IS ~黒き鋼の復讐者~   作:reizen

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第27話 ゼロ・デストラクション

 日本には大まかに分けて四つの暗部組織があった。一つはIS学園に所属している更識、そして他には風間、火野、土門。

 その中で更識は土門家と対立関係にあり、その時は時間軸でいえば終戦末期。土門は更識の跡取り娘二人を乗せた車に対して強襲し、運転手を殺して誘拐した。

 幸い更識の敷地近くだったからか更識はすぐにそれを隠蔽し、すぐに救出する手はずを整えにかかるが、

 

「ただ今戻りまし―――って、何があったんですか?」

 

 そこで重信に名案が浮かんだ。

 敢えてすべてを話す。すると事情を聞いたその少年は思惑通りの行動をした。

 そして簡単に妹のほうを救出し、今度は姉のほうを救出しに行く。

 戻ってきた機械鳥が刀奈を連れてきたのは嬉しい誤算であり、重信は止めを刺しに行ったのだ。

 理由は言うまでもないだろう。

 

 ―――怖かった

 

 自分の部下―――そして小学生にして自分すら超える戦闘能力を持つその少年の能力が恐ろしく、刀奈はともかく妹の簪まで影響を受けて裏にまで入ってきたらどうしようと本気で思ったからだ。

 それほど重信が感じる暁也という少年の影響力は凄いのだ。

 だから今の内に物理的に別れさせようと思い―――重信は土門の当主と桂木暁也を爆殺した。

 

 

 

 

「よく調べてあるな」

「ほとんどが羅殺の証言ですが」

「あの機械鳥、消えたと思っていたが暁也のところにいたのか……」

 

 今、この二人はお互いの代表ということで話し合いをしており、スティングの傍らにはアルトが立っている。

 

「とはいえ、弟はそれを聞いて納得していましたが」

「何?」

「傍から聞けば兄弟バカと思われるかもしれませんが、あの弟は篠ノ之束や織斑姉弟と違って聡明ですのでそれくらいの理解はできますよ。それでもなお、弟は手に入れようとしましたが」

 

 笑いながらスティングはそう述べる。

 つまりこういうことだ。ゼロとは桂木暁也の偽名であり、ドーンとは暁から来ている。

 そして楯無のところに来ていたファイルの犯行はすべて楯無を女として手に入ろうと企んだ者を殺したというのが動機だ。

 

「ところでアルト、女権団と暁也、どちらが勝つと思う? 小さい頃に戦ったことがある君の意見を聞いてみたいのだが」

 

 スティングは傍らに控えるアルトに話しかける。

 そう。アルトはビデオで見たのではない、暁也の強さを戦って知っているのだ。

 重信はスティングが話しかけてようやくアルトが何者か気づく。

 

「まさか、お前は……」

「お久しぶりですね、16代目楯無。土門鉄治ですよ」

 

 スティングと同じく笑いながら答えるアルトこと鉄治。だが鉄治から殺意はなく、どこか親しげだ。

 

「それでスティング、どちらが勝つかですよね?」

「ああ。君の意見を聞いてみたい」

「それは言うまでもなく桂木暁也でしょう」

 

 鉄治は迷いなくそう答える。

 だがそれは過去の経験を知り、ここで何度か戦って理解しているのだ。届かないことに。

 

「確かに彼は装着するために必要なはずのティアを置いての襲撃です。確実に不利になるでしょうけど、おそらく何人かはグロい死に方をするでしょうね」

 

 そう説明する鉄治に重信が意見する。

 

「何故そうだと言える」

「………あなたの娘に対する愛を軽く一時間を聞かせられればそう思いたくもなりますよ。IS学園の弱体化云々関係なく「ほしいから誘拐」という理由で誘拐するし、こっちは小学生に負けたんですよ。正直、あの時の彼は小学生というより鬼ですよ、鬼」

 

 愚痴を吐くように述べる鉄治を見て、重信は思わず謝ってしまう。

 

「……すまなかった」

「いえ。それにもう一つの根拠といえば禁忌のシステムですね」

「禁忌のシステム?」

 

 鉄治の言葉に疑問符を浮かべる重信。鉄治はこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――VTシステムって、知ってますよね?」

