私小説であり、試小説   作:陰月

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 争いを強調しようとすれば、平和な光景が
 平和を強調しようとすれば、争いの光景が

 相反するものを並べると、印象的になりませんか?


十二話 その組、平和

 

 地方系暴力組織墨流会硯組

 本家である墨流会を親に持つ小さな組。

 その下には影組、石組などを傘下におくものの、武力的要素は薄く地域に根差して縁日で出店を営むなど、地域住民との交流に重きをおく。

 同地位・兄弟組として筆組、(しずく)組が存在する。

 滴組はいわゆるインテリヤクザ。株や土地を転がすなどで利潤を得ている。

 現滴組組長は、ある意味静かな男だった。

 声を荒げたり、手を出すことはせず相手が引くよう仕向けるのだ。

 利益になるのなら一般人でも友好的に接し、不利益を被るようなら部下であっても処分する。

 そんな男の下に集まるのは、ずる賢い奴や金に汚い奴であったりする。

 組員の武力要素は薄いのだが、必要武力は金で賄うので他の組から一目置かれているのだ。

 

 そして今回の抗争相手でもある筆組。

 ここでは武力が全て。

 年一で行われる組内闘技会の結果次第で、組長が変わることもある。

 本来は歴代の組長が直々に跡目を決めるものなのだが。

 しかし、現筆組組長はかれこれ10年以上居座り続けているので驚きだ。

 いったいどの様な筋骨隆々男なのか、容姿が不明なのも相まって恐れられている。

 収入源は地下闘技場における、賭け。

 少数の組員も選手として日々鍛錬し稼いでいるとか。

 そして最も厄介なのが、武力証明には組内闘技会以外の方法もあるということだ。

 外で他の組を潰すなどでも評価され幹部に抜擢されることもある。

 とにかく力を、絶対的な力こそ唯一支持されるのだ。

 

 「野生動物の世界ですね」

 「ええ、本当に」

 これには流石のガクトも目を丸くして苦笑いだ。

 「そして最後はウチ、硯組ですが」

 「組長、ご無事でしたか~」

 「おいキンヤ、組長から離れろ」

 「なんだよマドカ嫉妬か?羨ましいのか?」

 「うるさい」

 

 「まあ、何というか。アットホームですね」

 「、、、そうですね」

 事務所は小さなもので、衝立(ついたて)を利用して部屋を区切っているだけ。

 組長専用の部屋など無い、質素なものだ。

 目の前では四角いテーブルを挟んで、長いソファ1つと一人掛けのソファ2つが置かれているのだが

 「キンちゃんとマーくんも、お茶飲む?」

 「姐さん、あざっす」「いただきます」

 「ははは、ご近所さんから貰った煎餅もあるぞ。喰え喰え」

 ヤクザの事務所内にて繰り広げられる、一家団欒のような光景。

 一人の中年男性に懐くキンヤと、それを諌めるマドカだったが

 にこやかな女性の一言で居住まいを正し、湯呑を受け取っている。

 

 半分呆れながら、そして諦めを滲ませながらガクトに告げられる真実。

 長いソファに腰掛け顎ヒゲを蓄えた、煎餅を勧める男こそ、

 当代硯組組長である橋本 春美(ハシモト ハルミ)であった。

 




 
 お煎餅が食べたくなりましたw
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