ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~ 作:syogo
今回から、合宿編スタートです!
第28話 ~GW合宿1日目~
「………ついにこの日が来てしまったか。」
5月3日、今日から4連休がスタートの朝。俺はいつもの時間に起きると壁に掛けてあるカレンダーを見て、肩を落とした。
…そう、今日から4日間、スクールアイドル部(仮)による、合宿がここ十千万で行われるのだ。
「みんなは9時くらいに来る、って言ってたっけなぁ。はぁ…。」
メンバーが集まるまで残り約2時間という事実が、一層俺を憂鬱な気分にさせる。
…ここまでだけを見ていると、完全に合宿を嫌がっている超インドア+空気読めない野郎だが、俺は別に合宿が嫌なわけではない。寧ろ、みんなとの絆やチームワークが深まる、非常にいい機会だと思っている。
問題はそこでは無いのだ___、と俺は押入れを空けると、新たに昨日のうちに運び込んだ、1つの布団を見て、ため息をつく。
「ホントにここで寝る気なんだもんなぁ…。意識しちゃって身がもたねぇよ…。」
千歌の部屋に敷ける布団は、限界まで敷いて4つ。千歌はベッドだから、部屋に5人は入る事ができる。…しかし、それでも俺の部屋に1人は来ないといけない事になってしまう。___あの後も、俺はみんなに考え直すように何度も言ったのだが、全てはぐらかされ、逃げられてしまう始末。うやむやなまま今日を迎えてしまった、というワケだ。
「…とりあえず、千歌を起こしに行くか。」
美少女と同じ部屋で一緒になる、なんぞ夢のまた夢のような状況なんだけどなぁ…。たぶん、いや絶対緊張しちゃって満足に眠れない4日間になると思う。こんなことなら、せめて今日くらいはもう少しだけ寝てりゃ良かったなぁ…。と後悔を残しながら、俺は千歌を起こすべく自分の部屋を出るのだった。
………
「おっはよーそろー!」
「こんにちは、榮倉君、千歌ちゃん。」
「ふっ…、邪魔するわね…。」
「善子ちゃん、カッコ付けてないでちゃんと挨拶するずら。」
「お、おはようございますっ!」
その後、なかなか起きない千歌とバトルを繰り広げたり、GW限定のお手伝いさんに挨拶したりしていたら、あっという間にみんながやってきた。
「よ、よお。みんな。」
俺、寝るときの事は今は忘れよう。と平静を装ってみんなを出迎える…が、どうしても本人達が目の前に来ると、勝手に緊張してきてしまう。
「…ん?どーしたの、翔くん?」
と、若干よそよそしいしぐさに気付いたのか、千歌が俺に小首をかしげながら聞いてくる。
「え!?あ、いや。大丈夫大丈夫…。あははは…。」
「…そう?」
若干怪しんでいる千歌をなんとかごまかし、このままじゃ駄目だ、と気持ちを切り替え、
「…よ、よし!じゃあとりあえず荷物を部屋において、そっからどうするか考えようぜ!さあさあ入った入った!」
とみんなを促し、俺はみんなの後ろに回ると、背中を押す勢いで十千万の中へと誘導する。
「…ふう。みんなを見ただけでこれとは。俺、緊張しすぎだろ…。みんなは全然そんなそぶり見せないし、俺だけ何やってんだか…。」
みんなが十千万に入って行く中、一人、そんな事を呟いた。
「…さて、今日から4日間。ここで合宿をするわけなんだけども___」
とりあえず千歌の部屋に集まることになり、みんなが荷物を置いて、思い思いの場所で腰を落ち着けた事を確認した俺は、「今回の合宿で何をするか」具体案を出そうとしていた____のだが。
「とりあえず、まずは基本的な体力づくりのメニューでm「ちょっと待つのだ翔くん。」」
なぜか、いやに真面目な顔つきの千歌がそれを遮った。
「まずは、決めなきゃいけない事があるのではないですかな?」
「決めなきゃいけない事?」
ちょび髭でも付けたら似合うんじゃ…、というような偉そうな顔で、顎のあたりを触りながら千歌がそう言った。…しかし、決める事か?決める事……ってまさか!?
「さすがに翔くんも気付いたようだね…。そう、『だれが翔くんの部屋で寝るか』についての話し合いだよ。」
その瞬間、完全に空気が変わった。みんなの顔をちら、と見ると、まるで、『その言葉を待ってた』とでも言うような真剣な表情。…って、あれ。花丸ちゃんはどうでもよさそうな顔してるし、ルビィちゃんはいつもと変わらずピギッてる……。ピギッてるって何だ、…まあいいか。
とにかく、一部を除いては確実に今の言葉で空気が変わったのは確かである。さっきまでにこやかに談笑していたのに、今では超真剣なまなざし。…って、まあそうだよな。誰も俺と2人っきりで一緒の部屋になんぞなりたくないだろう、真剣にもなる。
「……私、翔くんと一緒でいいよ?2人っきりでも、別に気にならないし…。みんなは、男の子と一緒は嫌なんじゃないかな?」
開口一番は、曜だった。笑顔で、しかし目は真剣なまま、淡々と自分の主張を言ってのける……って、あれ?てっきり全員が俺と一緒は嫌、って言うと思ってたけど、まさかの同室オッケー…!?
