のおもちゃとしても」

 

 その言葉が聞こえてはいなかった鈴音。だがその体は震えていた。

 

 そして翌朝、近くにいたその少女は自分が思っている彼が福音に乗って意識を失っていた女性にキスされているのを見て、とあるリストにその女性の名前を入れたが、それはまた別の話。




これで三巻内容は終了で、今度は四巻の時間軸でオリジナルをと思っています。
結局あのタイトルはなんだったのか……ただ単に使いどころがなかったのでこれを登校したのち、あの詐欺予告は削除しよう。
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