やはり猫が可愛いのは間違っていない。   作:如月の夢

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私事ですが、49日などがあって投稿が遅れました。
いや、それを抜いても遅いんですけどねw


猫の外側の世界

ノックをしてから、奉仕部のドアを開ける。

3回な?2回はトイレだから。

「よぉ、」

「あら、由比ヶ浜さん、ドアがひとりでに開いたわ、どうしましょう。」

「ゆきのん、いきなり厳しすぎだし!?」

「せんぱーい、遅いですよー、何してたんですか?」

「お兄ちゃん遅かったね。」

雪ノ下は初っ端からトップギアだな、そんなんじゃ体力持たないぞ?

「なに、俺はここでもステルスでヒッキーなの?」

「冗談よ、また、平塚先生あたりにでも捕まってたのかしら。」

またってなんだよ、とはあえて口にしない。

そのまま俺は、椅子を取り出してきて座った。

その様子を見て、全員の目が見開かれる。

俺が"依頼者の座る"方に座ったからだ。

深刻な事と取ったのか、雪ノ下は一呼吸入れると、優しい笑を向けて、こう言い放った。

 

「今度は、どんな軽犯罪をしたのかしら、不審谷くん?」

俺は頭を、机にぶつけてしまった。

「まてまて、なんで俺が、犯罪を起こした前提なんだ。」

「あら?軽犯罪と言ったはずよ。」

「そこじゃねーよ…………」

「ヒッキー!なんかやらかしたの?なんて言うか、キモい!」

「お前はもっと、語彙力をつけろ。」

「せんぱい……」

「ごみぃちゃん……」

と、いつもの様な空気ができた所で、んん、と雪ノ下が咳払いをし

「それで?依頼は何かしら、比企谷くん。何か悩んでいる様だけど。」

こいつわざと……

「依頼、そうだな、これはある意味、既に依頼してあるようなもんだが。」

雪ノ下以外は、皆首を傾げる。

「あの依頼ね…比企谷くん、貴方にそう思わせたのは、あなた自身?それとも……猫かしら。」

「ゆきのんがいつも通りだ!?」

「猫だな……」

「「「?」」」

「そう、やはりね。」

「あぁ」

「私は、あの時言ったわよね。本人が自覚してないので、と」

「確かに言ったな。」

「なら、自覚を持ったって事でいいのかしら」

「根本的な性格を治す気は、無いがな。ただ、隣に堂々と並びたいんだ。」

「そう、」

俺は、あいつの隣に並ぶだけの、権利が欲しい。

「結衣先輩、せんぱい達は、なんの話をしてるんですか?」

「私にも何だかさっぱり。」

「小町も分からないです。」

「そう言えば、貴方たちは彼がここにいる理由を、知らなかったわね。」

「強制的に入った、って所までしか知りませんね。」

確かに小町には、詳しくは伝えてなかったな。

「彼は元々、人格や考え方の矯正を目的として、平塚先生に連れてこられたのよ。」

「そうだったんですか、せんぱい!?」

「考えてみろ、俺だぞ?部活入ると思うか?」

「あぁ……」

なんだその、ゴミを見る目は。

「そして彼は、1度拒否したその依頼を、再び持ち出した。それはつまり。」

「変えるつもりになった、って事だよね、ゆきのん。」

「そうなるわね。」

「じゃあですよ?さっきの猫って言うのはどういう事ですか?」

「猫と言っても、本物ではないわよ。と言うか、猫にそんなこと、させるわけないじゃない。」

「なら、人?んー……あ、」

「そっか…ヒッキーは、あの子のために、変わるんだね。」

「あぁ……」

「ごめん、ゆきのん、私、ちょっと飲み物買ってくるね……」

そう言って、由比ヶ浜は出て行く。

「一色」

「なんですか先輩。」

「由比ヶ浜を追いかけてくれないか?」

「人に任せるんですか?それ、」

「最後には自分でやる、ただいますぐ行くのは、まずいだろ。」

「はぁ、しょうがないですね。まぁ、お世話になってますし。後輩らしく先輩の為に動きます。」

では、そういう事で、と由比ヶ浜を探しに行く一色。

「貴方はそういう人よね。」

「どういう事だよ。」

「一色さんと我慢していたこと、見抜いたんだから」

「ちゃんと分かるようになったね、お兄ちゃん。」

「そんなんじゃねーよ、一番の適任に任せただけだ。」

「あら?慰めるのなら、私の方がいいんじゃないかしら。」

「……俺の負けだよ。」

「そうね、あの二人が帰って来るまで、待つかしら?」

「あぁ、俺はあいつらにも頼りたい。」

「そう、では、紅茶でも入れようかしら、飲む?」

「頼むわ。」

「手伝いますよー」

 

 

奉仕部には紅茶を入れる音が響くのみ。

そんな静かな空間が、この後、何が起こるかわからない恐怖心を、少しだけ落ち着かせた。

 

 

 

 

sideいろは

 

先輩に頼まれて、教室を出てから10分もしない内に、目的の人物を見つけた。

「結衣先輩、やっぱりここでしたか。」

ここは、先輩のいうところの、ベストプレイス。

「いろはちゃん……」

「あの先輩は、結衣先輩の気持ちにも気付いてます。」

「うん……」

「でも、私に慰めに行くように、頼んだんですよ?」

「うん……」

「あんな先輩のどこがいいんですか。目が腐ってて、ぼっちで、なんでも面倒臭い、とか言ったり、あざといとか平気で行ってきたり、それに……」

そこで、私の言葉が途切れる。

結衣先輩が、抱きしめてきたからだ。

「いろはちゃん、やめて、分かるよ、分かるんだよ……」

「何がですか……」

「いろはちゃん泣いてるよ…」

「……っ、あの、あの先輩は…あんなに最低なのに…困ってる人がいると、見境なしに助けて…捻くれてるのに、時々見せる優しさがずるくて…なんで、なんであの先輩は……あんなにも優しいんですか……」

「いろはちゃんも、ちゃんと見てもらえてるから、きっと、部室から出させられたんだと思うよ。」

「分かってますよ。あの、馬鹿ぁ……」

そうして、2人して泣いた。

涙と、その声で、少しでも気持ちを出すために…

そして数分。

「……結衣先輩。」

「なに?」

「先輩を手伝いましょう。」

「……」

「勘違いしないでください。」

「え?」

「いいですか?前川さんの隣に立てるだけの、権利を得るってことですよね?今回の依頼」

「そうだね……」

「でもそれって」

そう、それは。

「達成したら、私たちも堂々と、先輩に接触出来るんですよ?」

「あ……」

「だからですね?先輩が、変われたら、これまで以上に攻めれるんです!ね?このチャンスどうします?」

「……そっか、そうだよね、うん!絶対成功してみせる!」

「そのいきです!」

「じゃあ、いろはちゃん!勝負だよ!」

「負けませんよ!」

 

そうして、恋する乙女同盟は成り立った。

 

 

「あ、そうそう、比企谷くん。」

「急にどうした。」

「いつかさされないようにね。」

「いや、怖ーよ。」

「今のお兄ちゃんなら刺されるよ?」

「えぇ」




ぽやしみ……

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