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 玲子は笑っていた。

 

(まさか堂々と侵入してくるなんて思わなかったわ。でも―――)

 

 人形となった改造人間たちに強襲され、入ってきた男はすぐに沈んだ。

 いずれ骨となって出てくるだろう。女は汚すが、男の場合は容赦なく食らう。それが自分が提案した改造人形たちであり、男を支配するために必要なことだと思っている。

 玲子はそんな人間であり、今もなおどんなに悲痛を上げて喰われているかと想像すると興奮する人間なのだ。

 

 いきなり人形たちが光り、吹き飛ばされた。

 

「え?」

「ふぅ。下らない包囲陣の次は脳無し共の大群か。モテる男はつらいな~」

 

 と冗談めかして話すゼロ。五体満足で存在していた。

 

「……あなた、何者なの?」

「巨乳から貧乳まで。二次元オンリーで幼女から人妻まで愛せる万能愛のゼロさんですが何か?」

 

 それを聞いた玲子だけでなく楯無は目を丸くする。楯無に至っては何か言おうとしたが、空気によって何かに蝕まれたので言葉に出すことができなかった。

 それに気付いたゼロは無言で歩み寄り、楯無の腕を突く。

 

「―――?!? や、止め―――」

「なるほど、この水たまりって媚薬だったのか。漏らした後かと思った」

「殺すわ―――ひゃうっ」

 

 ゼロは注射器を出し、楯無に打つ。

 すると楯無の荒い呼吸はなくなり、次第に普通になっていった。

 

「あ……ありがとう」

「そんなことよりハーレムの一員になってくれ」

「……この七年間にあなたに何があったのか気になるんだけど―――」

 

 楯無の鎖を平然と消したゼロは敵地だというのに平然と楯無にキスをした。

 

「!?!?」

 

 当然、好きな人からいきなりことだったので楯無は焦る。というよりも―――

 

「ちょっ?! いきなり何するのよ!!?」

「再開したのにキスだけっていうのは物足りないんだけど」

「知るか!! というかここは敵地なのよ! もうちょっと緊張感を持ちなさい!!」

「え? 逆に聞きたいんだけど、何で織斑秋羅っていう自称天才(笑)を守りきれなかったという下らない罪状を突きつけて逮捕しただけでなく、拷問するISを使える女が世界を支配するべきと考えているアホの相手をしないといけないのかわからない」

 

 楯無に抱き着きながら平然と毒を吐くゼロ。喋り終えた後は暗部の長の首を舐めたり甘噛みを始ので、もしゼロに尻尾があるのならちぎれんばかりに振り回しているだろう。

 だが、そんな二人を引き裂くかのように一筋のレーザーが通過した。

 

「おっと」

 

 楯無を突き飛ばし、同時に自分も後ろに飛んで回避するゼロ。そのゼロの前にISの拳が接近するがゼロは回避する。

 

「キョウ! ―――!?」

 

 突如楯無に見えない壁が接近し、本物の壁に挟まれて圧迫される。

 

「ナナ!」

「よそ見している暇、あるのかしら?」

 

 ISの脚部装甲が接近してゼロの体を捉え、壁に向かって蹴り飛ばす。

 

「アーッハハハッ! 馬鹿ねえ。自分の心配しなさいっての」

「―――その必要はないな、生憎な」

 

 蹴り飛ばしたはずの場所からレーザーが飛び出し、そのレーザーが曲がって直撃した。

 

「!? 今のは、偏向射撃(フレキシブル)。どうしてお前みたいな蛆虫がISを―――」

「逆に聞くけど、何で俺があんな中途半端な機械を扱わないといけないんだ?」

 

 そう質問すると同時に六基のビットを操ってオリジナルらしきISに向かってレーザーを撃った。

 それを華麗に回避する玲子。ゼロは相手の機体を観察しようとしたが、それよりも優先するべきことができた。

 

「―――ちょっと! 止めなさい!!」

 

 改造人形が楯無を襲っており、ゼロはすぐに切り替えて人形どもを一人残らず蹴散らした。

 それを見計らった玲子が、荷電粒子砲を展開して引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

―――過去

 

 いきなりの爆発音。

 もしあそこにナナがいれば俺はどうしていただろう。

 

 ―――守った?

