私小説であり、試小説 作:陰月
見せ場を作りたいという欲求だけが先行して、他がおざなりになってしまいます。
T字路の交差点(?)にさしかかった時、右に建ち並ぶビルの1つから若い男が飛び出してきたと思ったら、何か叫びながら周りをキョロキョロとしだした。
そしてコチラの存在に気付くやいなや、今度はジロジロと。一体なんなんだ?
買い物帰りにいつもとは一本違う道に入ってみれば、まったくもって騒々しい。
あまり近づくと面倒か?
しかし近づかんことには進めない。わざわざ引き返してやるような道理もなし。
さて、どうしたもんかな。
男は考えをまとめるために足を止め煙草の灰を落とす。
どうしようかと考えているうちに、新たな男がビルから飛び出してくる。
今度は壮年の男だ。若い方の上司だろうか。
出てくるなり若いのを捕まえて睨んでいる。実にご立腹な様子。
睨まれている方は正しく『蛇に睨まれた蛙』よろしく汗がだらだらでている。
今なら変に巻き込まれることなく通り過ぎることが出来るのでは?
1つの可能性を期待して歩を進めようとするも、2,3歩で止めてしまった。
左の曲がり角から妙な光の反射を捉えたからだ。
前の男2人とは別の人間が影から覗いている。その手に持つのは黒光りするある物。
しかし男は喚きたてたり、慌てることもない。
やれやれ。
と、嘆息しつつ煙草を咥える。
それと同時に一発の発砲音が響いた。
先程視界の端に捉えたのは銃身に反射した光だったのだ。
発砲されるぎりぎりで壮年の方は気付いたのだろう。目を見開きながらも、若い方を庇う形で腕の中に巻き込み銃口に背中を向けた。
急に視界が傾いたので驚いたが、目の前に突き付けられた現実で理解は出来た。
撃たれたのだ。
サナイは急いで組長の怪我の様子を確認する。胴体や頭なら命に関わる。
最悪の現実になってくれるなよと目をやると、どうやら肩に当たったようだ。
命の危険はなさそうだと、ホッとするが危険な状態である。更なる襲撃があるかもしれない。
ハルミの無事な方の腕を肩に回し、移動させようと行動を起こす。
ハルミが懸念していた通り、窓を割って待ち伏せをしていたらしい。
唯一の救いは連射してこなかったこと。考えられるのは口だけのチンピラを使ったか、もしくはすぐ逃げるように指示していたか。
筆組のやりくちで考えるなら後者はありえない。
その場を動くなら相手の命を止めてから。止めるまでは帰ってくるな。
筆組での鉄砲玉は、まさしく呼び名の通りの扱いをされる。
放たれた玉が、元の銃身に戻ることは無いのである。
おそらくは度胸試しに使われたチンピラだろう。
ヤクザへの憧れだけが強い、口だけの存在。
そのくせ困れば組の名前をひけらかす。筆組にとっては丁度いい『鉄砲玉』だ。
残りの組員は逃げた奴を追っていく。
最後まで張れない虚勢を張る輩だが、シマ内で銃を持った輩を放置は出来ない。
そんな、いざこざを目の当たりにしながらも全く驚かない煙草の男は、自分には関係ないと再び足を動かし始める。のだが、今度は進行方向からの存在によりまた止められてしまう。
名無しモブの人たちも、ちゃんと動かしてみたいです。