World Observer ~罪深き異世界の観測者~   作:7%の甘味料

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自由を求めて旅立つ若者の観測記録 Part1

「凄いなぁ……霧崎さんも凄いけど

 やっぱり、その女の人も凄いよなぁ」

 

「楽しんでもらえたか?」

 

俺は杉山に話を聞かせると、杉山は満足そうに感想を述べていた。

 

「ああ、やっぱり霧崎さんの話は面白いよ

 なんてたって年代、場所を問わず色々な話を聞けるんだから!

 今日はもう遅いし寝るけど、また明日も聞かせてよね!」

 

そう言うと杉山は就寝の準備を始めたので俺も彼に借りている寝床へと歩いていく。

 

元は倉庫だったらしいが、俺がここでしばらくお世話になると決まってから2人で色々整理したおかげで部屋の8割が片付いて犬の一匹も生活できない空間が、人がギリギリ生活できる部屋になったのである。

 

元はごみ溜めの様な部屋だったが、寝床もあり最低限の荷物を置くスペースはある。

 

そう思った瞬間、突然カサカサッ! と言う何かが走り抜ける音がした。

 

奥を見ると灰色の小さな生物が素早く物陰へと隠れる姿が見えた。

 

やれやれ、どうやらこの部屋には小さな同居人がいるらしい……

 

 

 

 

 

次の日の事である。

 

今の俺は働く事なく最低限の飯と寝床を確保して貰っているので、特に何か仕事をするわけでもなく街を散歩していた。

 

夕方、散歩から杉山の家に帰ってきた時の事であった。

 

家の前に数人の男たちが集まっており、よく見ると杉山はその男たちに取り囲まれている様だ。

 

どう見てもただ事ではなさそうだ。

 

俺はその男たちの話が聞こえる距離まで気づかれない様に歩き盗み聞きする事にした。

 

「あのさぁ……何でこの街のルールが守れないの……

 それだけ金あるんだから何とかなるっしょ……」

 

「おまえんとこの両親が凄い奴らだからってなぁ!

 自分だけ特別扱いが許されるとでも思ってんのかっ!」

 

「……まぁこんな根暗で性格も自己中じゃ、持ってても無理なんでしょ」

 

『ははははははははははっ!』

 

近寄ってみるとそこには5人の男が杉山を取り囲み、杉山を罵倒している。

 

これまで杉山と一緒にいても彼が何故この様な状況になっているのか理解する事はできなかった。

 

ほとんど外にも出ないのでトラブルに巻き込まれる心配もない。

 

俺が来てから買い物は俺がしているので尚更外に出ていないはずだ。

 

だが、トラブルに巻き込まれているのは誰が見ても明らかだ。

 

寝床と飯を提供して貰っている以上見て見ぬ振りはできないだろう。

 

「ただいま……どうしたんだ?杉山」

 

「き、霧崎さん……!」

 

杉山は俺の姿を見ると安心した様に俺の名前を呼んだ。

 

しかし、男達は帰ってきた俺の姿を見ても家の前からどこうとしない。

 

「人が通ろうとしてんだろ、邪魔だどけっ……」

 

「なんだ……こいつっ!

 杉山の関係者か……?」

 

男達は家の前からどく様子はなく、ひそひそと狼狽えながら数人で状況を確認し合っている。

 

「邪魔だ、とっとと道を開けろ!」

 

俺が強くそう言うと男たちも負けじとこう返す。

 

「ああっ! 今人が家主と話してんだろっ!

 用があるなら後に……」

 

その瞬間俺は、腕を右にかざし適当な場所に炎を放った。

 

炎は赤黒く燃え、敷地の芝生を焼きつくす。

 

男たちはその様子を見て呆気に取られている。

 

十分に視認して貰えたと判断した所で俺は右腕を下げて、火を消滅させて見せた。

 

「お、おまえ……い、異国の者か……」

 

「聞いてなかったのか……ならもう一度言ってやるよ

 とっととそこをどけっ……」

 

リーダー格であろう男は軽く舌打ちをして、残り4人を連れてそのまま街の方へと戻っていった。

 

「すげぇ……魔法が使えるって話本当だったのか……」

 

俺が世界の王から貰ったもう一つの物……それは永遠の命と能力……。

 

国によっては怪物などが出現している国もあり、魔法が盛んな地域もある。

 

この辺の地域は現実世界にかなり近い場所だ。

 

俺の記憶はほとんど消えているが、現実世界での知識は消えておらず似たような場所に辿り着いた時は既視感を覚えるくらいだ。

 

その中でも観測に支障をきたさぬ様あらかじめ能力を与えられている。

 

最も、怪物も魔法もない地域でこの力を振るう事は滅多にない事だ。

 

観測者である俺が何度も力でトラブルを解決するわけにもいかない。

 

しかし、今回は寝床と飯を提供して貰っている杉山のピンチだったので特別に行使したわけだ。

 

「それにしても、その黒い炎カッコいいな!」

 

「ふん……そうか……」

 

世界の王の与えた俺の能力は自分の思う場所に黒炎を発生させる能力だ。

 

その黒炎で対象を焼き尽くす事で生物の生気を奪える。

 

人間なら全ての事に興味や関心を失い、何もしたくなくなる様な、無気力症の末期の様な状態になるらしい。

 

最も人間ならその前に焼死しそうなものだが、今の所人間に対して使った事はないので人間に使ったらどうなるのかは俺にも分からない。

 

「それより……さっきの男達は何だ……」

 

「部屋に戻ったら話すよ……」

 

杉山はそう言うとドアを開けて先に戻っていった。

 

俺も後を追って部屋へと向かった。

 

 

何時も杉山に話を聞かせているリビングで今度は逆に俺が話を聞こうとしていた。

 

杉山は炭酸飲料を飲みながら話を始める機会を伺っている。どうやら中々話しにくい事らしい。

 

俺は杉山が話すタイミングを探すのを黙って見守っていた。

 

「あいつらは……街の役所の人間なんだ……」

 

杉山は語る決心をつけた様で、男達の正体について語り始めた。

 

「俺はどうやら……あいつらにとって気に入らなくて……

 恥をかかせたい存在らしい……

 だからあいつらはここにやって来るんだ……」

 

 

続く

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