 

 たぶん守った。ナナを下にして、一見すればあのおっさんがキレるレベルに見えると思う。あのときには既に少し意識していたかもしれない。

 

 そしてあの爆発の原因がおっさんだったと聞いても、怒りではなく納得だった。

 たぶん、怖かったんだと思う。というか普通に怖いだろ。自分の娘が化け物級の小学生に惚れていたら。

 

―――現在

 

 そして今、ナナはあの下らない自称天才のせいで捕まっていた。

 ナナは囮として利用され、俺はナナごと処分されようとしている。

 ということはどうすればいいかなんて、考えるより先に実行している。

 気持ち悪い奴らを蹴散らした俺は、あのブスに背中を見せナナを抱きしめた。別に諦めたからじゃない。このローブは改造済みで、帯電性に優れているし俺には結界がある。

 案の定、ビットのカメラで確認するとあのブスは驚いていたけれどすぐに接近する。どうやら仕留めるつもりらしい。

 

 ―――やられるつもりも、食らうつもりも全くないけど

 

 拳をAICで止め、チェーンナックルで殴りつける。

 

 ―――あの自称天才もそうだけど

 

 俺は普段から怒ることはない。けれど、

 

 ―――このブス女も消すか

 

 これは罰。これは罪。

 俺と言う本当の厄災に、俺という現象に、俺という本当の天災に、逆らった罰。そして罪。

 

 篠ノ之束―――彼女は天災とも呼ばれている。

 それはISを世に出して狂わせた。そして兄貴の話によれば身体能力も高いけど―――対して強くないんだろ?

 織斑千冬―――彼女は世界覇者だ。

 弟の誘拐で試合棄権、そして引退したけれど―――本当に恐れるような奴か? 何度かこっそり見たことあるけど、本当に殺気が大したことなかった。

 

 ―――まぁ所詮、雑魚だしな

 

 更識と布仏が本当の意味で特別であり、俺にとって女=強いなんて意味がわからない法則はただのゴミ。塵と化す。

 

 ―――だって俺()()()()で万能 女の下らない法則は通じるわけがないだろう。

 

 ―――所詮女は―――機械を使って初めて男以上の力を使えるのだから

 

 ―――バチッ バチバチッ

 

 手元から電気が走り出す。どうやらもう我慢は限界のようだ。

 

「ナナ。悪いけど先に戻ってくれ」

「え―――」

 

 俺は無事なナナに話しかけると驚いた声を出すが―――数瞬で首を振った。

 

「嫌よ。せっかく会えたのに、また離れ離れになるのは嫌!」

「大丈夫。ちゃんと帰るから」

「そう言って帰ってきてくれなかったじゃない!!」

 

 涙を流しながらそう訴えるナナ。その姿も可愛く思える。

 

「大丈夫。今度は帰るさ。だって俺たちはもう17だ。あと数年すればあのおっさんが絶対に誰かとくっつけさせるだろうから、それは妨害したいし」

 

 すると上から天井に穴を開けて羅殺が降りてくる。どうやらナナの迎えに来たようだ。

 ゆっくりと降りてくる羅殺を見て、俺はあることをする。

 

 ―――ディープキス

 

 深く、深く、ずっと離れてた間の分も含めて俺たちは深くキスをする。

 この後に約二名ほどせがんで来そうだけど、それは置いておこう。

 俺はナナを離し、タイミングよく羅殺がナナを回収してそのまま急ぐようにそこから消えた。

 

(さすがは相棒)

 

 俺が今からすることをよく理解している。

 俺はブスの方を向き、襲わせていた鎖を消した。

 

 ―――今の俺には、あの女をこの手で潰すことしか頭にない

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 小泉玲子が駆る紺色のIS『漆巫女』は日本が独自に開発したBT兵器第一号機だったが、イギリスがそれより早くブルー・ティアーズを披露したためお蔵入りとなった機体だったが、日本で早期に発見された適正値Aの玲子へと渡された。そのおかげか女権団の人間はますます調子付き、男たちを征服しようとしていたが、

 

 ―――今目の前の男に壊滅状態に追い込まれた挙句、翻弄されている

 

(何なのよ、こいつは!!)

