The goal of all life is death   作:ホニョペニョなんとか

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 憎い。

 何もかもが憎い。

 殺してやりたくてたまらない。いや、ただ殺すだけではダメだ。我慢出来ない。凌辱の限りを尽くしてやりたい、ありとあらゆる生あるものが死を懇願するようになるまで。

 非常に強い感情が身体の芯から溢れ出て来る。何かしらの力によって直ぐに抑え込まれるが、それは脳にこびりつき、人格の一部となってゆく。

 ……モモンガは自分でも驚くほど、自分の人格の変異を受け入れていた。

 

「モモンガ様」

 

 妖艶な声がした。

 見れば、声を掛けて来たのはNPCのアルベドだった。NPCであるアルベドが定型文以外の言葉を口にしている。いや、言葉を口にしているどころではない。呼吸をしている。瞬きをしている。動いている。

 ──生きている。

 紛れもなく、アルベドは生きていた。

 サービス終了時刻を過ぎてもユグドラシルが終わらないことと関係あるのか?

 あるいは運営さえ予期していなかったバグが発生したか……

 とりあえず、と思いGMコールをしてみる。

 結果は応答なし。無反応。

 

「ユグドラシル。最後の最後に、お前まで俺を捨てるか」

 

 裏切りだ。

 あれだけ課金し、時間を費やしてきたユグドラシルですらモモンガを裏切った。運営にお願い出来るタイプのワールド・アイテムをいくつか抱えていた為、ゲームマスターの何人かとは顔見知りだ。そのはずだ。しかし、そう思っていたのは此方だけかもしれない。向こうからすれば、取るに足らない1プレイヤーなのだったのだろうか。

 

「モモンガ様をお捨てになる? そんな無礼を働いたのは誰でしょうか。許可さえいただければ、私が直ぐ様相応しい罰を与えてきます」

「実に流暢な物言いだ。やはり、本当に生きているのか? アルベド、近くに来い」

「はい」

 

 アルベドが近くに寄る。ふわりと良い匂いがした。ユグドラシルに嗅覚は実装されていない。

 モモンガは骨だけの指で、アルベドを触る。アルベドがほんの少し辛そうな顔をするが、それは無視した。頭のてっぺん、額、頬ときて、最後に首。試しに、モモンガはアルベドの首を絞めてみた。アルベドは抵抗しないものの、息苦しい顔をしている。なるほど、呼吸はしているらしい。

 次にモモンガは、その大きな胸に手をかけた。力の限り思いっきり掴む。豊満なそれが、グニャリと歪に形を変える。昔のモモンガであれば喜んだだろうが、今は伝わって来る肌触りからアルベドの生を感じ、ただ憎しみが生まれるばかりだ。

 とにかく、これで確認したい事はある程度出来た。

 アルベドは生きている。

 モモンガに五感のようなモノがある。

 禁止されていた18禁行為ができる。

 そしてオーバーロードとしての性質に惹かれてか、あるいはモモンガの本質が出たのか、無性に生者が憎い。

 

 聞きたいことはまだまだある。

 その他にも、色々な事を聞いた。

 結果分かった事として……

 テキストには忠実。それ以外の部分は種族──アルベドであればサキュバス──としての特性を有している。そしてある程度創造主に似るらしい。

 NPCという言葉は理解していないが、自分がアインズ・ウール・ゴウンのメンバーに創られた事は理解している。

 ギルドメンバーには絶対の忠誠を誓っている。

 その中でも自分の創造主は別格。ただし、モモンガが書いた設定によってアルベドだけは例外とする──

 

「……セバス」

「はっ!」

「ナザリックを出て、周囲を見て来い。少しでも違和感があれば俺に連絡しろ」

「畏まりました」

 

 セバスは命じられると、直ぐ様部屋を出て任務に向かった。モモンガはセバスが完全に去った事を確認した後、残されたプレアデスの方へと向き直す。

 

「ソリュシャン」

「はい」

「お前は盗賊としのスキルを有していたな。それを使い、セバスを追跡しろ。セバスが何者かと戦闘になった場合、お前だけでも帰還しろ。その場合、セバスの生死は問わない。セバスが裏切った場合も同様だ」

「畏まりました」

 

 最後に念の為、課金アイテムを使いセバスとソリュシャンを監視する。確かに、NPC達は自分に忠誠を誓っている。その様に思える。しかし、それもいつなくなるか分からない。

