みんな大好きお姉さんの登場……なんだけど
エピプロ→エピローグとプロローグ
また、俺は自分の居場所を奪われるのか。
確かに前の場所は居心地は悪かった。だが今は違う。俺は俺で―――織斑一夏として存在できる。
―――そう、俺は思っていた
「ごめんね」
俺を刺し、逃げていく女。だが次の瞬間その女は光に呑み込まれて蒸発した。
その光景が、どうしても信じられなかった。俺は織斑一夏なのに、新たな力を手に入れたのに、それでも―――例え刺されたとしても、大切な
「おい、お前は―――って、血が出てんじゃねえか!? まさか、さっきの女に刺されたって言うのか!?」
次に現れた男はそう言い、呟いた言葉が衝撃的だった。
「手遅れだったってことか」
気が付けば俺はその男を殴り飛ばしており、気が付けば戦っていた。
■■■
事情聴取を終えた俺は、気が付けば寝ていたんだが、
「どう? 思い出せた?」
「………今度会ったら謝ろうと思う」
今思えば、俺はどれだけ恥ずかしい思いをしていたんだ。明らかに異常じゃねえか。
クロが呼んだ援軍だなんて知らずに、刺されてもなお好いている俺ってどうなんだよ。
「アイン、誰でも過ちはあるわよ。自分だけの空間だけだと思ってたった一人の美少女に恋をするのは当たり前よ」
「…これ以上は止めてくれ」
「なんにせよ、これでゼロに関しては誤解が解けたわね」
と、偉そうに言っているが、さっさと話してくれなかったクロにも責任があるんじゃ……。
「何か思った?」
「……俺には思想の自由すらないのか」
実際は聞く耳を持たなかった俺に非があるだろうけど。
そんなことを考えていると、ますますわからないことがある。
「…じゃあ、どうしてあの場にゼロが現れたんだ?」
「………もしかして、更識簪に気があるんじゃない?」
と、クロの発言により俺は固まってしまった。
「………まさか、そんなわけないだろ」
「……そう、よね」
という会話をしていると、ドアをノックされる。
すぐにクロが消え、俺はドアの方に移動する。それほど大きな声で話していなかったので、大丈夫だと思いたい。
「……誰だ?」
『私とは初対面よね、アイン・ウォーヴェン君。私は生徒会長の更識楯無よ。ちょっとあなたと話したいことがあるから、中に入れてもらえないかしら?』
女から男の部屋に入れろと言うのは感心しないが、少し違和感を感じたので俺は素直にドアを開ける。
今回は特例だが、普段は周りに気を張っているからある程度はどんな人間かということを認識、理解でき、入学式の時に特等席で聞いていた俺は、彼女のことをつかみどころのない面倒な女と認識していた。だが、今回は年相応の女子が不機嫌になっているという感じがするのは何故だろうか。
『…頑張れ、アイン』
今、クロが笑顔なら間違いなく顔をひきつらせているに違いない。
そう思いながらドアを開けると………
「……え~っと」
なんというか、反応しづらいんだ。それは。
「初めまして、ウォーヴェン君」
必死に何かを隠しているのがわかる。この女にいったい何があったのか詳しく聞いてみたくなった。だが、
「ところで更識、右耳にキスマークが―――」
「え?」
今気付いた更識は耳をこする。まさかファンの人間がしたのだろうか……と思ったのだが、殺気が全開になっているのを見てその説を否定する。
「ねぇ、ウォーヴェン君。あの時簪ちゃんにベッタリだったゼロって男の知り合い、でいいのかしら?」
「過去に鉢合わせたってだけで、知り合いってわけじゃない」
「……そう。それは残念ね。今日はそれだけ聞きに来ただけよ。それじゃあね」
会話中はずっと笑顔だっただが、俺に報告書を提出させるほどの殺気は、国家代表すらねじ伏せたことがある俺に自信を失わせるのに十分だった。
■■■
―――ゼロside
『という経緯で、彼女は現在二重の意味であなたを殺そうとしています』
「……簪の件はともかく、よくよく考えれば悪いことをしたもんな」
更識の女は本気で好きになった男にしか本名を明かしたり「さん」付けしないで良いことを許可しないほど、徹底して娘を守る本家の決まりがある。もちろん言うまでも俺がしたディープキスなんて以ての外……だけど、
「だけど久々に会ったから仕方がない!!」
『すばらしく自己中心的な発言ですね。しかも、そんなに彼女たちのISスーツ姿が気に入りました? 妹の方もそうですが、姉の方なんて軽く2000枚は撮ってましたよね?』
「だって俺、まさかあんなに小さかったアレがあんなに大きくなっているなんて思わなかったから」
ほら、あれだよ。久々に会った幼馴染のおっぱいがデカくて興奮してしまった俺みたい―――って、あれ?