 

 その玲子が翻弄され、さっきから攻撃が当たっていない。

 いや、当てさせていないのだ。何も装備していないはずのゼロが。

 

「何なのよ、あなたは!!」

 

 ゼロは飛行を止め、余裕の姿勢で相手を見る。

 

「ギャアギャアうるさいぞ、ブス」

「!? これでも私は美人で通っているのよ!!」

 

 玲子はビットを操作して全方位からゼロを狙うが、ゼロは目にも止まらぬでそこから消え、既に玲子の背後を取っていた。

 

「……つまらないな」

 

 そうポツリと漏らすゼロ。その目は明らかにそれを物語っており、その態度が玲子をますます怒らせる。

 

「つまらないが……俺の女に手を出そうとした罰だ」

 

 ―――ゴゴゴゴゴゴ……

 

《敵と認識した人間に未知のエネルギーを感知! 警告! 未知のエネルギーを感知!》

(……は?)

 

 漆巫女からの警告の意味がわからず、呆然とする玲子。だが次にすべてを理解する。

 

 徐々にゼロから感じる気配が変わっていき、さっきまで感じなかった殺気がだされ―――徐々に鋭さが増していく。

 

(何なのよ、この男は)

 

 明らかに普通の男とは違う雰囲気を醸し出すゼロに竦む玲子。むしろ漏らしていないだけ上出来と言えるだろう。

 それほどの殺気に抗おうとする玲子だが、個々であることに気付いた。

 

「……あれ?」

 

 ―――ワタシ、イツノマニミギウデヲウシナッテイルノ?

 

 気が付けば自分の右腕を失っている玲子。だが、一歩もゼロは動いていない。

 

「―――VTシステムって、知ってるか?」

 

 ゼロに問われ、VTシステムの概要を思い出す。

 過去のモンド・グロッソの戦闘方法をデータ化し、そのまま再現・実行するそのシステムは、今では完全な違法物となっているものだ。

 

 ―――だが、それが何の関係が?

 

 まるでその答えと絶望を叩きつけるようにゼロは言った。

 

「あのシステムってさ、実は原型は俺が作ったんだよね」

「………じゃあ、あなたは女をあのシステムに騙して乗せて殺したの?」

 

 玲子がそう問うとゼロは首を振る。

 

「俺が作ったのはあくまでも原型。子供が作ったのだから改良の余地があると勝手に思ってできたのはVTシステム。まぁ、責任を俺に押し付けてきたから()()()で消したけど」

「……消した?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――お前の右腕と同じように」

「!?」

 

 いよいよ玲子の顔が青くなり始め、慌てて周りを見回すが―――自分の腕が無かった。

 

「………まさか、俺がただ躱すだけで終わると思ってた? そんなわけないじゃん――――ナナをあんな目に合わせておいて」

 

 いつの間にか翼が生えている目の前の敵に対して意識を飛ばしたくなった玲子だが、防衛本能かそれを回避する。

 

 ―――今、意識を失ったら間違いなく消される

 

 そう思わせるほどの殺気がゼロから出ており、玲子は逃亡を開始した。

 

(こんなところで、死ねるわけないじゃない)

 

 恥を忍びながら玲子はそこから離脱する。

 だが―――そんなことを見逃すゼロではない。

 左足、右足、そしてスラスターを黒い波動で文字通り吹き飛ばした。

 

邪神波嵐(じゃしんばらん)っていうだけどな、この技。ある意味その名の通りだよな」

 

 ―――ガシッ

 

「やめ……止めて……」

「………俺がそれを受け入れると思う? まぁ、答えられないだろうけど」

 

 いよいよゼロは力を入れ始め、あまりの痛さに悲鳴を上げ始める。

 

「アァァァアアアアアアアッ!!!?!!!」

「バイバイ、ゴミ」

 

 ―――ドスッ

 

 さっきまでの力は何だったんだろうか。

 ゼロは玲子の胸に剣を刺し、刃が開く。

 

「もう死ぬだろうがこれだけは刻んでおけ。俺という存在がいる限り、ISや織斑千冬が最強だなんてことはありえないから」

 

 一筋の日本の大地を襲い、女権団本部は多数の死者を出すと共に消滅したのだった。

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