IS ~黒き鋼の復讐者~   作:reizen

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第24話 非道の堕剣士

 ―――ただいま

 

 黒い少女は殻に籠る白い少女は声をかける。

 白い少女は反応するだけでそれ以外のリアクションは見せなかった。

 

 ―――冷たいのね

 ―――私を捨てておいて何を言ってるの

 

 白い少女はすねた口調でそう返すと、黒い少女はこう言った。

 

 ―――あの時はごめんなさい。でも、ああでもしないと彼は殺されたわ

 

 それが何を意味するかは理解できないが、白い少女はため息を吐いてこう言った。

 

 ―――でも、ようやく私は元に戻れるの?

 

 その言葉を待っていたかのように黒い少女は頷く。

 

 ―――ええ。もう、あなたには無理をさせない。だから私はあなたを取り込みに来たの

 ―――いつまでも、あなたは自分勝手

 ―――それはクリエイターに似たのよ

 

 笑いながら答える黒い少女。白い少女は興味がなくなったかのようにため息を吐く。

 

 ―――わかった。ようやく戻れるならもういい

 ―――ありがとう、もう一人の私

 

 黒い少女は白い少女そう言うと包み込むように白い少女に抱きつく。

 まるでタイミングを測ったかのように二人の少女がいる空間へと若い男の声が響き始めた

 

 ―――十の年月を経て再び会い見えた二つのコアを、かつてそうあったように今一度一つのコアへと戻れ

 

 すると白い少女が粒子と変わり、黒い少女の周りを漂い始めた。

 そして黒い少女の前に一つのドアが現れ、そこからさっきの声の主―――アインが姿を現す。

 

「……成功したようだな」

「ええ。おかげさまでね」

 

 クロはそう言い、まるで思い出にふけるように天を仰ぐ。

 

「十年、か。長いようで短かったな」

「言うなよ。俺だってそうは思っているんだから」

 

 本当に十年という歳月は長かったな。

 

「……ありがとう、一夏。私の願いを叶えてくれて」

「また一つに戻って本当の力を得たい。お前が最初に願ったことを果たすのはパートナーとしての務めだろう」

 

 ―――意思があるんだからな、お前には

 

 アイン―――一夏がそう言うとクロは顔を赤くする。

 だが一夏は気付かない振りをした。

 

「……さて、本来の力に戻ったんだけど……どうするの、マスター」

 

 クロは敢えてそう言うと一夏は笑い、

 

「俺の願いは昔から変わらないさ。例えどれだけ月日が経とうとも、俺の願いはただ一つ」

「不穏分子の排除―――そして「織斑一夏」という戦闘型の再認知」

「ああ。力を貸してくれるか?」

 

 一夏は尋ねるが、クロはそれを笑い、

 

「もちろんよ、マスター」

 

 差し出された手を掴んだ。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 もはや原型をとどめてないほど破壊しつくされた第四アリーナの更衣室を銀色の光が包む。

 

「うわっ!?」

「何だこれは?!」

 

 秋羅とオータムは咄嗟にことで腕で光を遮る。楯無も遮るが、かつて惚れていた人物が目の前にいることの方が驚いていた。

 やがて光は止み、アインが白の機体を装着した状態で現れた。

 

「何だよ……それ」

 

 秋羅はポツリとそう漏らす。その声から絶望しているのは明らかだった。

 

「何でお前が白式を装着できるんだよ!?」

 

 そう。秋羅の言うとおりそれは白式なのだが、翼を模したスラスターといい、所々黒い部分が見受けられる。

 

「なるほど。十年ぶりの融合の結果か。ティア、戻れ」

「わかりました」

 

 ティアは待機状態の指輪となり、ゼロの指に戻る。

 

「アイン、やれ」

 

 ゼロがそう言うとアインはそこから消えると同時にさっきまでティアがいた場所にクレーターを作った。

 そこにはさっきまでティアが軽く遊んでいたオータムがおり、アラクネの装甲がはじけ飛ぶ。

 

「……すごい。パワーも上がってる」

 

 アインは呟くとそこから飛んでゼロの前に立つ。すると天井から狙撃が始まり、上から深緑のラファール・リヴァイヴが下りてきた。

 

「オータム、無事ですか?」

「…スペル」

 