『だからと言ってご主人様』
小型化した―――というより人型の外装を外して鳥になっている羅殺は、ロボットなのにジト目という技術を覚えており、それを何故か主人の俺に向けている。
『脱出中にいきなり抱きしめた挙句にお尻を触るのはどうかと思いますが』
「抱きしめるだけじゃ、足らなかったんだ」
楯無―――いや、ナナに久しぶりにあったから。
『ですが、向こうは男だということは理解しても、あなただとは理解していないのでは……?』
重要なことを指摘され、俺は肝心なことにようやく気付いたのだった。
■■■
―――秋羅side
僕は今日、あの所属不明機にやられたせいでダメージを負った白式の修理をしてもらうために倉持技研に訪れていた。本当なら僕がするつもりだったんだが、姉さんが「どうせなら本格的に修理してもらえ」とうるさいのだ。
「・・・・・・すみません」
「何だい?」
近くにいた職員に声をかけるが、僕の視線はある一点に集中していた。
「あれ、なんですか?」
そこには白衣をまとった何かが写真を持ちながら涙を流して茫然としている。
「…………ああ。あれはちょっとね」
職員は引き気味のそれを見てから、その女性に近づく。
「所長、織斑秋羅君が来ました」
「…………あ、うん。えーと…」
所長と呼ばれた女性は僕の方を見て、ため息を吐く。
「やぁきみ。まだ家が完成させていない荷電粒子砲にやられた織斑阿修羅君だよね?」
「秋羅です。織斑秋羅」
確かにそういう意味では羅は嫌いだ。というか久々に言われたよ、それ。
「ああ、阿修羅は一夏君の方だったね」
「……はい?」
何を言っているんだろうか、この女は。あんな弱虫が人を攻撃できるわけがないのに。
「何を言っているんですか、あなたは。あの一夏が阿修羅? そんなわけないじゃないですか?」
「たぶん、一夏君だったら白式をこんな目に合わせていないだろうに」
「人を話を聞けよ」
というか何だ、この女。一夏だったらコアすら壊されているだろうに。
「え? 君、彼の弟だよね? 本当に知らないの?」
「だから何がですか」
「彼、スーパー内じゃ「伝説の主夫」として有名だよ」
「むしろおばさんの支持を多大に集めているんだけど」と言う目の前の所長。本当に大丈夫だろうか。
確かに一夏は消えるまでは主夫みたいなものだったが、いくらなんでも伝説になるほどではないだろ。
そう思っていると僕の表情を見たその所長はクスリと笑った。
「君、今の話を全く信じていないだろ~」
「当たり前でしょ。そんな戯言、信じれる方がおかしい」
「アハハハハハ。案外、神童っていうのは間違いかもしれないね」
その言葉に僕はキレ、その女性の襟首を掴むが―――近くにいたスーツ姿がすぐに振りほどき、僕を壁に投げる。
「……僕にこんなことをして、良いと思っているのか!?」
「さぁな。ISに興味がない私には君の存在はどうでもいいことだ」
「何だと?!」
僕がその男に対して殴ろうとした時、部屋の扉が開く。
「所長、やっぱり織斑君を挑発していましたか」
どうやらこの職員は音を聞いて判断したようだ。
「秋羅君、ちょっといいかな? 白式について少し話があるんだ」
「………わかりました。では、失礼します」
そう言って僕は出ていく。本当にここの責任者は失礼な奴だとしか思えない。
■■■
「……で、どうだった?」
倉持技研の所長―――篝火ヒカルノはスーツを着た男に問いかける。
「予想通り使えない、という判断が妥当だろうね。まぁ、最初から彼を勧誘する気はまったくなかったが」
かけていたサングラスを外し、それを胸ポケットに入れる男。するとヒカルノは彼に近づき、その男と唇を重ねる。職員はスーツの男が去った時点でその場から逃げていた。
「あれならわざわざ彼の専用機を用意しない方が良かったんじゃないか?」
「まぁ、そうなんだけどさ―――それより剣ちゃん。せっかく二人っきりなんだし、やらない?」
「……今は職務中だから、仕事をしなよ」
苦笑いをしながら剣ちゃんと呼ばれた男は隣の仮眠室にヒカルノを持っていく。
「それで、国造りの方はどうだった?」
「ダメだったよ。まだ、彼らはレヴェルを国とは認めてくれないようだ」
「最初からわかっていたことだ」とその男は続ける。
「まぁ、まだ手はあるけどね」
「それで、その手って?」
「戦争だよ。しかも相手から仕掛けてくれる戦争を、ね」
そう笑い、その男は今度は自分からキスをするのだった。
実際、楯無は処女だと思う。