ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~ 作:syogo
…え?一緒に風呂入るの…?
……えっと、今の状況を整理しよう。
俺は榮倉 翔。16歳、高校2年生。
親父の事で故郷を離れて内浦に来て…、千歌ちゃんと会って、鞠莉さんに会って、梨子さんと出会って…。
その梨子さんのせいで今凍えてて、千歌ちゃんに風呂を譲った。…うん、覚えてる。千歌ちゃんとはつい数時間前に出会ったばっかりだ。昔からの幼馴染とか、恋人とか、そーいう関係ではない。うん、断じてない。
…それは千歌ちゃんも解っているハズだ。
…では、もう一度聞いてみよう。
「えーっと、千歌ちゃん…?い、今、何て言った…?き、聞き違いだよね?」
すると千歌ちゃん、下を向いてもじもじしながら、さっきより小さな声で…
「だ、だからね…?そのままだと翔くんも風邪ひいちゃうし…。その…、
一緒に入らない?……って。」
……マジだった。聞き違いじゃなかった。
その瞬間、体中がボッ、と火がついたように火照った感覚に落とされた。顔が熱い。おそらく、誰が見ても一発で分かるようなくらい、赤いと思う。前を向けない、千歌ちゃんの方を向けない。やばいやばい、何も考えらんねこんな時どうすりゃいいんだ大体こんな状況人生で一回も考えたことねぇよやべぇぇぇぇぇ!!!
……どのくらいたっただろうか。
数分、もしくはたったの数十秒だったかもしれない。
「そ、その…。俺、いいよ。入んなくて…。いいから、とにかくいいからっっっ!!」
沈黙を破ったのは俺だった。…ムリだ。俺にはそんな度胸ないっ!
そう言い残すと、千歌ちゃんの反応よりも早く、ドタドタと2階に上がって行く。
「えっ…、ちょ、ちょっと…!」
そんな千歌ちゃんの声が聞こえた気がするが、一度も振り返ることなく、全力疾走で自室へと戻って行くのだった……。
………
「……………。」
…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ俺のヘタレェェェェェェ!!!!!
「クソっ、クソっ、なんだよ俺ぇぇぇぇ!!なんだよあの断り方!!もっと気のきいた言い方あっただろ畜生ぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ぼすん、ぼすん、とベッドに顔を埋めながら叫ぶ俺。
やばい…、あれじゃまるっきり俺が意識してるようじゃん…。この後、どーやって千歌ちゃんと顔合わせりゃいいんだよ……。
そうだよ。千歌ちゃんは善意で、親切心で言ってくれたんだろうに、一人で勝手に意識しちゃって…。馬鹿すぎる。バカケルだ、俺。
「ホンっとに…。この後どーすれば……。」
顔真っ赤になりながら、布団にくるまり呟く俺。どうも内浦に来てから、「普通な日常」とは縁遠になってしまったようだ……。
「………翔くんのばか。」
ぽちゃーん。 水滴が落ちる音がやけに大きく聞こえる気がする。
従業員用(というか高見家の)のお風呂に入りながら、私は呟く。
「あのままじゃ風邪ひいちゃうじゃん…。別に、私は一緒に入ったって、気にしな……!?」
そこまで言って、ハッとする。何言ってんだ、私。翔くんは男の子だ。
バシャバシャ、と湯船のお湯で顔を洗う。
…でも、どうしてだろう。
翔くんは、つい数時間前に会ったばっかりの全然知らない人だ。趣味とか、好きな食べ物とか…、本当に何も知らない。知っているのは、名前だけ。
それなのに、初めて見たときから少し、あの男の子に惹かれていた自分がいる。
海に落ちて濡れてしまったのだって、元はと言えば、私が梨子ちゃんに向かっていきなり走り出してしまったからだ。声をかけて止める、とか方法はあったのに…。
「はぁ…。私、バカチカだなぁ…。」
この感情は何だろう。色々な考えがぐるぐると頭の中を渦巻く。その思考を止めるように、ブクブクと湯船に沈んでいってしまうのであった……。
………
コンコン。扉を叩いている音がする。
「…翔くん?その…、お風呂空いたから、入って。ホントに風邪ひいちゃうよ…?タオルとか、脱衣所にあるから…。」
千歌ちゃんの声が扉越しに聞こえる。心なしか、どこか、言いづらそうな感じに聞こえる。それもそうか…。俺、チキって逃げちゃったもんな…。
「そ…それでね?さっきのこととか…私、気にしてないから!ほ、ほら、私も急に変な事言って、翔くん混乱させちゃったでしょ?ごめんね…?…お風呂、入ってね。」
そう言って、千歌ちゃんの気配が消える。恐らく、部屋に戻ったのだろう。
「……とりあえず、風呂入るか。」
そう言って体を起こし、部屋を出る。服は、もうすっかり乾いていた。
翔クンのヘタレっぷりにより、変な空気になってしまった二人。
(二人で入ることにならなくてスミマセン笑)
次回、千歌ちゃんの心情に変化が…!?
お楽しみに。