IS ~黒き鋼の復讐者~   作:reizen

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第22話 スクールバトルフェスティバル

『それはたぶん、アインを警戒しているんじゃないか?』

『警戒?』

『ああ。俺、楯無の尻を触ったりしたし』

『…………おい』

『まぁ、それは置いといて。俺が合流する前に裏じゃ「アイン・ウォーヴェンは消えた織斑一夏」という噂が流れていたから、それを聞いた更識が接触を避けようとしているんだよ。下手に刺激して暴れられても困るから』

 

 というゼロからアドバイスを受けた俺は、今日から始まった学園祭の「ご奉仕喫茶」に駆り出されていた。

 

「サボりたい」

「ダメだよウォーヴェン君。さすがに休憩無しってことはないけど、ウォーヴェン君にも働いてもらわないと……」

 

 このクラスで半ば強制的に裏クラス代表になっている鷹月…静寐がそう言ってくる。

 

「おいおい、俺は学校の嫌われ者だぜ? そんなのが大人しくまともな接客するわけがないだろ」

「あ、お持ち帰りしたい客がいたら言ってね。最近流行りの壁ドンをしてもらうから」

 

 ………はい? え? 壁ドンって何?

 意味が分からない単語が出てきたので慌てていると、鷹月がタブレットを出して映像を流す。とりあえずわかったのは、男が女が行こうとしているのを邪魔するだけだった。

 

「つまりそういうこと」

「……はぁ」

 

 無理だろ。まぁ適当にサボって仕事をするか。

 そう思ってホールに出ると、早速近くにいた奴が俺を呼んだ。

 

「店員さん。私にオレンジジュースくださーい」

「私は紅茶で」

 

 ……何でお前らがここにいる。

 平然と座るサイレスとアテネ。なんとか平静を保ったが、それでも内心心臓バクバクしている。

 

「わかりました。オレンジジュースと紅茶ですね『何でお前らがここにいるんだよ』」

『仕事終わったからよ。それに、兄さんからフォローを頼まれたのよ』

『後はコアの回収ですよ。まぁ、私たちのような特別製の存在はもういないので無駄足でしょうけど』

 

 相変わらず冷たく接するアテネ。どれだけ興味ないんだよ。まぁ、コアは特別製以外は俺も悪いけれど興味ない。ティアは知らないが、クロもその辺りは興味を持っていない。曰く「だってあんな女のしもべになっている奴って、嫌じゃない?」とのこと。

 とりあえず注文した物を持って行ってその場から離れ、材料を入れていた袋のゴミを持って短距離で移動する。

 ゴミを予め指定されたゴミ集積所に置くと、黒い鳥が飛んできた。

 

『……羅殺か』

『ご主人様から連絡ですから。亡霊が侵入しました』

『そうか』

 

 亡霊とは亡国機業のことだ。奴ら、ゼロに裏切られて殺気立っているんじゃないか? もし俺の所に来たら面倒だが全員沈めるか。

 

『で、人数は?』

『一人がIS企業の女性に化けて侵入。その他は姿を消しつつこちらに向かって来ています』

『俺が狙いかよ』

 

 IS学園って案外隠れる所多いけどさ、戦闘したらさすがに気付くだろうな。

 そう思ってため息を吐くと、羅殺から意外な提案をしてきた。

 

『人目を気にしているようでしたら、私があなたたちを隠しましょうか?』

『できるのか?』

『広範囲に察知されなければいいのでしょう? それぐらい、お安いご用です』

 

 するとまるで空間が変わったかのような錯覚が起こる。いや、そんなことはないか。

 

「何これ……気持ち悪い」

 

 クロが具現化し、すぐに倒れた。

 

「おい待て。これはどういうことだ」

「クロさん。あなたは一度寝ていてください」

 

 するとクロの頭上に粉が降り、クロは倒れてネックレスへと変わった。

 

「……どういうつもりだ」

「このフィールドはISを封じる効果があるのです。私はISとは違った種のAIなので効果はないのですが、どうやらIXIS化してもISの部分に作用するようですね。すみません。大丈夫だと楽観していた私のミスです」

 

 機械人間みたいな姿になった羅殺がそう述べる。ということは、ここは普段はゼロの防御範囲ということなんだろうか。

 

「来ましたね」

 

 すると次々と迷彩服を着た人間が現れ、俺は黒刃を展開して突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

―――秋羅side

 

「……遅い」

 

 僕は今、休憩室で休んでいる。

 というかあの馬鹿はいったい何をしてんだよ!! どうしてさっきから僕ばっかりこんな苦労をしないといけないんだ!!