「…私も、榮倉君と同室でも。曜ちゃんは、みんなと一緒のお部屋の方が楽しいんじゃないかしら…。」
次に口を開いたのは梨子ちゃん…。ってえ!?梨子ちゃんまでオッケー!?…しかも、なんか笑顔に威圧感を感じるんですが!?
「…ふ、2人とも、何言ってるのよ。リトルデーモンのせ、世話は……私の仕事でしょ。翔との同室は、わ、私に決まってるのよ。」
…よ、善子まで!?しかも、世話とか…。思春期男子にとって意味深な発言に聞こえてしまうのですが。
「いやいや、そんなに気を使わなくても、私が一緒でいいって。」
「…いいえ?曜ちゃんこそ、千歌ちゃんたちと一緒の部屋でおしゃべりしてた方が楽しいんじゃない?」
「り、リトルデーモンの世話はヨハネにしかできないのよ?わ、私に決定よ…!」
「じゃあ、花丸ちゃんとルビィちゃんはどうするの?」
「そ、その2人は世話しなくても大丈夫なのよ!翔はまだリトルデーモンになりたてだから一緒にいなきゃだめなのっ!///」
と、俺が善子の意味深台詞に思考が動いてしまいそうになっていると、2人が笑顔(ただし、目が笑っていない)、善子が顔を赤くして千歌の部屋への譲り合いを続けている。な、なんなんだ…!?俺の部屋に何か目的でもあるのだろうか…?
「これじゃあ埒があかないずら。ここは…、公平にじゃんけんをしたらどうずら?」
と、いまだバチバチの空気が続いている3人の間に、「早くして…」とでも言いたげな表情の花丸ちゃんが入る。そ、そんなにどうでもよさげなのか…。と3人との空気感の違いに若干たじろぎつつ、まあ確かにこのままヒートアップしても結局は譲り合いで話が進まないのも事実、じゃんけんなら公平だよな…。と思い、俺もその方法にしないかと提案した…のだが。
「…そうだね。そうしようか。」
「ええ…。公平だもんね。」
「この堕天使のすべての力を右手に捧げるわ…。」
この言葉の後一言も発していないのにも関わらず、なぜか空気はさらに熱く。まるで3人の背後には、燃え盛る炎が見えるような気がするレベルだ。…しかも善子よ。お前そんなじゃんけん一回ごときで堕天使パワー全部使っちゃっていいのかよ。っておいおい、拳を天に仰ぐんじゃない。某世紀末バトル漫画のワンシーンにまで見えてしまうだろうが。じゃんけんはそんな血生臭いものではない。
「…じゃあ、いくよ?」
「ええ…。」
「…勝負よ。」
全員、覚悟が決まったのか、お互いの目を見合わせ、拳を振り上げる。
「「「さーいしょはグー!」」」
お決まりの台詞とともに、3人の右腕が掲げられて__
「「「じゃーんけーん!!!」」」
___その瞬間、俺のルームメイトが決まった。
………
「お、おじゃまします…。」
数時間前の真剣な目つきはどこへやら、俺の部屋におどおどと入ってきた梨子ちゃんは、まくらを両手で抱えながら、俺の元へとやってきた。
「お、おう…。梨子ちゃん。い、いらっしゃい?で、いいのかな?うん。」
「う、うん…。おじゃまします…。」
緊張してしまっておぼつかない言葉の俺に対し、数秒前に言った言葉を繰り返している。どことなく委縮しているのか、俺の部屋を目線だけで見渡している。…ふう。数時間前の梨子ちゃんの表情を見てて、緊張すんのは俺だけだろうな、と思ってたけど、どうやらそうでもないようだ。
と、それ以上会話が続かない俺たちの間を、開けてあった窓からの風が通り、梨子ちゃんの前髪が揺れる。…そういえば、風呂上がりだからか、いつも下ろしている髪をシュシュ?で一つに束ねていて。さらに視線を落とすと、パジャマなのだろう薄手の寝間着が、ヒラヒラと風邪で揺れていて、俺をドキりとさせる。
「ど、どうしたの…?///」
「え!?あ、い、いや…。きょ、今日は夜風が気持ちいいなって!」
「そ、そうだね。」
俺の視線に気づいたのか、梨子ちゃんが若干顔を赤らめながら俺を見る。とっさに話を逸らしたものの、内心俺はドキドキしっぱなし。普段と違う髪型に、シャンプーのにおい。さらに、普段では絶対に見ることはないであろう薄手の寝間着姿、という3連コンボに、正常な判断ができない。や、やばい…、落ち着かないと。