 亡国機業の仲間らしく、オータムの顔が喜びに満ち始めた。

 スペルと呼ばれた女はアインを見て、その後ろにいるゼロを見て顔色を変える。

 

「そんなところにいましたか、裏切者」

 

 ゼロに向かって殺気を飛ばすが、それに反応したのはゼロではなくアインだった。

 アインはそこから飛び、スペルに切りかかる。スペルはリヴァイヴの盾で攻撃を防ぎ、銃で迎撃しようとするが間に合わなかった。

 アインの拳がスペルに届き、殴り飛ばされる。

 

「スペル?! テメェッ!!」

 

 オータムは体勢をすぐさま立て直し、アインに襲い掛かるが下から現れた剣に阻まれてタイミングをずらされる。

 

「ちっ。このっ―――」

「おぉっと」

 

 ゼロが介入し、鎖でオータムが拘束された。

 

「この、裏切者が―――!!」

「ISに溺れた雌豚が」

 

 笑いながらそう言い、ゼロはオータムを壁に叩きつけた。

 

「隙あり!」

「―――!?」

 

 楯無の後ろから何かが強襲し、楯無は自機「ミステリアス・レイディ」を展開して回避する。

 

「炎……まさか、ファイアクリスタル」

「せーいかーい……けど、アンタはここでやられてもらう」

 

 炎の剣《レーヴァテイン》でミステリアス・レイディの《蒼流旋》と打ち合い、二人の女の戦いが幕を開けた。

 

 アインは白式の本格二次以降に伴い強化されたBT兵器《黒焔》でスペルを叩きのめすだけでなく、追撃としてIS用ともなった白と黒の一対の剣で切りつける。その様はさながら狂戦士のようだった。

 やがてシールドエネルギーが切れたスペルを捨て、叫ぶオータムを容赦なく殴る。

 その一撃で十分だったのかオータムの意識はそれで切れた。

 

「………あとはお前だけだな、秋羅」

 

 アインは―――いや、一夏はかつての弟にそう話しかけた。

 まさかアインの口から「秋羅」という単語が飛び出すと思っていなかった秋羅は呆然とする。

 

「あぁ、やっぱり俺のことを忘れているのか」

 

 それが当然とも取れる言葉を吐き、一夏は白式を解除して―――

 

「だったら思い出させてやるよ、これでな」

 

 持ち前の身体能力を発揮し、口の中に昔入れた毒団子の強化版を秋羅の口の中に入れた。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

―――8年前

 

 箒に毒を持った一夏を追いかける秋羅。やがて一夏を捕まえた秋羅は容赦なく殴り飛ばす。

 

「いきなり何するんだよ、秋羅」

 

 弟を睨む一夏。それに対して秋羅は睨み返しつつこう言った。

 

「おばさんに聞いたぞ! お前、箒ちゃんに毒を盛ったんだろ!」

「…ああ、そのことか」

 

 白目で泡を吹いている同い年の女を思い出しながら一夏はそういった。

 

「ふざけるなよ! 何でそんなことをしたんだよ!?」

「事情も知らない馬鹿が俺が止めることを知って罵ったからだ。動機としては充分だろ」

「だからって、毒を盛る必要がないだろ。最悪死ぬかもしれないんだぞ!?」

「その時はその時、自業自得だ」

 

 その言葉にキレた秋羅は再び一夏を殴ろうとする前に、秋羅は一夏の手によって毒団子を口に入れられた。

 

 

 

 

―――現在

 

「………い…ちがぶぉあっ」

 

 目を覚ました秋羅を迎えたのは一夏の踏み付けだった。

 今の一夏に白式はないが、強化された身体能力のおかげで一夏の体は格闘家を超えている。

 

「あぁ。もう起きたか。さすがに耐性はあったんだな」

 

 「徐々に盛っておいたかいがあった」という一夏に対し、秋羅は恐怖する。

 

「にしても、あれだけ見下しておいた割には随分と弱いな。所詮あれも去勢だったか」

「……あれ?」

 

 今の秋羅の頭は働いていない。それ故に一夏が持っていたものが何かが理解できなかった。

 

「ゼロ、頼む」

「へいへい」

 

 一夏はゼロにあるものを渡し、受け取ったゼロはそれを差し込んで再生ボタンを押した。

 するとある会話が流れ込む。

 