 

「あの野郎。帰ってきたら絶対にぶん殴ってやる」

「誰が誰をぶん殴るんだよ」

 

 俺は反射的にそこから飛ぶと、顔に膝が当たった……なんてレベルじゃないよ、これ。

 

「痛い!?」

「いちいちうるせぇな。こっちはゴミ捨てをしてやってんだ。感謝こそすれ、殴られる非はこっちにはない」

 

 そうやって平然と僕の顔を踏み、鷹月さんに戻ってきた旨を伝えるウォーヴェン。どうせゴミ捨てもサボりやすいからとか思っている癖に。

 

「織斑君。指名入ったよ!」

 

 そう言われ僕は渋々ホールに出ると次々と指定が入った。写真撮影やら、ポッキーゲームとかを平然としてくる女たちの感性がわからない。どうしてこんな平然と好きでもない男とこんなことをできるのだろうか。僕は嫌だが、これも接客だから仕方ないと割り切ってる。

 

(やっぱり箒の方がいいよね)

 

 彼女の場合、やっぱり昔から知ってることもあるし、何より浮気することはなさそうだし―――大きな胸とメイド服のマッチングが素晴らしい。

 一瞬、メイド服を肌蹴させている箒の姿が脳裏に浮かんだ。眼福だ。

 

「―――やっほー! 織斑君!」

「………」

 

 何故か一年一組の制服を身に着け、どうしてか平然とお茶を飲んでいる生徒会長を見て僕はため息を吐く。どうしてこの女がこんなところにいるんだ。

 

「あら? お姉さんがここにいたら迷惑?」

「ええ。はっきり言って邪魔そのものなんで今すぐ失せてください」

 

 九月に入ってからというもの、この変態先輩は何かと俺に構ってくる。しかも何故か僕は姉さんと同じ部屋だ。

 

「それに俺はあの戦いの時のあなたの妹さんの言葉を許してませんが」

「……認めたくないのはわかるけど、はっきり言って事実なのよね」

「はい?」

 

 何を言っているんだ、この女は。天才なら束さんか僕しかいない。それが事実だ。

 

「まぁ、死んだけどね」

「だったら話になりませんね。所詮頭が良くても死んでいるなら証明できない」

「………」

 

 途端に沈黙する先輩。やっぱり、この世にいる天才は僕と束さんの二人だけだ。

 

「どうもー、新聞部でーす。話題の織斑執事を主題に来ましたー」

 

 まるでタイミングを測ったかのように黛さんが現れた。

 

「あ、狩る子ちゃんだ。やっほー」

「わお! たっちゃんじゃん! メイド服も似合うわねー。あ、どうせなら織斑君とのツーショットを……ごめんやっぱりいいわ」

 

 すると持っていたカメラを下げる。

 だが、次の瞬間ありえないことが起きた。

 

 ―――ドンっ!!

 

 何かが僕に当たったかと思うと、気が付けば僕は倒れていた。

 

「え? どういうこと………」

 

 近くにいた女子がそう呟く。変態先輩は驚いて僕を見ていた。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

―――アインside

 

「………なぁ、ゼロ」

「あ、やっぱりばれた?」

 

 俺がもう一度ゴミ捨てに行くと、妙な気配があったので犯人の名前を言う。するとゼロは姿を現した。

 

「あ、さっきは羅殺がごめんな。というかアレを作ったのは俺だから実質俺のせいか」

 

 どこか力なく話すゼロ。その目には赤くなっており、さっきまで泣いていたことが伺える。

 

「……羨ましいのか、あの馬鹿が」

「………ああ。羨ましいさ。いや、悔しいって言った方がいいのか?」

 

 普段は見せないレアの顔だが、それを写真に撮るとアレを消す前に俺が消える可能性があるから止めておく。

 

「本当だったらあんなクズじゃなくて俺があそこにいるはずなんだぜ。それになのにさ、気が付いたら俺がただの傍観者で、あんな奴がアイツの隣にいる。それが悔しくてさ」

 

