私小説であり、試小説 作:陰月
争いを強調しようとすれば、平和な光景が
平和を強調しようとすれば、争いの光景が
相反するものを並べると、印象的になりませんか?
地方系暴力組織墨流会硯組
本家である墨流会を親に持つ小さな組。
その下には影組、石組などを傘下におくものの、武力的要素は薄く地域に根差して縁日で出店を営むなど、地域住民との交流に重きをおく。
同地位・兄弟組として筆組、
滴組はいわゆるインテリヤクザ。株や土地を転がすなどで利潤を得ている。
現滴組組長は、ある意味静かな男だった。
声を荒げたり、手を出すことはせず相手が引くよう仕向けるのだ。
利益になるのなら一般人でも友好的に接し、不利益を被るようなら部下であっても処分する。
そんな男の下に集まるのは、ずる賢い奴や金に汚い奴であったりする。
組員の武力要素は薄いのだが、必要武力は金で賄うので他の組から一目置かれているのだ。
そして今回の抗争相手でもある筆組。
ここでは武力が全て。
年一で行われる組内闘技会の結果次第で、組長が変わることもある。
本来は歴代の組長が直々に跡目を決めるものなのだが。
しかし、現筆組組長はかれこれ10年以上居座り続けているので驚きだ。
いったいどの様な筋骨隆々男なのか、容姿が不明なのも相まって恐れられている。
収入源は地下闘技場における、賭け。
少数の組員も選手として日々鍛錬し稼いでいるとか。
そして最も厄介なのが、武力証明には組内闘技会以外の方法もあるということだ。
外で他の組を潰すなどでも評価され幹部に抜擢されることもある。
とにかく力を、絶対的な力こそ唯一支持されるのだ。
「野生動物の世界ですね」
「ええ、本当に」
これには流石のガクトも目を丸くして苦笑いだ。
「そして最後はウチ、硯組ですが」
「組長、ご無事でしたか~」
「おいキンヤ、組長から離れろ」
「なんだよマドカ嫉妬か?羨ましいのか?」
「うるさい」
「まあ、何というか。アットホームですね」
「、、、そうですね」
事務所は小さなもので、
組長専用の部屋など無い、質素なものだ。
目の前では四角いテーブルを挟んで、長いソファ1つと一人掛けのソファ2つが置かれているのだが
「キンちゃんとマーくんも、お茶飲む?」
「姐さん、あざっす」「いただきます」
「ははは、ご近所さんから貰った煎餅もあるぞ。喰え喰え」
ヤクザの事務所内にて繰り広げられる、一家団欒のような光景。
一人の中年男性に懐くキンヤと、それを諌めるマドカだったが
にこやかな女性の一言で居住まいを正し、湯呑を受け取っている。
半分呆れながら、そして諦めを滲ませながらガクトに告げられる真実。
長いソファに腰掛け顎ヒゲを蓄えた、煎餅を勧める男こそ、
当代硯組組長である橋本 春美(ハシモト ハルミ)であった。
お煎餅が食べたくなりましたw