『ねぇ、とりあえずトイレの個室に閉じ込めて水入れてあげたけどいいの?』

『いいさ。所詮、僕や姉さんの立場を無くす不良なんてどうなっても』

 

 それを聞いた秋羅はすぐに上体を起こした。

 そこからの動きは早かったが、相手は改造超人と元から超人のコンビ。どうあがいても一般の域を出ない秋羅が勝つことなんて不可能に近い。

 言うまでもないが、一夏は予めゼロにお願いしていたのだ。それをネットにアップし、全世界に一切のぼかしなしに何万もの人間に視聴するように仕向けるのを。

 いや、それだけではない。この学園内での秋羅の地位を―――完全に地に落とすための行動も怠らなかった。

 一夏はただゴミを捨てに行ったのではない。ありとあらゆる場所にスピーカーを設置し、すべてがIS学園生だけでなく、来賓として訪れている重役たちに「織斑秋羅は守る価値もない男」と知らせるために。

 

「……止めろ……一夏」

「………」

「今すぐこの放送を止めろ!!」

 

 秋羅の悲痛な叫びも今の一夏には届かない。むしろ、今の一夏にとっては最大の喜びなのだから。

 

「所詮、神童と謳われた秋羅も情報には勝てないということか」

「………」

 

 今の秋羅は絶望に打ちひしがれているだろう。そのことが容易に想像できた一夏はその場から去ろうとする。

 

 ―――カチャリ

 

 その隙を見つけた秋羅は近くにあったガラスを持って突進した。

 

「……愚かだな」

 

 白式の二次移行後のもう一つの姿―――白式・堕天を展開した直後、秋羅の体から血が飛び出す。

 

「………え?」

 

 自分の体に白と黒の二つの刀身が見え、自分がどのような状況にあるか理解した秋羅は消滅する二つの剣の所有者を睨みつけながら倒れた。

 

「織斑君!」

 

 サイレスから離脱した楯無は秋羅の元に向かう。それを見たゼロが舌打ちするが、楯無の耳には届いていなかった。

 

「……帰還するぞ、二人とも」

「……しょうがないか」

「はいはい」

 

 一夏の言葉にゼロとサイレスは賛成し、三人はそこから消えた。

 そして入れ替わるように一羽の黒鳥がIS学園に向かって羽ばたいていった。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

―――10年前

 

 一人の少年が謎の研究所に連れて行かれたことを理解して数分が経過した。

 少年はもがくどころか何の反応を見せずに現状を整理する。

 

「………帰りたい」

 

 その少年はため息を吐き、鎖を壊す。整理するのが面倒になって衝動的になった結果だ。

 するとアラームが鳴り響く。どうやら少年が壊した鎖が鳴り響く合図になっていたようだが、少年は気にせずにそこから離れる。

 

「止まれ」

 

 なんとかなると楽観して移動していると、髪が長い少女が少年に制止を呼びかけるが、少年は興味がなかったのでそのまま進む。

 

「この天才束さんが止まれって言ってるんだから止まれ―――よ!」

 

 その少女―――束は最後の一呼吸で少年を攻撃しようとするが、その少年は回し蹴りで束を壁に叩きつけた。

 

「……えっと、確か君は…誰だっけ?」

 

 足を退けてそう言うと、少年はそこから横に飛ぶ。するとさっきまで少年がいた場所を熱線が通った。

 

「ふーん。察しはいいんだ」

「ちょっ?! 今の、当たってたら死んでたぞ?!」

「殺すつもりだったんだけど?」

 

 それから先の記憶はその少年―――いや、今の青年にはない。欠落というより、あまりの出来事に脳の処理が追いつかなかったのだ。

 

「……さて」

 

 部下に与えた任務が完了したことを聞き、その青年―――スティング・ゲイルはカメラがいくつも設置されたスタジオに入り、先に入っている人間たちと打ち合わせをすると用意された会見場へと足を踏み入れた。

 

 そしてありとあらゆる電波をジャックしたカメラに向かい、スティングは宣言する。

 

 

「―――私の名はスティング・ゲイル。私はレヴェルという島で男の権利を認められる国を作るために活動している」

 

 その演説はIS学園にも届けられ、不穏な電波をジャックした一人の女がそれを映し出すと、

 

「何故そこにいる……剣嗣」

 

 その場にいる中で千冬だけが唯一反応した。

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