 いちいち下らないことを考えるとは思わないし、むしろ同情できる。

 

「………お前は、どうしたいんだ」

「俺か? それはまぁ、とっくに決まってるさ。だからもう既に2/3は終わらせた」

 

 さっきまでの泣き顔はどこへやら、ゼロの目付きは普段の飄々とした態度とは違う―――本気だと言うことがわかる。

 

「後一人で外堀は埋まる。アイツはもう当主だが、それでも頼ったやり方だから攻略しやすいんだ。それに後は羅殺の仕事だからな」

 

 ゼロのもう一人の仲間―――羅殺。

 あの後わかったことだが、クロをただ眠らせただけで俺に何ら影響がなかったから、俺は簡単に信用している。だが実際は本当の意味でゼロの右腕だと知った。

 

「だからさ、アイン。もう一人の女は俺が消す」

「何を企んでいる」

「何も。ただあるとすれば―――女は子供を産んで家を守れって言いたいのさ」

 

 明らかに男女差別だが、ゼロの考え方は間違ってはいない。

 確かに女は戦わせるより家にいさせる方が安全だ。そこで家事をしている方が確かに生物的行動では正しいだろう。

 そして今回潜入したのは典型的な女尊男卑主義の奴らしく、ゼロの目は本気だ。

 

 ―――その瞳は、まるで獲物を前にした鬼そのもの

 

 ただその瞳を見ればどんな生物すらも恐怖し降伏かもしれないと思わせるほどの殺気。どうかそれがあのクズの方に嫉妬で向かないことを願うばかりだ。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

―――その頃

 

 ―――ドガシャァァアンッ!!

 

 森の奥で二機のISが激突し、その内の黒い一機を操縦するラウラ・ボーデヴィッヒは大木に激突した。

 

「……どういうつもりだ、凰鈴音」

 

 チャイナ服に身を包んだ状態でラウラに接近するのはISを纏った凰鈴音。鈴音はAICの拘束を避け、ラウラに攻撃する。

 

「………悪いわね。アンタたちをしばらく見張ってたんだけどさ―――やっぱり一夏にはアンタも必要かなって思って」

 

 衝撃砲の小エネルギーで拡散させ、AICの発動を阻止して双天牙月で斬る。そしてすぐに離脱するというヒット&アウェイを繰り返し、鈴音はシュヴァルツェア・レーゲンのエネルギーを徐々に減らしていく。

 

「いったい何の話だ!」

「アンタもわかってるでしょ? 一夏はもうあの姉弟とは別の場所にいるって。一緒にいたいなら―――こんなところなんてすぐに出るべきだって」

「それはわかっている。……だが、私は―――」

「無駄よ」

 

 ラウラが繰り出すプラズマ手刀を双天牙月を分離して受け止める。

 

「織斑秋羅が一夏に対して仕打ちもそうだけど、あの女はそれを比較して一夏を批難していたの! そんな環境に、今更戻せっていうの!?」

「―――!」

 

 鈴音の言葉に戦慄するラウラ。その隙に鈴音はラウラを倒し、メイド服の状態に戻ったラウラを俵を担ぐようにして待ち合わせの場所に連れて行く。

 そもそも二人が喧嘩をしていたのは、一夏の処遇のことだ。

 ラウラを調べていた鈴音は、ラウラが千冬の元に返そうとしているのを知って行動に出た。止めるつもりだったが、待ち合わせている相手に「どうせ持って帰る」と聞いていたから、ついでに連れてきたのだ。

 

「待たせたわね、楓」

 

 人気がない港に来た鈴音は、そこに座る楓に声をかける。

 

「うん。ちょっと待ったけど……どうしてチャイナ?」

「接客用よ」

「……その割にはちょっとエロいよね」

 

 そう言われて照れる鈴音。

 すると近くで爆発音がして、鈴音はそっちを向いた。

 

「……何が起こってるの?」

「まぁ、こっちの作戦かな。私たちがしているのって、ISが邪魔な国の建築だからコアは独占するつもりだし」

「……そんなこと、許されるの?」

「私は一夏が幸せになれればそれでいいからわからない」

 

 そう言ってほほ笑む楓。そして彼女は歩き始め、鈴音はそれについていくのだった。

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