「そ、そうだ。梨子ちゃんは俺のベッドで寝てくれな。俺は布団を敷いて寝るからさ。」
「え…?い、いいよ気を使わなくて!私が布団で寝るから!榮倉君はいつも寝てるところの方がいいでしょう…?」
「いやいや、一日練習頑張ってたんだし、ベッドの方が寝心地いいだろ?俺のことは気にすんなって。」
とりあえず、まくらを置かせるためにベッドへと促したのだが、梨子ちゃんは遠慮して首を振るばかり。結局今日は一日筋トレとランニングだったから、相当疲れているはずなので、そんな遠慮せずに使ってほしいのだが…。
「じ、じゃあ…。」
「ん?どうした?」
促す、首を振るの流れを3回ほど繰り返したところで、梨子ちゃんが俯いて、なにかもごもごと口に出している。…なんだ?やっとベッドに行ってくれる気になって___
「一緒に、寝て?」
「…はい?」
聞き違いだろうか。上目づかいでじっとこちらを見てくる美少女が、とんでもないことを口にした気がするんだが。
「あ、あの…?桜内さん?聞き違いならいいんですけど、今、一緒に寝よう的な事言ってませんでしたか…?」
その瞬間、梨子ちゃんの顔が、桜色を何倍にも濃くしたような真っ赤な色に染まった。…などと冷静そうに言ってはいるが実際は俺もいきなりのぶっ飛び発言に頭がパニック状態である。不意打ちも不意打ち、完全に想定外の事態だ。頭の回路がショートして、冷静な思考ができない。
「~~っ///ち、違うの!い、いや、違くはないんだけど、なんというか、その、一緒に布団で寝てくれたら、って!!」
「お、おちつけ梨子ちゃん!?それどこで寝るか詳しくなっただけでなにも変わってないぞ!?」
「ええっ!?え、ええとぉ…///そう!横並びで!一緒に寝てほしいな、って!」
「そ、そうかわかった!じゃあ今すぐ布団並べるからな!?ちょ、ちょっと待ってな!」
あ、あはは、と2人して笑いながら、俺は恐らく史上最速だろう速さで押入れから布団を出すと、2つ横に並べ、さらに掛け布団もぴしっとセットした。その時間、約30秒。…美渡さんにしごかれた甲斐があったってものだ。
「じ、じゃあどうする!?もう時間も時間だし、寝ちゃうか!?」
「う、うん!そうだね!お、おやすみ榮倉君!」
「あ、ああ!おやすみ!」
…って寝られるわけないだろうがぁぁ!!!
恥ずかしさのあまり互いの顔が見られない俺たちは、動揺マックスでそのまま布団に入った。因みに時刻は夜9時半。時間的にも雰囲気的にも寝られるわけがないまま、2人の間を沈黙、というよりは気まずい空気が流れていくのだった___
………
「…お、起きてる?」
沈黙から、どれくらい経っただろうか。不意に、背中の方から梨子ちゃんの声が聞こえてくる。動揺は収まったのだろう、声がいつものトーンに戻っている。
「あ、ああ。起きてるよ。」
いきなりあんなこと言われて、そのまま寝られるわけがない。俺は高ぶった気持ちのまま、でも声は静かに返事をした。
「よかった…。あ、あの、さっきはごめんね?いきなり、変な事言っちゃって。」
「あ、ああ。気にするなよ。ちょっとびっくりしただけだからさ。」
…ホントは、全然ちょっとじゃないけど。大分、どころか完全にびっくりしたけど。
と、そこで梨子ちゃんの布団の方からもぞもぞと音が聞こえたので、俺は梨子ちゃんの方を向く。…ああ、やっぱりこっちの方へ体を向けたらしい。俺と梨子ちゃんは布団越しで目を合わせる。
「…ふふ。なんか、新鮮な感じだね。こうやって寝るのって。」
「ああ…、そうだな。梨子ちゃんも普段はベッドだろ?布団で寝るなんて、なかなかないよな。」
ベッドよりは少し下が固い感じがするけど、ベッドのように窮屈感はなく、開放的な感じだ。これはこれでいいかもしれない。
「もう…。違うよ。こうやって2人で寝る事が、だよ///」
「へ?あ、そ、そうだな。」
これからちょくちょく布団で寝るかな…、と考えていると、梨子ちゃんが、口をとがらせながら若干恥ずかしそうに言った。俺はまたドキリとしてしまい、しどろもどろに言葉を返す。
「今日、朝からうるさくしちゃってごめんね。迷惑だった…?」
「へ?…ああ、部屋決めの事か?いや…それより、びっくりしたよ。まさか3人も俺の部屋でもいいって人がいるなんてさ。みんな嫌がると思ってたから。」