 モモンガだって、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーを心底信用していた。仲間だと思っていた。しかし裏切られたのだ。であれば、彼らの子であるNPC達もいつ裏切ってもおかしくない、と考えるのは自然なことだった。

 

「アルベド」

「はっ!」

「ビクティムとガルガンチュアを除いた、各階層守護を第6階層のコロッセウムに呼べ」

「畏まりました」

 

 アルベドもセバスやソリュシャン同様、直ぐに任務に向かって行く。

 

「シズ」

「はい」

「付いて来い」

「畏まりました」

 

 モモンガはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの力を使い、宝物殿に転移した。

 目の前には重圧な扉。ここを開けるには、タブラ・スマラグディナが定めたパスワードを入力しなければならない。しかし、宝物殿に用がある時は少なく、モモンガはすっかりそのパスワードを忘れていた。そこでナザリック内のギミック全てに精通する、シズを連れて着たのだ。

 シズが扉に向かい手をかざすと、文字が浮かび上がった。

 

『|Ascendit a terra in coelum、iterumque descendit in terram、et recipit vim superiorum et inferiorum《かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう》』

 

 ギミック通り、扉が開いてゆく。

 シズをその場に待機させ、一人先へ。

 出迎えたのは、ドロドロとした黒色のコールタール、あるいはヘドロだった。それは地面を悍ましく這いずり、モモンガの方へとやって来る。

 モモンガに近づくにつれ、コールタールは形を成し始めた。末端のヘドロが固まり、形を持ち、四肢へと変わってゆく。やがて中央部が胴体になり、上にタマゴ頭がくっついた。

 軍服を着た彼こそ、モモンガが作ったNPC──パンドラズ・アクターである。

 

「ようこそおいで下さいました。我が創造主モモンガ様!」

「挨拶はいい。パンドラズ・アクター、お前にとって俺は何だ?」

「はっ! 我が創造主であり、また至高の41人の纏め役を務めておられた、最高主君かと」

「……そうだな。では、次の質問だ。俺が殺せと命じれば、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーを殺せるか?」

「……モモンガ様のお望みとあらば」

 

 パンドラズ・アクターの返事に、モモンガは大変満足した様子だった。肉のない顎をカタカタ言わせ笑っている。

 

「一つ、お前に命じよう。俺に扮し、第6階層のコロッセウムに向かえ。各階層守護者と待ち合わせしている。奴らは信用出来ない。お前が代わりに行くんだ」

「畏まりました。我が創造主、モモンガ様!」

 

 パンドラズ・アクターは大袈裟な敬礼をした後、モモンガに変装し、早速転移して行った。

 それを見届けた後、一人宝物殿の奥を目指す。目的はナザリックの最秘宝ワールド・アイテムの数々。

 もしナザリックに住むNPC達に裏切られた時、自分だけは確実に生き残れるよう、モモンガは装備を固めていく。

 

「モモンガ様」

「セバスか。外はどうだ?」

 

 外に向かわせたセバスから連絡が入る。

 本来沼地であるはずのそこには、見渡す限りの草原になっていた。周囲には人影なし。そんな報告が送られてくる。

 

「そうか。もう少し探索の範囲を広げろ。生き物を見つけて来い。数は多ければ多いほど良く、知性があればあるほど良いと知れ」

「畏まりました」

 

 《メッセージ/伝令》が切れる。続いてはソリュシャンだ。

 セバスに追加の命令した事を伝え、引き続き追尾をするよう命令した。

 同時にスクロールを使い、セバスとソリュシャン両方に監視魔法をつける。

 

「出来る限りの防御壁は敷いたが、これでもまだルベドに襲われた場合、死ぬ危険性があるな」

 

 他にも懸念はある。

 第8階層のアレらが暴走した場合。

 モモンガを裏切ったアインズ・ウール・ゴウンのメンバーが他のメンバーに知らせず、何かしらのギミックを仕掛けていたり、NPCにワールドアイテムや神器級(ゴッズ)アイテムを持たせていた場合。

 この未知の世界に住む者の力が、モモンガの想像の遥か上を行っていた場合。

 あるいはもっと根本的な事で……

 

 モモンガは思考を続けながら、ナザリックの奥深くへと潜って行った。

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