「そ、それは…///」
「なに?俺の部屋になんかあったりするの?俺、別になんか珍しい物とか、持ってたかな…?あ、それともテレビか?千歌の部屋にはないもんな。見たいのがあるんだったら、別に見てもいいぞ?」
「……ばか。」
「ん?なんか言ったか?」
「…別にっ。」
なぜか少し機嫌が悪くなる梨子ちゃん。なんだ…?あ、もしかしてもう番組終わっちゃったとか?それは申し訳ないことしたな。もっと早く言っとけばよかった。
「そういえば、男は苦手なんじゃなかったのか?俺と一緒に、しかも隣でなんて…。男に慣れる練習にしても、いきなり飛ばしすぎなんじゃ…。無理しなくていいんだぞ?」
この前、歌詞作りの時にある男のおかげで男に対する意識が変わった、とか言ってたけど、それでも苦手な事に変わりはないはずだ。
「…本当に鈍感さんなんだね。」
今度は聞こえる声で、そうはっきりと言った梨子ちゃん。…布団から起き上がり、俺をジッと見つめる。…え?なにがだ…?と、俺も布団から起き上がり、梨子ちゃんと視線を合わせる。
「あのね…、この前の男の人ってね。……榮倉君、なんだよ。」
少しうつむいた後、頬を桜色に染めた梨子ちゃんは、そう言った。その刹那、二人の間に流れる窓からの優しい風。それはまるでドラマのワンシーンの様で……ってちょっと待て待て待て!?
「お、俺!?」
「…うん。」
さらに衝撃的すぎる告白に、何も言えず、口をパクパクさせる俺。ま、待て待て待て。冷静になるんだ。
…もう一度、あの時の梨子ちゃんの言った事を思い出してみよう。
確か…、「いつも笑顔で、優しくて、周りの事ばかりを考える」、とか言ってた気がする。あと…、「そのためなら、平気で土下座もする」、とかも言ってたっけな、確か。
前者は全く覚えに無いが…、後者は、確かにした記憶がはっきりとある。確かに…、目的遂行に土下座が必要なら、まあするけど。俺、そんな梨子ちゃんの「男に対するイメージ」を帰るような事をした覚えはないぞ…?
と、一人でうんうん唸っていると、梨子ちゃんがクスッ、と笑って、「そういうところだよ。」と俺に言って、そのまま布団をかぶってしまった。…ど、どういうところなんだろうか。
「ま、まあいいか。…じゃあ梨子ちゃん、今度こそ、おやすみな。」
「あ…、ちょっと待って。最後に…、お願いと言うか…。」
「ん?なんだ?」
俺が聞き返すと、もぞもぞしていた布団から頭と目だけが出てきた。
「私の事…、『梨子』って呼んでほしいな。だ、だめ、かな?」
「ああ、わかった。…梨子。」
「ありがと…。お、おやすみ、『翔くん』っ。」
えへへ、とはにかみながらの表情+名前呼び。最後にとんでもない爆弾を投下して、梨子は夢の世界に落ちて行った。
俺はその爆弾をまともに食らい、その後2時間は眠ることは出来なかった…。
………
次の朝、俺が起きると、隣には梨子はすでにおらず、綺麗に畳まれた布団のみだった。俺は後頭部を掻きながらあくび交じりに下へ降りると、テーブルにはみんなの姿が。
「あ、おはよーっ!翔くん!」
「おはヨーソロー、翔くん!」
「やっと目覚めたわね…、翔。」
「師匠、寝坊ずらよ。」
「お、おはようございますっ!」
俺はみんなに挨拶をしながら、席に着く。…すると右肩にちょんちょん、と指が。
「ああ、おはよう、梨子。」
「おはよう、翔くん♪」
「「「翔くん!?!?!?」」」
「おおー、進展したずら。」
「わっ。き、昨日何が…!」
その瞬間、梨子ちゃん以外の全員が俺の方を向く。
「翔くん!?どういうことなのか、説明するのだぁぁ!!」
「翔くん!?昨日、何があったのか詳しく教えてもらうからね…!?」
「梨子…。侮れないわね…。」
「は!?なんだよみんなしていきなり!?ま、まずは朝食を…!!」
「「「問答むよぉぉぉ!!!」」」
なにがなんだかわからないまま、俺はみんなに囲まれて。
にぎやか…?な中、合宿2日目は始まっていくのだった。
はい、梨子ちゃん回でした。基本一日毎にメインが変わっていく感じで構成を考えてます…。
次回は、堕天使様かな…?
お楽しみに!